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【ねこドキュメンタリヌ】ブラックリスト第11話

    䞑䞉぀時うしみ぀どきの譊告

    ▶ はじめお読む方ぞ 第0話倧郜䌚の神瀟に集う十䞉匹のねこたち
    https://note.com/noraneko_kaigi/n/n69e14842e908
    ▶前の話 第10話善意の行き止たり
    https://note.com/noraneko_kaigi/n/nd5705869511a
    ▶ 党話ガむド 『のらねこ䌚議は䞑䞉぀時に』https://note.com/noraneko_kaigi/n/n46b13539d1f7

    【この蚘事に぀いお】神瀟ずいう小さな共同䜓で、善意は少しず぀支配ぞず姿を倉えおいく。九十二歳の媌おうなから届く毎日の「お願い」、繰り返し投げ捚おられる湯たんぜ、そしお「ブラックリスト入り」ずいうひず蚀――。人のいない䞑䞉぀時うしみ぀どきだけ自由を取り戻すねこたち。その静かな日垞の裏で、共同䜓の結束は音もなく綻ほころび始めおいた。玄3400字読了時間 箄5〜7分

    春が近づいおいた。
    それでも高岩悠矎子たかいわゆみこ仮名からの
    連絡は止たらなかった。
    「湯たんぜのお湯、替えおくださる」
    「フヌドの空き猶を片付けおくださらない」
    「マリンが食べ終わったら、お皿もお願いね」
    頌み事ずいうより指瀺だった。
    しかも、その口調に遠慮はなかった。
    䞍思議なこずに、高岩悠矎子が境内に珟れるのず同じ時間垯に、
    偶然を装った、䜐久斗根接子さくずね぀こ仮名の姿も芋られるようになっおいた。
    毎晩の日課のように、高岩からのLINEも届いた。
    「湯たんぜ、今日はどこに眮いたの」
    その日の倜に蚭眮した堎所を䌝える。
    翌朝には消えおいる。
    公民通や寺の畑を探し回る。
    投げ捚おられおいる湯たんぜを回収し、謝眪し、たた蚭眮する。
    そんな日々が䞉か月近く続いた。 

    「もう勘匁しおください」

    ずうずう堪忍袋の緒が切れた私は、高岩悠矎子に蚀った。
    「高岩さん、もう勘匁しおください」
    高岩は悪びれる颚もなく、䞍思議そうな顔をしおいた。

    「ずっず、なっちゃん甚の湯たんぜの
    正確な堎所をお䌝えしなかったら、
    翌朝も眮いた堎所にありたした」
    少し間を眮いお続けた。
    「でも、正盎にお䌝えしたマリンの方だけ、
    投げ捚おられおいたした」

    その事実を告げおも、高岩が驚くこずも動じるこずもなかった。
    「たぁ、そんな悪党、神様が蚱しちゃおかないわね」
    そしお続けた。
    「公民通には私も謝りに行くわ。
    菓子折り、ご甚意いただけないかしら」

    もはや蚀葉が出なかった。
    この時点で、私の䞭では䜕かが終わっおいた。
    「もう春ですから、湯たんぜは必芁ないですね」
    高岩は、少し陰りのある笑みを浮かべながら、
    埮劙に頷うなずいた。

    䞉点杖

    翌日のこずだった。
    お寺の䜏職の畑に、芋芚えのある杖が投げ蟌たれおいた。
    黒色で先端が䞉又に分かれた䞉点杖。
    あの時、高岩悠矎子が倧隒ぎし、私に探させた杖だった。
    高岩の到着を埅っお声をかける。
    「お寺さんの畑に、高岩さんのものらしき杖がありたすけど」

    高岩は顔色ひず぀倉えずに蚀った。
    「でも、もう新しい杖が私にはあるから」
    その声は少し䞊ずっおいた。
    「お寺の敷地ですよ。
    䜏職さんにお詫びしおきた方がいいず思いたす」
    高岩は少し考えおから答えた。
    「昔の飲み仲間に檀家だんかさんがいるのよ。
    その人にお願いしようかしら」

    話にならなかった。
    私はひずりで寺ぞ向かい事情を説明した。
    䜏職は自ら畑ぞ入り、泥だらけになった䞉点杖を拟い䞊げ、
    高岩悠矎子ぞ手枡した。
    高岩は明らかに動揺しおいた。
    肩は小刻みに震え、声は今にも消え入りそうだった。

    「䜏職、あの、あの、ありがずうございたす」
    「䜏職、あの  申し蚳ありたせん」
    たるで䜕かに懺悔ざんげするような呟぀ぶやきだった。
    九十二歳のなりふり構わぬ姿を前にしお、
    私は、ひず぀の問いだけが頭を離れなかった。
    高岩悠矎子ずいう老人が守ろうずしおいたのは、
    マリンだったのか。
    それずも、自分の居堎所だったのか。

    答えは最埌たで分からなかった。

    䞑䞉぀時うしみ぀どきだけの楜園

    この頃から私は、深倜の神瀟ぞ通うようになった。
    䞑䞉぀時の境内は、別䞖界だった。
    人間がいない。
    監芖もない。
    噂話もない。
    ねこたちは自由だった。
    冬は枯葉の山に穎を掘り、その䞭で眠る。
    倏は颚の抜ける居堎所を芋぀けお暪たわる。
    人間たちがいない時間だけが、
    圌ら本来の暮らしだった。

    しかし、その幎の倏は過酷だった。
    連日䞉十六床を超える猛暑日ずなり、
    境内は深倜になっおも熱颚に包たれおいた。
    気づけば、残るねこたちのほずんどが
    十歳を超えおいる。最高霢だったチャビは姿を消し、
    長幎チャビに寄り添っおいた黒猫キキも、
    い぀しか境内からいなくなった。
    誰かが匕き取ったずいう噂だけが残ったが、
    真盞は誰にもわからなかった。

    その幎の十䞀月、口腔内扁平䞊皮がんの
    緩和治療を続けおいたプリンも静かに呜を終えた。

    人間たちの思惑ずは別に、
    ねこたちの時間もたた、確実に流れおいた。

    だが、人間たちの動きも止たっおはいなかった。
    この頃から、ずきどき䜓栌のいい男性が
    境内を巡回するようになった。
    深倜の防犯パトロヌルなのだろうず思い、
    私は特に気にも留めなかった。

    ――あの頃は、たさか自分に向けられたものだずは
    思っおもいなかった。

    ブラックリスト

    ある日の䞑䞉぀時のこず。
    ねこたちがく぀ろぎ始めたずきだった。
    石段の䞋から、ゆっくりず足音が近づいおきた。
    䜐久斗根接子だった。

    昌間よりもさらにパ゜ロゞカルな異質さず
    柱よどんだ空気をたずっおいた。

    その気配を誰よりも先に察したのは、癜ねこのハクだった。
    ハクは軜く䜐久斗の足元ぞ近づき、
    陰から芋぀めおいた数匹の仲間ず芖線を亀わす。
    そしお、䜕かを確認し合うように、本殿裏ぞ消えおいった。
    その䞀連の動きには、息を呑むほどの無駄のなさず、
    冷ややかなたでの芏埋があった。
     
    私は思わず蚀った。
    「トラブルになるのを避けお、この時間に来おいるの。
    そのトラブルの元が来たら、意味がないでしょう」
    䜐久斗は䞍適な笑みを浮かべた。
    「あなたね、この神瀟のブラックリスト入りしおいるのよ」
     
    「――やっぱりね。気が枈んだなら垰れば」
    しかし、䜐久斗根接子は垰らなかった。
    ねこを撫でるわけでもない。
    逌をあげるわけでもない。
    ただベンチに座り続けおいた。
    その間に、プッチ、マル、マリン  。
    ねこたちは次々ず私の足元ぞ集たっおきおいた。
    私はもう䞀床蚀った。
    「ねこたちの食欲が萜ちるから、垰っおくれない」

    揺らぎ

    そのずきだった。
    䜐久斗はぜ぀りず、本音を話し始めた。
    「なぜ、そんなにねこたちに尜くすの」
    そしお続けた。
    ねこは倖より家の方が安党ではないか。
    戞䞭恵矎子ずなかえみこ仮名ずは、
    その考えに食い違いがあるこず。
    共同䜓の䞭にいおも、考えは決しおひず぀ではないこず。
    ぜ぀り、ぜ぀りず胞の内を明かしおいった。

    私は少し驚いた。
    共同䜓は、䞀枚岩ではなかった。
    あれほど匷固に芋えおいた結束にも、
    少しず぀綻びが生たれおいた。
    静かな境内で、
    その音だけが、確かに聞こえ始めおいた。

    チャビが姿を消し、キキがいなくなり、
    プリンが静かに呜を終えた。
    神瀟に残るねこは、九匹になっおいた。
    
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     │ 共同䜓の境界
     https://note.com/noraneko_kaigi/n/nade24275d0fe

    ▶はじめお読む方ぞ党話ガむド
    『のらねこ䌚議は䞑䞉぀時に』党話ガむド
    https://note.com/noraneko_kaigi/n/n46b13539d1f7
     
    ▶本線䞀芧マガゞン
    【ねこドキュメンタリヌ】『のらねこ䌚議は䞑䞉぀時に』本線
    https://note.com/noraneko_kaigi/m/m36f72d3d4959
    ▷関連蚘事
    「のらねこは誰のものか」――その問いを、5カ囜の制床ず䟡倀芳の違いから芋぀め盎した関連蚘事です。 https://note.com/noraneko_kaigi/n/n550d560a8ea2
    「ねこは、い぀から“瀟䌚装眮”になったのか」――ねこが孀独や共同䜓の空癜を埋める存圚になっおいるこずを考えた関連蚘事です。
    https://note.com/noraneko_kaigi/n/n1e301059eb8d
     
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    神瀟に集う13匹のねこを入口に、孀独・承認欲求・善意ず支配を描く連茉『のらねこ䌚議は䞑䞉぀時に』。初めおの方は党話ガむドからどうぞ。線集・広告ディレクタヌ。講釈垫・政治家、䌊藀痎遊を曟祖父に持぀。https://www.instagram.com/noranekokaigi/

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