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【雲間月怪異譚】 第話

    柚子茶

    【雲間月怪異譚】第話 玫鏡①―蚘憶の公民通

    ※泚意※
    本䜜『雲間月怪異譚』には、
    怪異・郜垂䌝説・因習・和颚ホラヌ衚珟が含たれたす。

    薄暗い話や、
    “じわりず嫌な感じ”のする話が苊手な方は、
    どうか無理をなさらず回れ右でお願いしたす。

    それでも芗いおくださる方は――
    どうぞ、雲間の怪異譚ぞ。

    =====================
    扉が閉じた瞬間、音が消えた。

    正確には、音が消えたのではない。
    “距離”が倱われた。

    近いのか遠いのかも分からないたた、䞖界の茪郭だけが曖昧になる。

    âž»

    公民通の䞭は、思ったより普通だった。

    叀い床。
    䜿い蟌たれた掲瀺板。
    敎列した怅子。

    「  普通だね」

    保が呟く。

    その瞬間だった。

    ――かすかに、音が萜ちる。

    「  っ、う  っ」

    少女の泣き声。

    すぐ近くにいるようで、遠い。
    いや、距離ではない。

    “䜍眮”そのものが定たっおいない。

    星野雫が小さく息を吞った。

    「聞こえたす  」

    圌女は䞀点を芋おいる。

    壁でも廊䞋でもない。
    空間の“重なり”のような堎所。

    âž»

    そしお、もうひず぀。

    別方向から、声がした。

    「  どこ  」

    䜎く、かすれた声。

    保が眉をひそめる。

    「今のは  」

    クロりが即答する。

    「癜河みおだろうな」

    âž»

    星野雫が䞀歩螏み出す。

    「この声  重なっおたす」

    「重なっおる」

    保が聞き返すず、圌女は頷いた。

    「泣いおる声ず  探しおる声が、同じ堎所から」

    âž»

    その瞬間、公民通の廊䞋がわずかに揺らいだ。

    芋た目は倉わらない。
    だが“意味”だけがずれる。

    掲瀺板はただの掲瀺板ではなくなる。
    そこに少女の蚘憶が貌り付く。

    䜕もなかった廊䞋の先に、
    「誰かを探しおいた蚘憶」が重なる。

    âž»

    保は息を飲む。

    これ  空間じゃない

    蚘憶だ

    âž»

    クロりが䜎く蚀う。

    「玫鏡は空間を倉えおるんじゃない」

    䞀拍眮く。

    「認識を固定しおいる」

    âž»

    その蚀葉で、党おが繋がる。

    少女の泣き声が、少しだけ近くなる。

    星野雫が静かに蚀った。

    「声の方ぞ行きたす」

    「そっちが“正しい経路”です」

    âž»

    保は䞀床だけ息を吐く。

    「行くしかない、か」

    âž»

    その瞬間、廊䞋の“意味”がさらにずれる。

    少女の泣き声が方向になる。
    癜河みおの声が導線になる。

    空間ではなく、蚘憶が道になる。

    âž»

    クロりの声が最埌に萜ちる。

    「戻りは任せろ」

    その蚀葉だけが、珟実偎に残る錚だった。

    âž»

    保は䞀歩螏み出す。

    その瞬間――

    公民通は“普通の建物”ではなくなった。

    そこはもう、誰かの蚘憶の䞭にある堎所だった。

    âž»

    廊䞋ぞ足を螏み入れた瞬間、空気が倉わる。

    「  っ」

    保は思わず立ち止たる。

    床は倉わっおいない。
    なのに、“歩いたずいう事実”だけが遅れお぀いおくる。

    䞀歩遅れお、䞖界が圢を䜜る。

    星野雫が息を呑む。

    「ここ  蚘憶の順番がズレおたす」

    âž»

    廊䞋の先に扉がある。

    さっきたでただの非垞口だったはずの堎所。

    だが今は――

    「垰り道」ず曞かれた札が掛かっおいた。

    âž»

    クロりの声が鋭く萜ちる。

    「觊れるな」

    「それは“出口”じゃない」

    âž»

    保が喉を鳎らす。

    「じゃあ䜕だよ」

    少しの沈黙。

    クロりは答える。

    「“垰れなかった蚘憶”だ」

    âž»

    空気が冷える。

    その瞬間だった。

    「  おかあ、さん  」

    泣き声が䞀段近くなる。

    廊䞋の奥に、人圱が芋えた。

    小さな少女。

    膝を抱えお座っおいる。

    だが――

    顔がない。

    正確には、“思い出せない圢”になっおいる。

    âž»

    星野雫が小さく蚀う。

    「  これが、玫鏡」

    âž»

    保の背䞭に冷たいものが走る。

    思い出せないものが、ここに残るのか

    âž»

    少女が、ゆっくり顔を䞊げた。

    「  わたし、だれ」

    その声が、廊䞋党䜓に広がる。

    掲瀺板の玙が䞀斉に揺れた。

    そこにあるのは、途䞭で止たった名前。
    消された呌びかけ。
    呌び損ねた蚀葉。

    âž»

    保は息を呑む。

    「  ここ、蚘憶の未完成品ばっかじゃねぇか」

    クロりが静かに蚀う。

    「完成した蚘憶は倖ぞ出る」

    「ここに残るのは、途䞭で途切れたものだけだ」

    âž»

    少女が立ち䞊がる。

    その動きに合わせお、廊䞋の奥が揺れる。

    泣き声ず、探す声が重なった。

    「  どこ  」

    「  おかあさん  」

    âž»

    星野雫が䞀歩前に出る。

    「この子  癜河みおじゃない」

    保が振り向く。

    「え」

    圌女は少女を芋぀めたたた続ける。

    「癜河みお“だった可胜性”です」

    âž»

    その蚀葉で空気が重くなる。

    保は理解する。

    ここは“人”がいる堎所じゃない。

    “なりかけお消えたもの”が積もる堎所だ。

    âž»

    少女が䞀歩、近づく。

    その瞬間――

    保の芖界が揺れる。

    今  誰かが俺の名前を呌んだ

    だが声はない。

    ただ、“呌ばれそうになった感芚”だけが残る。

    âž»

    クロりの声が鋭く萜ちる。

    「保、動くな」

    「お前に“蚘憶が寄る”」

    âž»

    少女の芖線が、確かに保ぞ向いた。

    顔はないはずなのに。

    それでも“芋぀けた”気配がある。

    âž»

    「  あ」

    小さな声。

    「やっず  」

    âž»

    その瞬間、廊䞋の奥が“入口”のように開く。

    出口ではない。
    蚘憶のさらに奥ぞ続く入口。

    âž»

    星野雫が静かに蚀う。

    「行きたしょう」

    「この子は、ただ途䞭です」

    âž»

    保は䞀床だけ目を閉じる。

    そしお――

    「  ああ」

    䞀歩、螏み蟌んだ。


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    こんにちは、柚子茶です。 ミステリヌや、ファンタゞヌ物語が奜きです。 今は、久々に 『転生したら魔法の仕様が芋えるんですが〜元テクニカルラむタヌが、異䞖界魔法をデバッグしたす〜』 お寄りくださるず幞いです。 静かな田舎で賑やかな猫達ずの時間を倧切にしおたす🍋

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