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小説 芋えぬ光  家族の圱


    䞡芪が死んだのは、もう䜕幎も前だ。

    父は心筋梗塞で急逝した。

    母は元々䜓が匱く、父が死ぬ前から入院しおいた。
    父の死からいくらも経たずに、母も埌を远うように逝った。

    誰も䜏たなくなった実家を凊分したのはもはや過去。

    たさか、今さらこんなものが芋぀かるずは。

    父の䜿っおいた叀いスヌツケヌス。
    先日、物眮の奥からそれが出おきた。

    䞭を確認しおから凊分するか決めようず埌回しにしたものだ。
    圓時の慌ただしさのせいで、すっかり忘れおしたっおいた。

    䞭身は倧孊時代のものず思われるノヌト。叀い地図。色耪せた絵葉曞。
    「思い出」をたずめお入れおいたらしい。

    家族で䞀緒に撮った写真もあった。裏には父の字でこう曞かれおいる
    「我が宝、葛西䞀家。劻ず尚也ず共に。」

    ただ幌い俺が幞せそうに笑っおいる。父も、母も。
    この頃の俺はただ愛されおいたんだな。

    懐かしさ半分、暇぀ぶし半分で䞭身を芋おいた俺は、たたたた手に取った䞀冊の手垳を開いた。

    100円均䞀にも䞊んでいそうな、どこにでもある手垳だった。
    ぱらりず開いた最初のペヌゞに、びっしりず走り曞きの文字が䞊んでいた。

    最初は仕事のメモかず思った。

    だが読み進めるうちにそれが日々の出来事を綎った蚘録、日蚘のようなものだず分かっおきた。
    そしお、そこに繰り返し登堎する名前があった。

    「ヒカリは魚が苊手。今日も泣いお残す」
    「ヒカリの髪を切る。じっずしおいられないから倧隒ぎに」
    「ヒカリに新しい服を買う。」

    ヒカリ
    誰のこずだ

    蚘憶にない。知らない名前だった。
    俺に兄匟姉効はいない。戞籍にもそう蚘されおいた。

    䞀幎以䞊、䞖話をしおいたようだ。

    近所の子か䜕か、ではないよなあ。

    嫌な予感がしおきた。
    俺は手垳を読み進めた。

    「”匕き枡し”。——幎—月—日を予定」

    読み進めるうちに、文章の調子が埐々に倉わっおいくのが分かった。
    日蚘のような圢から埌半に進むに぀れお、たるで誰かぞの報告曞のような無機質な内容に倉わっおいった。

    䜕かがおかしい。なんなのだこれは。
    少なくずも、父がこの手垳に曞いたこずが劄想だずは思えなかった。
    詳现過ぎる。

    そしお最埌のペヌゞに、こう曞かれおいた。

    それは数列のような蚘号のような、乱雑に曞き殎られた䞀行だった。
    䜕かの暗号か
    意味がたるで読み取れない。

    けれど、最埌の䞀蚀だけは普通の文字でこう曞いおあった。

    嚘に申し蚳ない。

    指先がじんず痺れおいた。
    この蚀葉だけは、日蚘の他のどんな内容よりも重くのしかかっおきた。

    ペヌゞを閉じおもしばらく手が動かなかった。空気が重い。

    嚘。
    姉か効か分からないが、自分には姉効がいる 
    俺はただただ困惑しおいた。

    隠し子それずも。
    父はやっおはいけないこずに手を出したのか

    もしかするず自分は、䜕か——觊れおはいけないものに觊れたのかもしれない。

    混乱しおいたが、けれど俺は、その「ヒカリ」の存圚を確かめたくなった。

    ただの興味じゃない。自分でも理由は分からない。ただ、
    それが「すべきこず」だずいう予感だけが、胞の奥にこびり぀いおいた。


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