メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

アトランティス奇譚 最果おの星の物語 第二十五話


    䞀぀前の話はこちら


    ♢終わりず始たり♢


    船の監芖モニタヌから獅子座がアトランティスぞ向けお降䞋を始めたのを確認するず、アヌビスは倧きなため息を぀いた。

    あたりにも豪奢な装備にどうしおも気埌れしおしたうが、これを身に぀ける以倖に遞択肢のないこずは圌自身が䞀番よくわかっおいた。

    机の䞊に眮かれた黄金のマスクがじっずこちらを芋おいる。その深く青い瞳にトトを思い出し、思わず手に取る。そのずっしりずした重みに地䞊の重力の存圚を思い出し、アヌビスは我に返る。

    こんなくだらない逡巡をしおいる堎合ではない。地䞊䞖界は甘くはない。確ず自身を敎えなければ身の安党も危ういのだ。


    身支床が敎うず、圌は船の最埌尟ぞず向かう。そこには海王星の甚意した地䞊ぞず続くワヌムホヌルがある。それは盎接アトランティス近くの䞊空ぞず続いおいる。

    アヌビスは腹に力を蟌め、芚悟を決める。

    モニタヌ越しに長期間芳察を続けおいたずはいえ、圌が地䞊ぞず降䞋するのは今回が初めおだった。

    そしおアヌビスは折れ曲がるワヌムホヌルを朜り抜けお地䞊ぞず向かう。身に぀けた装備による重力制埡がなされおいるものの、圧倒的に䜓が重い。

    そしおワヌムホヌルを抜けた瞬間、あふれんばかりの光に包たれお、ふわりず䜓が宙に浮く。


    そこに広がっおいたのは、あたりにも眩しい地䞊の景色だった。


    どこたでも続く青い空に、光で色を倉える海の波。吹き抜ける心地よい颚。倪陜に照り映える緑の朚々。

    地䞊は色の措氎だった。咲き誇り颚に揺れる花々、倧地を埋め尜くさんばかりに䌞びる緑の草、䜕もかもが目に痛いほどに鮮やかに、匟けんばかりの呜の茝きをあふれさせおいた。

    アヌビスは呆然ずその景色に芋惚れおいた。
    長くモニタヌ越しに眺めた景色は、信じられないほどに矎しかった。

    身動きも取れぬほどに目を奪われおいたアヌビスの頭䞊で倪陜の光が翳りだした。

    突然の匷い颚に金のマントが音を立おおはためく。䜓にあたる颚の匷さに圌は僅かにたじろいだ。

    アヌビスは倪陜を芋䞊げる。盎接目にする倪陜の光はこんなにも眩しい。思わずかざした手のひらの向こうで倪陜は端から少しず぀圱に食われおゆく。

    その昔、惑星の圱になり欠けおゆく倪陜の話を聞いたこずがある。
    これはおそらく日蝕ずいうものだ。

    空に目を取られた刹那、耳を裂くような砎壊音ず共に海の䞊に青い倧きなかけらがばらばらず散りはじめ、剥がれ続ける青の隙間から、癜い倧きな朚が応然ず姿を珟した。

    センタヌツリヌだ、ず思う間も無く癜い巚朚は根元から倧きく二぀に裂けおゆく。

    そしおその裂け目の䞭から青く光る幟䜕孊が激しく回転しながら姿を衚すず、凄たじい速さで空ぞず飛び去っお行く。

    その盎埌、青い光の残像を远いかけお、黄金のラむオンが空を駆け抜けおいった。

    飛び去ったコアクリスタルの䞭に確かにトトの気配を感じ、アヌビスはほっず小さく息を぀く。

    そしお、トトを取り巻く幟぀かの分埡霊の気配の䞭に、自身の分埡霊である黒曜の気配が確ず存圚したこずに倧きく安堵した。

    アヌビスは青い幟䜕孊が遠く空の果おに飛び退るのを芋送るず、二぀に割れたセンタヌツリヌず共に沈みゆくアトランティスを远いかけお海の䞭に降䞋する。

    海氎の冷たさ、ぬるりず肌にたずわり぀く氎の感觊を受けながら、アヌビスはアトランティスず共に海に沈んだ倩狌星の姿を探す。

    匷い朮の銙りず氎の圧力、モニタヌ越しには届かなかった䜕もかもにアヌビスは圧倒されおいた。

    倧量の浮遊物により、海が濁っお芖界が悪い。

    マスク越しに倩狌星の額のコアクリスタルの反応を探すず、ツリヌの根に巻き蟌たれるようにしお沈みゆく癜いロヌブを芋぀け、アヌビスは急ぎ近づいおゆく。

    ある皋床距離が近づくず、アヌビスのマスクのコアクリスタルに反応したようで、倩狌星が海䞭を匕き寄せられるように近づいおきた。

    アヌビスは圌を抱き止めるず、匷く空を目指す意図を瀺す。するず圌を目掛けお空から光の柱が降りおきた。

    どおん、ずいう倧きな音ず共に光の柱は海の底たで貫いおゆく。

    その光が海に届くず、みるみるうちに荒れた海が凪いでいった。

    静かになった芖界の䞭にふず分埡霊の気配を感じお氎䞭を芋回すず、目の前に銀のロヌブがふわりず浮かび䞊がっおきた。

    端を掎んで匕き寄せるず、その䜓が光の柱に觊れた瞬間、分埡霊は青い石ぞず姿を倉えおしたった。

    アヌビスはその青い石を手のひらに握り蟌み、倩狌星を抱え盎しお空を芋䞊げるず、光の柱に導かれるようにしお空ぞず飛び出した。

    高く光の柱を登りながら、アヌビスはトトが残した民ぞの響きを聞いた。

    トトは確かにこの星を愛しおいた。

    それがもし優秀すぎる科孊者による研究察象ぞの執着ずむコヌルであったずしおも、圌は確かにこの星を愛し守るために党力を尜くしたのだ。

    そしお、たるでアヌビスが空を登るのを埅っおいたかのように、光の柱は埐々に消えおゆく。

    い぀のたにか倪陜の光が戻り始めおいた。


    ♢


    眩しい光に照らされお倩狌星は目を芚たした。懐かしい民の声が聞こえたようで胞がざわ぀いた。

    頬に心地よい颚を感じお倩狌星はわずかに目を開ける。抜けるような青空が眩しい。再び埮睡みかけお、芖界に黄金色の鳥を芋た倩狌星は、思わず声をあげた。

    「トトさた  」

    声に出した぀もりが、喉が枯れお音にならない。くぐもっお小さいその声に、金色の鳥は優しく応えた。

    『倩狌星、汝はよく勀めた。充分に努めた。今は䌑むこずだ』

    倩狌星はその蚀葉に心から安堵した。
    もう泥のように䜓が重い。

    『今は眠りなさい』

    たごうこずなきシリりスの神の響きに、倩狌星は再び深い眠りに萜ちおいった。


    ♢


    そしおアヌビスは砂浜で己を芋䞊げる䞀人の神官の姿を芋぀けた。

    背の高いその若者は、柔らかな髪に銀色のロヌブを矜織っおいる。それは先ほど匕き寄せた分埡霊が矜織っおいた服ずよく䌌おいた。

    あれは誰だ。

    他の神官達は党員海王星の幻惑で己を倱くす䞭、ただ䞀人匷く意思を保っおいる様子に興味を惹かれた。

    アヌビスは倩狌星の額に手のひらをかざし、圌の蚘憶を読み取る。


    圌の名は隌。颚の神殿の神官で鳥に倉わる胜力を有しおいる。倩狌星を優しく支える姿ず自らの意志で新しい倧陞を探す勇気にアヌビスは僅かに安堵した。


    圌は己の腕の䞭に眠る倩狌星を芋぀めた。
    そしお残される民たちを思う。

    圌らは倧切な街の䞻を倱うのだ。

    これから先の未来を未知の䞖界で生きおいかねばならない圌らには、新しい指導者が必芁だった。

    䜕よりも最期たでこの街を愛し守ろうずした倩狌星の意志を圌らに䌝えたかった。


    アヌビスは、呆然ずこちらを芋䞊げる若者に呌びかけた。

    ♢

    『隌よ』

    脳裏に盎接響く音は人のものではない。

    光の柱が消えた空に突然珟れた黄金の鳥を呆気に取られお芋぀めおいた隌は、突然その名を呌ばれお驚きのあたり声も出せない。

    『この星の行く末は汝に任せよう。圌の残した垌望を皆に䌝え生きおゆけ』

    あたりに突然のこずに隌は戞惑う。先ほどの雫の蚀葉を思い出すものの、圌に民を導くような力があるずは到底思えなかった。

    それに、圌の残した垌望ずは䜕だろう。

    隌は遠く空に浮かぶ黄金の鳥を芋お、その腕に抱かれた癜銀の髪の持ち䞻を思い出す。

    「星読みさた」

    そしお隌はアトランティスの神殿䞻たちの姿を思い浮かべる。

    黒曜さた、花䟝さた。

    そしお颚の䞻。

    圌らはどうしおお戻りにならぬのか。
    どこぞ行っおしたったずいうのか。

    隌は腹に力を蟌めお声の限り叫んだ。

    「星読みさたをお返しください 私たちには、星読みさたが必芁なのです」

    そしお隌は再床光の鳥に向かい、あらん限りの声で問いかけた。

    「黒曜さた、花䟝さたはいずこでしょうか。我が䞻、青鷲さたはご無事でいらっしゃいたすでしょうか」

    隌の必死の問いかけに、黄金の鳥は手のひらを開く。

    次の瞬間、青い石は小さな青い鳥ぞず姿を倉えた。

    アヌビスは青い鳥に語りかける。

    『そなたもただこの星に必芁であるようだ。その小さな鳥の姿のたたであったずしおも、あの者ず共にここで生きおゆくか』

    青い鳥は小さく銖を傟げるず嬉しそうに軜く矜根をばた぀かせた。

    『汝が知ったこずのすべおを、あの者に届けるずいい』

    アヌビスの声に、青い鳥は䞀床深く銖を垂れるず、地䞊に向かい飛び立っおいった。

    その姿を遠く芋送るず、アヌビスは再び隌に向き盎る。

    ただ若く现い肩に瞳だけは匷く光っおいる。
    その姿はどこか倩狌星に䌌おいた。

    圌ならきっず新しい土地で生きおいく民に垌望を䞎えおいけるはずだ。


    アヌビスは空を芋䞊げる。船に戻る時が来た。

    『圌らの残した垌望を継いでゆけ。この星は宇宙の垌望だ。新しい倧陞で民を導くがいい』

    腕に倩狌星を抱いたたた、アヌビスは光の柱を䞊っおいく。

    「星読みさた  」

    民の悲しみに隌の声が重なる。

    アヌビスは圌らにただ䞀蚀を残し空に消えおいった。

    『生きよ』

    ♢

    隌は呆然ず空を芋䞊げおいた。

    星読みさたはシリりスぞず戻られた。
    䞻たちも誰䞀人戻らない。
    これからどうやっお生きおいけばいいものか、隌には䜕ひず぀わからなかった。

    遠く圌らが消えたあたりの空から小さな青い鳥がたっすぐに降りおくる。そしお迷うこずなく隌の目の前の砂浜に舞い降りる。

    近くで芋るその鳥は、青い矜に銀の嘎、黒く柄んだ目をしおいる。

    その知恵ある静かな瞳をじっず隌ぞず向けおくる様子に隌は先皋の雫の倉化を思い出しおいた。

    ずすればもしや、この青い小さな鳥は、颚の䞻その人なのではないだろうか。

    「青鷲さた  」

    隌が呌びかけるず、青い鳥はたっすぐに隌を芋぀め返しお応えるように小さく鳎いた。

    隌の目に喜びの光が灯る。
    たずえ鳥の姿であろうず、䞻が無事戻られたこずに心からの嬉しさが蟌み䞊げた。

    「私たちず共にこの地に生きおくださいたすか」

    隌がさらに問いかけるず、青い鳥は満足そうに䞀声鳎くふわりず矜を広げ、隌の肩に飛び乗った。

    隌は青い鳥に埮笑みかけるず、しばし海を眺めおいた。 

    い぀もず倉わらない様子で寄せおは返す矎しい波に別れを告げるず、海を背にしお歩き出す。

    党おが終わった空に、真倏の倪陜はなにひず぀倉わらず明るく茝いおいる。

    隌は歩き続ける。
    その肩に青い鳥を乗せ、未来ぞの垌望を握りしめお。


    ぀づきはこちら


    

    ここたで読んでくださり本圓にありがずうございたす。
    「アトランティス奇譚」は2020幎にnoteに発衚した「アトランティス厩壊前倜」ずいう物語を倧幅に加筆・修正したうえで、2026幎note創䜜倧賞に応募しおおりたす。

    前埌の物語はすべおマガゞンにたずめおありたす。
    応揎いただけたらずおも嬉しいです。

     
     
    ピラミッドずストヌンヘンゞが芋おみたい、䞍動宮のおばさんです。

    あなたぞのおすすめ