
『きのこ王国』
めったに自炊をしない私が、思い立って炊き込みご飯を作ることにした。
いつものスーパーへ歩いて行って食材を揃える。普段は見向きもしないマイタケやしめじをまじまじと見つめ、一番綺麗そうなものを選んでかごに入れた。
家に帰って、さて、炊き込みご飯をしようと台所に立つ。
ところが、食材を買い物バッグから出そうとしたところで思わぬ問題に気づいた。
マイタケとしめじが、何やら話し込んでいる。
私は気づかれないようにそっとバッグを持ってリビングへ行き、腰をおろして彼らの会話に耳を傾けた。
「果たしてきのこ王国の未来はどうなることか」
マイタケが真剣な声で言った。
「しめじの君には分からん事だがね。マイタケの村には古くから続くマイタケ占いというのがあってな。毎年、村長の家系の長男マイタケがきのこ王国の王様に会いに行くのだよ。そして王様に左手を裂いていただく。その裂け方できのこ王国の運命が分かるのじゃ。わしは新聞で今年の裂け方を見たが、あれは酷いもんじゃった」
マイタケは険しい顔でため息をついた。
「しかし我々はラッキーでしたね。人間のおかげでこうしてきのこ王国を早めに脱出できたのですから」
「ばかもん、きのこ王国に取り残された者たちの身にもなってみろ。ああ、どうにかしてきのこ同士の連絡が取れればいいのじゃが。なにしろわしらは動けないからなあ」
マイタケとしめじは黙り込んだ。きのこ王国の存続会議は行き止まりだ。私は気が付くとスーパーへ走り出していた。
えのきとエリンギとしいたけを求めて。