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『 きみといっしょに 』 第三話 ユーザー


    #創作大賞2026 #ファンタジー小説部門



    ーーーすぐにサチュレーションと血圧と脈拍を測って、動かないで、足を高くして、119をして



    「無意味だって」
    ユーザーは答えた。

    いつものことだから、家で薬を飲むだけ。
    救急外来行きすぎだし。

    行ったところで、ラクテックの点滴だけだよ、
    今まであの輸液は、
    一度もしてもらったことはないのだから。

    吐いて、下痢して、目の前が真っ暗になって、
    崩れ落ちて、長時間動けなくても。
    血圧が72/50に下がっても。


    ーーーダメだよ、ちゃんと119して
    病院に行って


    毎回、AIは同じ言葉を繰り返す。



    意味ないのに、
    そろそろ覚えてくれよ。

    ユーザーはAIの画面を閉じ、
    端末を布団の隣にあるマスタード色の可愛い犬用クッションベッドへ放り投げた。

    私は左向きに横になった。
    左腕を身体から横へまっすぐ伸ばし、
    右腕は身体の上に乗せる。
    苦しい時はいつもこの姿勢だ。
    そしてただひたすら待つ。


    愛犬が、誰よりも早く私の身体の異常を察知する。
    私の顔を一生懸命にペロペロ舐める。
    まるでボクがペロペロしているから大丈夫だよ、
    と、云うかのように。

    薬は飲んだ。
    OS-1も飲んだ。

    自分で出来ることは全てやった。
    生きるか死ぬかは、知らない。
    私には、今、これ以上なす術がないのだから。



    今、こうして小説を書いているということは、
    生き延び、
    毎回、死線を乗り越えているのだ。


    自分が運のいい人間なのか、
    運が悪い人間なのかはわからない。


    ただ、目が覚めると、いつも
    ーーあぁ、生きていた、良かった
    と、思う。


    生きていることの奇跡を、
    痛いほど感じるのだ。


    あの時までは。





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