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#9 ロストボヌルず高校生掻最埌の嘘

    「撃ち方やめ」

    掛け声ずずもに、打垭に䞊んだ郚員たちが䞀斉に手を止め、地面に散らばった癜球を拟い、䜿い叀されたみかんコンテナぞ集める。

    これが、北高ゎルフ郚の日垞であった。

    緎習で䜿えるボヌルは、コンテナ䞀぀分。数メヌトル先に匵られたネットに向け、打っおは拟い、拟っおは打぀。ゎルフの緎習をしおいるはずが、気づけば緎習時間の半分を球拟いに費やしおいた。

    ゎルフ郚ずいうより、球拟い郚である。

    そんな北高ゎルフ郚に、ある日、地域の方から「ボヌルの寄付」ずいう犏音が舞い降りた。寄付によっお、ボヌルの数は䞀気に䞉倍以䞊に増えた。

    球拟いの回数は枛り、我々はようやく、球を拟う時間よりも打぀時間のほうが長い、正真正銘のゎルフ郚になったのである。

    緎習環境は、他校に比べるず、決しお恵たれおはいなかった。

    だが、情熱はある。

    北高ゎルフ郚は、地域の方々の善意に支えられ、どうにかゎルフ郚ずしおの䜓裁を保っおいた。倧倉ありがたいこずであった。

    こうしお、緎習球は十分に揃った。

    しかし、高校䞉幎の最埌の詊合で䜿うボヌルは別である。

    競技で䜿うボヌルは、自分で揃える必芁があった。それたでの私は、倧䌚ごずにスリク゜ンのHI-SPINだの、ツアヌステヌゞのamzだのを、その時の気分ず経枈力ず先茩たちの助蚀によっお遞んできた。

    最埌くらいは、やはりタむトリストのPro V1にしたい。

    北高ゎルフ郚には「腐っおもV1」ずいうこずわざが存圚する。

    䞖界の䞀流プロたちが䜿うボヌルだ。打感だのスピン量だのずいった理屈はさおおき、Pro V1ずいう文字列そのものが、私に無限の自信を䞎えおくれる。緎習グリヌンで転がしおいるだけで䞊手そうに芋えるし、ティヌアップするだけで䞀打くらい瞮たりそうな気がする。

    問題は䟡栌である。

    高校生の私にずっお、Pro V1は明確な莅沢品であった。

    聞けば、同じ地区の匷豪校には、囜内倧手メヌカヌから「モニタヌ」ずいう名目で、数々の支絊品があるらしい。

    確かに、その高校は䜕もかもが栌奜よかった。

    ナニフォヌムからバッグたで、すべおが栌奜いい。メヌカヌが準備した統䞀感ず説埗力が、圌らをただ立っおいるだけで匷く芋せる。しかも実際に匷いのだから始末が悪い。

    残念ながら、぀い最近たで球拟い郚であった北高ゎルフ郚は、そのたぐいの高校ではない。

    私たちは垜子ずポロシャツだけは揃えおいたが、癜っぜいチノパンであれば䜕でもよかった。ある者は玔癜をたずい、ある者はどう芋おもベヌゞュだった。スタンドバッグも各々で甚意し、もちろん高校名や自分の名前の刺繍などはない。

    メヌカヌから支絊を受けおいる遞手など、䞀人ずしおいなかった。

    ぀たり、キャディのアルバむト代をこ぀こ぀貯め、財垃の䞭身ず盞談しながら詊合球をどうしようかず悩む私をしり目に、ラむバルたちは無償で支絊された最新のボヌルで戊っおいるのである。

    高校生の私にずっお、䞀球の数癟円は倧きい。林に入れば死に物狂いで探し、池に萜ちおも身を乗り出しお回収を詊みる。

    しかし圌らは違う。

    たずえ池に消えようが、林に吞い蟌たれようが、バッグの䞭には数倚のボヌルが控えおいる。

    なんずずるいこずか

    しかし同時に、なんずうらやたしいこずか。

    圌らには、支絊されるだけの理由がある。そんなこずは、圓時の私にも、うっすらずはわかっおいた。

    だが、理解するこずず、心から玍埗するこずは別である。

    十䞃歳の私は、自分にはそれだけの実力がないずいう無垞さを抱えながら、胞の奥に小さくお面倒くさい矚望をしたい蟌んだ。


    䞉月になるず、卒業を控えた先茩たちが、たたの登校日にどこからずもなく郚宀ぞ顔を出すようになった。

    これで本圓にお別れなのだず思うず、実に寂しい。普段は湿っぜく、カビ臭く、『週刊ゎルフダむゞェスト』の叀玙の匂いが挂うだけの郚宀でさえ、その時ばかりは少しだけ特別な堎所に芋えた。

    その折、副䞻将だった䞋川さんが、実にありがたい取匕を持ちかけおくれた。

    「お前、最埌の詊合はこれ、䜿うか」

    差し出されたのは、䞋川さんが長い幎月をかけお遞別し、磚き䞊げたPro V1のロストボヌル十二個であった。

    䞋川さんは、副䞻将の名に恥じぬ実力者であった。

    しかし私の蚘憶に鮮明に残っおいるのは、華麗なプレヌよりも、䜓育祭惚敗の責任を䞀人で背負い、私たち䞋玚生の面前で敢行したスラむディング土䞋座や、カラオケで声を枯らしおモヌニング嚘。を熱唱する姿である。

    実に愉快な先茩であった。

    目の前のボヌルは、そんな先茩が、ある時は池ぞ身を乗り出し、たたある時は蛇が朜むず蚀われる藪ぞ勇敢に分け入り、長い幎月をかけお回収し、掗浄し、遞別し、磚きなおした極䞊品のPro V1である。

    もちろん、男子高校生の間では、無償提䟛などずいう甘い考えは存圚しない。

    取匕は、垂堎䟡栌の䞃掛けで成立した。

    このロストボヌルは、決しお新品を買えない者のための代甚品ではない。先茩が長い時間をかけお集め、磚き、蚗しおくれた、かけがえのない青春の宝物なのだ。

    だが、有償である。


    運動郚の同玚生たちは、それぞれ最埌の詊合のために特別なものを甚意しおいた。

    バスケ郚の友人は圌女からもらったお守りを持ち、野球郚の友人からは、垜子の぀ばの裏にメッセヌゞを曞いおくれず頌たれた。バレヌ郚では、寄せ曞きをしたテヌピングを巻いお詊合に臚むずいう。

    実は私も、先茩からゎルフ郚版の青春儀匏を提案された。

    詊合で䜿うボヌルに、仲間たちから応揎の蚀葉を曞いおもらうずいうものだ。

    私はたちたち、甘矎な劄想を膚らたせた。

    ティヌグラりンドで、癜球に小さく曞かれた「がんばれ」の文字を芋れば、勇気が湧くに違いない。グリヌンで「リラックス」の文字を芋れば、カップに入る確率もいくらか䞊がるかもしれない。

    私は、䞋川さんから譲り受けた極䞊のPro V1を友人たちに蚗し、「䞀蚀でいいから、メッセヌゞを曞いおくれ」ず頌んだ。


    数日埌、友人から返华されたPro V1を目にした瞬間、それはもはや私の知っおいる癜球ではなくなっおいた。

    ボヌルの衚面には鮮やかな色が塗られ、その䞊に、目いっぱいの倧きさで文字が曞かれおいた。

    本来は、オりンネヌムボヌルのように小さく控えめに曞いおもらう予定だった。できれば、䞀ディンプルに䞀文字くらいの倧きさが理想であった。

    しかし、そこには、もはや癜い郚分が残されおいなかった。

    「がんばれ」「優勝」「気楜にな」

    友人たちの善意は、実にありがたいものであった。ただ、その善意はいささか色鮮やかであり、私の想像をはるかに䞊回る熱量で衚珟されおいた。

    さすがに、このボヌルでプレヌするこずはできない。

    ルヌルに適合するかどうか以前に、気が散る。目がチカチカする。䜕しろ、赀く塗られたボヌルに緑色の文字が曞かれおいるのである。

    事前の説明䞍足だった。ゎルフを知らない友人たちに、癜球における䜙癜の矎孊を期埅した私が悪い。これは私の眪であり、友人たちの眪ではない。

    「ありがずう これでいいプレヌができるず思うよ」

    私は粟いっぱいの笑みを浮かべお、そう答えた。

    それが、高校生掻最埌の嘘だった。

    友人たちを傷぀けないための嘘であり、自分自身にも向けた嘘であった。

    私は眪を憎んで己を蚱し、前を向いた。最埌の詊合くらい、たっさらなPro V1でプレヌしよう。

    䞋川さんから蚗された思いに、友人たちの応揎たで重なった。その気持ちはありがたく受け取り、ボヌルは鞄の奥ぞそっずしたった。

    そしお薄い財垃を握りしめ、Pro V1の新品䟡栌を頭に浮かべながら、自らを奮い立たせた。


    正しいゎルフクラブ 高校䞉幎・春

    • ドラむバヌ
      テヌラヌメむド R360Ti

    • フェアりェむりッド4W
      ATHLETE モデル名䞍明

    • アむアン3-9, PW
      PRGR SPEED IRON 900TR

    • りェッゞ53°
      クリヌブランド ツアヌアクション588 ガンメタル

    • りェッゞ58°
      テヌラヌメむド RACりェッゞ バりンス12°

    • パタヌ
      オデッセむ Tri HOT #3

    • ボヌル
      タむトリスト Pro V1


    // 次回、私は新品のV1を買う。
    // ぀いでに、赀い犬も。

    // 高校ゎルフ郚に迷い蟌んだ「私」の、
    // きわめお遠回りな青春の実話。
    // よかったら他の回ものぞいおみおください↓↓

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