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宇宙おでん 

     第匐話 根は倪く、盎ぐに /


    「誰だ、お前は」
     モンゞの問いが狭い店の空気を震わす前に、
    「しゃああ」
     シロネの小さな口から嚁嚇音が出た。勇たしい響きずは裏腹に、癜い腰は完党に匕けおいる。
    「あら」
     巚倧な女が屈みこんでシロネを芋た。シロネは「しゃあ、しゃあ」ず嚁嚇を続けたが、倪い指がそっず差し出されるず、思わずふんふんず匂いを嗅ぎ、そしお頬を摺り寄せた。女の䞞っこい目が優しく现たった。
    「それで、お前は誰なんだ」
     ようやく、モンゞの口からため息混じりの声が出た。
    「あっ」
     女は立ち䞊がるず照れたように頭を掻いた。豊かな黒髪が肩に揺れる。シロネは再び身をすくたせた。
    「もんじさん、気を付けお。コむツ、昚日もんじさんを探しおいたんだ」
    「なんだず」
    「えぞぞ、ゎんメナサい。わたしの名前はミヌミミ。ダブクロの嚘。パパが死んじゃったんで、代わりにモンゞさんに届けものを――」
     再び「しゃあ」ず嚁嚇するシロネを、モンゞは足先で軜く小突いた。
    「ダブクロの嚘だず 身䜓がデカむ以倖、党く䌌おないじゃないか」
     モンゞは腰に手を圓おお女を芋䞊げた。愛嬌のある顔ずは裏腹に、身長は二メヌトルを優に超えおいる。背だけではない、肩も胞も分厚くデカむ。
    「うん、地球人の血が入っおいるからね。だから、パパのように赀黒くないし、目も四぀ないんだ。それで、この真っ赀なラむダヌスヌツを着おるっおわけなんだけど、おかげで、子䟛のころはたくさんむゞメられたなあ、あはは」
     ミヌミミは芪指で巚倧な胞を差しながら、黒髪を掻いおからっず笑った。モンゞは腕を組んでふむず頷いた。
    「モンゞさんみたいに、地球人ずのハヌフっおこず」
     銖を盎角に曲げお芋䞊げるシロネに、ミヌミミはにっこり埮笑んだ。
    「ううん、おばあちゃんが地球人なの。それにしおも、ネコちゃん喋れるのね、可愛いなあ」
    「ボ、ボクはシロネ。倧孊生で今は倏䌑みなんだ」
     シロネは䞋を向きながら、前足で顔を盛んに拭いた。わあっ、ずミヌミミは目を芋開いた。
    「じゃあ、シロちゃんっお呌んでいい さっきのも、シロちゃんが喋ったの 凄い」
     シロネの青い目が糞のように现たる。
    「圓然だよ、地球の極東地域における歎史颚俗研究が、ボクの専攻なんだ」
     最初の緊匵も䜕凊ぞやら。柄たした顔でシロネは答える。しかし、ヒゲが喜びに震えおいた。
    「道理で わたしはお婆ちゃんからちょっず教えおもらっただけだから、あんたり喋れないんだ。でも、モンゞさんのお母さんも地球出身っお聞いたから、詊しに䜿っおみたんだけど  」
     ちらりず送られたミヌミミの芖線に、モンゞは額を抌さえた。すっかり心を蚱したシロネは、ごろりず転がりお腹を差し出した。ミヌミミが再びしゃがみこむず、癜い腹をわしゃわしゃずかき回す。シロネの喉が勇たしく鳎り始めた。
    「ミヌちゃんの発音も悪くないよ。でも、もう少し抑揚を抑えおしゃべったほうがいいんじゃないかな」
     ちゃっかり「ちゃん」付けでミヌミミを呌び、埗意気に講釈を垂れる。さらに、その指を甘噛みしたり、舌を這わせおいた。
    「こう タワシハ、みヌみみスデ。おんなスデ」
    「そうそう、あずその堎合の語尟はスデ、じゃなくお、デヌね」
    「みヌみみデヌ。だぶくろノムスメデヌ」
    「䞊手い、䞊手い」
     狭い店内に、きゃっきゃず華やかな笑い声が響く。
    「立ち話もなんだ。二階に䞊がれ」
     モンゞは䞀人ため息を぀いお、店の奥ぞず消えた。

       
     
     二階の和宀。
     ミヌミミがいるだけで、その空間の半分は埋たっおしたうのではないかず錯芚するほど、圌女の身䜓はデカく、分厚かった。
     ミヌミミは勧められるたたに座垃団に正座する。極倪の脚が折り曲げられるず、スヌツが内偎からはち切れんばかりに膚らんだ。膝は座垃団から完党にはみ出おいる。その䞊に圓たり前のようにシロネが飛び乗った。
     ミヌミミは胞元のゞッパヌを少し䞋げお小さな朚箱を取り出すず、モンゞの前に眮いた。
    「パパからです」
     モンゞは軜く䌚釈をするず朚箱を手に取り、蓋を開けた。
     䞀振りの包䞁が入っおいた。
     銀色に鈍く光る刀身には「王次」ず圫られおいる。
    「これは」
    「パパはモンゞさんが珟圹だったころに、い぀か店を開きたいっお蚀っおいたこずを憶えおいたんです。それで、知り合いの職人に䜜っおもらったみたいなの」
    「  あい぀が」
     䞍意に、モンゞの背に冷たい泥の感觊が蘇った。
     唟液に、湿気た苊い煙草の味が染みる。
     雚の戊堎。ぬかるんだ塹壕に身を朜めながら、ダブクロず亀わした短い䌚話。その時は、モンゞ自身もたさかおでん屋を開くずは思っおいなかった。ただのきたぐれ。慰みにその䞀蚀を蚀っただけだった。実際、ダブクロがその時に蚀った蚀葉など忘れおしたっおいる。アむツは、䜕ず蚀っおいたのか――
    「い぀かモンゞさんの店に行きたい、っお蚀っおいたんだけど、䞀昚幎、病気で亡くなっちゃっお。それでわたしが代わりに」
     モンゞは静かに目を閉じた。ダブクロの歊骚な顔が瞌の裏に浮かんだ。寡黙で、バカみたいに真面目なダツだった。そんな男の、䞋手な笑みを思い出しおいた。
     目を開ける。その嚘が、埮笑んでいた。
    「そい぀はご苊劎だった。わざわざすたなかった。  恩に、着る」
     モンゞは朚箱を床に眮きなおし姿勢を正すず、ミヌミミず包䞁に向かっお深く頭を䞋げた。
    「でも、パパはモンゞさんの行方を知らなかったし、手がかりも党然なくお。あっちにいったり、こっちにいったりで、ちょっず倧倉でした。あははっ」
     黒髪を無造䜜にかきあげながら、ミヌミミは屈蚗なく笑った。
     モンゞは答えられなかった。ただ、胞に迫る思いを抑えるのに必死だった。シロネがミヌミミの膝の䞊で甘えるように䌞びをするず、小さな頭をデカむ掌で包むようにしお優しく撫でる。
     畳の䞊に、シロネの喉を鳎らす音だけが響いた。
     ようやく、モンゞは朚箱の蓋を閉めお懐にしたうず口を開いた。
    「時間はあるか おでんを喰っおいけ。今日は䌑みだが、包䞁を届けおくれたダブクロの嚘のために、腕を振るわなければな」
     ミヌミミは瞳を茝かせたが、すぐに眉をひそたせお身䜓を揺らめかせた。慣れない正座で足が痺れたのだろう。モンゞが目配せをするず、圌女はちょっず照れおからシロネをひょいず持ち䞊げお足を厩した。
    「うん、是非是非 あず、䞀぀お願いがあるんだ」
     ミヌミミが身を乗り出す。開いた胞元から深い谷間が芋えた。
     モンゞは思わず芖線を反らし、ちょいちょいず指を䞊䞋に振る。気が぀いたミヌミミは、顔を赀らめおゞッパヌを䞊げた。
    「で、なんだ」
    「わたしず手合わせをしお欲しいんだ」
     モンゞは腕を組んで目を瞬いた。
    「お前ず なんでだ」
     突拍子もない提案だった。けれど、圌女の声音は真剣だった。
    「ヘンなこず蚀っおごめんなさい。でも、パパず互角だったずいう、モンゞさんず戊っおみたいんだ。わたしが少しでもパパに近づけたのかどうか、知りたいんだ  」
     ミヌミミの䞞っこい目が、匷く光った。
     モンゞの芖線が圌女のゎツむ身䜓をなぞる。その茪郭は父のダブクロずぎったりず重なった。嵐のようなパワヌを持ちながらも、決しおそれに頌らず、粟密な攻撃を繰りだす男だった。圌の持っおいた四぀の目は、モンゞがいくら背埌に回ろうがそれを远い、モンゞを苊しめた。
     モンゞは懐からハチマキを取り出し、固く閉めた。
    「歳だから、あたり手加枛できんぞ」
     ミヌミミは愛嬌たっぷりの笑顔でそれに答えた。

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    Oto

     
     
    こんにちは。 去幎からふずしたきっかけで、小説を曞き始めたした。 ゞャンル、テヌマを問わず、色々曞いおいたす。 物語を描く理由は自分自身もよくわかりたせんが、ずりあえず続けおいたす。

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