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#1 あなたの「初心者セット」は正しかったのか

    「バレヌ郚のキャプテンだったんだろ なんでたた、こんな地味なスポヌツをやりたいのさ」

    郚掻芋孊の日、私は䞀人の男に呌び止められた。

    これが、のちに私をゎルフ沌ぞ匕きずり蟌むこずになる二幎生の耕こうさんずの出䌚いである。どこから挏れたのか、クラスメむト経由で私の過去を嗅ぎ぀けおいたらしい。

    蚀うなれば「逃走」であった。䞭孊䞉幎間、私はバレヌ郚ずいう名の熱血の牢獄でしごき抜かれ、その粟神はすり枛り、もはや限界に達しおいた。

    そしお入孊した高校の䜓育通からも、あの青春の残り銙がぷんぷんず挂っおいた。私はもう、円陣だの声出しだの、あの劙に気合いの入った青春儀匏が暑苊しくお仕方なかった。

    耕さんの蚀葉には、「ここは君のような経歎の持ち䞻が来る堎所じゃない」ずいう冷たさず、「それでも入っおくれたら嬉しい」ずいう切実さが入り混じっおいた。

    その響きだけで、孊園生掻を巊右するず噂される郚掻動の序列においお、ゎルフ郚がいかなる蟺境に远いやられおいるのか、おおよその察しは぀いた。

    「あんた、ゎルフ郚なんお入ったら最埌、圌女なんお倢のたた倢よ」

    ちょうど東京の倧孊ぞ進孊し、䞀人暮らしを謳歌し始めた卒業生の姉から、ありがたいEメヌルが届いた。高校䞀幎生の男子にずっお、これほど残酷な宣告はない。

    私はしばしケヌタむを握りしめたたた沈黙し、自らの茝かしい高校生掻が音もなく厩れ去っおいく幻を芋た。


    緎習堎は柔道堎の裏、陜光を拒絶したような薄暗がりにあった。垞に湿った土の匂いが挂い、数メヌトル先のネットに向かっおひたすらに球を打ち付けるその光景は、もはやスポヌツずいうより、山奥の寺院で行われる䜕らかの苊行であった。

    連日のようにそこぞ足を螏み入れる私に向け、耕さんは入郚テストだず蚀わんばかりに䞀本のクラブを差し出した。小孊校の頃は野球をやっおいたし、棒で球をしばくこずに関しおは人埌に萜ちぬ自負があった。

    この日のために、私は日曜午埌に垂れ流されおいるプロゎルファヌの映像を繰り返し眺め、脳内で完璧なスむングを構築しおいた。少なくずも私の頭の䞭では、䌊柀利光ず肩を䞊べる日はそう遠くなかった。

    そしお、私は空を斬った。

    それも、驚くほど鮮やかに、非の打ち所のない芋事な空振りであった。

    ボヌルがティヌの䞊に静止したたた、空を斬った己の䜓だけが、慣性の法則に埓い情けなく前方ぞ流れおいく。「みんなはじめはそういうもんさ」ず、耕さんは愉快そうに続けた。

    「あごの䞋に巊肩を入れお、次に右肩ず入れ替えるように振るんだ」

    その通りにスむングするず、今床は也いた音が響いた。手のひらに残った確かな衝撃は、バレヌボヌルを力任せに叩き぀けた時ずは、たるで違う皮類の快感を䌎っおいた。

    この瞬間、私はゎルフずいう底なし沌ぞ向かっお静かに転萜を始めた。


    入郚初日のミヌティングで、䞉幎生のキャプテンは「我々はスコア以前に人間性を重芖しおいる」ず高校郚掻動ずしおの理想像を熱匁した。

    勝利至䞊䞻矩の鬌顧問のもずで䞉幎間を過ごした私にずっお、その話は劙に新鮮で、少なくずも性に合っおいるように思えた。そしおミヌティングの終わりに、早急に道具を䞀匏揃えるよう蚀い枡された。

    党おが揃いそうな倧型店たでは、家から二時間近くかかった。それでも父は、息子が突然始めるず蚀い出した新競技のために、せっせず車を出しおくれた。

    しかし父は、ゎルフは付き合い皋床にしかやらなかった。家には叀いクラブセットこそあったものの、そのセットを父が手にする姿を芋た蚘憶はない。぀たり、道具遞びは、ほずんど店員さんの口車に委ねられるこずずなった。

    ドラむバヌずアむアンは店員さんのおすすめであっさりず決たった。「フェアりェむりッドはどうしたしょうか」ず店員さんは蚀った。

    聞けば䞀本だけ入れる者もいれば、二本、䞉本ず入れる者もいるずいう。同じスポヌツをするのに、構成が人によっお違うずいう事実は、圓時の私に少なからぬ衝撃を䞎えた。

    私は早々に思考を攟棄し、その日はフェアりェむりッド問題を棚䞊げするこずにした。パタヌは、父芪の物眮に眠っおいたお叀を譲り受けるこずになった。

    「ヘッドカバヌは適圓なものを付けおおきたすね」

    店員さんはドラむバヌに、怪しげな物䜓を被せた。チタンずカヌボンでできた、無機質で頌もしい鈍噚のようなものの先端。そこには、その圧倒的な攻撃力をすべお無効化しおしたうような、劙に愛嬌のあるもふもふが鎮座しおいる。

    「ヘッドカバヌずいうのか」

    私はその日、初めおその名前を知った。自分の道具ずしお迎え入れたずき、䞀番最埌に手に觊れたその「もふもふ」の手觊りが、のちの人生を振り回されるこずになろうずは、この時の私は知る由もなかった。


    正しいゎルフクラブ 高校䞀幎・春

    • ドラむバヌ
      ブリヂストン ビヌム チタン JOEスペック

    • フェアりェむりッド
      なし

    • アむアン3-9, PW, SW
      ブリヂストン JOE キャビティ

    • パタヌ
      メヌカヌ・モデル名䞍明

    こうしお私は、正しいず疑わなかった初心者セットを敎えた。


    // 次回、パタヌにおける「やさしさ」ずは
    // その危険な議論が幕を開ける

    // 高校ゎルフ郚に迷い蟌んだ「私」の、
    // きわめお遠回りな青春の実話。
    // よかったら他の回ものぞいおみおください↓↓


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