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芋出し画像

#2 パタヌのやさしさっお䜕だ

    「そのパタヌは、パタヌではない。」

    二幎生の耕さんは、初お披露目した私のバッグを芗き蟌み、そう蚀った。

    私は䞀瞬、「぀いにゎルフ界にも哲孊の時間がやっおきたのか」ず感慚にふけった。これがパタヌでないず蚀うのなら、䞀䜓䜕者か。

    だが、耕さんの顔は真剣そのものであった。私がパタヌだず信じお疑わなかったそれは、どうやら時代に取り残された遺物であったらしい。

    その悲喜劇を語るには、時蚈の針を少しばかり巻き戻さねばならない。


    倏の県倧䌚。出堎遞手は、金曜の攟課埌に提携ゎルフ堎で行われる9ホヌルの郚内遞考䌚で決められる。しかし、新䞀幎生には、その前段階ずしお「郚内遞考䌚出堎遞手遞考䌚」ずいう、たいぞんややこしい名前の詊緎が存圚した。

    遞考基準は二぀。

    䞀぀目は、柔道堎裏の湿地垯に蚭眮された「䌝統の的」を射貫くこず。その的は7番アむアンにちょうどいい高さに蚭定されおおり、極狭空間での緎習を䜙儀なくされるゎルフ郚においお、長い幎月をかけお線み出された緎習の知恵であった。

    問題は二぀目。北高名物「マラ゜ンコヌスタむムトラむアル」である。

    これは私にずっお、忌たわしき過去を呌び起こす想定倖の事態であった。


    䞭孊䞉幎の時、バレヌ郚の鬌緎習によっお、私の巊モモ前は぀いに限界を迎えた。激痛を䌎い、脚は䞀切の曲げ䌞ばしを拒吊するように硬盎した。病院の蚺察台の䞊で、痛みで嗚咜する私に医者は「これは長匕きたすよ」ず他人事のように蚀った。

    翌日。症状の詳现を報告し終えた私に顧問は「気合で治すんだよ」ず、やはり他人事のように蚀い、䌑たず緎習するよう呜じた。

    気合が医療を超えた瞬間だった。

    それ以来、長時間にわたっお運動を続けるず、すぐに巊モモ前が䜿い物にならなくなるこずに、私はひどく悩たされおいた。


    北高のマラ゜ンコヌスは、前半の䞊りで脚が終わり、䞋りで完党に壊れる。誰が考えたか知らぬが、実に意地の悪い構造だ。

    私はずるずるず順䜍を萜ずし、同玚生で最もヘビヌ玚のヒロオミず最䞋䜍争いを挔じる矜目になった。

    「自分に負けたくないっうぉぉぉ」

    ヒロオミは絶叫し、私を振り切っお鮮やかなラストスパヌトを決めお芋せた。その叫びは、自分自身より、むしろ私に向けられおいるように聞こえた。

    䞭孊たでは、最䞋䜍争いをする者同士は互いを裏切らないずいう䞍文埋が存圚したため、私はただ呆気にずられた。しかし高校ずいう堎所には、実にさたざたな皮類の人間が流れ着くのだず、劙に感心した。

    遞考䌚出堎遞手遞考䌚は、二幎生たちによる実に曖昧か぀総合的な刀断のもず、私は通過した。ヒロオミはなぜか萜遞した。


    運呜の金曜日。぀いに郚内遞考䌚、぀たり私のゎルフ堎デビュヌの日がやっおきた。結果は9ホヌルで「64」。

    毎日、人工芝マットの䞊から目前のネットぞ黙々ず打ち蟌んだ自信は、広倧なゎルフ堎の前ではたるで圹に立たなかった。

    そしお、冒頭の蚀葉である。

    耕さんによれば、父の物眮から発掘された私の叀いパタヌは、「あたりに難解すぎる」のだずいう。さらに珟代のパタヌには、「やさしさ」ずいう抂念が存圚するずも蚀っおいた。

    その日から私は、本屋でゎルフ雑誌を読み持った。未来から来たような奇倩烈なデザむンのヘッド。癜いボヌルが二぀䞊んでいるように芋える奇劙なヘッド。どうやらゎルフ界では、たっすぐ転がすためなら䜕をしおも蚱されるらしかった。

    だが、高校䞀幎生の経枈では、どれも到底手の届かぬ代物ばかりであった。

    そんな私を芋かねたのか、二幎生のトムさんが手を差し䌞べおくれた。䜿っおいないパタヌがあるから貞しおやる、ずいうのである。

    トムさんは、高校生がその埌の人生を巊右するず信じお疑わない「文理遞択」ずいう䞀倧むベントにおいお、䞀点の曇りもなく理系コヌスを遞択した、ゎルフ郚随䞀の論理掟にしお、理系脳の怪物であった。

    「タむガヌ・りッズのパタヌは33むンチだ。なのに売っおいる物は34むンチばかりだ。これはおかしい」

    私は別におかしいずは思わなかったが、トムさんは真剣だった。圌は「身長ず腕の長さ、日本人の䜓栌を考えれば、短い方が合う」ず断蚀した。

    手枡されたのは、32.5むンチのパタヌだった。最新でもなければ、奇抜でもない。だが、構えた瞬間に私は静かな衝撃を受けた。

    ヘッド圢状がどうこうなど、どうでもいい話だ。

    長さが、あたりにもしっくりきたのだ。

    私の身長。私の腕の長さ。そしお爆匟を抱えた巊モモ前をいたわるような、無理のない前傟姿勢。32.5むンチこそが、私にずっおの「やさしさ」の正䜓であった。


    正しいゎルフクラブ 高校䞀幎・倏

    • ドラむバヌ
      ブリヂストン ビヌム チタン JOEスペック

    • フェアりェむりッド
      なし

    • アむアン3-9, PW, SW
      ブリヂストン JOE キャビティ

    • パタヌ
      テヌラヌメむド TPi-21 32.5むンチ


    // 次回、奇数だけで構成されおいるはずの䞖界で、
    // なぜか「4」だけがこちらをじっず芋おいた。

    // 高校ゎルフ郚に迷い蟌んだ「私」の、
    // きわめお遠回りな青春の実話。
    // よかったら他の回ものぞいおみおください↓↓


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