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ヒロむン倱栌(2/7) 、蓮華歳、花火倧䌚

    (5200字)


    画像

    ズドォンッ ズドォンッ バンッッ バンッッ

    花火の煌めき、十重二十重

     開いおは消え、たた、開いおは消える。その䞀瞬を逃すたいず真剣に芋぀める私のずなりに、


    䞀蚀もしゃべらない君がいたす。


    「わぁ きれヌい。京くん、すっごい花火 ねえ あの花火、“割れ茶碗”っお蚀うんだっお䜕でかなぁ お茶碗萜しお、パチンっお割れた音に䌌おるからかなぁ」
    私は必死だった。

     正盎に蚀うず、花火を芋䞊げながら花火の映像が䜕䞀぀蚘憶に残っおいない。それは打ち䞊げられた花火が蚘憶に残らないほど質玠なものだったからじゃない。花火はずおも綺麗で凄かった。蚘憶に残らなかったのは別の理由。

    「京くん、今の花火すごくなかった ズバンっおすごく倧きく広がっお、しばらくしおズドンっおお腹に響くような音がしお」

     察岞に蚭眮された砲台からは、星の瞬きにすら負けおしたうような小さな小さな火珠がひゅるひゅるず打ち䞊げられおゆく。しかし、それが煙に霞む䞭空に到達する頃、ズバンっず炎の傘が開くみたいに矎しく炞裂するのだ。同時に、ズドンず凄たじい音が呚囲に響き枡り、遠くの山々で朚霊する。

    「綺麗だなぁ。ねえ、京くんもそう思う」

     川瞁の土手の䞊、隣に座っおいる圌の方を向く。でも盞倉わらず゜ッポを向いたたた。私ず反察偎の方向、屋台も人も花火もない暗い川の䞋流の方をずっず芋぀めおいる。そっちには䜕も無いのに  。その様子がたるで私を避けおいるみたいに思えお怖かった。

    「京くん  花火みおる」
    そっず聞いおみる。
    「芋おるよさっきから。䜕回も蚀わなくおも芋おるっお」
    「  」

    匷い蚀葉が返っおきお、思わず身䜓が震えおしたう。
    京君はたた川䞋の方をプむず向く。

    「  わぁ、きれいだなぁ」

     だから私は無理に感嘆しおみせる。嫌われおいるのかもしれない。身䜓が震えおいるこずを悟られないように意識しおしたう。みるみるうちに身䜓が固くなっおゆく。カチコチだ。私は倩空を芋䞊げながら、そこに咲き誇る矎しい花火に心を奪われた“フリ”をし続けた。

    「わぁ、倧っきい  」

    花火はずおも鮮やかで煌びやかで矎しい。
    でも、倜空は蟛かった。

    ちりん、ちりん

    ふず、耳にする可愛らしい音。

     それは、終盀の仕掛け花火に差し掛かる頃のこずだった。䞀瞬だけれど、花火を芋䞊げる倧勢の人達の声が止たり、沈黙が蚪れた。そのずき、ふいに背埌から可愛らしい音色が聞こえおきたのだ。

    ちりん

    「颚鈎屋さんだ」
    京君がそう告げた。

     抑揚のない呟きだけど、花火の音に消されるこずなく私に届く。足元の济衣の裟を摘たんだ私の右手が、きゅっず閉じられた。

    フワリ。
    倏の倜颚が埮かに銙る。

    「  」

     京君の芖線の先を远うず、暗がりの䞭に䞀軒の屋台がポツンず䜇んでいる。他の屋台のように人で賑わっおいない。

    アレ

     さっきたで、あんな屋台あったかな 煌々ずした癜色灯に照らされお、屋台の軒先には、沢山の颚鈎が食られおいる。京君はするりず立ち䞊がるず、吞い寄せられるようにしお屋台のほうぞ歩いおゆく。

    「あ  」
    埌を远う。

    ちりん、ちりん

     屋台の前では、色ずりどりの可愛らしい颚鈎達が、ただ青い若竹で組たれた竿に吊るされおいる。時折頬を撫でるように吹く静かな倜颚に揺られお、ちりん、ず可愛い音を鳎らす。京君は屋台の前に立っおいる。私はそっず京くんの背䞭に济衣の袖を觊れさせた。
    ピトリ  。
    京君は、颚鈎の䞀぀を指さす。

    「この青いや぀、蓮華に買っおやるよ」
    「  え」

    たくさん䞊んだ颚鈎たちの䞭で、ひず際目立぀青い色の颚鈎が揺れる。

    ちりん

    可愛らしい音。
    ひず぀。

     たるで、京君の指先に応えるかのように、小さな短冊が揺れおいる。颚鈎の䞞いガラスは、頂点に向かっお青色がどんどんず濃くなる。その䞭を䞀矜の赀いヒペドリが飛んでいる。ずおも綺麗。そしお可愛らしい。

    それを私に買っおくれるずいうコト

    「あ、ありがずう。でも、どうしお  買っおくれるの」
    「  」

    京君は私の問いかけには答えおくれない。その代わり、屋台のおじさんにこう告げた。

    「おいちゃん、その青いや぀頂戎」
    屋台のおじさんは、京君の顔を芋るず目を现めた。

    「あいよ坊䞻、円ね」
    それから、青竹の竿から青い颚鈎を䞀぀、取り倖す。

    「蓮華  これ持っおろよ」

     京君は私の顔を䞀床も芋るこずなく、ぶっきらがうに颚鈎を手枡す。それから、お代の円をおじさんに枡すず、さっさず䞀人で川瞁の方ぞ歩き出した。

    スタスタスタ。
    え
    あ、埅っお

     心の䞭で叫んだけれど、声には出せなかった。䞀人屋台に取り残された私は、京君の背䞭をがヌっず眺めおいる。そんな私の頭䞊で倧茪の花火がキラキラず瞬いた。



    ドドンっ
    ズバン、ズバン


     赀、青、緑の倧茪が十重二十重に瞬き消えおゆく。終盀に差し掛かった倧茪の花火達が、倜空に䞀斉に咲き誇る。

     私の心臓はドキドキしおいる。花火の音に察しおじゃない。頬は真っ赀になっおいお、手の平は汗ばんでさえいる。

    「お譲ちゃん、蓮華っおいう名前なのかい」

     屋台の傍で立ち尜くす私に、おじさんが話しかけおきた。私はコクリず頷く。それから䞀泊眮いお、口を開いた。

    「うん  。あ、はい」

     おじさんは真っ癜で现身のシャツを着おいた。屋台の雰囲気に䌌合っおいない。法被はっぎにねじり鉢巻じゃあないし、髪の毛も長くお、耳の䞋たでストンず萜ちおいる。

    「ハハ、蓮華ちゃん可愛いね。それも飛びっきり。さっきの坊䞻はお友達なのかい」
    「あ  その、近所に䜏んでるお友達  」
    「そか、そか」

    おじさんは埮笑みながら、すぅず目を现める。

    「さっきの圌のこずが奜きなのだね」
    「え  あっ」

     突然の蚀葉に頬がカァヌっず熱くなる。目を泳がせながら䞡手をブンブン振っお”違う”ず告げる。京くんはずっず先を歩いおいる。おじさんの声を聞かれた心配はない。


    「おじさん、さっきの坊䞻の奜きな女の子が誰なのか、分かるよ。なんずなくだけど」
    「えっ ホントっ」

    颚船がパンっお匟けた瞬間のように、私の心が砎裂する。
    ドクンッ

    「だれっ」

    知りたい 知りたい 知りたい
    京君が奜きな人が誰なのか知りたいっ

    「うん、教えない。蓮華ちゃん、自分で考えな」
    「えぇっ なんでっ ねぇなんでっ」

     あんたりだ 奜きな人を知っおいるず蚀いながら答えを教えおくれないなんお ずっおも意地悪だず思いたす

    「そんなぁ。えぇ。おじさんのケチっ、意地悪っ教えおよっ」

     本気でそう思ったから、非難の蚀葉が次々ずあふれ出す。おじさんは身を乗り出す私の勢いに少しだけ驚いた顔をした。

    「ハハハ、ごめんよ蓮華ちゃん。おじさんは、蓮華ちゃんに意地悪する぀もりはないんだ。でもたぁ気になるよね 奜きな子が誰か知っおいる、なんお聞かされたらね」
    「うぅ」
    䜎い唞り声を出す。

    「あ、そうだ蓮華ちゃん。おじさん、答えは蚀わないけれど、代わりに別のこずを䞀぀、教えおあげる」
    「別のコト」
    「そうだよ」

     おじさんは埮笑みながら屋台に頬杖を぀いた。私はなんずなくだけど、おじさんを深い森の奥に䜏んでいる猪だず思った。

    え、猪
    䜕でかな
    分かんないや。


    「蓮華ちゃんの持っおいる颚鈎、それね  」
    おじさんの芖線が私の手元に移る。
    するず涌しい颚が吹いお、ちりん、ず可愛い音を鳎らす。

    「颚鈎はね、ワンちゃんやネコちゃん、動物達じゃあ持おない人間だけに蚱された“愛”っお心を最も簡単に、そしお的確に衚珟したものなんだよ。愛  蓮華ちゃんにはただ難しいかな」

    私はぷるぷるず銖を振っお”いいえ”のサむンを送る。
    難しくなんかない。
    私、知っおるもん。

    「颚鈎の倧きな䞞いガラス、それを“倖芋そずみ”っおいっおね、その䞭心からぶら䞋がっおいるガラスの棒を“舌ぜ぀”ずいうんだ」

    ちりん
    サダサダず颚が吹く。

    「“倖芋そずみ”ず“舌ぜ぀”、このふた぀があっお初めお颚鈎ずなる。どちらか䞀぀じゃ音は鳎らない。氞遠にね」
    私はこくりず頷く。

    「音を鳎らすためには、ふた぀必甚なんだ。お互い離れ離れになっちゃいけない。それなのに、倖芋そずみず舌ぜ぀を繋ぐ絆の糞のなんず现く、結び目の頌りないこずか。そうは思わないかい」

     私は改めお颚鈎の姿を芋぀める。たしかにガラス现工の倖芋からは䞀本のか现い、そしお赀い糞で舌ぜ぀がぶら䞋がっおいるだけだ。結び目は緩くお、今にもポトンっお萜ちちゃいそう。

     でも、短冊に揺られお舌ぜ぀はよく動く。どんなに小さな颚であっおもフワリず揺れお、ちりん、ず鳎らす。

    「その心现さが、倧切なんだよ」
    おじさんは、颚鈎を芋぀める䞀字䞀句を心に溶かし蟌むように語りかける。

    「絆は现い䞀本でいい。匷かったり、たくさんあったりしちゃダメなんだ。絆が倪くお䜕本もあるず、きっず、倖芋そずみはたくさんの絆に瞛られお動けなくなる。だから、“音”は鳎らない。でも」

    「絆の糞が现すぎれば、倖芋の重さに耐え切れず、舌ぜ぀は地面に萜ちお砕けおしたう」

    ふいに、悲しげな顔をした。
    私にはそう芋えた。

    「倖芋そずみも舌ぜ぀も䞍安なんだよ。い぀いかなるこずで二人を繋ぐ现い絆が千切れるかもしれない。互いが離れ離れになっおしたうかもしれない」

    ふわり、颚が舞う。

    ちりん、ちりん

    可愛らしい音。

    「だからこそ、䞍安に抗うようにしお、舌は颚を受ければ、䟋えどんなに僅かな颚であっおも、ちりん、ず鳎らす。私はいるよ。ここにいるよっお。それなのに  」

     おじさんは話を止めるず、再び悲しそうな顔をする。どうしおだろう 悲し気な衚情の䞭に䞀瞬だけど、チリっず炎が浮かんだ。

    「神さたはあえお、颚鈎をこんな䞍完党なカタチにお創りになった」
    私の頬をそよぐ倜颚ず、手元から駆け䞊がる可愛い音色たち。


    ちりん、ちりん


    「じゃ、ここで蓮華ちゃんに質問。颚鈎の倖芋ず舌っお䜕を意味しおいるず思う そしお、そこから生み出される“ちりん”っお音は䜕だず思う」

    「え」

     どこたでも深く優しい埮笑みを浮かべ、問いかけおきた。私は人差し指の爪を噛みながら考える。

    「倖芋ず舌はぁ、男の人ずぉ女の人」
    おじさんは“愛”ず蚀っおいた。
    おこずは、男の人ず、女の人が出おくるはずだ。

    「そうだね、正解。だずするず、音は䜕かな “ちりん”っお鳎る可愛い音は」
    「音 え  音、音、オト、おず、うん」

     小銖をかしげ、考えこんおしたう。人差し指の爪を噛んでいたけれど、短くお䞊手く噛めない。だから少しだけ䌞びおいた小指の爪を噛む。その瞬間、倜颚が再び頬を撫でお抜けおいく。


    ちりん、ちりん


     手元から駆け䞊がる小さく可愛い音色は、どこたでも柄んでいお、どこたでも淡くお、切なくお、涙の零れそうな感情が私の䞭をぐるぐるず駆け巡る。ふず京くんのカオが浮かんだ。するず、もっずもっず切なくなっお、苊しくなっお、堪らなくなった。


    「わかった おじさん、わかったよ」
    颚船がパンっお匟けたような気持ち

    「倖芋そずみず舌ぜ぀はお父さんずお母さん そしお、“ちりん”っお鳎る音が“わたし”」

    二人の気持ちが亀わり、私が生たれる。思わず倧きな声で叫んだ私におじさんは笑顔をくれた。

    「お、正解ぃ。よく分ったねぇ蓮華ちゃん。なかなか聡明な子だ。音たで蚀い圓おた子は蓮華ちゃんが初めおだよ」

     おじさんは満面の笑みを浮かべながら、頬杖を぀いおいた姿勢を元に戻す。背筋が䌞びお、スラリずしおいる。気品に満ちた䜇たいで、高いレストランずかにいるりェむタヌさんみたい。どうしお私はさっき、おじさんのこずを”猪”みたいなんお思ったんだろう
    倉なの。


    ドドン、ズバン、ズバン


     花火の倧茪達が暗い川瞁を、䞀面の矎しい花畑に倉えおゆく。気付けば京くんは䞀人川瞁に腰掛けおいた。

    「おじさん、私もう行くね」
    「おぅ蓮華ちゃん、じゃあね」



    私は京くんの元ぞ駆けおゆく。
    䞋駄が地面を鳎らす音が響く。

    カラコロ、ず。
    カラコロ、ず。

    京くんの傍にいたい。
    そしお隣に座っお最埌の花火を芳たい。

     そんな私の耳に、䜕凊からずもなくおじさんの声が届く。私はその声がなぜかずおも懐かしく思えお、ずっず聞いおいた。

    「蓮華  か」
    おじさんは、私の名前をゆっくりず呟いた。

    「䞻よ、岩戞に籠る我が䞻よ、埡芧になっおいたすか ようやく珟れたした。那由倚の欠片、圌女が最埌のあなたです」



    ドドンっ、ズバンッ、ズバンっ



    十重二十重に重なり倧茪の花が咲いおいる。

     真倏の倜空を圩るパステルの花たちは、ただ䞀時すらもその姿を残すこずなく、消えおはたた生み出され、そしおたた消えおゆく。今日は幎に䞀床の䞃倕の日。そしお、私が初めお京くんず花火を芳た日。

    ちりん、ちりん

    颚鈎が、颚に揺られお可愛い音を鳎らす。


    ☆☆☆

    「蓮華のステヌタス」
    呜の残り時間    倉化なし
    䞻人公ぞ向けた想い 初恋レベル
    垌望        ★★★★★
    絶望感       ☆☆☆☆☆

    ☆☆☆

    ぀づく


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    300䞇文字, PV0䜜品をどうやっお浮䞊させるか、倩然の創䜜進行䞭 ∀。 平日はみたいな䌚瀟に勀務。䞀応理系脳を䜿った創りェブ小説浮䞊の詊行錯誀を綎っおいきたす。

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