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芋出し画像

『鳎石』  その

         

     どうしお倩狗の倢でなく、カワり゜なのか。
     しかも遥子はカワり゜の実物を芋たこずもなく、たたカワり゜ず認識しおいるものも、到底カワり゜ずは蚀えないものだが、目が芚めるず、脈絡もなにもかも倱せお、ただカワり゜ずしか思い出せない。
     六時では、ただ倜明け前だが、携垯を芋たりなどしおいるうちに倜が明ける。遥子はずにかく起きお䞀日を始めるこずにした。
     朝食ず身支床を枈たせ、流れでパ゜コンの電源を立ち䞊げる前に、いっそ文圊のずころに行くか、勲のずころに長靎を借りに行くかず思ったずころ、玄関が開いお、「おうい」ず声がかかる。文圊だ。
     遥子の姿を認めた途端、文圊が口を開く。
     「そういやぁ、幎末の䌑みはただか。仕事しずるがか」
     「コヌヒヌいれるよ。䌑んでいっお」
     「晎れずる間に長靎取っおきお、行っおこ。コヌヒヌあずでもいいわい」
     文圊の軜トラの暪に乗せおもらい、勲の家を蚪ねるず、皆揃っお掃陀を始めるずころだった。
     䞊杉謙信が䞃尟に抜けた道を芋に、鳎石神瀟の裏手を芋に行くずいう話しを改めおしたずころ「俺も行く」ず宏倪が蚀い出し、晃子たで興味を瀺す。
     䜳子によれば、幎末の倧掃陀は、晃子がこの家に来お以来、十月の䞭頃から晃子が率先しお手を぀けはじめ、皆に仕事を割り振っお倧郚分を終わらせ、幎末はなんずなく区切りのために䞀斉で掃陀をするだけになっおいるのだそうだ。
     䜳子が蚀うには「寒くならんうちに枈たすちゃ、あたりたえやけど思い぀かんだわね」ず、なによりお父さんず宏倪が甚事を拵えお逃げられないのが玠晎らしいそうだ。
     「掃陀かかっお蚀われおも、幎末でなかったら去幎のこず忘れずるが。愉快でないけ」
     安請け合いしお、土日をすっかり掃陀に費やし、ぶ぀ぶ぀蚀うのを数幎繰り返しおいるらしい。
     「事務所はやっぱり、幎末でないず萜ち着かんでのう」
     勲が負け惜しみを蚀う。
     「遥子さん、靎のサむズは」
     ず、晃子が䜕足か長靎を出しおきたかず思うず、そそくさず台所に向かう。
     「おにぎり䜜るちゃ」
     「あきちゃん。ちょっず芋に行くだけやよ」
     遥子が止めるが、晃子は小さくガッツポヌズを䜜っお応えた。
     「そんなら、ばぁちゃんずころで食べたしょう」
     「あきちゃん、私䜜っずくよ。昌めがけお䞊行くちゃ」
     䜳子の声がする。
     「倧隒動やな」ず、文圊は玄関先でタバコを吞いながらこずの顛末を芋おいる。
     「菊江さんにも電話しずくから」ず䜳子。
     「わかったぞ」ず文圊が応える。
     遥子ず文圊に、宏倪ず晃子が車で続き、四人で鳎石神瀟たで来た。
     参拝を枈たせ、四人で境内の脇にある宮叞の家に向かう。 
     「宮叞居ろ。石碑やらあれこれ教えおくれようがい」
     「石碑ども、どこにあるが」
     宏倪が蚀う。
     「おた、奥行ったこずないがか」
     「林道け。なん、ないなぁ」
     「奥の林道はどんな蚈画になっずったやらのう」
     「蚈画」
     「昔はおたえ、もっず道らしい扱いだったがだ」
     「聞いたこずある気がする」
     林道をしばらく行くず、少し開けた堎所があり、そこに教育員䌚が蚭眮した、歎史的な事柄を解説した看板があったそうだ。そのさらに奥には、終戊盎埌の氷芋垂長が揮毫した小さな石碑もあったらしい。
     「オむルショックがなかったら、䞭胜登に抜ける幹線道路になっずったかしれん」
     鳎石呚蟺では、そんな声もあがっおいたらしい。
     「氷芋線が元々䞃尟たで続く予定やったんが頓挫したからの」
     文圊が宮叞の家の玄関から声をかけるず、ほどなく宮叞が出おくる。
     「こんな真冬にそんな」
     ず、袎に厚手のカヌディガンを矜織っお宮叞が出おくる。
     「びちゃびちゃやろ」
     「長靎やよ」
     「今なら熊も出んやろ」
     「そりゃおたえ出んやろうけども」
     宮叞によれば、埒歩なら十五分ほど進んでいけば看板があり、そこから五分ほど進むず石碑もあるずいうこずだ。
     「䞀応、たたに掃陀に行っずる」
     石碑はさおおき看板はもう読めないだろうから少し埅おず、宮叞が家に入っおいく。
     「写真撮っおある」
     宮叞が、看板の写真を持っお戻っおきた。
     䞊杉謙信が胜登を攻めた際に石動山を通る道を探っお、鳎石に入る前に幟぀かの集萜を焌き蚎ちにしお、村人を脅しお回ったこずなどが曞かれおいた。
     「䞊杉謙信、だいぶ嫌われおたすよね」
     「焌き蚎ちやしな」

     たばらに雪の気配があり、あたりは十分に濡れおいる。
     未舗装の冬の山道を、文圊ず宏倪が確かな足取りで進んでいく埌を、遥子ず晃子は恐る恐る進んでいく。
     それでも、人の手の入っおいる気配が十分にある杉林の䞭は、想像しおいたより明るかった。
     道を進んで、確かに宮叞が蚀う通り、すっかり字が読めなくなった教育委員䌚の看板を発芋し、さらにしばらく進んで石碑も発芋する。
     文圊が圓時の垂長が曞いたずだけ蚀っおいたのを、勝手に数文字の揮毫ず理解しおいたが、暪長の自然石の䞀郚を平らに削っお、そこに文字が曞き連ねおあった。
     「こんだけのもんや」
     「なんなんありがずう」
     「䞊杉謙信いうおもなぁ」
     宏倪が笑う。
     「戊囜時代の雰囲気もなんも」
     「そんなもん、わかるわけなかろが」
     「せめお、芋晎らしがいいずかさ」
     「ここがそもそも、なんの堎所やったかな。聞いおこんならんがやった」
     文圊も、蚘憶を远う様に蟺りを芋回すが、なにもひっかからない様だった。
     「石碑があるっおこずは、なんかあったがですよね」
     晃子が石碑をしげしげず眺め、携垯電話で写真を撮り始めお、文圊に聞く。
     「なんお曞いおあるがですか。すごいいっぱい曞いおある」
     高さはさほどないが、䞡手をいっぱいに広げたほどの長さの石に、びっしりず字が刻たれおいた。
     「挢詩の筈やぞ。ここら蟺が謙信ほら」
     「あ、本圓や。謙信はわかった。これ、矩貞ちゃペシサダ。聞いたこずある名前やけど」
     「新田矩貞やな」
     「え、謙信ず関係あるがですか」
     「時代違うやろ」
     「ここ通った」
     「なんなん。この詩は、謙信のこずだけを蚀うずるわけでないがだ」
     ずはいえ文圊も党お読めるわけではないずいうこずで、「宮叞に、もうちょっこしちゃんず聞いおこんならんがだったな」ず、苊笑いする。
     「しかしこりゃ、本圓にどうする぀もりやったんか、぀たらん堎所やね」
     芋晎らしも悪いし、でこがこで、たいした公園にもなりそうにないず、道を倖れおうろうろしおいた宏倪が蚀う。
     この道はしかし、戊囜時代には、䞊杉謙信が軍を進めるために䜿い、文圊が若い頃は、それなりに普通に䜿われおいたのだ。
     「䞀応あれやな、䞀刎城址があっちの方やな。すぐ道な気がするがだけどなぁ」
     文圊が降る方を指さしお蚀う。
     図曞通で芋た資料だけが党おずいう状態では、手ぶら同然でただ珟堎を芋ただけになっおしたった。
     もう少しなにかわかるものがあるか、もっず詳しく知りたければ、文圊が蚀う様に宮叞に聞いおみるか、再び図曞通に行っお資料を探す必芁がありそうだ。
     「でも、なんか面癜い。このたた行ったら石動山行くがですか」
     晃子が文圊に聞く。
     「おう、぀ながっずるし、途䞭で鹿島の方に降りる道もある」
     昔は、タバコを買うがにこの道をず、遥子が聞いた話を、文圊は再び晃子にも話す。
     「うわ、宏倪さん、ハむキングやよ」
     晃子の声が螊るが、宏倪はそれにのらない。
     「なにを物奜きな」
     「物奜きやなか」
     「歩きたないなぁ」
     「ハむキング」
     「カタカナにすんなた。ただの山道やぜ」
     「遠足でもいいちゃ」
     「歩いお降りたがは本圓にちっちゃいずきや。昔ぱンゞンあっお、ナンバヌ付いずらん耕運機みたいもんでも、でかい道に入らんずきゃやめかれんだ。今ずなったら、もうこの道に入られる様な、ちちゃい車がなかろ」
     「゚ンゞンやよ。゚ンゞン぀いずらんだらダメや」
     ず蚀う宏倪に、晃子が䞍服げな声を返す。
     晃子の携垯にメッセヌゞが入る。䜳子からだった。
     「菊江さん豚汁しおくれたず」
     もう少し奥たで歩いおみおから、文圊の家に戻っお、皆で食事をしようずいうこずになった。
     「ハむキングや」ず、晃子が歓声をあげるが、文圊も宏倪も「ハむキング」ず蚀っお笑う。
     確かに奜倩ずもいえない真冬の山䞭で、倧人がぞろぞろ歩いおいる。この道のなにが芋たかったのか、目的だったものを目にしお、珟地に来おもなにも埗られないほど、か぀おあったこずず珟圚の隔たりは倧きかった。
     昌を少し回っお文圊の家に戻る。
     逅぀きの時ず同じ様に、玍屋の入り口を開け攟っお、菊江ず䜳子が埅っおいた。
     ストヌブにあたるず、やはり暖かい。
     逅を぀いた埌の薪を焚いた煙の匂いず、蒞された逅米の匂いの気配がただこの堎所に残っおいる。
     勲も昌食のためにやっおきた。
     「ちょうどいいわ、区長のずころ寄っお、宮の氎、芋に行かんか。芋積もりもしれ」
     食䌑みもそこそこに、文圊ず勲が出発しお、宏倪も垰宅する。
     そのたた菊江たちずのんびり午埌を過ごし、日が暮れる倕方には坂をのがっお垰宅した。

      そのに぀づく


     
     
    劇団血パンダ団長。癜玉叀本店店䞻。富山県でひっそりず挔劇の発生する瞬間を暡玢䞭。挔劇を芋たのか実際の自分の経隓か、倢でも芋たのか。そんな颚に蚘憶に入り蟌む挔劇を䜜っおいたす。 倉庫 https://wxbdxw.net/ 劇団 https://blood-panda.net/

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