【雲間月怪異譚】 第30話
【雲間月怪異譚】第30話 心霊写真
※注意※
本作『雲間月怪異譚』には、
怪異・都市伝説・因習・和風ホラー表現が含まれます。
薄暗い話や、
“じわりと嫌な感じ”のする話が苦手な方は、
どうか無理をなさらず回れ右でお願いします。
それでも覗いてくださる方は――
どうぞ、雲間の怪異譚へ。
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YouTuber怪談師で、リスナーさんからの投稿を募っていると
良く、心霊写真なるものが送られてくる。
大半は、気のせいだとかワザと合成を送ってくるお試し系な人とかいるんだけど、そんな中でも1%は、本物が混ざっている。
何故本物ってわかるかって?そりゃあうちには…
「おや、今日はメールチェック日ですか?」
「うん。配信がお休みの日はメールチェックだよん」
毎日お仕事メールは、チェックしているが、リスナーさんからのメールは、週一に決めている。
怪談は好きなんだけど、残念なのは鬱系なお話が多かったりするからなんだ。こちらも構えて内容を精査しなくては、引きずられたりするんだよね。昔、それでクロウや雲外鏡爺に迷惑かけたから…
そんな事を思い出しながらメールをチェックしていると、添付ファイル付きのメールがあった。
ウィルスではない。それは確認済み。
どうやら写真画像みたいだ。と思ったら、うちの敏感センサーが飛んできた。
ノアールとジョリィだ。
「本物の怪異ですね」クロウがこちらを見ずに言った。
メール内容は、短文である。
三日月先生に見てもらいたい写真があります。
旅先で友人と撮ったものなのですが、この写真を撮った後に
この一緒に写っている友人が行方不明になりました。
私は、藁にもすがる思いで友人を探しています。
どうか三日月先生のお力も貸していただけないでしょうか?
「いつから探偵になったんですか?」
クロウが聞いてきた。
「僕も初めてだよ。人探しなんて」
先日の白河さんは、星野さんと言う繋がりがあったから引き受けただけであって、今回は、全くの別物だ。
「何か、三日月保を巻き込みたい怪異が動いているのかもね。どうするの?」
「ノアールとジョリィが反応するホンマモンだもんね。写真を見てから決めようかな?」
「見たらおしまいだと思うよ?」
「でも、僕は怪談を求めているのだからこれは必然なんだよ」
「それでは、影縫神社印の天然塩を用意しておきましょうかね」
「程々にね」
「それは、こちらのセリフです」
ソファに保は座り直し、両脇にそれぞれノアールとジョリィも座る。
ノートパソコンのメールから件の写真をクリックした。
ゆっくりと開かれていく画像。
ノアールの毛は逆立ち、ジョリィは、小さく唸り声をあげている。
写真は、旅先とメールにあった。
保は、写真を見た瞬間、眉をひそめた。
一見すると、どこにでもある観光地で撮られた記念写真。
男女二人が笑顔で並び、背後には古びた石橋と小さな滝。
「……え?」
思わず画面へ顔を近づける。
「どうしました?」
クロウも画面を覗き込む。
「いや……何だろう。この違和感」
行方不明になったという友人らしき人物は、確かに写っている。
だが、その人だけではない。
画面の隅々まで目を凝らしても、霊らしきものは見当たらない。
それなのに、胸の奥がざわつく。
ジョリィが低く唸った。
ノアールは画面から目を逸らそうとしない。
「……おかしいですね。」
クロウの声色が変わった。
「何が?」
「この写真――。」
クロウはゆっくり指を差した。
「写っている人数が、合いません。」
保はもう一度数えた。
一人。
二人。
背景にも誰もいない。
「二人だけじゃない?」
「ええ。普通なら。」
クロウは静かに続ける。
「ですが、この写真は三人分の”気配”があります。」
部屋の空気が一気に重くなる。
保は、もう一度画面を見た。
その瞬間だった。
カタッ。
ノートパソコンの画面が、一瞬だけ黒く染まる。
黒い画面には、保自身の姿が映っていた。
その肩越しに──
知らない誰かが立っていた。
画面が元に戻る。
観光写真。
何事もなかったように笑う二人。
「……今、見た?」
保が小さく呟く。
クロウは静かに頷いた。
「ええ。」
ノアールが、保の肩へ飛び乗る。
ジョリィは玄関の方を向き、耳を伏せたまま動かない。
まるで。
怪異そのものが玄関前に立っているように。
「保、探すのはやめなさい。この探し物はすでに向こう側です。」
古民家の引き戸は、磨りガラスに縦格子が嵌っている仕様だ。
だから、そのガラス越しに今映る黒い人影は、クロウの言う通りに向こう側の人なんだろう。
「探しものです」
引き戸越しに女性の声がする。
「僕の探しものではないよ」
クロウが答えるなんてって顔をしている。
「開けてください。探しものをお渡しします」
「お帰りください。僕は、僕の家族を危険にさらすものを探してはいません」
保は、はっきりと断る。メールを介して入ってこようとした怪異。怪談は求めてはいるけれど、家族を害する怪異はキッパリと断りを入れる。
それが、祖父との約束だったから。
「帰れ!」
保が強く拒絶の声を上げる。
外で『ヒッ!』っと声がして、影が消えた。
「塩いる?」クロウが背後から声かけした。
「大丈夫。メールの返信の方が大事だね」
テーブルに戻って、ノートパソコンを確認する。
メール一覧を確認する。
さっきまで確かにあった『探してください』という件名は、跡形もなく消えていた。
ゴミ箱にもない。
受信履歴にも残っていない。
最初から届いていなかったかのように。
「最近、こういう”依頼の形”で入り込もうとする怪異、多いよね」
「怪談を癒しなんて豪語する人がいるから
怪異も”聞いてもらえる”相手を探すようになったんじゃない?」
クロウは、天然塩の袋をしまった。
猫のノアールも犬のジョリィももう元の定位置でくつろいでいる。
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