
【第5話】お姫さまとオオカミさん~ちからじまんトーマスと、あまいごほうび~【ねんね前の読み聞かせ】

ちからじまんトーマスと、あまいごほうび
むかしむかし、あるところに お姫様とオオカミさんがいました。
お姫様はその国で一番偉い人だったので、 お友達がいませんでした。
オオカミさんは森の動物たちに怖がられていて、 友達がいませんでした。
そんな二人の物語です。
その日、ユマール王国のお城では、朝の見回りがちょうど終わったところでした。
「よし! 今日も異常なし!」
胸をどんと叩いてそう言ったのは、兵隊さんのリーダー、トーマスです。
ピカピカの銀色の鎧。分厚い腕。 力を入れると、自慢の筋肉がぴくぴくっと動きます。
「今日は町まで買い出しだ!」
エイダのおやつや、城で使う物を買うため、トーマスは城の近くの町へ出かけました。
町の広場は、いつもよりずっと賑やかです。
「腕相撲大会を始めまーす!」
どーん! と太鼓が鳴り、人がたくさん集まっていました。
「優勝賞品は――イチゴのショートケーキ!」
その言葉を聞いた途端、トーマスの耳がぴくっと動きました。
「……ケーキ」
雪のように白い生クリーム。宝石のように真っ赤なイチゴ。 甘い香りがふわーっと広がるところを思い浮かべて、ごくり、と喉を鳴らします。
「トーマスさん! 出てくださいよ!」 「国一番の力自慢でしょう?」
そう言われて、トーマスは頷きました。
大会が始まると、トーマスは次々と勝ち進みます。 ぐぐぐ……! 腕に力を入れるたび、筋肉がぴくぴく。
その時――
「頑張ってー!」
町の女の子の声が聞こえました。
「……!」
トーマスの顔が、熟したリンゴのように真っ赤っかになります。
「う、うむ……!」
照れながらも力を入れて、最後の勝負にも勝ちました。
「優勝です!」
手渡されたのは、大きなイチゴのショートケーキ。 生クリームはふわふわ。イチゴはつやつや。 甘い香りが思わず顔を近づけたくなるほどです。
「……」
トーマスは、すぐに食べたい気持ちをぐっと堪えました。
(早く食べたい……でも……エイダ様に……)
そう思って、ケーキをそっと抱えます。
帰り道、トーマスはいつもよりゆっくり、ゆっくり歩きました。 つま先でそーっと。段差ではぴたりと止まって。
鎧が**「カシャン!」**と鳴りそうになるたび、 「しっ……」と自分で注意します。
(崩れるな……倒れるな……)
ケーキに集中しすぎて、まるで綱渡りのような歩き方です。 ようやく城が見えた時、トーマスはほっと息をつきました。
「よし……無事に持ち帰れた」
そのケーキの中から、かすかに―― 「チチ……」 そんな音がしたことに、トーマスはまだ気付いていませんでした。
おやすみなさい。
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今回のお話は「大切な人のためにがまんする気持ち」がやさしく描かれていました。
同じように、気持ちをそっと大切にしてくれる絵本はこちらです。
▶︎しろくまちゃんのほっとけーき
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※ひらがながよめる おこさまむけに、やさしく かきなおしています
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ちからじまん トーマスと、
あまい ごほうび
むかしむかし、あるところに
おひめさまと
おおかみが いました。
おひめさまも、
おおかみも、
ともだちが いませんでした。
これは、そんな ふたりの
おはなしです。
そのひ。
ユマールおうこくの おしろでは、
あさの みまわりが
おわったところでした。
「よし!
きょうも だいじょうぶ!」
むねを どんっ。
そう いったのは、
トーマスです。
ぴかぴかの よろい。
がっしりした うで。
ちからを いれると、
きんにくが ぴくぴく。
「きょうは まちへ いくぞ!」
おやつや、
ひつような ものを
かいに いきます。
―――――
まちの ひろばは、
とっても にぎやか。
どーん!
たいこの おと。
「うでずもう たいかい、
はじまります!」
ひとが いっぱい
あつまっています。
「ゆうしょうの ごほうびは――
いちごの ケーキ!」
「……ケーキ」
トーマスの みみが
ぴくっ。
しろい クリーム。
あかい いちご。
あまい においを
おもいうかべて、
ごくり。
「トーマスさん、でてよ!」
「いちばん つよいでしょ?」
そう いわれて、
うなずきました。
たいかいが はじまります。
ぐぐぐ……!
つぎつぎに
かっていきます。
うでに ちから。
きんにく ぴくぴく。
そのとき――
「がんばってー!」
ちいさな こえ。
「……!」
トーマスの かおが、
まっかっか。
「う、うむ……!」
てれながらも、
さいごまで かちました。
―――――
「ゆうしょう!」
もらったのは、
おおきな ケーキ。
ふわふわの クリーム。
つやつやの いちご。
とっても いい におい。
「……」
すぐに たべたくなります。
でも――
(エイダさまに
もっていこう)
そう おもって、
だいじに かかえました。
―――――
かえりみち。
トーマスは
ゆっくり あるきます。
そーっと。
そーっと。
だんさでは、
ぴたり。
よろいが
「かしゃん!」
なりそうになると、
「しっ……」
じぶんに いいきかせます。
(くずれるな…
たおれるな…)
まるで
つなわたり みたい。
やっと おしろが
みえてきました。
「ふう……」
「ぶじに もってこれた」
その ケーキの なかから――
「ちち……」
ちいさな おと。
でも、トーマスは
まだ きづいていません。
おやすみなさい。
このおはなしは、ここから つづいていきます。