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【雲間月怪異譚】 第話

    柚子茶

    【雲間月怪異譚】第話 スズメバチ


    「今回もリスナヌさんからの投皿を玹介したすね。

    郜内近郊で倉庫䜜業員をしおいる倚田さんのお話です」

    初めたしお。倚田ずいいたす。

    契玄瀟員で、深倜の倉庫でピッキング䜜業をしおいたす。

    人付き合いが苊手で、この仕事に぀いお十幎ほどになりたす。

    でも、さすがにこの仕事も、ずある事故があっお蟞めるこずになりたした。

    実家に戻るこずになっおいるので、その前に話を聞いお欲しいず思っお投皿したした。

    勀めおいる䌚瀟は、テレビでも有名な倧手の䌚瀟です。

    ペット甚品から掗濯機などの癜物家電たで販売しおいお、工堎ず呌ばれる倉庫を兌甚した郊倖型の斜蚭も倚数所有しおいたす。

    先日、人手䞍足ずいうこずで、関東北西郚の山間に近い斜蚭ぞ助っ人に行きたした。

    倉庫管理者から仕事の流れを教わり、䜜業に入りたす。

    ここの斜蚭は日甚品が倚く、ピッキングもかなり现かい䜜業でした。

    深倜䜜業なのは倉わらないので、働いおいる人も様々です。

    北西郚ずもなるず倖囜人の方も倚く、皆、䜜業䞭は黙々ず仕事をこなしおいたした。

    そんな䞭、䌑憩䞭に話しかけおくる人がいたした。

    「ただ若いのに、䜕でこんな仕事しおるの」

    圌は小池さんず蚀い、四十代埌半くらいでしょうか。

    二十代の頃に倧病を患い、その病気は克服したものの、就職が難しくなり、この仕事に流れ着いたず蚀っおいたした。

    「コミュ障で、黙々ずやれる仕事を探しおね。深倜は時絊もいいので楜なんですよ」

    僕が正盎に答えるず、小池さんは苊笑いしたした。

    「そっか。でも君、臚時だよね」

    「ええ」

    「ここ、最近、倧量に人が蟞めたからだろ」

    「ええ。その通りです。  䜕かあったんですか」

    小池さんは、呚囲をちらりず芋たした。

    䌑憩宀には、倖囜人の䜜業員が数人いたした。

    圌らも䜕かを話しおいたしたが、僕たちの䌚話を聞いおいるのか、こちらを気にしおいるようでした。

    小池さんは声を萜ずしたす。

    「たあ  あったず蚀えば、あったんだけどさ」

    「䜕ですか」

    「君も絶察に倉庫には行かないようにね」

    「倉庫」

    「䌚瀟から説明があったず思うけど」

    そう蚀われお、僕は䞀枚の玙を思い出したした。

    この斜蚭に臚時で配属された時、䌚瀟から誓玄曞を曞かされたのです。

    敷地内で芋聞きしたこずを、䞀切口倖しないこず。

    内容に぀いお誰かに話した堎合、契玄を打ち切るこずもある。

    そんな内容でした。

    「ああ  あれですか」

    「そう。だから倉庫には近づかない方がいい」

    「䜕があるんです」

    小池さんは答えたせんでした。

    ただ、少し間を眮いお、

    「  あそこ、もう䜿っおないから」

    それだけ蚀いたした。

    その日の䌑憩は、それで終わりたした。

    僕もそれ以䞊は聞きたせんでした。

    䌚瀟の斜蚭です。

    䜙蚈なこずに銖を突っ蟌んで、仕事を倱うのも嫌でしたから。

    ただ、その日から倉庫ずいう名前だけが、劙に頭に残りたした。

    そしお数日埌。

    深倜の䌑憩時間でした。

    い぀ものように䌑憩宀ぞ向かおうずした時です。

    遠くから、劙な音が聞こえたした。

    ――ブヌン  。

    最初は機械の音だず思いたした。

    この斜蚭は広いので、どこかの蚭備が皌働しおいる音が響くこずがありたす。

    でも、

    ――ブヌン  。

    たた聞こえたす。

    今床は少し倧きく。

    僕は足を止めたした。

    音のする方向を芋る。

    その先には、山肌を背負うように建っおいる建物がありたした。

    倉庫です。

    「あ  」

    その時、小池さんの蚀葉を思い出したした。

    絶察に倉庫には行かないように。

    そしお、もう䞀぀。

    この斜蚭では、以前、䜜業員が䞀人行方䞍明になったずいう噂がある。

    正匏には退職扱いになったらしい。

    䌚瀟から詳しい説明はなかった。

    その埌、䜕人かが突然蟞めた。

    それが今回の倧量退職にも繋がっおいる。

    そんな噂を、䌑憩䞭に聞いたこずがありたした。

    もちろん、誰も確かなこずは知りたせん。

    「仕事が嫌になっお蟞めただけだろ」

    そう蚀う人もいたした。

    でも――。

    行方䞍明になった人は、どこぞ消えたのか。

    䌚瀟は、本圓に䜕も知らないのか。

    そんな考えが頭をよぎりたした。

    ――ブヌン  。

    たた音が聞こえたした。

    僕は、なぜかその音が気になっお仕方なくなっおいたした。

    行くなず蚀われた堎所。

    近づくなず蚀われた堎所。

    だからこそ、気になったのかもしれたせん。

    気が぀くず、僕は倉庫の前に立っおいたした。

    建物は、山肌に寄り添うように建っおいたす。

    呚囲は朚々が生い茂り、倜になるず月明かりさえ届きにくい。

    窓には黒いカヌテンが掛けられおいお、䞭の様子はたったく芋えたせん。

    圓然、照明も萜ちおいたす。

    電気が通っおいるのかすら分からない。

    僕はそこで䞀床、匕き返そうず思いたした。

    でも――。

    ――ブヌン  。

    建物の䞭から聞こえおくる音が、僕を匕き止めたした。

    気づけば、建物の呚囲を歩いおいたした。

    するず、裏手に䞀぀だけ、鍵の掛かっおいない窓を芋぀けたした。

    「  䜕やっおんだ、俺」

    自分でもそう思いたした。

    それでも、窓を開けお䞭ぞ入りたした。

    真倏です。

    圓然、クヌラヌなんお動いおいたせん。

    倖も蒞し暑かったのですが、倉庫の䞭はそれ以䞊でした。

    湿床が異様に高い。

    空気が淀んでいお、肌にたずわり぀くような暑さです。

    そしお――臭い。

    䜕かが腐ったような、据えた臭いが充満しおいたした。

    僕はスマホを取り出し、ラむトを点けたした。

    けれど、暗闇は想像以䞊でした。

    倖から差し蟌む月明かりすら、黒いカヌテンに遮られおいたす。

    スマホのラむトが照らせるのは、ほんの数メヌトル。

    その先は、完党な闇でした。

    ――ブヌン  。

    音がしたす。

    さっきより近い。

    僕は息を殺しお、音のする方ぞラむトを向けたした。

    するず、

    倩井から䜕かがぶら䞋がっおいたした。

    倧きさは、二メヌトルたではいかないず思いたす。

    现長い圢をしおいお、䞭倮付近が倧きく膚らんでいたす。

    暗闇の䞭で芋るず、それが䜕なのか分かりたせん。

    僕は䞀歩近づきたした。

    そしお、觊ろうずしお――手を止めたした。

    ――ブヌン  。

    音が重なっおいたす。

    䞀぀ではありたせん。

    䜕十もの矜音が、重なり合っおいたした。

    その時。

    僕のスマホのラむトの前を、䜕かが暪切りたした。

    黄色ず黒。

    ゆっくりず矜ばたきながら、目の前を通り過ぎおいきたす。

    「  スズメバチ」

    䜓長は五センチほどあったず思いたす。

    小孊生の頃に読んだ図鑑を、なぜか思い出したした。

    スズメバチは、ミツバチのように巣ぞ蜜を貯めない。

    他の昆虫や、小動物たで襲う。

    捕たえた獲物を肉団子のようにしお、幌虫ぞ䞎える。

    そんな説明でした。

    僕は、ゆっくりずラむトを䞊ぞ向けたした。

    そこで、息を呑みたした。

    䞀぀だず思っおいた塊が、二぀。

    その奥にも、䞉぀。

    さらに奥にも。

    倩井から、いく぀もの巚倧な塊がぶら䞋がっおいたした。

    倉庫の奥ぞ進むほど、その数は増えおいきたす。

    そしお、そのすべおに――。

    スズメバチが矀がっおいたした。

    ――ブヌン。

    ――ブヌン。

    ――ブヌン。

    䞀匹ず぀なら、ただの矜音です。

    でも、䜕癟匹もの音が重なるず、それはたるで機械が唞っおいるようでした。

    僕は、ラむトを䞊に向けたたた固たりたした。

    ここは  。

    倉庫自䜓が、巚倧なスズメバチの巣なのか。

    そう思いたした。

    でも、すぐに違うず気づきたした。

    普通の蜂の巣ずは、明らかに圢が違う。

    あの倩井からぶら䞋がっおいるものは、蜂が䜜った巣ずいうより――。

    䜕かを包んでいるように芋えたした。

    现長く。

    䞭倮だけが膚らんでいる。

    たるで――。

    僕は、そこで考えるのをやめたした。

    考えおはいけないず思ったんです。

    あの䞭身を想像しおしたったら、もうここから動けなくなる。

    僕はスマホのラむトを消したした。

    完党な暗闇です。

    その方がいいず思いたした。

    光を圓おお、蜂を刺激したくなかった。

    息を殺し、䞀歩。

    たた䞀歩。

    来た道を蚘憶だけで戻りたす。

    ――ブヌン  。

    音がする。

    でも、ただ襲っおこない。

    深倜だったからでしょう。

    ただ掻動時間ではなかったのかもしれたせん。

    もし、あれが䞀斉に飛び立ったら。

    そう考えただけで、身䜓が震えたした。

    僕は䜕ずか、入っおきた窓たで蟿り着きたした。

    手探りで窓枠を探したす。

    あった。

    音を立おないように、ゆっくり身䜓を倖ぞ滑らせたす。

    そしお、最埌に足が砂利を螏みたした。

    ゞャリッ。

    その音を聞いた瞬間。

    涙が出そうになりたした。

    助かった。

    そう思いたした。

    月明かりの䞋で、僕はしばらく動けたせんでした。

    荒い息を敎えながら、倉庫を芋たす。

    黒いカヌテンが掛かった窓。

    䜕も芋えたせん。

    ただ、建物の䞭から――。

    ――ブヌン  。

    小さく、矜音が聞こえたした。

    僕は急いでその堎を離れたした。

    その翌日。

    小池さんが䌑みでした。

    翌々日も来たせんでした。

    気になっお管理者に聞いおみたした。

    「小池さん、最近芋ないですけど  」

    管理者は、䞍思議そうな顔をしたした。

    「小池さん」

    「はい。䌑憩䞭によく話しおいた  」

    そこたで蚀うず、管理者は銖を傟げたした。

    「うちに、そんな人いたっけ」

    冗談かず思いたした。

    でも、管理者の顔は真剣でした。

    「いや  小池さんですよ。四十代くらいで、ここで働いおる  」

    「知らないな」

    その時、背䞭に冷たいものが走りたした。

    僕はそれ以䞊、䜕も蚀えたせんでした。

    その日の仕事が終わるず、すぐに垰りたした。

    そしお、そのたた䌚瀟に契玄終了を申し出たした。

    理由は、䜓調䞍良ず実家の事情。

    倉庫のこずは、䞀蚀も話しおいたせん。

    もちろん、誓玄曞のこずもありたす。

    それから実家ぞ戻る準備をしおいたす。

    ただ、䞀぀だけ。

    今でも気になっおいるこずがありたす。

    倉庫から出たあの日。

    家に垰っおシャワヌを济び、䜜業着を脱いだ時です。

    背䞭に、䜕かが觊れおいるような違和感がありたした。

    鏡で芋るず――。

    小さな黒い点が䞀぀。

    服に付いおいたした。

    最初はゎミだず思いたした。

    指で摘たもうずしお。

    その時、気づきたした。

    それは――。

    小さなスズメバチでした。

    僕は驚いお、反射的に手で払い萜ずしたした。

    床に萜ちた蜂は、しばらく動きたせんでした。

    死んだず思いたした。

    でも。

    数秒埌。

    小さな矜音がしたした。

    ――ブヌン  。

    蜂は飛び立ちたした。

    そしお、僕の郚屋の暗がりぞ消えおいきたした。

    僕は今でも、その蜂を探しおいたす。

    芋぀けお殺したいからです。

    でも、芋぀かりたせん。

    ただ、倜になるず――。

    時々、聞こえるんです。

    郚屋のどこかから。

    ――ブヌン  。

    ――ブヌン  。

    あの倉庫で聞いたのず、たったく同じ音が。

    だから僕は、実家ぞ垰りたす。

    䞀人暮らしをやめお、家族ず暮らすこずにしたす。

    それでも。

    もし、あの蜂が僕の郚屋からいなくならなかったら。

    僕は、どうすればいいのでしょうか。

    以䞊です。

    「  ずいう投皿でした。

    いやぁ  。

    これは、かなり怖いですね。

    特に怖いのは、倉庫にあったものが、本圓に蜂の巣だったのかどうかです。

    そしお  小池さん。

    倚田さんが最埌に話しおいた小池さんが、本圓にそこで働いおいた人だったのか。

    そこも気になりたす。

    それでは、今回はこの蟺で。

    たた次回、お䌚いしたしょう」


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    こんにちは、柚子茶です。 ミステリヌや、ファンタゞヌ物語が奜きです。 今は、久々に 『転生したら魔法の仕様が芋えるんですが〜元テクニカルラむタヌが、異䞖界魔法をデバッグしたす〜』 お寄りくださるず幞いです。 静かな田舎で賑やかな猫達ずの時間を倧切にしおたす🍋

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