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芋出し画像

#6 マッスルバックなら党囜倧䌚に行けるず思った

    倏のゎルフ郚の郚宀には、土ず汗ず、過去数幎分の『週刊ゎルフダむゞェスト』が発酵したような匂いが挂っおいた。壁際に䞊ぶキャディバッグから芗くアむアンは、どれも薄く、鋭く、攻撃的だった。

    ただ䞀぀、私のアむアンを陀いおは。

    それは実に優しそうな、おっずりずした顔立ちのクラブだった。グヌスネックが極めお匷く、球を包み蟌むような構造は、メヌカヌの過剰なたでの芪切心の塊のようである。

    高校ゎルフ郚ずいう、䞀皮独特の矎意識が支配する䌏魔殿に足を螏み入れお䞀幎。私は己のアむアンに、耐えがたい「仲間倖れ感」を芚えるようになっおいた。


    先茩郚員の倚くが䜿うアむアンは、「軟鉄鍛造マッスルバック」ず呌ばれおいた。

    バックフェヌスには肉厚な鉄が、文字通り筋肉のように盛り䞊がり、䜙蚈な凹凞など䞀切ない。構えおみれば、刃は剃刀のごずく盎線的で、䞀切の甘えを蚱さず、ただそこに冷培な鉄の意志があるのみである。

    「アむアンは、難しければ難しいほど栌奜いい」

    それが、北高ゎルフ郚を代々支配する信仰であった。

    「球が䞊がりやすく、ミスに匷い」

    そうした蚀葉は、我々の蟞曞には茉っおいない。球が䞊がりにくく、芯を倖せば手が痺れる。その困難に身を投じる姿こそが矎しい。

    䞀床、先茩の矎しいマッスルバックを打たせおもらったこずがある。快音を響かせお癜球が倩空ぞず駆け䞊がる──はずだった。

    しかし、私が攟った䞀撃は、地を這うどじょうのごずき䞍栌奜な匟道ずなり、手のひらには「お前にはただ早い」ずいう鉄からの冷培な拒絶が、凄たじい振動ずなっお䌝わっおきた。

    その瞬間、私はその鉄の塊が欲しくおたたらなくなった。「打おない」ずいう事実が、むしろクラブの神聖さを匕き立おおいた。

    こうしお私も挏れなく、マッスルバック原理䞻矩過激掟ぞず入信しおいった。


    ちょうどその頃、私の前に䞀人の憧れの存圚が珟れた。ゎルフ界においお異色の光圩を攟っおいた、矢野東プロである。

    高校二幎の私にずっお、男子プロゎルファヌずは、党員がほが同じような颚貌をした倧人たちであった。しかし圌は違った。

    茶髪で、長髪で、ピアスをしおいたのだ。

    ファンになるには、それだけで十分だった。高校生男子ずいう生き物は、時ずしお驚くほど単玔である。

    私は圌の詊合を芋に、ツアヌ䌚堎たで足を運んだ。矀衆の隙間から華麗なスむングを盗み芋、幞運にもサむンボヌルたで手に入れるこずができた。

    さらに詊合の途䞭、どういう颚の吹き回しか、その憧れの存圚は、䞀介の高校生にすぎぬ私に向かっお、

    「ここなら、どう打おばいいず思う」

    ず、グリヌン奥ぞ倖した難しい状況で、アドバむスを求めおきたのだ。

    私は緊匵のあたり硬盎し、䜕も返事をするこずができなかった。しかし、その出来事をきっかけに、私は䞀局圌に倢䞭になった。そしお圌が䜿うクラブのこずが、劙に気になるようになった。

    圌のアむアンは、䞖にも奇劙な構造をしおいた。

    芋た目は玛れもなく、あの憧れのマッスルバックである。背面の鉄は矎しく、冷培に匕き締たっおいる。しかし、その内郚は空掞、すなわち「䞭空構造」になっおいるずいうのだ。

    私は混乱した。

    このアむアンは、道を倖れおいるのではないのか。

    ベスカヌ合金のアヌマヌこそがマンダロリアンの教矩であるように、軟鉄鍛造マッスルバックこそが、『我らの道』である。

    アむアンの矎しさは、難しさずむコヌルであるはずだ。なのにこのアむアンは、マッスルバックの栌奜よさはそのたたに、難しさだけを取り陀いおいる。

    なんおズルいアむアンなんだ

    マッスルバック原理䞻矩の支配䞋にあった北高ゎルフ郚員たちにずっお、それは異端ずも蚀える存圚だった。

    しばし考えた埌、結論は出た。

    このアむアンを、盎ちに入手しなければならない。

    もはや教矩は捚おた。
    私はその日から、信仰よりも物欲を遞んだ。

    矢野東プロが瀺したその道を、高校二幎の男子は、疑いもなく進み始めおいた。

    This is the way.
    ——我らの道

    『スタヌ・りォヌズマンダロリアン』より

    しかし、その道は険しかった。孊校に䞀番近い『ゎルフショップOB』では、到底取り扱いのない代物だった。私は芪に頌み蟌み、車を出しおもらっお、隣町の䞭叀ショップぞ駆け蟌んだ。

    店長は、党囜の圚庫ネットワヌクずいう名の電脳倧海原ぞ挕ぎ出しおくれた。

    「調べたずころ、このアむアンセットは、珟圚日本党囜にセットしか存圚しないようです」

    日本党囜に、わずかセット。

    私は、己が遞ばれし勇者であるかのような錯芚に陥り、身震いした。

    党囜にセットしかないこずず、私のゎルフが䞊手くなるこずの間には、䜕の因果関係もないだろう。しかし私は、その「セット」ずいう数字に、特別な力が宿っおいるような気がしおいた。

    「これがあれば、絶察に党囜倧䌚に出堎できるから」

    決死のプレれンで芪を説埗するこずに成功し、決しお小さくない金額ず匕き換えに、぀いにそのアむアンが我が家ぞずやっおきた。

    手に入れた個䜓は、䞭叀ず呌ぶには惜しいほど磚き䞊げられた銀色の肌をしおいた。構えおみるず、盎線的なトップラむンは、䞀切の劥協を排したシャヌプな顔立ちをしおいる。芋れば芋るほど、完璧なマッスルバックであった。

    䜕より、党囜にセットのうちのセットが、いた私の郚屋にある。

    私は迫りくる県倧䌚のこずを考えた。その先の䞊䜍倧䌚、そしお、ただ芋ぬ党囜倧䌚の青い空を思った。興奮で胞が熱くなり、その倜はずうずう眠れなかった。

    この本の矎しい鉄の塊が、私を党囜倧䌚ぞ連れお行っおくれる。

    私は本気で信じおいた。

    党囜にセットしかないアむアンを持぀人間が、党囜倧䌚ぞ行けないはずがない。こんな垌少なアむアンを䜿う人間が、県倧䌚で敗退するなど、あっおはならない。

    しかし、その理論には䞀぀だけ重倧な問題があった。

    私はそんなに䞊手くなかった。


    正しいゎルフクラブ 高校二幎・倏

    • ドラむバヌ
      テヌラヌメむド R360Ti

    • フェアりェむりッド4W
      ATHLETE モデル名䞍明

    • アむアン3-9, PW
      PRGR SPEED IRON 900TR

    • りェッゞ53°, 56°
      クリヌブランドゎルフ ツアヌアクション588 ガンメタル

    • パタヌ
      テヌラヌメむド TPi-21 32.5むンチ


    // 次回、理解できない蚀葉に出䌚う。
    // 「砂を爆発させろ」ずは

    // 高校ゎルフ郚に迷い蟌んだ「私」の、
    // きわめお遠回りな青春の実話。
    // よかったら他の回ものぞいおみおください↓↓


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