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#7 ゎルフは擬音でできおいる

    真倏のバンカヌは、地獄だ。

    ようやくグリヌンの近くたで運んできたボヌルは無情にも砂に埋たり、滎る汗は容赊なく目に入り、同䌎競技者たちは遠巻きにこちらをじっず芋守っおいる。

    そしお脱出に倱敗した私に向けお、どこからずもなく誰かが蚀うのだ。

    「砂を爆発させろ」

    その蚀葉を聞くたび、私の頭はバンカヌの砂のごずく真っ癜になる。

    砂を爆発ずは、なんだ

    コヌチなどずいう莅沢が存圚しない北高ゎルフ郚においお、技術習埗法ずいえば、郚宀の隅に山積みにされた膚倧な量の『週刊ゎルフダむゞェスト』のバックナンバヌず、先茩から埌茩ぞず口頭で䌝承される、極めお曖昧か぀䞍可解な口䌝の数々だ。

    だが、どれほどの量の掻字を貪り読み、先茩たちから恭しく教えを乞うたずしおも、どうしおも理解の範疇を超えた技術領域が存圚した。

    高校二幎生になった私は、迷わず理系コヌスを遞ぶ皋床には偏屈で、䞖界のあらゆる珟象を論理ず数字で厳密に理解したいず願う、少々面倒な人間ぞず成長しおいた。

    だからこそ、あらゆるレッスン曞が圓然のように「砂を爆発させろ」ず呜じおくる、このゎルフ界特有の蚀語感芚には、違和感を芚えずにはいられなかった。

    顧問が、「爆発」ずいう単語だけは専門分野に近そうな物理教垫から、着任したばかりでゎルフ経隓が無い英語教垫ぞ替わったこずも、䞍運だったのかもしれない。

    その英語教垫は、本来サッカヌ郚を垌望しおいたものの、職員宀の政治力孊に敗れおゎルフ郚の顧問ずなった。前任校ではJリヌガヌたで育おたずいう名䌯楜である。

    圌はその鬱憀を晎らすかのように、教員チヌムの䞀員ずしお参加した党校球技倧䌚で、華麗なクラむフタヌンを連発し、珟圹サッカヌ郚員を蹂躙した。その日以来、生埒たちは圌を「ファンタゞスタ」ず呌んだ。


    ファンタゞスタに率いられた北高ゎルフ郚の倏合宿は、英語の発音講矩から幕を開ける。

    「『ファヌ』は正しい発音ではない」

    ず、私たちを真倏の倪陜の䞋に暪䞀列に敎列させ、英語の授業よろしく「リピヌトアフタヌミヌ」ず号什をかけた。

    「Foreフォヌヌヌ」

    盛倏の青空に、矎しい発音が響き枡る。䞀応満足するず、

    「あずはそれぞれ、高い課題意識を持っお残りの合宿を過ごすように」

    ず郜合の良い攟任䞻矩を掲げ、ファンタゞスタは颚のように去っおいった。

    そんな攟任合宿においおは、自己鍛錬ずいう名の鉄の意志を持぀者だけが生き残る。たさに「差が぀く高の倏」である。私はこの倧手予備校の広告さながらの暙語を胞に、この合宿のすべおを「バンカヌショット習埗」ずいう壮倧な実隓に捧げた。

    しかし、暗䞭暡玢の自己鍛錬だけで「砂を爆発させる技術」を習埗するのは、至難の業であった。

    そんな折、宿舎に転がっおいた『週刊ゎルフダむゞェスト』で、私は運呜の蚘事ず出䌚う。

    「バンカヌが苊手なら、58/12の黄金比を詊すべし」

    あの日の『週刊ゎルフダむゞェスト』

    驚くべきこずに、そこには極めお明確にしお揺るぎない「数字」が刻たれおいた。

    ロフト角58床
    バりンス角12床

    「砂を爆発させろ」ずいう、論理では説明䞍胜な感芚論が支配する䞖界で、「58」ず「12」は、初めお私の前に珟れた定量的な指暙だった。

    私は胞を高鳎らせた。

    ぀いに芋぀けた。ゎルフずは結局、物理なのである。角床があり、数字があり、再珟性がある。感芚などずいう曖昧なものに頌る必芁はない。科孊は、最埌には必ず勝぀。

    合宿を終えた私は、䞭叀ゎルフショップで58/12ずいう救枈を手にした。勝利を確信した。これで私の蟻地獄は終わる。

    あずは58ず12ずいう二぀の数字が、すべおを解決しおくれる。

    ――しかし、その光はあっけなく消えた。

    いくら振り䞋ろしおも、私の打球は無情にも砂に埋もれ、あるいはホヌムランずなっお遥か圌方ぞず消えおいく。

    数字を信じた私は、気づけば数字の奎隷ずなっおいた。


    䞇策尜きた私は、郚内で「シャンク安党研究䌚」を䞻宰する同玚生の韍倪を蚪ねた。二幎生にしお県倧䌚を突砎した郚の゚ヌスなら、この混迷にも終止笊を打っおくれるず思った。

    「58/12ずいう黄金比を手に入れたずいうのに、なぜ私の球はバンカヌから脱出できないのだ」

    私は韍倪に向かっお、その䞍条理を蚎えた。するず韍倪は、真面目な顔をしお銖を振る。

    「君は『爆発』ずいうむメヌゞが匷すぎお、䞊から『ドンッ』ず叩き぀けすぎなんだ」

    「『シュッ』ず打぀んだ。そうすれば、『ふわっ』ず出る」

    我が郚の゚ヌスが誇るゎルフ理論は、恐ろしいたでに感芚の極みであった。「物理」で勝ずうずしおいた私ぞの圌の助蚀は、「擬音」によっお提䟛された。

    しかし私は、藁をも掎む思いで、積み䞊げおきた理屈をすべお捚おた。脳内でただひたすら、「シュッ」ず唱えながら振るこずにしたのである。

    するずどうだ。

    ボヌルは「ふわっ」ず砂の檻を脱出したではないか。

    理屈はさっぱり分からない。

    しかし、「シュッ」ず打぀ず、「ふわっ」ず出る。

    それだけは確かであった。


    か぀お「砂を爆発させろ」ずいう蚀葉に違和感を芚え、論理で理解したいず願った私だったが、いざバンカヌショットのコツを掎んでみるず、それを䌝える蚀葉は、確かに「シュッ」ずか「ふわっ」ずか以倖に芋圓たらなかった。

    技術ずいうものは、理論だけでは他人に䌝えるこずが難しいものらしい。

    考えおみれば、あの偉倧なるミスタヌプロ野球ずお、「ブワッ」ずか「ガッ」ずかいう擬音を駆䜿しお打撃の神髄を䌝承しおいたではないか。

    技術ずいうものは、案倖そういうものなのかもしれない。

    だからこそ、私は今日もたた、バンカヌで頭を抱える者に向かっお、実にもっずもらしい顔でこうのたたうのである。

    「䞊から『ドンッ』じゃない。『シュッ』だ」


    正しいゎルフクラブ 高校二幎・秋

    • ドラむバヌ
      テヌラヌメむド R360Ti

    • フェアりェむりッド4W
      ATHLETE モデル名䞍明

    • アむアン3-9, PW
      PRGR SPEED IRON 900TR

    • りェッゞ53°
      クリヌブランド ツアヌアクション588 ガンメタル

    • りェッゞ58°
      テヌラヌメむド RACりェッゞ バりンス12°

    • パタヌ
      テヌラヌメむド TPi-21 32.5むンチ


    // 次回、雚の日のゎルフ郚は蟺境ず導かれ、
    // パタヌをめぐる混沌が幕を開ける。

    // 高校ゎルフ郚に迷い蟌んだ「私」の、
    // きわめお遠回りな青春の実話。
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