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冥界の宴(JTCの理・妖怪編 第八話①)

    「偽りの桃源郷」

    新人事制度の説明会は、朝から妙に明るかった。
    本社の人事部が誇らしげに並び、
    カウンセリング用語とコーチング用語を、
    これでもかとばかりに滑らかに並べていく。

    エンゲージメント、ウェルビーイング、
    サーベイフィードバック、バリューアラインメント──
    若い人事部の優秀な面々が、
    よどみなく、淀みなく、
    完璧なスライドとともに語り続ける。

    その滑らかさとは反比例するように、
    語られる世界はどこか“うわべだけの理想郷”に見えた。


    そんな世界、どこにあるんだろうな。


    心の中でつぶやく。
    だが、この世界観を理解し、
    この世界観のまま部下を導き、
    この世界観のまま評価を行えなければ、
    どうやら管理者失格らしい。

    そういえば、
    エンゲージメント調査の管理者向けフィードバックも同じだった。

    「もっと対話を」
    「心理的安全性を」
    「共感的に寄り添って」
    「主体性を引き出して」

    人事部も総務部も経営層も、
    会社ととても“仲が良い”ように見える。
    会社の言葉を、そのまま信じているように見える。

    だが、現場は──
    そんなに単純ではない。

    中間管理職が、
    その思想や意図をきちんとかみ砕いて伝えられていないのだという。
    現場の声の拾い上げも足りないのだという。

    すごいな、と思った。

    妖怪になってしまった私だから、
    幹部のいう桃源郷はもう見えないのだろうか。
    それとも、向こうが冥界──
    いや、本人たちは天界だと思っているのだろうが──
    そこからの使者なのだろうか。

    どちらにしても、
    これほど異なる世界が“課長”という薄い壁一枚で隔てられているのだから、
    メンタルが持たない人が多いのは当然だ。

    ひどい憑き物がついている人ばかりなのも、
    今ならよくわかる。


    この人の物語の始まり 第一話はこちら

    この人の未来のお話 第七話はこちら


    二つのパラレルワールド

    🏮 JTCの理 ― 憑き物落とし篇 組織の澱みを「怪異」として解剖する、京極夏彦的作品へのリスペクトを込めた物語。

    🕶️ JTCの理 ― マトリックス篇 システムのバグを「アノマリー」として捉え直す、SF映画的世界観の物語

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