【雲間月怪異譚』 第10話
【雲間月怪異譚】第10話 赤いワンピースの女編
※注意※
本作『雲間月怪異譚』には、
怪異・都市伝説・因習・和風ホラー表現が含まれます。
薄暗い話や、
“じわりと嫌な感じ”のする話が苦手な方は、
どうか無理をなさらず回れ右でお願いします。
それでも覗いてくださる方は――
どうぞ、雲間の怪異譚へ。
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「あー、もう雲外鏡爺ってば宿題重すぎ〜」
三日月保は、母屋に戻ってからぼやいた。
「怪談師の矜持とは、また難しい宿題だよね」
影縫クロウが、湯呑みを片手に言う。
「とりあえず、赤の呪いは保の成長待ちらしいよ」
蔵に住む雲外鏡爺の見立てでは、
三日月の“バックボーン”に惹かれて、赤は動いているらしい。
憑かれて、詠ませて、広ませる。
それが“向こう側”の狙いだという。
だからといって軽い話ではない。
雲外鏡爺のもとへは、定期的に“調整”を受けに行く必要がある。
「僕のバックボーンって、ほぼ雲外鏡爺じゃん!」
「……それだけじゃないから宿題なんだよ」
クロウは淡々と言う。
「いいじゃない。定期的に観測できる怪異なんて、そうないよ?」
「癒し扱いしないでほしいんだけど」
保はため息をついた。
怪異は恐怖というより、
どこか“心に引っかかるもの”として存在している。
ストン、と落ちる違和感。
消えない小さな棘。
それが保にとっては“癒しに近い不快さ”だった。
「で、ほら」
クロウがノートパソコンを差し出した。
仕事にも使う端末だ。
画面の隅に、赤い旗印のようなアイコンがいくつも並んでいる。
メールではない。
通知でもない。
“見覚えのない既読”のようなもの。
「これ、さっきまで無かったよね?」
「うん」
クロウは頷く。
「赤の影響が少し残ってる」
「ウイルスじゃないのが厄介なんだよね……」
保は苦笑する。
削除しても消えない。
消えたように見えて、どこかに“残っている”。
まるで見られた痕跡だけが増えていくように。
クロウは軽く画面を閉じた。
「応急処置はしたよ」
「助かる〜」
「ただし、新規の“視線”には気をつけて」
「新規って何それ怖い」
保は笑いながらも、どこか背中がぞわっとした。
雲外鏡爺の言う“赤”は、
まだ完全には消えていない。
むしろ──
どこかで、静かに“増えている気配”だけが残っていた。
⸻
気配だけではない。
同じ“赤”を見たという報告は、国を越えて増えていた
だがそれを“同じもの”だと断定できる者はいなかった
僧に、霊媒師にとアジアの動きは、ゆっくりと
しかし、確実に侵食していく。
誰に聞けばいい?
ネット社会となった現代
敏感に感じる人々に
噂に上がる赤い呪い。
もう、一個人で抑え込める段階ではなかったのである。
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だが、赤いワンピース姿の女は、ここ日本では
ひとまずなりを潜める。
思惑も深く沈んでいく。