#42|【遠距離介護とお金②】介護にはお金も時間もいる。だから働き方を変えた
前回は親の介護にかかるお金について書きました。
今回は、その結果、お金に対する考え方も変わったというお話です。☘️
「介護帰省割引」
検索すると、そんな言葉が出てきた。
こんな制度があるのか、と喜んだ。
でも、国内線だけだった。
私が必要なのは、
パリと名古屋を往復する国際線だった。
介護が始まってから、
日本へ帰る回数が増えた。
日本との時差は、夏は7時間、冬は8時間。
フランスにいても、
親とビデオ通話をしたり、
施設や病院へ連絡したりする時間が必要になる。
時差があってもするべきことをするには、
労働時間を減らす必要があった。
日本へ帰るためのお金もいる。
気づくと、私は50代になっていた。
親の介護だけではなく、
自分の老後の準備も始めなければならない。
そんな年齢になった。
労働時間を半分にしたい。
でも、収入は維持しなければ。
最初は、
そんな都合のいいことができるわけがないと思った。
でも、やるしかなかった。
だったら、やり方を変えるしかない。
まず、仕事の仕方を変えた。
移動に時間のかかる仕事を減らし、
リモートの仕事を増やした。
報酬を見直し、
仕事の効率も上げた。
労働時間を減らしても、
収入を維持する方法を探した。
やってみると、道はあった。
日本との時差があっても、
日本へ連絡を取る時間を作れるようになった。
それでも、日本に帰省している間は収入が途切れる。
それまでの私は、
働く。
貯める。
何かあったら、貯金を使う。
それでなんとかなると思っていた。
でも、遠距離介護が始まって、
それだけでは足りなくなった。
そこで初めて、「自分が働く」以外の方法にも目を向けた。
それまでほとんど関心のなかった資産運用について調べ始めた。
知らないものにお金を出すのは怖かった。
そんな頃、昔の預金を久しぶりに見た。
日本にいた頃、ユーロの定期預金に入れ、
そのまま放置していたお金だった。
金利と為替の変動で、
円に換算すると、当時の倍以上になっていた。
もし同じお金を、
あの頃からずっと円の定期預金に置いていたら、
ほとんど増えていなかっただろう。
同じお金なのに、置く場所でこんなに違う。
それまで私は、お金は「いくら貯めるか」ばかり考えていた。
でも、「どこに置くか」でも変わるのだ。
そこから、為替を意識するようになった。
なぜ円安になるのか。
金利が変わると、なぜ通貨が動くのか。
不動産や株への投資も見るようになった。
不動産投資といえば、家や土地を買うものだと思っていた。
初心者なら、駐車場や倉庫へ投資する手もあると教えてもらった。
株式投資も、小さな金額から始められた。
以前なら聞き流していた経済ニュースが、
自分のお金とつながって見えるようになった。
知らないことに踏み出すのは怖かった。
でも、知ろうとすると、見えてくるものがあった。
考えてみれば、遠距離介護もそうだった。
フランスにいる。
すぐには駆けつけられない。
距離を理由に、「私にはできない」と思う自分がいた。
でも、心のどこかに、
やってみないと分からない。
そんな気持ちもあった。
そして、
日本と、もう一度つながってみる機会なのかもしれない。
とも思った。
使える制度を探した。
遠くからできる方法を探した。
自分だけではどうにもならないことは、プロに頼った。
すると、私にはなかった知識や経験から、
思いもしなかった解決策が出てくることがあった。
「自分で解決する」と「一人で解決する」は、同じではなかった。
50代になって、新しいことを覚えたり、
頭を使ったりすることを、
以前より面倒に感じるようになっていた。
「難しそう。」
「どうせできない。」
そうやって避けることも増えていた。
親の老化を目の当たりにして、自分の老いも遠い話ではなくなった。
介護には、いくつもの選択があった。
どこで暮らすのか。
どんなサービスを使うのか。
誰に頼るのか。
そのたびに、
知らないことを調べ、人に聞き、考えた。
介護は、ただ耐えるしかない苦労にもなり得る。
でも私にとっては、
これまで知らなかったことを知り、
新しいことに踏み出す機会にもなっていた。
親の介護が終わる頃、私は何歳になっているのだろう。
でも、
そのときから自分の人生が再開するわけではない。
私の人生は、介護をしている今も続いている。
今、銀行に置いてある貯金は、
以前よりずっと少ない。
株や不動産など、
別の場所に移したからだ。
以前の私にとって、
安心とは貯金だった。
何かあっても、
貯金があればなんとかなる。
でも、何かあるたびにそこから取り崩していけば、
いつかは減っていく。
私の安心は、ずっと引き算だった。
今は、何かが起きても、解決策を探せる。
知らなければ、調べればいい。
自分だけでは無理なら、
知っている人の力を借りればいい。
銀行口座の数字は、以前より小さい。
それでも、以前より安心している。
安心は、貯金の中にあると思っていた。
今、それは自分の中にある。
