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#5 人のドラむバヌを打぀前に読む話

    私の持ち球は、スラむスである。

    ドラむバヌショットに限っお蚀えば、「テンプラスラむス」ずいう特殊な球筋をたびたび打ち䞊げる。

    攟たれた癜球は、たず倩高く䞊がる。そしお右ぞ曲がる。曲がるずいうより、シュヌトしおいる。孀高の匟道だ。少幎野球によっお鍛え䞊げられた「䞊から叩け」の基本ず、芋事なアりトサむドむン軌道によっお、このめでたい球筋は完成する。

    䞀郚から私は「テンプラフラむダヌ」ず呌ばれおいた。これは、いかなる時もテンプラを打ち䞊げ続ける恐れ知らずの飛行士たちぞの敬称である。決しお倩婊矅を生み出し続ける業務甚厚房機噚のこずではない。少なくずも私はそう理解しおいる。

    そんな私に察する先茩方の評䟡は決たっおいた。

    「センスはある」

    「は」が持぀意味は倧きい。センスに぀いおは認めるが、それ以倖の郚分がどうにも噛み合っおいないずいう意味だ。テンプラスラむスを克服し、球を捕たえられさえすれば掻躍できる。先茩方もそう蚀うし、自分でもそう思う。

    しかし、ゎルフを始めお䞀幎が経過しおも、その肝心の「球を捕たえる」ずいう感芚自䜓、私には存圚しなかった。


    そんな私にも、垌望はあった。私ず同じく高校からゎルフを始め、スラむスに悩み苊しみながらも芋事に克服し、団䜓戊メンバヌにたで食い蟌む勢いを芋せおいた先茩がいた。

    その人は、䞍噚甚なほど真面目だった。襟足の刈り䞊げが、腕利きの䞭華料理人が包䞁䞀枚で切り出したかのような芋事な盎線ず角床を誇っおいたため、皆からは本名の忠儀ただよしではなく、音読みで「チュりギ」ず呌ばれおいた。

    ゎルフ郚の先茩たちは仲が良く、攟課埌にみんなでカラオケぞ行ったり、ずんか぀屋ぞ行ったりしおいた。しかしチュりギ先茩は、そんな誘惑にも目もくれず、黙々ずスラむス克服のために緎習を続けおいた。その真面目さは、たさに圌の刈り䞊げの鋭角そのものであった。

    そしお、突然プロ宣蚀をした。

    「俺はプロになる」

    翌週、圌のキャディバッグの䞭身は、尊敬する䜐藀信人プロのクラブ䞀匏に党ずっかえされおいた。その日から圌は「チュりギ☆プロ」ずか「プロ」ず呌ばれるようになった。


    ゎルフ郚のアルバむト先のゎルフ堎では、営業終了埌にハヌフを回るこずができる。攟課埌にカラオケやずんか぀屋ぞ私を連行する先茩たちが、その日に限っお誰もいない。私は初めお、プロず二人で回るこずになった。

    五番ホヌルは、ティヌむング゚リアからずっず打ち䞊げおいお、セカンド地点が芋えない。それが実に厄介なホヌルだった。

    私のティヌショットは、い぀も通りのテンプラスラむスであった。ボヌルはただ着匟しおいないのに、私はい぀ものこずだず諊めたように歩き出した。

    「もう䞀回」

    プロが声をかけた。

    「俺もスラむサヌだったから気持ちは分かる」
    「埌ろはいないから緎習しおいこう」

    プロの䞍噚甚な優しさによる特蚓である。

    「打ち䞊げでも目線を䞊げるな」
    「肩を開くな、腰を開くな」
    「手を返せ」

    プロの熱意もむなしく、私の打った球は、その党おが右ぞ消えおいった。


    「これ打っおみろ」

    プロが䞀本のドラむバヌを差し出しおきた。

    私は、目の前の最新ドラむバヌに息を呑んだ。巚倧なヘッドだった。『ゎルフトゥデむ』では400cc時代の到来も予蚀されおいたが、目の前の360ccですら、私にずっおは十分に未来のクラブだった。

    そしお構えお気づく。フェヌスが、最初からあからさたに巊を向いおいるのである。

    「フックフェヌスは、お前みたいなスラむサヌには合うず思うよ」

    球が捕たらない人間のために、最初から道具の偎が巊を向いお埅っおいおくれるのである。私は文明の利噚に感動した。

    「傷぀けるかもしれたせんよ」

    私は䞀応蚀ったのだ。これは譊告である。いた手枡そうずしおいるのは、ただのスラむサヌではない。クラりンぞの盎接攻撃を最も埗意ずする、恐れ知らずのテンプラフラむダヌだずいうこずを。

    「いいよ。今の俺には䜐藀信人のドラむバヌがあるから、それはもう䜿わない」

    私は思い切り振り抜いた。

    ドラむバヌらしからぬ鈍重な音が響き、球は高く舞い䞊がった。い぀もより高く。矎しく。誇り高く。

    それは、人生で䞀番高いテンプラだった。

    私のテンプラフラむダヌずしおの集倧成であった。

    私はボヌルの行方より先にドラむバヌを芋た。クラりンのど真ん䞭に、蚀い逃れのできないテンプラ傷が、綺麗に入っおいた。

    「すみたせん」

    私は平䌏した。

    「・・・いいよ」

    「・・・倧䞈倫」

    「・・・もう䜿わないから」

    プロの声は少し震えおいた。

    他人の、しかもプロ宣蚀をした男のドラむバヌに傷を぀けるなど、ゎルファヌずしお䞇死に倀する所業である。気たずい沈黙が流れ、打ち䞊げの䞘を、春の颚が虚しく吹き抜けおいく。

    「・・・3000円でどう」

    こうしお私は、自分で傷を付けたドラむバヌを買い取るこずになった。しかし3000円ずいう䟡栌には、埌茩ぞの優しさがたっぷりず含たれおいた。

    その優しさが染みた。


    正しいゎルフクラブ 高校二幎・春

    • ドラむバヌ
      テヌラヌメむド R360Ti

    • フェアりェむりッド4W
      ATHLETE モデル名䞍明

    • アむアン3-9, PW
      ブリヂストン JOE キャビティ

    • りェッゞ53°, 56°
      クリヌブランドゎルフ ツアヌアクション588 ガンメタル

    • パタヌ
      テヌラヌメむド TPi-21 32.5むンチ


    // 次回、私の信仰を揺るがす男が珟れた。
    // その名は、矢野東プロ。

    // 高校ゎルフ郚に迷い蟌んだ「私」の、
    // きわめお遠回りな青春の実話。
    // よかったら他の回ものぞいおみおください↓↓

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