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【シロクマ文芞郚】春の颚【2000字小説】

    「春の颚っお感じだ」
    ず、憲秀が空を芋䞊げお唐突に蚀った。

    のりひで、じゃなくお、けんしゅう、ず呌ぶ。
    坊䞻だ。
    スキンヘッドずいう意味ではなく、寺の僧䟶、ずいう意味で。
    倧船ず江ノ島を結ぶ、湘南モノレヌル沿線の小さな浄土宗の寺の䜏職。
    䜜務衣姿、竹がうきを持っお、境内を掃陀しおいる憲秀は、目をしぱしぱず瞬かせおいる。
    芋た目は、代の若者にしか芋えないのだけれど、実幎霢はもっず䞊だずいうのだから化け物じみおいる。

    「春の颚っお䜕」
    「春の颚っおのはねえ、目が痒くなるんだよ」
    「花粉症じゃん」
    「いや、断じお花粉症ではない」
    そう蚀い切っお、憲秀は颚に散らされた竹の葉をもう䞀床竹がうきで集め始める。
    俺はそれをただ眺めおいた。
    手䌝いもしないでがんやりず芋おいるしかない今の自分は、䜕の圹にも立たない。それがほんの少しもどかしい。

    「どうしたの、ちょっず䞍満そうだね」
    憲秀がこちらを芋ないで、背䞭越しに笑う。
    背䞭越しなのに、どうしおこちらの顔色がわかるのか。ザッザず、竹がうきが地面を掃く音が耳に響いおあたり気分は良くない。
    人間だった頃よりも、今のほうが耳が良いのだ。
    俺は、少しでも音が響かないように距離を取ろうず、すぐそばにあった石灯籠の䞊ぞずゞャンプする。
    石灯籠に飛び䞊がった猫の俺に驚いたのだろうメゞロが、近くの束の朚から飛び立った。それを芋お、悪いこずをしたな、ず思う。
    「境内で殺生は困るよ」
    冗談めかした声で憲秀が蚀う。その蚀葉が思いのほか重くお、すぐに返事ができなかった。
    「ちげヌし、わざずじゃない」
    「なんだ、本気で萜ち蟌んでるの」
    憲秀がたた手を止めおこちらを芋る。
    その隙に、颚がせっかく集めた竹の葉を散らしおしたう。
    ああ、ずこちらが思っおいるのに、憲秀はちっずも気にしおいない。
    俺のこずなんか攟っおおけばいいのに、憲秀がこちらぞずやっお来る。
    「ねえ、時間がもったいないよ。さっさず終わらせないず」
    「たあねえ、でもこの颚じゃ、どうせすぐにたた同じになるよ」
    そう蚀っお、憲秀は竹がうきを石灯籠に立おかける。
    「ほら、おいで」
    ず手を䌞ばされる。
    癜魚のような、ず綺麗な手のこずを蚀うけれど、たさしくそんな手だ。幎のいった男の手だずは思えない。
    おいで、ず差し出された手に自分から行くのがなんだか嫌で、動かずにいるず、ひょいず無理矢理に抱え䞊げられる。人間に抱きかかえられる時の、ひゅっず宙を浮く感芚にはただ慣れない。怖くなっお慌おお憲秀にしがみ぀く。
    「あ、こヌら。暎れないの」
    「急に持぀なっお。怖いんだよ」
    「習うより慣れろっおね」
    憲秀によいしょず抱きかかえられお喉を撫でられる。撫でられおいるうちに、ゎロゎロず喉が鳎っおしたうのは䞍可抗力だ。
    「ほヌらいい気持ちだ」
    「勝手に鳎っおるだけだから」
    じたばたず暎れお、憲秀の腕を蹎っお着地する。
    着地地点で螏んだ竹の葉が、かさりず小さな音を立おた。
    なんにも掃陀ができおいないのに、憲秀はほうきを片付けようずしおいる。
    「埅お埅お、ただ掃陀できおねえじゃねえか」
    「うヌん、でもお前耳が痛いんでしょう」
    「たあ、そうだけど」
    「その䞊、なんでか今日は私のそばにいたいみたいだし」
    その通りだけれど、認めるのは癪に障っお、しっぜがたしヌんたしヌんず勝手に土の䞊をはたいおしたう。
    「ずりあえず、掃き掃陀は埌回しだ。颚が匷すぎるからね」
    ほら行くよ、ず声をかけられお埌ろを぀いおいく。

    矜音がしお、メゞロが束の枝に戻っおきたのだろう気配がある。振り向きたいのを我慢しお、憲秀の埌を远いかける。

    憲秀はただ目をしばたたかせおいる。
    「かゆいんだろ」
    「春の颚はいろんなものを運んでくるからね」
    「花粉ずかな」
    「花粉症ではないから」
    「じゃあ、猫アレルギヌ」

    憲秀はびっくりしたような顔で振り返る。
    「そんなこず誰に蚀われたの、お前」
    なだめるような声音だ。
    よいしょっずいう掛け声ず共に、もう䞀床抱え䞊げられる。
    「さあ、なんでだろう。芚えおないけど、誰かに蚀われたのか、誰かに蚀ったのか」
    「蚀ったっおこずはないでしょうに、猫はお前なんだから」
    「でも、前䞖は人間だったかもしれない」
    「だずしおも、今は猫だからねえ」
    たた、喉を撫でられる。ごろごろず音が鳎る。

    「そんなに気負わなくおいいよ。せっかくうちに来たんだから、のんびりしおなさい。さっきも倉に気負っおいただろ。なんにもしなくおいいんだよ」

    抱きかかえられお撫でられおいるうちに、だんだんず眠くなっおくる。
    春の陜気だからだ。
    春の颚が吹く。いろんなものを運んで。
    「喋る猫は気持ち悪いか」
    ほずんど目を開けおいられないたた、呟いた。
    カラカラず笑っおいる声がする。それきり、憲秀の声が遠くなっおいく。

    「死んだ情人が生たれ倉わる床、人間以倖でも関係なく捕たえちゃ囲っおる坊䞻のほうが、よほど気持ち悪いからねえ、お互い様だよ」

    聞こえた蚀葉を理解するよりも前に、春の颚の音がした。

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    画像はみんなのフォトギャラリヌからお借りしたした。


    #シロクマ文芞郚

    今週もシロクマ文芞郚さんにお邪魔しおおりたす。

    ここ最近あたりnoteに来られおいたせんでしたので、ちょっずだけ久しぶりです。
    今週は「春の颚」ずのこず。

    なんの目算もビゞョンもなく曞き始めお時間、ちょっず䞍思議な話ができたした。



    シロクマ文芞郚さんに参加させおいただくのは、今回のこれで回目。
    これたでに参加させおいただいたシロクマ文芞郚提出物です。

    い぀も楜しく参加させお頂けお感謝です。

     
     
     
    䞀人称:僕(Female)だいたいバレ゚ダンサヌかお坊さんの話曞いおるBL倚め吉田束陰のアクスタず出かける人 2025:Money for Good×note「#掚したい䌚瀟」入賞 旧PN奥接雚韍(オクツりリュり)

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