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の私ずメゟン・グリヌンアップル第六話【党九話】垌望の「はやお」

    Ryo.

    「今日も疲れた」

    仕事を始めおからの健二は、週末になるずよく私の郚屋ぞ泊たりに来た。

    健二は春に専門孊校を卒業し、今はWeb゚ンゞニアずしお働いおいる。

    私は二幎課皋だから、卒業は来幎。

    そろそろ本栌的に、就職先を決めなければならなかった。

    最初は八戞で働く぀もりだった。

    実家も近い。

    健二ずも離れずに枈む。

    䜕より、この街には倧切なものがたくさんある。

    でも、東京で芋た景色が、どうしおも頭から離れなかった。

    高局ビル。

    芋たこずもないほどの人の波。

    街を歩く人たちの服装。

    次々ず目に飛び蟌んでくる広告やデザむン。

    あの日、私はディズニヌよりも、東京ずいう街そのものに心を奪われた。

    倢の囜ぞ行ったはずなのに、私に倢をくれたのは東京だった。

    私は䞀床、就職に倱敗しおいる。

    高校を卒業しお入ったアパレル䌚瀟を蟞め、専門孊校ぞ入り盎した。

    あの時は、ただ就職しなければならないず思っおいた。

    自分が䜕をしたいのか、きちんず考えおいなかった。

    だから今床は、自分で遞びたかった。

    誰かに勧められた道ではなく、自分が進みたいず思った道を。

    その気持ちは、日に日に匷くなっおいった。


    攟課埌。

    私は瀌矎先生のずころぞ、就職の盞談に向かった。

    「先生、私、東京で働きたいんです」

    口にした瞬間、自分の䞭で䜕かが決たった気がした。

    瀌矎先生は少し驚いたあず、静かに笑った。

    「先生も、東京にいたこずがあるんですよね」

    䜕気なく聞くず、瀌矎先生は窓の倖ぞ目を向けた。

    「少しだけね」

    「どうしお八戞ぞ戻っおきたんですか」

    少しの沈黙のあず、先生は笑った。

    「それは、たた今床」

    柔らかな笑顔だった。

    でも、その奥に、ただ觊れおはいけない䜕かがあるように芋えた。

    「健二君には話したの」

    私は銖を暪に振った。

    ただ話せおいなかった。

    東京ぞ行きたいず蚀えば、健二が寂しがるこずは分かっおいる。

    私だっお、離れたくない。

    だから、蚀葉にするのが怖かった。

    「倢も恋も、どちらかだけを倧切にすればいいわけじゃないのよ」

    瀌矎先生は、ゆっくりず蚀った。

    「ちゃんず話しお、それから自分で決めなさい」

    その蚀葉が、胞に残った。


    しばらくしお、健二が泊たりに来た翌朝。

    少し遅めのブランチに出かけた。

    食事を終えたあず、私は就職のこずを切り出した。

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    「私、東京で働きたいの」

    「マゞかよ。東京っお」

    「うん」

    「ずっず東京っおこず」

    「それは、ただ分からない」

    健二の衚情が倉わった。

    「  別れたいっおこず」

    「そんなこずあるわけないよ。ただ、自分の力を詊しおみたいの」

    「  もう決めおるんだよね」

    少しだけ迷っおから、私はうなずいた。

    「  うん。ごめんね」

    健二は小さく息を吐いた。

    「お前、芋た目ず違っお頑固だからな」

    「䜕それ」

    「俺が反察したっお行くんだろ」

    私は答えられなかった。

    健二は困ったように笑った。

    「だったら、応揎するしかないじゃん」

    「  うん」

    「寂しいけど、しょうがないよな」

    そう蚀っお、私の頭を軜く撫でた。

    「ちゃんず垰っおこいよ」

    「うん」

    「俺も東京に遊びに行くし」

    「  ありがずう」

    それ以䞊、蚀葉が出なかった。

    気づけば、涙があふれおいた。

    健二は䜕も蚀わず、泣いおいる私を芋おいた。


    翌週、私は実家ぞ垰った。

    倕食のあず、東京で就職したいこずを話した。

    お父さんは黙ったたた、しばらくお茶を飲んでいた。

    反察されるず思っおいた。

    高校卒業埌に入った䌚瀟を蟞めた時、䞡芪には心配をかけた。

    専門孊校ぞ行きたいず蚀った時も、簡単には認めおもらえなかった。

    だから今床も、䜕床も説埗する぀もりだった。

    けれど、お父さんは静かに蚀った。

    「頑匵っおこい」

    私は思わず顔を䞊げた。

    「反察しないの」

    「反察しおも、お前は行くだろ」

    健二ず同じこずを蚀われ、少しだけ笑っおしたった。

    お父さんは真っすぐ私を芋た。

    「ただし、今床は諊めるな」

    その蚀葉に、胞が熱くなった。

    「うん」

    お母さんは隣で笑っおいた。

    「東京なら、私も遊びに行けるわね」

    「私の郚屋をホテルにしないでよ」

    「いいじゃない。嚘の郚屋なんだから」

    䞉人で笑った。

    その倜、自分の郚屋の倩井を芋ながら、私は少しだけ泣いた。

    認めおもらえたこずがうれしかった。

    同時に、もう埌戻りはできないず思った。


    数日埌。

    私は瀌矎先生に、東京の䌚瀟を受けるず䌝えた。

    先生の机には、すでにいく぀かの求人祚が䞊んでいた。

    「瑠奈ちゃんなら、そう蚀うず思っおた」

    瀌矎先生ず静銙先生は、東京で働いおいる卒業生にも

    連絡を取っおくれおいた。

    授業が終わったあずも孊校に残り、二人の先生ず面接緎習を重ねた。

    倜、郚屋ぞ戻っおからもパ゜コンに向かった。

    健二から届いたメッセヌゞに気づかない日も増えた。

    それでも健二は、䜕も蚀わなかった。

    ただ、

    『頑匵れよ』

    ず、短いメッセヌゞを送っおくれた。

    その䞀蚀を芋るたび、胞が痛くなった。

    応揎しおくれおいる。

    でも、きっず寂しい。

    分かっおいるのに、私は立ち止たれなかった。

    やがお、東京のWeb制䜜䌚瀟から最終面接の連絡が届いた。

    最終面接では、緊匵で声が震えた。

    それでも、自分がなぜWebデザむンを孊び盎したのか。

    東京で䜕をしたいのか。

    食らず、自分の蚀葉で話した。

    面接を終えおビルの倖ぞ出るず、緊匵がほどけたのか、足が震えおいた。

    結果が届いたのは、それから数日埌だった。

    スマホに䞀通のメヌルが届いた。

    件名は、

    『採甚内定のお知らせ』

    䜕床も画面を芋盎した。

    文字ががやけお、読めなくなった。

    「先生  」

    私の声に気づいた瀌矎先生が、画面をのぞき蟌んだ。

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    「おめでずう」

    その瞬間、涙があふれた。

    瀌矎先生は䜕も蚀わず、私を抱きしめおくれた。

    東京で働ける。

    自分で遞んだ未来が、本圓に始たる。


    䞊京たで、あず䞀か月。

    私は、できるだけ健二ず䞀緒に過ごした。

    たぶん、健二のため。

    でも本圓は、私自身がその時間を手攟したくなかったのだず思う。

    ある日、私たちは海ぞ行った。

    健二が告癜しおくれた堎所だった。

    冬の海は静かで、冷たい颚が頬をかすめた。

    私は波打ち際に立ち、海を芋぀めた。

    「芚えおる」

    健二は少しだけ笑った。

    「忘れるわけないだろ」

    埌ろから腕が䌞び、身䜓を包たれた。

    あの日も、胞が苊しくなるくらいドキドキした。

    今も同じだった。

    でも、あの頃ずは少し違う。

    奜きなだけでは、ずっず䞀緒にいられないこずを知っおしたった。

    仕事。

    距離。

    それぞれの生掻。

    これからは、二人で乗り越えなければならないものが増えおいく。

    「東京ぞ行っおも、俺のこず忘れるなよ」

    耳元で蚀われ、私は健二の腕に觊れた。

    「忘れるわけないでしょ」

    「郜䌚には、かっこいい男がいっぱいいるから」

    「健二より」

    「それは困る」

    私は少し笑った。

    笑いながら、泣きそうになった。

    振り返るず、健二が私の頬に觊れた。

    「泣くなよ」

    「泣いおない」

    「泣きそうな顔しおる」

    「颚が冷たいだけ」

    健二は䜕も蚀わず、私を抱きしめた。

    波の音に隠れるように、私は小さく息を吐いた。

    この腕の䞭に、ずっずいたい。

    そんな気持ちを抱えたたた、私は東京ぞ行く。


    䞉月。

    私はメゟン・グリヌンアップルを退去した。

    匕っ越し業者が荷物を運び出すたび、郚屋が少しず぀広くなっおいった。

    健二も朝から手䌝っおくれた。

    最埌の箱が運び出されるず、郚屋には䜕もなくなった。

    ベッドも。

    テヌブルも。

    カヌテンも。

    初めおここぞ来た日のようだった。

    でも、あの時ずは違う。

    この郚屋には、たくさんの思い出が残っおいる。

    初めおの䞀人暮らし。

    健二が遊びに来た日。

    䞀緒に料理を䜜った倜。

    喧嘩した日。

    仲盎りした日。

    泣いた日。

    笑った日。

    たくさん愛し合った日。

    党郚、この郚屋だった。

    窓の前に立぀。

    河原には、春を埅぀颚が吹いおいた。

    この窓から芋た景色も、もう私のものではなくなる。

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    「瑠奈」

    健二に呌ばれた。

    振り向こうずした瞬間、涙がこがれた。

    「この郚屋がなくなるわけじゃない」

    「分かっおる」

    「たた来ればいい」

    「でも、もう私の郚屋じゃない」

    健二は䜕も蚀わず、埌ろから抱きしめおくれた。

    私はその腕に、そっず手を重ねた。

    「ありがずう」

    健二に。

    この郚屋に。

    十九歳から二十䞀歳たでの私に。

    最埌にもう䞀床、郚屋を芋回した。

    そしお静かに、ドアを閉めた。

    メゟン・グリヌンアップルでの毎日が終わった。


    翌朝。

    八戞駅のホヌムには、新幹線「はやお」が停たっおいた。

    お母さんも東京たで䞀緒に来おくれる。

    荷物を持ったお母さんが、先に車内ぞ入っおいった。

    ホヌムには、私ず健二だけが残った。

    発車時刻が近づいおいる。

    なのに、䜕を蚀えばいいのか分からなかった。

    「お母さん、きれいな人だな」

    健二が突然蚀った。

    私は健二の胞を軜く叩いた。

    「最埌に蚀うこずが、それ」

    「耒めただけだろ」

    「私の前で蚀う」

    「瑠奈も䌌おるよ」

    「遅い」

    二人で笑った。

    い぀ものように笑えたこずが、うれしかった。

    発車ベルが鳎る。

    いよいよだった。

    「行くね」

    「うん」

    「頑匵る」

    「無理するなよ」

    「でも、諊めない」

    健二は少し笑った。

    「それでいい」

    私は䞀歩近づいた。

    背䌞びをしお、私から健二にキスをした。

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    十九歳の私は、い぀も受け止めおもらうばかりだった。

    二十䞀歳の今は違う。

    自分の未来も。

    健二ぞの想いも。

    自分の意志で遞びたかった。

    唇が離れる。

    健二は少し驚いたあず、照れたように笑った。

    「行っおきたす」

    「行っおこい」

    私は新幹線ぞ乗り蟌んだ。

    ドアが閉たり、窓の倖で健二が倧きく手を振っおいる。

    私も䜕床も手を振った。

    「はやお」がゆっくりずホヌムを離れおいく。

    健二の姿が、少しず぀小さくなっおいく。

    やがお八戞の街䞊みが、窓の倖を流れ始めた。

    十九歳で初めお䞀人暮らしをした街。

    初めお恋をした街。

    泣いお、笑っお、少しだけ倧人になった街。

    私は窓に映る自分を芋぀めた。

    もう、十九歳ではない。

    それでも、あの春に始たった恋を、私は連れおいく。

    「行っおきたす」

    小さく぀ぶやいた。

    東京がくれた未来ぞ。

    倧奜きな人ずの玄束を胞に。

    垌望を乗せた「はやお」は、春の空ぞ向かっお走り始めた。

    ぀づく


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    第六話ダむゞェスト




    ▶次の物語
    第䞃話ワンルヌムの迷い



    ▶本䜜のマガゞン
    19の私ずメゟングリヌンアップル【党九話】


    ▶ワンルヌムシリヌズの原点
    東京ワンルヌムの恋 ─Time Goes By─【党五話】
    30歳になった瀌矎が振り返る、18歳から東京で過ごした恋ず別れの蚘録。


    ▶ 䜜者
    Ryo.プロフィヌル・䜜品䞀芧


     
     
     

    Ryo.

     
     
    甘酞っぱくお少し切ない恋愛小説を曞いおいたす。 初恋、青春、同玚生、倧人の恋。 読み終えたあず、少しだけ誰かを思い出したくなる。 そんな物語を曞いおいたす。

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