お酒とがんの関係、知っていますか?
こんにちは!病院薬剤師のニュートです!
仕事終わりのビール、休日の晩酌、友人との飲み会。
お酒を楽しむ機会って、意外とたくさんありますよね。
「飲みすぎると肝臓に悪い」というのはよく知られていますが、では「お酒とがん」について、みなさんは考えたことがありますか?
実は、この関係は様々な研究により、かなりはっきりした答えがあります。
今回は論文や公的機関の情報をもとに、なぜ飲酒によってがんのリスクが上がるのかを分かりやすく整理してみます。
お酒を飲む方は、グラスを片手に…ではなく、一度グラスを置いて読んでみてください。笑
飲酒は「がんの原因」になる?
結論からいうと、飲酒は複数のがんについて確立されたリスク因子です。
国際がん研究機関(IARC)は、アルコール飲料を「ヒトに対して発がん性がある(Group 1)」に分類しています[1]。
Group 1は危険度のランキングではなく、「ヒトに対して発がん性がある」という科学的根拠が十分にあることを示す分類です。
現在、飲酒との因果関係が確立しているのは、口腔・咽頭・喉頭、食道扁平上皮がん、肝細胞がん、大腸・直腸がん、女性の乳がんです[1]。
大規模なメタ解析でも、飲酒量が増えるにつれて、これらの多くのがんでリスクが上昇することが示されています[2]。
もちろん、「お酒を飲んだら必ずがんになる」という意味ではありません。
がんになる確率を高める要因のひとつということです。
なぜ、お酒でがんのリスクが上がるの?
ここは仕組みを知ると、かなりイメージしやすくなります。
お酒に含まれるエタノールは、エタノール → アセトアルデヒド → 酢酸という流れで代謝されます。
この途中でできるアセトアルデヒドがポイントです。
アセトアルデヒドにはDNAなどの遺伝情報を傷つける性質があり、こうしたDNA損傷から生じる変異が、アルコールによる発がんの重要な機序と考えられています[1]。
ほかにも酸化ストレスやホルモンへの影響など、いくつかの仕組みが関与しています[1,6]。
僕自身、今回調べていて、「エタノール → アセトアルデヒド → DNA損傷」という流れを知ると、飲酒とがんの関係がかなり理解しやすいなと感じました。

ビールよりワインの方が安全?
「赤ワインなら健康に良さそう」
「焼酎なら糖質が少ないから大丈夫そう」
そんなイメージもあるかもしれません。
しかし、がんの観点では、お酒の種類を変えれば発がんリスクを避けられるわけではありません[6]。
ビール、ワイン、日本酒、蒸留酒…いずれにもエタノールが含まれているからです。
そこで役立つのが純アルコール量。
厚生労働省では、「摂取量(mL)×アルコール濃度(度数÷100)×0.8」で計算しています[3]。
たとえば5%のビール500mLなら、「500 × 0.05 × 0.8 = 20g」です。
「何杯飲んだか」だけではなく、実際にどのくらいのアルコールを摂ったのかを見るわけですね。
お酒を飲むと顔が赤くなる人は?
日本人を含む東アジアの人では、もうひとつ気になるのが「ALDH2」です。
ALDH2はアセトアルデヒドを分解する酵素で、その働きには遺伝的な個人差があります。
東アジアの研究をまとめたメタ解析では、ALDH2の働きが低下する遺伝子型を持つ人が飲酒した場合、食道がん、肝がん、口腔・咽頭がんなどの飲酒に関連するリスクがより高くなることが示されています[4]。
お酒を飲むと顔が赤くなる「フラッシング反応」は、この体質を考える手がかりのひとつです。
「前は赤くなったけど、最近はお酒に慣れたから大丈夫!」という話でもないので注意したいところです[3]。
「少しなら大丈夫」なの?
では、どのくらいなら安全なのでしょうか。
がんという観点では、現在のエビデンスから「この量までなら発がんリスクがない」といえる明確な安全量は示されていません[5,6]。
一部のがんでは少量の飲酒からリスク上昇がみられ、基本的には飲酒量が増えるほどリスクも高くなります[2,5]。
だからといって、一口飲んだだけで急に危険になるわけではありません。
大切なのは、飲む量が少ないほどリスクも小さくなるという考え方です。
またIARCでは、飲酒を減らしたりやめたりすることで、口腔がんと食道がんのリスクが低下することには十分なエビデンスがあると評価しています[1]。
ほかのアルコール関連がんについては、現時点ではエビデンスの確実性に差があります。
おわりに
「お酒は肝臓に悪い」という話は有名ですが、飲酒そのものが複数のがんの原因になることは、意外と知られていないかもしれません。
特に、エタノール → アセトアルデヒド → DNA損傷という流れを知ると、その関係がぐっと分かりやすくなります。
この記事を読んで「今日から絶対禁酒!」と言いたいわけではありません。
お酒を楽しむのであれば、まずは自分がどのくらいの純アルコールを飲んでいるのか知っておく。
そこから少し量を考えてみるだけでも、お酒との付き合い方は変わるかもしれません。
お酒とは、リスクも知ったうえで上手に付き合っていきたいですね。
それでは、また次の記事で!
参考文献
[1]International Agency for Research on Cancer. Reduction or Cessation of Alcoholic Beverage Consumption. IARC Handbooks of Cancer Prevention Volume 20A. IARC. 2024.(公式サイト)
[2]Bagnardi V, et al. Alcohol consumption and site-specific cancer risk: a comprehensive dose-response meta-analysis. Br J Cancer. 2015;112:580-593.(PubMed)
[3]厚生労働省. 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン. 2024.(公式サイト)
[4]Ng CS, et al. ALDH2 polymorphism, alcohol intake and the attributable burden of cancer in East Asia: systematic review, meta-analysis, and modeling study. Ann Epidemiol. 2023;85:113-120.e20.(PubMed)
[5]Anderson BO, et al. Health and cancer risks associated with low levels of alcohol consumption. Lancet Public Health. 2023;8:e6-e7.(PubMed)
[6]International Agency for Research on Cancer. Alcohol: a major preventable cause of cancer. IARC Evidence Summary Brief No. 6. IARC. 2025.(公式サイト)
いいなと思ったら応援しよう!
応援ありがとうございます!いただいたチップは、今後の記事に活かす医学書や文献の購入に使わせていただきます。次の記事を書く大きな励みになります!