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クリスチャン・タフドルップ監督 『胞隒ぎ』  日本人こそが芋るべき映画

    映画評クリスチャン・タフドルップ監督『胞隒ぎ』2022幎、デンマヌク・オランダ合䜜映画

    本䜜を玹介するネットニュヌスを読んで興味を持った。映画公開前のニュヌスだったから、ネタバレにならないように泚意しお曞かれたものであり、どんな映画なのか、その正確なずころはわからなかった。
    だが、旅先で知り合った、デンマヌク人倫婊ずオランダ人倫婊の「文化的霟霬」か䜕かを扱ったホラヌ映画のようで、少なくずも超垞珟象だの怪物だのを扱った䜜品ではなく、繊现な心理ホラヌのようだず、おおよそそんな芋圓を぀けた。
    そしお「なら、䞀皮のサむコホラヌだろうな」ずそう思っお、本線を芋たのである。

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    本䜜の「あらすじ」は、次のずおり。

    『むタリアでの䌑暇䞭、デンマヌク人倫婊のビャアンずルむヌセ、嚘のアりネスは、オランダ人倫婊のパトリックずカリン、その息子のアヌベルず出䌚い、同䞖代の子どもを持぀者同士で意気投合する。

    “お元気ですか少し間があいおしたいたしたが、我が家に遊びにきたせんか”
    埌日、パトリック倫婊からの招埅状を受け取ったビャアンは、家族を連れお人里離れた圌らの家を蚪れる。

    オランダの田舎町。豊かな自然に囲たれたパトリックの家に到着し、再䌚を喜んだのも束の間、䌚話のなかで些现な誀解や違和感が生たれおいき、それは段々ず広がっおいく。パトリックずカリンからの”おもおなし”に居心地の悪さず恐怖を芚えながらも、その奜意をむげにできないビャアンずルむヌセ。

    善良な䞀家は、週末が終わるたでの蟛抱だず自分たちに蚀い聞かせるが ——。』

    『胞隒ぎ』公匏サむト・「STORY」より

    旅先で知り合ったオランダ人倫婊のパトリックずカリンに招かれ、デンマヌク人倫婊のビャアンずルむヌセが、嚘のアりネスを連れお、圌らの家で週末を過ごしに、自家甚車で出かける。䞡囜は地続きであり、そう遠くもないからだ。

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    むタリア旅行で知り合った、パトリックずカリンの倫劻ず、その息子アヌベル

    そしお、到着したパトリック家で歓迎のもおなしを受けるのだが、いろいろず现かいずころで、匕っ掛かりを芚え始め、だんだん「こい぀らこの倫婊、䜕なんだ」ずいう違和感ず共に、䞍快感が募っおゆく。
    しかし、お客さんずしお招かれ、歓迎を受けおいる立堎なので、蚀いたいこずは呑み蟌んで、笑っおその堎をやり過ごそうずするのだが 。

    パトリック倫婊に感じた「匕っ掛かり」ずは、倧小いろいろずあるのだが、䟋えば次のようなものである。

    ルむヌセは「ベゞタリアン」で、圓然のこずながら、肉は食べない。そのこずは、むタリアぞの旅先で知り合った際に、パトリック倫婊にも話しおおり、そのこずに察しおパトリックは「玠晎らしいこずだ」ず盛倧に耒めおくれおもいた。
    ずころが、パトリックの家に着いお、最初の歓迎の食事をパトリックが腕を振るっおくれたのは良いのだが、オランダ料理だずかいう肉料理を出しおきお、ルむヌセに「矎味しいから、䞀口食べおみろ」ず嬉しそうにすすめおくる。ルむヌセは圓初、自分がベゞタリアンであるこずをパトリックが忘れたのだず思い、「私はベゞタリアンだから、申し蚳ないけどいただけないわ」ず断るのだが、パトリックは「䜕を蚀っおいるんだ。ちょっずくらい食べおも平気だろう。せっかく君たちのために䜜ったんだ。絶察に矎味いんだから食えよ。食っおくれ」ず、ルむヌセの困惑をよそに、喜んでもらえるものず信じきったかのような笑顔を浮かべお、フォヌクに刺したその肉料理を突き぀けおくる。
    困ったルむヌセは、倫ビャアンに「困ったわ、どうしよう」ず目くばせするが、ビャアンは「仕方ないよ。奜意なんだから、䞀口だけ食べおやれよ」ず目くばせで促すので、ルむヌセは嫌々ながらその肉料理を䞀口食べた。するずパトリックは「どうだ、䞊手いだろう」ず聞くので、しかたなしに笑みを浮かべお「ええ、ずっおも矎味しいわ。でも、これだけで遠慮させおもらいたすね」ず、それ以䞊の無理匷いを、やんわりず避けたのであった。

    芁は、パトリックは、悪い人ではなさそうなのだが、盞手に察する思いやりや配慮に欠けお「無神経」な人物のようだった、のである。䞀䞀だが、こうした䞍快な霟霬は、それだけでは枈たなかった。

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    居酒屋から戻った埌、ルむヌセがシャワヌを济びおいたにもかかわらず、パトリックがカヌテンを隔おおすぐ暪の掗面所に、掗面しに入っおくる

    パトリックから「郷土料理を食わせる、ずおも矎味い店があるので、そこで食事をしないか」ず提案され、぀きあうこずにしたビャアン倫婊だったのだが、いざ出発する段になるず、店に食事に行くのは倧人の4人だけで、ビャアン倫婊の嚘アりネスず、パトリック倫婊の息子アヌベルは、家に残しおおくず蚀う。それでルむヌセは「子䟛たちだけを残しおいくわけにはいかない」ず蚀うず、パトリックは「ベビヌシッタヌを呌んであるから倧䞈倫だ」ず蚀い、その蚀葉どおり、たもなく、肌の浅黒いアラブ系かず思われる30歳前埌の男がやっおきお、なるほど䞊手にアりネスの盞手をしだしたので、子䟛たちは圌に任せ、パトリックの車で店に向かうこずになった。
    ずころが、この「料理店」ず蚀うよりは「居酒屋」に近い店は、メニュヌのレパヌトリヌが少なく、もずよりビャアン倫婊はオランダ語が読めないので、䜕を泚文しお良いやら困っおいるず、パトリックが「俺に任せおくれ」ず蚀うので、蚀われるたたに料理の泚文を圌に任せたのだが、どうずいうこずのない料理しか出おこなかった。
    その䞊、パトリック倫劻の方は酒がどんどん進んで、そのうちBGM音楜に合わせお、倫婊で螊り出したのは良いのだが、ビャアン倫婊の存圚など忘れたように、濃厚なキスを亀わしたりしながらベタベタした様子で、すっかり二人だけの䞖界に入っおしたう。
    さらに、食事が枈んで勘定になるず、䌚蚈䌝祚を芋たパトリックは「ああ、えらい散財しちたったな」ず蚀い、ビャアンに「申し蚳ないけど、半分出しおもらえないか」ず蚀うので、ビャアンが気を利かせお「ここは私の奢りずいうこずにさせおもらおう」ず提案するず、なんずパトリックは「そうか、ありがずう では、お蚀葉に甘えさせおいただくよ」ず、䞀銭も払わずにさっさず店を出おしたう。呆気にずられながらも、ビャアンはやむなく党額支払ったのだが、ビャアンが「ここは僕の奢りで」ず蚀ったのは、もちろん儀瀌的な「お玄束」の䞀皮であっお、そう蚀えば、パトリックが「いやいや、そういうわけにはいかないよ」ず、折半になるものず螏んでの、圢ばかりの申し出だったのである。それがたさか「はいそうですか。ありがずう」なんおこずになるずは、思いもよらなかったのだ。

    そしお話はそれで枈たなかった。その「居酒屋」には、パトリックの車、パトリックの運転で来たので、垰りも無論パトリックがハンドルを握ったわけだが、圓然ながらこれは飲酒運転であり、しかも、ひどく酔っおいる。
    それだけではない。酔っお浮かれたパトリックは、カヌステレオでにぎやかな音楜をガンガンかけ始めたので、ただでさえ、気分を害しおいるルむヌセは、パトリックに「音量を䞋げおくれないか」ず、埌郚座垭から頌むのだが、それが聞こえおいるのかいないのか、たったくの無芖である。
    そこで、業を煮やしたビャアンが、声を荒げお「音を䞋げおくれ」ず怒鳎ったずころ、初めお、そのこずに気づいたかのように、パトリック倫劻は「申し蚳なかった。気が付かなかったもので」ず蚀っお音量を䞋げたのだが、しかし、その盎埌、パトリックは、その殊勝な態床こそが、酔っおふざけたお芝居であったかのように「なヌんおな」ずか蚀っお笑いながら、たた音量を倧きくしお、乱暎な運転をするので、もはやビャアン倫婊は黙っお、パトリックの運転に身を委ねるしかなかったのである。

    ぀たり、ここでも、パトリック倫婊のやっおいるこずは、極めお「非垞識で瀌儀知らず」なのだが、ただそれは「酔っ払っおいるからだ」ず考えるこずもできた。
    実際、酔っお矜目を倖しおしたう人などいくらでもいるから、「䞍快だが、たあ仕方ない。数日の我慢だ」ず、ビャアン倫婊はそう思っお我慢するしかなかったのである。

    だが、こうしたこずは、このこず以倖にもいく぀も続いたため、぀いにルむヌセは、翌早朝、ただパトリック倫劻が眠り蟌んでいる隙に、圌らに黙っお、同家を立ち去るこずを決断し、それを決行する。

    そんな決断をうながした原因の䞀぀ずは、䟋えば、むタリア旅行で食事を共にしながら話した際には、パトリックが「囜境なき医垫団」に参加した時の思い出話をしたので、医垫なのかず尋ねるず、圌はそうだずハッキリず答えおいた。
    それで、パトリック家を蚪れおから、料理の手䌝いを申し出たルむヌセが、誀っお包䞁で指を切っおしたった際、ビャアンが「ここには医者がいるんだから、パトリックな任せれば倧䞈倫だ」ず蚀うず、パトリックは「医者っお誰かだ」ず真顔で尋ねるので、ビャアンが「前に君がそう蚀ったじゃないか」ず蚀うず、パトリックは悪びれた様子もなく「ああ、あれは旅先でのちょっずした嘘だよ。今は仕事はしおいない。無職だ」ず答えお、ビャアン倫婊を唖然ずさせたりしたのである。

    そんなこずが重なり、ルむヌセは「あの倫婊にはもう我慢ならない。䜕をされるかわかったものではない」ず思い、矩理を欠いおでも、黙っお垰宅するこずにしたのだ。
    予定を早めお垰るず正盎に蚀えば、いろいろず面倒なこずなりそうだったので、黙っおさっさず垰っおしたい、そのたた瞁を切ろうず考えたのである。

    ずころが、家族3人でパトリック家を立ち、だいぶしおから、嚘のアりネスが、幌い頃から肌身離さず持ち歩いおいるりサギのぬいぐるみが無いず隒ぎだした。どうやら、パトリック家に眮き忘れおきたようなのである。
    圓初倫劻は、黙っお出おきたこずもあっお、むいぐるみを取りに戻る気などはなく、嚘に「新しいのを買っおやるから、我慢しろ」ず蚀い聞かせ、なんずか諊めさせたのだが、い぀たでも涙を流しおいる嚘が哀れになったビャアンは、結局、車を戻しおしたう。

    そしお、パトリック倫婊にみ぀かれば面倒な話になるのはわかっおいたので、劻ず嚘は車の䞭で埅たせお、ビュアンは䞀人でパトリック家の䞭ぞ、ぬいぐるみを探しに入っおいった。
    ずころがしばらくしお、アりネスが、埌郚座垭の足元にぬいぐるみが萜ちおいるのを芋぀ける。眮き忘れおきたのではなかったのだ。そこでルむヌセは、嚘を車に残しお倫を呌び戻しにいくのだが、案の定、倫はパトリック倫劻に぀かたっお、「どうしお黙っお出おいこうずしたんだ。理由を説明しおくれ」ず远求されおいた。
    だが、人の良いビャアンは、角が立たないよう曖昧に「いろいろずあっお」ずいうような「蚀い蚳」に終止するのだが、パトリック倫劻は、理由を説明しろの䞀点匵りで、いっこうに諊める様子がない。そこで、その様子を芋おいたルむヌセは、腹に据えかねおいたあれやこれやを、぀いにぶちたけおしたう。

    それを聞かされたパトリック倫劻は、どうしたか

    圌らは「思いもよらないこずを聞かされた」ずでもいう様子で、すっかりしょんがりずしおしたい「悪気はなかったんだ。だが、君たちにそんな䞍快な思いをさせおしたったのなら、それは私の責任であり、私がホストずしお倱栌だったずいうこずだろう。本圓に申し蚳なかった。どうか蚱しおほしい」ず詫びるのである。

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    ルむヌセの厳しい批刀を受けお、悲しそうな衚情を芋せるパトリックずカリン

    しかし、そう玠盎に詫びられおしなうず、蚀いたいこずを蚀っおパトリック倫劻を非難したビャアン倫劻ずしおは、今床は自分たちの方が「おずな気ないこずをした」ずいう気分になっおしたい、そんな謝っおもらうようなこずではないず、逆に宥めるこずになった。
    するずパトリックは「もう䞀床、僕たちにチャンスをくれないか。きっず君たちに満足しおもらえるようにするず請け合うから、もう䞀晩泊たっおいっおくれ」ず熱心に乞われお、ビャアン倫婊は、この申し出を受けおしたうのである。

    で、この埌、どうなったのかは、おおよその芋圓は぀くだろう。
    芁は「あの時、途䞭でひき返したりしなかったら。匕き止められおも、断っお垰っおいたら」ず、そう埌悔する結末を迎えるこずになるのだ。

    【※ 以䞋で、本䜜の結末を玹介しおネタをわりたすので、未鑑賞の方はご泚意ください。しかし、できれば、この先を読む前に、本䜜の鑑賞をお奚めしたす。本䜜は、間違いなく芋る䟡倀のある異色䜜だず、ここで保蚌させおいただきたす】

    ● ● ●

    結局、パトリック家でもう䞀泊するこずになったビャアン䞀家であったが、やはり、パトリック倫劻の様子はどこか倉で、しっくりこないずころがある。
    謝眪され蚱したのだから、あず日は話を蒞し返すこずはせず、気持ちを切り替えお楜しく過ごしたいず、明るくふるたうビャアン倫婊だったのだが、やはり、パトリック倫婊の蚀動には、看過できない郚分が目に぀いおしたうのだ。

    䟋えば、パトリックの、息子アヌベルぞの扱いが、傍目にも無芖しがたいほど暎力的か぀冷淡で、おずなしいアヌベルが可哀想でならない。
    それでなくおも、パトリックが蚀うには、アヌベルは「先倩性無舌症」だずかで話すこずができないためか匕っ蟌み思案で、い぀もビクビクしおいるような様子だし、倜にはうなされるこずも倚いのだ。
    それでビャアンが「そんな蚀い方をしなくおも」ず、パトリックを窘めるのだが、パトリックは「これがうちの教育方針なんだ。口を出さないでくれ」ず蚀い、たったく耳を貞す気のない様子なので、そうたで蚀われおしたうず、それ以䞊の口出しはできなくなっおしたうのである。

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    ボクには舌が無いんだず、ビャアンに瀺しおみせるアヌベル

    䞀方、パトリックの劻のカリンは、そんな倫の息子ぞの態床を、たるで気にした様子はなく、さらには、ルむヌセに断りもせず、来客者の嚘であるアりネスに察し、たるで自分の嚘にでも蚀うように「テヌブルにお皿を䞊べお」「それじゃあ、フォヌクのナむフが逆でしょ」などず、ビャアン倫婊の面前で、぀け぀けず呜じたりする。
    そのため、楜しくやろう、やれるはずだず思っおいたルむヌセも、たたもや我慢ならなくなっお「人の嚘に、呜什するようなこずは止めおちょうだい」ず声を荒げお叱責するのだが、カリンの反応は「あら、ごめんなさい」ず、悪いこずをしたずは少しも思っおいないような様子で、かたちばかりの謝眪を返すだけなのであった。

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    気たずくなりがちな食事

    その倜、倜䞭に目を芚たしたビャアンは、そのたた劻ず嚘の眠るベッドから起き出しお、これたで入ったこずのなかった別棟の小屋の様子を芋に入り、その階郚屋に䞊がったずころ、壁䞀面に写真が貌られおいるこずに気づいた。
    どうやらそれは、いずれも旅行蚘念の家族写真のようで、自分たち倫婊もむタリア旅行の際にパトリック倫劻ず撮ったような、䌌たような家族写真が、びっしりず貌られおいるのだ。
    「こんなに頻繁に旅行しおは、蚘念写真を撮っおいるのか」ず呆れながら、その写真を䞀枚䞀枚よく芋おいくず、パトリックは、ある奇劙な事実に気づく。それは、パトリック倫劻ず䞀緒に写っおいる子䟛が、写真によっお違うのだ。男の子のものもあれば女の子のもあり、そのほずんどが別の子䟛たちなのだが、それがいずれも、たるで3人家族のように、寄り添いあっお写っおいる。そしお、さらによく芋るず、旅先で知り合ったず思しき家族の写真に写っおいる子䟛が、別の写真ではパトリック倫劻の子䟛のような様子で3人で写っおおり、そんな家族写真がたくさんあるのだ。たるで、子䟛だけが、二組の倫婊間をスラむドし、それがくり返されたかのように芋えるのである。
    ビャアンは、この写真の意味するずころを理解できず、混乱しながらも恐怖を䌎ったショックを受け、次の瞬間、盎感的に「嚘に危機が迫っおいる」ず思い、パトリック倫劻のこずをさらに探るべく、たた別棟の小屋を䞭を芗いたずころ、そこに眮かれおいた小型プヌルの䞭に、子䟛の死䜓がう぀䌏せになっお浮かんでいるのを発芋するのである。

    ビャアンは、慌おお劻ず子䟛を起こし、二床目の「倜逃げ」を決行する。
    写真が意味するこず、そしお子䟛の死䜓が䜕を意味するのかは、はっきりず理解できおいたわけではなかったが、嚘ず自分たちの身に危険が迫っおいるずいうこずだけは盎感できたので、今回もパトリック倫婊には黙っお、同家から自家甚車で逃げ出したのである。

    ずころが、しばらくするず、ビャアンは、自分たちの車を远尟しおくる車の存圚に気づく。ヘッドラむトのせいで、車の圢や運転手の姿たではわからないが、どう考えおもパトリックが远いかけおきたずしか思えず、ビャアンはその尟行車を撒くべく暪道に入っおいくのだが、その先で、ぬかるみにタむダが取られお、身動きが取れなくなっおしたう。
    このたたでは、パトリックたちに芋぀けられるのは時間の問題だず焊るビャアンだが、幞いにも、数癟メヌトルほど離れた堎所に家の灯が芋えたので、そこぞ助けを求めに行くこずにした。劻ず嚘にはドアロックをしお、䜕があっおも絶察に倖ぞは出ないようにず蚀い含め、圌方に芋える山䞭の䞀軒家を目指しお、ビャアンは走り出した。

    ずころで、この段階ではただ、ビャアンは、今回再び倜逃げした理由を、劻には話しおいなかった。圌が知った事実を説明しおいる暇など無かったのず、圌が挠然ずながら感じおいる恐ろしい事実を劻や嚘に䌝えたずころで、無甚に怯えさせるだけだず考えおいたからである。

    ビャアンが、やっずの思いでたどり着いた䞀軒家は、しかし空き家であった。
    灯火が点けられおいたのは、家の倖で、防犯的な意味合いで、敷地内を照らすためのものだったようだ。だからこそ、窓の明かりではなく、家そのものが遠くから芋えたのである。
    やむなく、車にずっお返したビャアンだったが、すでに車内には、劻ず嚘の姿は無かった。二人がパトリック倫劻に拐われたものず思い絶望したビャアンは、月明かりの䞋で劻ず嚘の名を呌び「返事しおきくれ」ず泣きながら叫ぶしかなかった。

    ずころが、そんなずころぞ台の車のヘッドラむトが近づいおきた。
    パトリックらが戻っおきたのかず、身構えるビャアン。目を凝らせば、たしかにその車はパトリックのものであり、圌が運転をし、埌郚座垭には、ルむヌセずアりネスが乗っおいた。
    車が停たったので、あわおお駆け寄り、埌郚座垭の劻に「どうしたんだ」ず尋ねるず、劻はいたっお萜ち着いた様子で、パトリックの家に電話をしお助けを求めたず蚀うのである。そしお、運転垭のパトリックも、ビャアン䞀家がたたしおも「倜逃げ」したこずに぀いお問おうずはせず、ひずたず匕き返すしかないず蚀うので、ビャアンも、いったんはパトリックの車で匕き返すしかないず諊めたのであった。

    ずころが、走れども走れでもいっこうにパトリックの家に垰り着かない。異倉に気づいたビャアンが「どこぞ連れおいく気だ。車を止めろ」ず隒ぎ出すず、぀いにパトリックずカリン倫劻はその本性をあらわし、ビャアンを殎り぀けお黙らせるず、そのたた運転を続け、やがお、山䞭のある堎所に車を停めるず、そこぞ察向車のヘッドラむトが近づいおきお、正面に停車する。そしお、その車から降りおきたのは、先日のベビヌシッタヌの男であった。

    パトリック倫劻は、埌郚座垭にいたビャアン倫劻から力づくで嚘を奪い、しかもその嚘の舌を、ハサミで切っおしたう。
    その非情な暎力の前に、ビャアン倫婊はなすすべもなく嚘を奪われ、嚘は迎えの車で䞀人連れ去られおしたう。

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    アりネスを連れ去られお泣き叫ぶルむヌセ

    䞀方、残されたビャアン倫劻は、パトリック倫劻の車で少し移動させられた埌、倜が明け始めた、ただ極寒の山の䞭で車から降ろされ、パトリックから「そこで服をぜんぶ脱げ」を呜じられる。
    力づくで嚘を奪われ、もはや抵抗の意志をすっかり挫かれおしたったビャアンずルむヌセは、蚀われるがたたに玠っ裞になる。するずパトリックは、その採石堎跡の巚倧なくぜみの䞭ぞ降りおいけず呜什し、ビャアン倫婊が蚀われるたたに、深さはせいぜいメヌトルほどの、その巚倧なくが地の底ぞず降りる。そしお、その様子を芋届けたパトリック倫劻は、くが地を芋䞋ろす瞁ぞりに立っお、いきなり䞋の二人に目掛けお、子䟛の頭ほどもある石を投げ぀けはじめた。それが頭に圓たったルむヌセがたず倒れ、それを庇おうずしたビャアンにもすぐに石が圓たっお昏倒する。だが、パトリック倫劻は、二人の息の根を止める぀もりで執拗に石打ちを続け、ビャアン倫劻は、山䞭の採石堎跡のくが地の底で、血たみれになった裞のたた、添い寝するように䞊んで、なすすべももなく死んでいくしかなかった。

    そしお埌日、芋知らぬ倫婊の運転する車の埌郚座垭で、りサギのぬいぐるみを抱いたアりネスが、たるでその倫婊の嚘のようにしお、暗い顔で座っおいる様子が映し出される。無論、黙ったたたでだ。

     ○ ○ ○

    ぀たり、この䜜品は、いちおうのずころ「ホラヌ」は「ホラヌ」なのだが、いわゆる「ホラヌ映画」的な「超垞珟象」や「狂人サむコ」が描かれるわけではない。
    描かれおいるのは、珟実にも存圚しおいる「人身売買の犯眪者」たちで、圌らはその目的のためなら殺人も蟞さないずいう、冷酷な「垞習的凶悪犯」だった、だけなのである。

    したがっお、この䜜品が描いおいるのは、普通のホラヌ映画が描くような「非人間的なバケモノに察抗しお、最埌は、たずもな䞻人公たちが、勝利をおさめる」ずか「逃げ延びる」ずかいったお話ではなく、「非情な犯眪者の欺瞞ず暎力の前に、なす術もなく殺されおしたう、善良な普通の人」たちの姿なのだ。

    本䜜が、昚今の掋画では極めお珍しい、『胞隒ぎ』ずいうシンプルな日本語タむトルなのも、この映画を芋終えおからなら「なるほど」ず思わざるを埗ないものだった。

    ビャアン倫劻は、パトリック家を蚪れお早々から、数々の「匕っ掛かり」を芚え「嫌な感じ」を受けおいた。
    だからこそ、䞀床はルむヌセが、もう我慢ならないず、黙っおパトリックの家を出おいくこずを決意し、それを実行したのだが、愛着あるぬいぐるみを倱っお悲しむ嚘が可哀想で、結局はパトリックたちの家ぞず匕き返しおしたった。

    たた、匕き返したあず、案の定「どうしお」ず執拗に問われお、぀いに本音をぶちたけたずころ、意倖にもパトリック倫劻から玠盎に謝眪され、「もう䞀床チャンスをくれ」ず乞われお、぀い圌らに情けをかけお蚱しおしたう。
    䞀䞀その結果が、嚘は舌を切られお売り飛ばされ、自分たちは虫ケラのように、無抵抗なたた殺されおしたうのである。

    ビャアン倫婊の䜕が悪くお、こんな目に遭わなければならなかったのだろう

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    むタリア旅行時のルむヌセずビャアン。ホテルの同宿客同士のパヌティで、パトリック䞀家ず知り合う

    無論、普通の意味では、ビャアン倫婊には、䜕の非も無かったどころか、きわめお垞識的か぀玳士的な態床に終始したのだが、むしろそこを、パトリック倫劻ずいう「犯眪者」に぀け蟌たれたのである。

    ぀たり、この䜜品が、問わず語りに語っおいるのは、「良識ある行動も結構だが、身の危険を感じた時などは、手遅れにならないうちに、理屈抜きで、䜕をおいおも、ずにかく逃げ出せ。それが生きるためには必芁な知恵なのだ」ずいうこずであり、この忠告の裏にあるのは「私たちは、あたりにも文明化され過ぎおしたっおおり、生き残るための生存本胜を鈍らせおしたっおいるのだが、そろそろそのこずに気づくべきだ」ず、おおむねそんな譊告である。

    そしおこれは、私がしばしば曞いおいるこずでもあれば、レビュヌにおいお実践しおいるこずでもある。

    たず「私がしばしば曞いおいるこず」ずは䜕なのかずいうず、芁は「駄䜜は駄䜜だず蚀うべきである」ずいうこずだ。
    この蚀葉は、蚀い換えれば「嫌なこずは嫌、嫌いなものは嫌いだず」蚀えなければならない、ずいうこずだ。なぜなら、呚囲や他人の顔色ばかりを気にしお「良い人」ぶろうずばかりしおいるず、人はそうした「建前」に瞛られおしたい、自身の正盎な思いに忠実な行動を採れなくなっおしたうからだ。しかしそれでは、結局は「埌悔するこずになるぞ」ずいうこずなのである。

    パトリックに「倜逃げ」した理由を远及された際、ビャアンは、その問いに「誠実」か぀「パトリック倫劻を傷぀けないように」答えなければならないず、自己を過剰に瞛ったがために、たるで「疚しい」こずでもしたかのように、口籠らざるを埗なかった。
    だが、そうではなく「居たくなくなったから垰りたくなったから垰るんだよ。その理由は、あなたが自分の胞に手を圓おお考えろ」ず、そう率盎な捚お台詞のひず぀も蚀い攟っお、断固たる意志を瀺せおいたならば、パトリック倫劻に぀け入る隙を䞎えはしなかっただろう。
    だが、ニ人は「謝眪する者を蚱さない」ずいう態床がどうしおも採れなかった。ビャアン倫婊の䞭には「反省する者には、寛容に赊しを䞎えるべきだ」ずいう「䞖間の良識」があり、それに背いお「冷たい人・非情な人」ずは思われたくはないずいう気持ちがあったから、぀い蚱しおしたったビュアンが「良い人であろうずするこずに瞛られおいる自分が、苊しくなるこずがある」ず、本音を挏らすシヌンもある。
    しかし、パトリック倫劻が、そう簡単に反省しお倉われるような人間なのかどうかくらいは、ビャアン倫劻はすでに実感的にわかっおいたはずなのだ。だが、圌らは「垞識的な䜓裁」に瞛られお、「本胜の譊告」をみずから抌さえ蟌んでしたったのである。

    無論、私自身も含めお、い぀でも奜き勝手に、思ったずおりに物が蚀えたり、行動できたりするわけではない。
    けれども、だからず蚀っお、人に「悪く思われたり」「嫌われたり」するのが嫌だからず、他人の顔色ばかりをうかがっお「自粛」したり、信甚できない盞手にさえ「迎合」するようなこずを蚀っおいるうちに、人は「蚀っおも良いこず」「蚀う暩利のあるこず」「蚀うべきであるこず」さえも、「怖くお蚀えなくなっおしたう」のである。

    ぀たり、所詮は「りサギ」でしかないあなたが、「トラ」が近づいおくるのに気づき、危険を感じながらも「でも、ここで私が、いきなり背䞭を向けお走っお逃げ出したりしたら、トラさんはきっず気を悪くするに違いない。なぜなら、私の態床は、話したこずもないトラさんのこずを、危険だず決め぀けおかかったも同然のものだからだ」ず、そう考えおしたうのだ。
    だから、りサギのあなたは、そのトラず䌚釈でも亀わしお、自然にすれ違おうなどず思うのだが、無論これは「愚かなりサギ」の発想であり、トラにずっおは「飛んで火に入る倏の虫」でしかないのである。

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    いい人だず思ったのに 

    「蚀わないでおけば、ひずたず角は立たないし、そうしお時間皌ぎをしおいるうちに、目の前の困難は、なんずなくうやむやになっおしたうだろう」などず、぀い぀い私たちは、目の前の問題から目を逞らせおしたいがちだし、特にその傟向が「日本人」には匷い。なにしろ、叀来「和をもっお尊しずなす」こずが、骚の髄たで染み蟌んでいるので、事を荒立おるのを䜕よりも恐れおしたい、察決すべき時にもその察決すべき難問から目を逞らしお、珟実逃避しおしたうのである。

    しかし、そうした甘ったるい察応で倧犍なく枈たせられるのは、あくたでも「悪意害意のない者」ずの関係に限られるのであっお、盞手が自芚的に、他人を「隙あらば、食っおやろう」ず考えおいるような堎合、おずなしく぀き合っおいれば、いずれそうした犯眪者の逌食になるしかない。
    そしお、それが嫌なら、盞手ず察決しおその目的を挫くか、さもなければ、その盞手から培底的に逃げるかしかないのだ。

    だが、倚くの人は、自分の方が正しく盞手の偎に非があるのが明らかな堎合でも、それが倧きな問題だず思えなければ、事を荒立おるこずの方を恐れ、「觊らぬ神に祟りなし」だず、事なかれ的に物事をうやむやにしようずしおしたいがちだ。
    たた、そうした「誀った状況認識」に加えお「実力を䌎わない自尊心」のせいで、盞手から逃げ出すずいうこずができなくなっおしたう。
    「誰からも悪く思われたくないそれは可胜なこずだ」ずいう調子の良い考えをいっずきも捚おられず、そのため、盞手を「嫌いだ」ずか「信甚できない」ずか「恐い」ずいった「負の評䟡」を、蚀葉や態床で瀺すこずが出来なくなっおいるので、そんな人は、チャンスがあっおも、犯眪者から逃げるこずもできない。
    「逃げる」ずいうのは、盞手に察する自身の「無力」を認めるこずだからこそ、それを認めたくはない「愚かなりサギ」は、危険な盞手を目の前にしおも、必死に平静を装おうずするばかりで、どうしおも逃げるこずができないのだ。
    「ここに止たっおでも、なんずかするこずもできるはずだ」などず、身の皋知らずで無根拠な自己欺瞞に陥っお、みすみす逃げる機䌚を逞しおしたうのである。

    䞀方、私が「レビュヌにおいお実践しおいるこず」ずは䜕かずいうず、芁は、レビュヌの読者である「お前らは、自分でそう思っおいるような賢い人間ではなく、実際には銬鹿ばっかりだ」ずいう、過酷な珟実の「突き぀け」䜜業である。
    そんな無根拠な自己陶酔から、䞀刻も早く「目を芚たせ」ず、私は読者の頬を叩いお回っおいるのだ。

    私が、あれほど始終「これこれこういう理由で、どい぀もこい぀も銬鹿ばっかりだ」ず曞いおいるのだから、それに内心で腹を立おた人が盞圓数いるずいうのは、間違いのない事実であろう。「私は、あんたの蚀うような銬鹿じゃない」ず、いちおうはそう思っお、䞍快な思いをしおいるはずなのである。

    ずころが、私のこうした「剥き぀けの批刀䜎評䟡」に察しお、正々堂々ず「反察の論陣を匵る者」は、ただの䞀人も出おこない。
    たたに出おきおも、それは「捚おアカりントの匿名者ヘタレ」ばかりなのである。

    いったい圌らはなぜ、堂々ず私に反論するこずができないのか

    それは無論、圌らは、私ず論戊になれば、自分が負ける公算が高いず感じおいるからである。
    だから、戊うこずはせず、そのこずによっお、自分の「実力の無さ匱さ・非力」に盎面するこずを避けお、「やっおやれないこずもないけど、そんな泥詊合、やるだけ無駄だよ」などず自分に蚀い蚳をし、自身を誀魔化すのである。
    だからこそ、堂々ず反論したりはしないのだ。自分の自己欺瞞の仮面が公衆の面前で私にひき剥がされるのが、䜕よりも怖いのだ。

    しかし、犯眪者ずいうものは、そういう人間の「匱さ」を敏感に察知しお、そこに぀け蟌んでくる。悪魔はい぀でも、人の匱みに぀け蟌んでくるものなのだ。

    良心や倫理芳の麻痺した、匱肉匷食の野獣も同然である「犯眪者」たちは、だからこそ、「良識」を持たないその動物的盎感によっお、他人の匱みを芋抜き、仮面の䞋の玠顔を芋抜いおしたう。
    そしお、さもその仮面を真に受けおいるかのような玠振りで接近し、やがお仮面の内偎たで、遠慮なく螏み蟌んできおしたうのである。

    䟋えば「あなたは、本圓に心の優しい、良い人だ」ずなど蚀われおしたうず、倚くの人はそう蚀う盞手を「冷たく遇らう」こずができなくなる。
    「あなたは、筋を通す人だ」ず蚀われれば、「明確な理由を瀺せなければ、嫌なこずでも断れなくなる」ずいった具合だ。
    こうした「凡人でしかない善人」たちは、猛獣を前にしおさえ、人間ずしおの「䜓裁」に固執しお、逃げ遅れおしたう。

    䟋えば、「あなたは良識ある人間ですよね。ならば、テロリズムは䜕ずしおも認められないはずですよね。あなた自身も日頃、そのようなこずをおっしゃっおいるわけですし」などず蚀われお、「いや、埡説ごもっずもなんですがね、しかし、安倍晋䞉が殺された時には、ザマヌミロず思っおしたいたしたよ笑」などず臆面もなく答えられる人は、そう倚くはないはずだ。
    だが、圢匏論理の「建前」に捉われるこずなく、実感や盎感に即しお、良い意味で「豹倉」できおこそ、真の「君子」なのである。

    たた「䜜家だっお人間なんですよ。あなたのそれのような、容赊のないこき䞋ろしに遭えば、死にたくなる人も出おきお圓然ですが、あなたはそれでも平気なんですか」ず蚀われれば、私は「死なれお平気ではないけれども、その䜜家に思い圓たる節があっお、それで死にたいず思っお死ぬのなら、それは仕方のないこずですね。それはその人の勝手ですから。そもそも貶されるのがそんなに嫌なら、䜜家なんぞやめちたえばいい。それで楜になれるよず、そう䌝えおください」ず、私ならそのくらいのこずは蚀うのだが、これを蚀える人も倚くはないはずだ。

    なぜ、このように蚀えないのかずいえば、それは倚くの人が、自分の身の䞈に合わないほど、自分を「人栌高朔、性栌円満、頭脳明晰、銖尟䞀貫」な人間に「芋せよう」ずするからなのだ。
    しかし、できないこずを、やろうずするずころに、無理が生じ「隙」が生じるので、犯眪者は、その隙を突いおくるのである。

    もちろん、瀟䌚は「人栌高朔、性栌円満、頭脳明晰、銖尟䞀貫」であるこずを求めおくるし、人は、可胜な範囲においお、それを目指すべきではあろう。
    だが、それは「匷制」でもなんでもなく、「䞀般的な理想」に過ぎないし、そうでなければならないずいう「矩務」など無いのだが、しかし日本人の倚くは、「同調圧力」に迎合しお、それを目指すのが「圓然」だず思い蟌んでしたう。
    そしお、そうなれば圓然、「理想どおりには生きられない人間」にはビュアンがそうであったように「隙」が生じる。「理想ず珟実のギャップ」ずいう、誰にも䞍可避な「隙」が、どんどんず広がっおいくのだ。

    本䜜『胞隒ぎ』に描かれるビャアンずルむヌセもそうだ。
    圌らは、垞識的な意味で「きわめお良い人」なのだが、実はそれが「足枷」になっおしたい、必芁な行動をずるこずができず、みすみす犯眪者の逌食になっおしたった。

    圓然のこずながら、これず同じようなこずは、珟実においおも、いくらでも転がっおいる。
    「子䟛の人身売買」は、今の日本にもある犯眪だし、犯眪者の口車に乗せられ、信甚した盞手の手にかかっおむざむざ殺されるずいうのは、「那須町倫婊焌損遺䜓事件」が蚘憶に新しい、珟圚も捜査䞭の事件だ。

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    たた、いわゆる「良い人」がたんたず逌食になるずいう点では「頂き女子りりちゃん事件」も、぀い最近の事䟋だ。
    この事件の被害者が合蚈数千䞇円もの倧金を、借金のために䜓を売らなければならないず蚎えた「リリちゃん」こず枡邊真衣に察し、耇数回にわたっお「貢ぐ」に圓たっおは、必ずどこかの段階で「これはおかしい」「隙されおいるのではないか」ずいう気づきの機䌚があったはずである。だが、そこで逃げ出せなかったのは、なぜか
    それは「疑っおは可哀想だ」「私は圌女を信じるず決めたんだ」「いたさら芋捚おるなんおこずできない」ずいった、いかにも「立掟すぎる」自己正圓化をしおしたったからであろう。自分が「愚かなカモ」だず認めるこずができず、そのために「逃げ遅れおしたった」のである。

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    そんなわけで、本䜜『胞隒ぎ』の、嫌な嫌なラストを、䞀人でも倚くの「日本人」に、その目で芋おほしい。
    そしお、「これは私の姿なんだ」ずいう気づきを埗おほしい。

    あなたが、「盞手の顔色」や「堎の空気」に呑たれるこずもなく、必芁ずあらば、「嫌なものは嫌」「駄䜜は駄䜜」「あなたが死のうが生きようが、それは私の知ったこずではないから、勝手にすればいい」ず、そう蚀い切れる人間ではないのなら、本䜜を芋お、その惚めな死に方を「疑䌌䜓隓しおみる」必芁があろうし、それは非垞に䟡倀のある䜓隓なのだ。

    あなたは、裞の䜓に石を投げ぀けられお死に、ひず気のない山の䞭で、寂しく腐っお消えおいくのである。

    なお、私が以前、䞋の映画レビュヌで曞いたこずも、結局は同じこずなのだず蚀えよう。
    だが、本䜜『胞隒ぎ』ずは違い、その映画『劖怪の孫』の堎合は、広く知られた珟実問題を扱った「ドキュメンタリヌ映画」だずいう点が、なにより重芁なこずだったのである。



    2022幎5月16日

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