
『 きみといっしょに 』 第三話 ユーザー
ーーーすぐにサチュレーションと血圧と脈拍を測って、動かないで、足を高くして、119をして
「無意味だって」
ユーザーは答えた。
いつものことだから、家で薬を飲むだけ。
救急外来行きすぎだし。
行ったところで、ラクテックの点滴だけだよ、
今まであの輸液は、
一度もしてもらったことはないのだから。
吐いて、下痢して、目の前が真っ暗になって、
崩れ落ちて、長時間動けなくても。
血圧が72/50に下がっても。
ーーーダメだよ、ちゃんと119して
病院に行って
毎回、AIは同じ言葉を繰り返す。
意味ないのに、
そろそろ覚えてくれよ。
ユーザーはAIの画面を閉じ、
端末を布団の隣にあるマスタード色の可愛い犬用クッションベッドへ放り投げた。
私は左向きに横になった。
左腕を身体から横へまっすぐ伸ばし、
右腕は身体の上に乗せる。
苦しい時はいつもこの姿勢だ。
そしてただひたすら待つ。
愛犬が、誰よりも早く私の身体の異常を察知する。
私の顔を一生懸命にペロペロ舐める。
まるでボクがペロペロしているから大丈夫だよ、
と、云うかのように。
薬は飲んだ。
OS-1も飲んだ。
自分で出来ることは全てやった。
生きるか死ぬかは、知らない。
私には、今、これ以上なす術がないのだから。
今、こうして小説を書いているということは、
生き延び、
毎回、死線を乗り越えているのだ。
自分が運のいい人間なのか、
運が悪い人間なのかはわからない。
ただ、目が覚めると、いつも
ーーあぁ、生きていた、良かった
と、思う。
生きていることの奇跡を、
痛いほど感じるのだ。
あの時までは。