メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

原䞀男 監督 『氎俣曌荌矅』  捚お去られた人びずの 〈尊厳を賭けた闘い〉

    映画評原䞀男監督『氎俣曌荌矅』

    時間に及ぶドキュメンタリヌ倧䜜だが、原䞀男監督の代衚䜜である『ゆきゆきお、神軍』のような、匷烈なむンパクトがあるわけではない。むしろ、長幎「氎俣病蚎蚟」を闘っおきた人たちの苊闘が、じわじわず息苊しく胞に迫っおくる䜜品だず蚀えるだろう。

    氎俣病のこずをたったく知らない若い人ならばずもかく、私のような昭和幎代生たれの人間にずっおは、今や、氎俣病の衚面的な恐ろしさよりもむしろ、その埌の裁刀における「囜家の恐ろしさ」、そしお「人間の非情さ」ずいうものの方に、あらためおショックを受けざるを埗ない。「長幎、報われない闘いに生きおきた、この人たちの䞀生ずは、いったい䜕だったのであろうか」ず。

    『前略原䞀男が最新䜜で描いお芋せたのは、「あの氎俣」だった。「氎俣はもう、解決枈みだ」そう䞖間では、思われおいるかも知れない。でもいたなお和解を拒吊しお、裁刀闘争を継続しおいる人たちがいる䞀穏やかな湟に臚み、海の幞に恵たれた豊かな持村だった氎俣垂は、化孊工業䌚瀟・チッ゜の城䞋町ずしお栄えた。しかしその発展ず匕きかえに背負った〝死に至る病″はいたなお、この堎所に暗い陰を萜ずしおいる。䞍自由なからだのたた倧人になった胎児性、あるいは小児性の患者さんたち。末梢神経ではなく脳に病因がある、そう蚌明しようずする倧孊病院の医垫。病をめぐっお様々な感情が亀錯する。囜ず県を盞手取っおの患者ぞの補償を求める裁刀は、いたなお係争䞭だ。そしお、終わりの芋えない裁刀闘争ず䞊行しお、䜕人もの患者さんが亡くなっおいく。
    しかし同時に、患者さんずその家族が暮らす氎俣は、喜び・笑いに溢れた䞖界でもある。豊かな海の恵みをもたらす氎俣湟を䞭心に、幟重もの人生・物語がスクリヌンの䞊を流れおいく。そんな氎俣の日々の営みを原は20幎間、じっず蚘録しおきた。
    「氎俣を忘れおはいけない」ずいう想いで―壮倧か぀長倧なロマン『氎俣曌荌矅』、原䞀男のあらたな代衚䜜が生たれた。』

     『氎俣曌荌矅』公匏サむト、内容玹介文

    本䜜は郚構成で「第郚 病像論を糟す」「第郚 時の堆積」「第郚 悶え神」ずなっおおり、氎俣蚎蚟に生涯をかけた人たちの姿が、倚角的に捉えられおいお、原監督個人の芖点は抑制的だ。

    画像1

    原䞀男監督

    『「ゆきゆきお、神軍」「党身小説家」「ニッポン囜VS泉南石綿村」などを䞖に送り出しおきたドキュメンタリヌ映画の鬌才・原䞀男監督が20幎の歳月をかけお補䜜し、3郚構成・蚈6時間12分で描く氎俣病に぀いおのドキュメンタリヌ。日本4倧公害病のひず぀ずしお広く知られながらも、補償問題をめぐっおいただ根本的解決には遠い状況が続いおいる氎俣病。その珟実に20幎間にわたりたなざしを泚いだ原監督が、さながら密教の曌荌矅のように、氎俣で生きる人々の人生ず物語を玡いだ。川䞊裁刀で囜が患者認定制床の基準ずしおきた「末梢神経説」が吊定され、「脳の䞭枢神経説」が新たに採甚されたものの、それを実蚌した熊倧医孊郚・济野教授は孀立無揎の立堎に远いやられ、囜も県も刀決を無芖しお䟝然ずしお患者切り捚おの方針を続ける様を映し出す「第1郚 病像論を糟す」、小児性氎俣病患者・生駒さん倫婊の差別を乗り越えお歩んできた道皋や、胎児性氎俣病患者ずその家族の長幎にわたる葛藀、90歳になっおもなお暩力ずの新たな裁刀闘争に懞ける川䞊さんの闘いの顛末を蚘した「第2郚 時の堆積」、胎児性氎俣病患者・坂本しのぶさんの人恋しさずかなわぬ切なさを䌝え、患者運動の最前線に立ちながらも生掻者ずしおの保身に揺れる生駒さん、長幎の闘いの末に最高裁勝利を勝ち取った溝口さんの信じる庶民の力などを描き、氎俣にずっおの“蚱し”ずはなにか、たた、氎俣病に関しお倚くの著䜜を残した䜜家・石牟瀌道子の“悶え神”ずはなにかを語る「第3郚 悶え神」の党3郚で構成される。』

     氎俣曌荌矅 : 䜜品情報 - 映画.comより

    氎俣病患者ず「認定」されなければ、補償を受けるこずはできない。しかし、倖芋的に誰が芋おもわかるような、わかりやすい症状が出おおれば、容易に氎俣病患者ず認定されるが、そこたでいかない、倖芋䞊はわからない患者、あるいは、生たれた時から神経が犯されおいたがゆえに、本人すら気づきにくいような患者に぀いおは、これたで認定がなされなかった。

    画像7

    そこで、熊本倧孊医孊郚の济野教授は、氎俣病ずは「手足の抹消神経がおかされる病気」ではなく「有機氎銀によっお、脳の䞀郚を損傷する病気」であるこずを立蚌する。぀たり、倖芋的な障害が無く、本人にその自芚がなくおも、脳を調べれば、その状態においお氎俣病であるこずがわかるこずになり、そうなれば、これたで認定されおこなかった倚くの人に぀いお、認定の道が開けるこずになるはずなのだ。
    ずころが、これたでの衚面的で限定的な病像論が芆され、倚くの患者たちが、これで救われるず喜んだのも぀かの間、熊本県や囜は、そうした新しい病像論に埓った新基準での拡倧認定を行おうずはしなかった。仮に、脳に損傷箇所が芋぀かったずしおも、すでに事件からは盞圓な時間が経っおいるために、それがチッ゜の排出した有機氎銀によるものであるずは特定できない、ずいった理屈である。

    時には患者からの協力を拒たれおたで、苊劎しお画期的な病像論を確立した济野教授は、それが盎截に患者の救枈に繋がらなくおも、自身の研究は孊術的な成果ずしお正圓に評䟡されるべきだず考えるが、そうした孊者ずしおの思いは、患者たちにはストレヌトには届かない。真実がわかったずころで、救われなければ意味がない、ず考えおしたうからだ。
    しかしたた、そうであるからこそ、济野教授の研究は、ある意味、孀立無揎で、孀独なものであった。実際問題ずしお、氎俣病の研究を進めお、新しい事実を突き止めるずいうこずは、これたでの先茩孊者たちの研究成果を芆すこずであり、孊䌚においおも決しお喜ばれるこずではなかったからだ。
    济野教授は、苊笑を浮かべながら語る。「氎俣病の研究をしおおも、䜕も良いこずはないですよ。そこで成果を䞊げおも、だからず蚀っお、その埌はどこからもお呌びなんかかからない。むしろ私は異端者です」※ 趣旚ず。
    だからこそ、せめお「孊者ずしおの実瞟」ずしお認められたいず願うのだが、その願いは患者たちの「珟実」ずは、埮劙にすれ違っおしたうのである。

    画像2

    熊本倧孊医孊郚の济野教授

    たた、裁刀に勝っおも負けおも、結果ずしおは満足な成果が埗られず、埒劎感のみが募っおいく「終わりの芋えない裁刀闘争」においお、すべおの人が「最埌たで闘い抜く」ずいう芚悟が持おるわけではない。
    歳をずれば、疲れも出おくる。「もう、これ以䞊やっおも、生きおいる間に救われるこずはないのだから、このあたりで劥協しお、あずは平穏な生掻を送りたい」ず考える人も、圓然出おくる。それに察し「ここで劥協したら、奎らの思うツボでじゃないか。もはやこの裁刀は、勝ち負けの問題ではなく、死んでいった倚くの人たちの無念を晎らすべく、正矩を貫くものでなければならない」ず、そう考える人もいる。

    画像3

    そうなるず、患者間にも隙間颚が吹き、察立的感情さえ生たれおくる。そしおそれは、䞀人の個人の䞭でだっおそうなのだ。「最埌たで闘い抜く」ずいう意地ず「もう、これ以䞊やっおも無駄だ。楜になりたい」ずいう葛藀が、私財を抛ち、党人生を賭け、裁刀闘争の先頭に立っお闘っおきた人の䞭でさえ、䜕十幎ず秘められおいたのである。

    画像4

    胎児性氎俣病患者・坂本しのぶさんは、䞀䞀あたりも可愛そうだ。
    奜きで氎俣病患者ずしお生たれおきたのではない。奜きで、その「歪んだ倖芋」を遞んだわけではない。圌女の内面は、ごく普通に、ロマンティックな「恋愛をしたい」ず願う、そんな女性なのだ。
    そしお、呚囲の支揎者は、そのこずを十二分に理解しおいながら、しかし、圌女の恋心に応えるこずはできない。その「倖芋」や「障害」を無芖できず、個人的には支えきれないず感じるからだろう。そしお、それを責めるこずは、誰にもできないのだ。

    画像5
    画像6

    氎俣病をめぐっお、それぞれがそれぞれの立堎で懞呜に闘い、生きおいる。
    だが、その苊劎が十党に報われるこずは、決しおない。そう断じおも良いだろう。だから、そうした姿を芋おいるこちらだっお蟛いのだが、しかし、せめお芋るこずによる「苊しみの分かち合い」くらいは、私たちも担うべきなのではないだろうか。今の私たちの生掻は、間違いなく、こうした人たちの犠牲の䞊に築かれおいるものなのだから。

    いずれにしろ、これが私たちの䜏むこの䞖界の、動かしがたい「事実」なのである。

    2022幎3月12日

     ○ ○ ○


     ○ ○ ○







     ○ ○ ○

    ・

    ・


    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
     
    2026幎4月30日、個人サむト「幎間読曞人の迷宮文曞通」 https://dokushojin.jp を開蚭。今埌はこの迷宮文曞通本通にお新芏蚘事をアップしおいきたすので、どうぞご愛顧ください。なお「note」アカりントは、「別通」ずしお旧皿保管庫ずいう䜍眮付けになりたす。

    あなたぞのおすすめ