メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

『鳎石』  その10

         10

     男爵が口の䞭でもくもくしすぎお苊手な人も居るけど、いい加枛な感じでいいので、ベシャメル゜ヌスを䜜っお混ぜたす。衣ず䞭身の食感のギャップも楜しいので、フヌドプロセッサヌでパン粉を少し现かくしたす。ず、晃子は䜜業を続け、話も続ける。
     「んコロッケの写真を撮るがですよね」
     「あ、そうです。うん。あれ」
     「あれ私も栄逊士なので、レシピずか䜜りたすよ」
     晃子は䜜業を続けるが、ここは里矎のキッチンだ。
     「写真おさえたす」
     遥子はカメラを探すが、芋圓たらない。
     「そういえば、裕子さんが」
     「えっ」
     顔を䞊げたいが、今はゞャガむモの茹で具合に泚意しなければならず、鍋から目を話せないし、晃子の気配がない。
     いろいろなこずが、いい方向に向かっおいる気がしない。
     裕子の声がしたかず思ったら、里矎だった。
     「先生。ゞャガむモ、倧䞈倫」
     「ご苊劎」
     䞖玀末だから䞖界が終わるずか、マダ暊の終わりで䞖界が終わるっお蚀われおいたずきず違っお、最近は倧きな倉化の時っお蚀い方をするけど、なんだかただの蚀い方だよね。䞀気に終わるのは無いけど、ゆっくり終わるのはどうだろう。
     そう蚀いながら、理矎がベヌコンを賜の目に刻んでボりルに攟り蟌む手際を、ただ黙っおながめる。

     昌間のできごずを凝瞮しお倢に芋るのは、现かな刺激が少ないからだろうか。よくあるこずや、蚀わずもがなのこずが折り重なっお、気晎らしができおいない。
     今は幞い降っおいない様で、遥子は思い切っお散歩に出るこずにした。
     䜎く垂れ蟌めた雲が幟重にもかかり、耇雑な局ずグラデヌションを䜜っおいる。この空ず倩候が嫌で北陞の冬には䜏めないずいう声に、どうにかしおこの空の矎しさを䌝えたかった。
     寒気をゆっくりず吞い蟌み、背筋を䌞ばす。
     ただ䜓に残っおいた倜の名残りが消えおいく。
     䞀瞬、雲の切れ間から陜の光がさし、蟺りを眩しく照らしたかず思うず、雲の流れがたた、倪陜を隠しおいく。空を芋ながら歩くなら、坂を降りおいくのだが、この間、そんなにも長靎が汚れなかったこずを思い出した遥子は、もう䞀床あの石碑が芋られないかず思い、坂を登っお鳎石神瀟の方に向かう。
     軜トラックが止たる、芋れば宏倪ず勲だ。
     「おはよう。散歩か」
     「おはよう。散歩」
     声を亀わすず、軜トラはゆっくりず発進する。どこかで䜜業でもあるのか、配管の工具や資材を積んでいる勲の䌚瀟の軜トラだった。

     神瀟に着いおみれば、軜トラは鳥居の脇に駐車しおあった。手氎舎に宏倪ず勲の姿もある。
     聞けば、犰宜から連絡があっお、井戞の氎がいよいよ出なくなったので、倧晊日を前に䞊氎道から氎が取れる様に、䜕箇所か手を入れに来たのだずいう。
     勲によれば、十幎ほど前から、鳎石党䜓で井戞氎の出が悪くなり始めお、あたり䜿われおいなかった䞊氎道に埐々に切り替えが進んでいるそうだ。
     そのたたなんずなく二人が䜜業しおいる暪に立っおいたが、宏倪から「ここだけでないから。芋ずる間に終わるもんでもないぞ」ず蚀われる。
     「それもそうか。お邪魔したした」
     拝殿の方を芋れば、ここはいわば鎮守の森ず蚀われるものだろうか。鳎石神瀟を囲み、拝殿ず本殿の埌ろの杉林になっおいない䞀垯は、そのたたすっず高くなっおおり、こんもりず広葉暹がしげっおいる。
     「カむロでもどうや」
     母家から宮叞が出おきた。
     「散歩しずったら䌚うたんですよ」
     狭い堎所だから、出歩いたらすぐにわかるなず宮叞が笑い、そのたたなんでもない䌚話を亀わすが、遥子には、宮叞に聞きたいこずがあった。
     「宮叞、屋根に倩狗がくるならここからですか」
     「いやぁここからは、ムササビしか行かんやろ」
     「そういうがでなしに」
     「倩狗は、石動山か碁石が峰か」
     宮叞が意倖ず冗談めかさずにこたえおくれる。
     「昔は修隓者なら山にいっぱいおったやろしな」
     「いっぱいおったがですか」
     「行堎だらけや」
     「修行」
     「山䌏やろ」
     「修隓者、山䌏。そうですね」
     「倩狗になるほどの山䌏がおったんかのう。どっちにしおも、ここよっか高いずこから降りおくる」
     「じゃぁ、坂䞊がっおくるがは䞊杉謙信みたいな感じばっかりですか」
     宮叞が、「ん」ず声に出しお、なにやら思案しおから答える。
     「焌き蚎ちだけ考えたら、謙信はろくなもんでないの」
     「カワり゜ずか」
     カワり゜かず、宮叞は再び思案しながら、カワり゜、カワり゜ず口の䞭で繰り返し、狐や狞でもなく、カワり゜がこんな山たで䞊がっおくるなら、きっずなかなか栌の高いや぀やなず蚀い、「そんな話しあったがか」ず、遥子に問う。
     「なん。爺ちゃんか、ばあちゃんから、聞いたこずある様な、そうでもない様な」
     「平次さんやな」
     倢で芋お思い出したずは、流石に蚀えなかった。
     「カワり゜なぁ」ず、宮叞は再び口の䞭で繰り返し始める。
     そもそも、神瀟がここに来たがは、䞊杉謙信に奥の宮が焌かれおからず、神瀟の由来に぀いお宮叞が話し始めたずころに、犰宜が宮叞を探しお母屋から顔を出す。
     近いうちに詳しく聞くこずはできるかず宮叞に問うず、元旊過ぎの段取りは党郚犰宜任せになっおいるので、い぀でも良いずいうこずだった。
     「こんだけの山やからの、あっずいう間にわからん様になるわい」
     「なるほど」
     裏手の道に行っおみるず、思っおいた以䞊にぬかるみがひどく、入れたものではなかった。長靎が必芁だ。
     勲ず宏倪に声をかけお、鳎石神瀟をあずにする。

     遠くの空を芋れば、雚かみぞれでも降っおいるのだろう。雲の䞋が霞んでいる。あれがこちらに向かっおくる颚向きではないが、ずりあえず垰ろうかず思ったずころに、裕子からメッセヌゞが入った。
     午埌から知也ず䞀緒に顔を出すずのこずだ。
     反射的に、仕事しおるかもだけど、倧䞈倫ず、返事をする。
     クリスマスをず誘われた日、裕子からのメッセヌゞに返事をしおいなかったこずを思い出す。
     「出かけおるっお返事すればよかった」
     家に着くたでに、なにか蚀い蚳を思い぀かないかず考えを巡らせたが、ガス台を前に立ち尜くしおお湯が湧くのを埅぀に至っおも、なにも思い぀かなかった。
     たた、録音を聞く。
     ちょうど里矎がゞャガむモの話しをしおいる郚分だ。
     「偶然なんだけど、ゞャガむモが䞉皮類手元にあっお、ちょうどいいかなず思っおやっおみた。粒が残っおるのが、キタアカリ。なめらかで粘りもある。男爵ず、もう䞀皮類、すごく柔らかいのがあっお、それを混ぜお完党に朰したの」
     「なるほど」
     男爵だず、もっずもそっずするんだけど、ちょっず匷すぎ。でも、キタアカリを党郚朰したんじゃ、なんだか物足りない感じがする。ゞャガむモの配合に぀いおあれこれ説明しながら、里矎は確か、现かく刻んで氎に晒した玉ねぎの氎気を絞っおゞャガむモに加えおいた。
     晃子を呌んで本棚を匕き受けおもらおう。午埌に来おもらおう。
     思い぀いお携垯に手を䌞ばしたが、時間の無駄を避けたいために、晃子をダシに䜿うのは、いくらなんでも郜合が良すぎる。

     午埌になった。
     蚪問を受け入れおケヌキを食べながら盞槌を打ち、二人を送り出しおからワむンを飲み、そのたたの気分で倢も芋ないたた寝お起きる。
     少し酒が残っおいる䞍快感に党おを抌し付けお、なにも考えなくおもよいこずをしようず思うが、圢ばかりの掃陀をしおいおも、結局私はなにをしおいるのかずいう小さく果おのない無駄な問いを持お䜙すこずになり、どうやっお再生したらいいかわからない断片が前埌したたた垂れ流されおいく蚘憶を远う。
     祖母の寝宀にあった鏡台も、玍戞のものたちの様に座敷に移動したず、知也が蚀っおいた。
     これで、祖父母の寝宀も完党に空いたこずになる。
     座敷の前の瞁偎に鏡台を運んで、かかっおいた垃を取り、鏡に映る自分を芋る。
     「たさか、愚痎りたかったのか」
     職堎の愚痎だったのかもしれないず、ようやく思い至った。 
     「愚痎に盞槌を打たせれば、芪しくなれるのか」
     自分の顔を芋る。頬をふくらたせる。空気を抜いたずころで、倧きなあくびが出お、なにか違うこずをしようず思い、鏡台を座敷に匕っ蟌めようず思ったが、さっきはどうやった持ったのか、改めお運がうず思うず、持ちにくかったので、䞀旊ここにおいおおくこずにした。
     考えられないほどゆっくりず、党くなんの手がかりもない䞀日が終わる。

      その11に぀づく


     
     
    劇団血パンダ団長。癜玉叀本店店䞻。富山県でひっそりず挔劇の発生する瞬間を暡玢䞭。挔劇を芋たのか実際の自分の経隓か、倢でも芋たのか。そんな颚に蚘憶に入り蟌む挔劇を䜜っおいたす。 倉庫 https://wxbdxw.net/ 劇団 https://blood-panda.net/

    あなたぞのおすすめ