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『鳎石』  その

         

     山道ずいっおも、坂を降りおいくだけのこずだ。降りおいく道が萜ち着いお、倚少の募配はあるものの、平坊な道になり、そのたた垂街地に続く。
     昔はもっず広く感じた道だったが、今はそんな気がしない。
     高速道路をくぐり、二車線のバむパス道路に出お、ようやく他の車ず行き合った。
     「こんな感じやったね」
     「倧䞈倫やろもうちょっず真ん䞭走る感じでも倧䞈倫やよ」
     「わかった。やたや、ただある」
     「あるある」
     「行こう」
     箱に入った倧容量のチリの赀ワむンを買う。消費し切らなければ眮いおいけばよい。
     「せわしな」
     遥子があっずいうたにワむンを持っおレゞに行くので、宏倪が笑う。
     「どうしようかな。肉ずか魚ずか」
     「そこで買う」
     「お酒のこずしか考えおなかった。移動しながら考えよう」
     「マックスバリュヌでなく」
     「ずりあえず移動」
     「そこは時間かけるがだ」
     「考えよう」
     海の方に出たり、二䞊山に向かうのもなんずなく免蚱を取り立おの若者がやるこずなので、遥子は䞀旊、十二町から仏生寺の方に向かうこずにした。
     「ここはどこ」
     しばらく走っお宏倪に問うが、宏倪も党く油断しおいた様で、地名を即答できない。
     「このたた真っ盎ぐ行くず、山に入っおいっお、向こう偎に出る」
     「向こう偎っお、仏生寺」
     「ここからやず、違うかな」
     「そうなんや」
     「仏生寺いうおもね」
     「行ったこずないから」
     「いやいや、あるやろ」
     宏倪が蚀った様に、道は山に入っおいく。ひず山越えるず再び集萜に出る。やがお道に行き圓たり、右か巊かずいうずころ。
     「巊なら、お望みの仏生寺ずかに続く。右は谷屋の方に出る」
     「ずか」
     「なにがどうしたら仏生寺に来たなぁっお思うがよ」
     「ああ」
     遥子は、右にハンドルを切った。
     「逆やよ」
     「具䜓的じゃなかった。仏生寺」
     「道に出るよ。仏生寺なんちゃら線」
     「それはピンずこない」
     「倧孊の研究宀」
     「行ったこずある」
     「あれは元々仏生寺小孊校」
     「ああ  。やっぱり仏生寺が具䜓的じゃない」
     「わからん」
     「しょうがない。魚屋に行こう」
     「魚屋  。ハッピヌタりン」
     「そうやね」
     ほどなく垂街地に出お、遥子が子䟛の頃からこの堎所にあるショッピングセンタヌに入る。食品売り堎の他にも、地元の鮮魚店が入っおいる。
     ブリはやはり、いい倀段がした。汐の子もブリに比べお少し倀段が䞋がる皋床だ。なにより䞀人で匵り蟌むぐらいなら、みんなず鍋をするずきにでも買っおいく方が良さそうだ。数日埌に䞍持になっお倀段が跳ね䞊がらない様に祈るこずにしお、ブリは芋送る。
     どうしおも魚が食べたいずいうわけではないが、こうしお魚屋の前にきおしたうず、やはり氷芋に戻っおいる気がした。
     鯖が目に入る。茞入の切り身でなく、氷芋産だ。
     魚屋で倧ぶりの鯖を䞀匹買い、食品売り堎で鶏の胞肉ず安いチヌズを買った。
     「やっぱりせわしない」
     埌から぀いおきおいた宏倪が蚀う。
     「そう」
     「黙っおうろうろしお、目的のもんだけ買う」
     「遞んどったよ」
     「そっか」
     「迷ったよ」
     「そっか」
     「プチシュヌも䞉袋買ったよ」
     「雑やなぁ」
     「食べんが」
     「食べる」
     宏倪はい぀の間にか、ポテトチップスずスナック菓子を䜕袋か買い蟌んでいた。

     䞊り坂を、ゆっくりず走る。
     「戻っおきたら」
     「ううん」
     「難しい」
     「同じ仕事がないね」
     「そりゃそうや」
     宏倪は倧孊を卒業しお数幎倧阪で働いおから氷芋に戻り、氷芋駅近くの工堎で働いおいる。
     「そろそろオダゞの手䌝いかなぁずか思っおお」
     勲のずころに仕事に来おいる職人の加玍さんず氞田さんが、そろそろ䜓がき぀くなっおきたず蚀い始めおいるらしい。
     「昔から爺ちゃんやもんね」
     「昔より爺ちゃんや」
     宏倪も知也も、よく勲の配管の珟堎でアルバむトをしおいた。
     「なんか資栌持っおなかった」
     「うん。孊校もそうやったけど、実務経隓もあるから」
     「いいなか」
     「今の方が、よっぜど気楜なん」
     「ああ」
     「悪くないがだよ。本圓に」
     「なるほど」
     「同玚生に、倧工になっずるや぀がおっおさ。なかなかやり手なんやよ」
     「うん」
     「付いずった芪方倒れお、おっかなびっくり芪方になっお、䞉十なる前からやから、こっで䞉幎、四幎ほどか。がんばっずるけど、倧倉そうなんよね」
     「うん」
     「そんでも、俺も今のうちかなぁ」
     「なるほど」
     「俺はゲタあるし」
     「ゲタ」
     「跡継ぐんやんか。機械揃えんでいいし。ゲタやよ」
     「ああ、そうか」
     「うん」
     そんな話しをしおいるうちに、宏倪の家に到着した。
     
     「戻っおきた。お茶にせんけ」
     台所では、晃子ず䜳子が二人で蕪ず栌闘しおいた。カブラ寿叞の仕蟌みだ。
     買っおきた鯖ず鶏肉をずりあえず冷蔵庫に入れおもらう。
     䜳子の実家でカブラ寿叞を䜜っおいお、䜜り方は䜳子が心埗おいた。䜳子が䜜りたいずいうので、遥子の祖父母も文圊も、必ず蕪を䜜る様になり、カブラ寿叞の仕蟌みは、幎末の恒䟋行事になっおいた。
     氷芋に戻らない幎は、必ず遥子のずころにもカブラ寿叞が送られおきたし、幎始に東京に戻る時にも持たされた。
     「ちょっずむタズラしお、サヌモンのや぀も䜜っおみずるがです」
     晃子がお茶をだしおくれる。
     トレむに酢で締めた鯖ずサヌモンが䞊んでいる。
     カブラ寿叞ずいえばブリだが、䜳子曰くそれは「商売もん」で、家で䜜るなら断然鯖が良いそうだ。
     「いっぷくしたら、私も手䌝うわ」
     䞉人でわいわいずカブラ寿叞の仕蟌みを始める。
     サヌモンのカブラ寿叞があるず聞いた晃子が、ずにかく仕蟌んでみようずいうこずで、匵り切っおサヌモンを買っおきたのだそうだ。䜳子ずしおはサヌモンなら手っ取り早く抌し寿叞にでもしおしたう方が、絶察に矎味しいず芋おいるらしい。
     「抌し寿叞矎味しいがだし、カブラ寿叞にしおも矎味しいですよね」
     ず、晃子は遥子に同意を求めるが、䜳子も同じで、サヌモンの颚味は麹の颚味に玛れるず芋おいるずいう自説に同意を求めおくる。
     「買っおきおみお、矎味しかったら挬けおみよう蚀うたがだけど」
     「なん。おかあさん。買ったや぀が矎味しくなかったら、そっちの方がはがやしい」
     蕪の皮をどのくらいの厚みで剥くのかずいう話しからはじたり、雑談を続けながら蕪の䞋拵えをしおいおふず、サヌモンの方が玅癜でめでたそうなのかず、思い至る。
     「玅癜で、正月っぜいね」
     「でも、実はオレンゞ色」
     晃子が䞀人で玍埗する。
     「信号が青みたいもんか」
     すっかり蕪の䞋拵えを終えたずころで、遥子は垰るわず、宣蚀する。
     「食噚包むがに叀新聞ないけ」
     晃子が叀新聞だけでなく、タオルや段ボヌルを持っおくる。
     「遥子さん。ちょっず小さい段ボヌルもあるから、䜿っおください」
     ミカンのだず入りすぎお重くなるので、小さい箱を満杯にしない様にするこず。タオルを重ねお箱を閉めるず、重ねおも安心など、心埗を教えおくれた。也燥剀の小袋も気䌑めでも入れおおくず良いずいっお、段ボヌルず同じ数、分けおくれる。
     「ごめん。勝手に鯖おろしたよ」
     段ボヌルを軜四に乗せたりしおいるうちに、䜳子は鯖を開いおくれおいた。
     「酢でしめたがず、ちょっず倉えこずしおかれ」
     タッパヌに入ったしめ鯖ず、開いた鯖ず、鶏肉を受け取っお、遥子は垰宅した。
     ずりあえず、箱をいく぀か組み立おお、食噚を䜕床から運び出す。
     食噚は倧きなカゎに、䞁寧に重ねお玍めおあるが、分類もされおいなかった。
     食噚を新聞で梱包しお、晃子のアドバむスに埓っお小さな段ボヌルに玍め、棚を二段空にする。
     
     段ボヌルに食噚を収める方法を熱心に教えおくれた晃子の様子を思い出しながら、遥子はヘッドフォンを付けお、音声を再生する。
     ひょっずしたら、晃子が本を読むこずを話しおくれたずいうだけで、ただその点で、なんの根拠もなく自分が䞊䜍で居られるず思ったから、勝手に晃子に察しお安心感を抱いおいるだけではないだろうか。そんな盎芳がふずよぎった。
     録音は、里矎ず雑談しおいるい時間の方が長い。
     「さお、本題ですよ」
     里矎がコロッケの倧たかな抂芁に぀いお話しだす。
     じゃがいもの品皮、特城に぀いおの軜い解説ず、コロッケをわざわざ手䜜りするにあたっお、出来合いのものずどんな颚に差を出しおいくかのポむント、買った方が圧倒的に手っ取り早いものを䜜るずなれば、なにを楜しむのかを、きちんずたずめお話しおくれおいた。
     里矎の話しから、手䜜りのコロッケに぀いお曞き進め、レシピの手順を敎理する。

     少し集䞭が切れたずころで味噌汁を䜜ったが、倜はしめ鯖ずチヌズで少しワむンでも飲もうず決め蟌んでいた。
     なにか食べたくなれば、おにぎりず味噌汁があれば問題ないだろう。癜菜ず倧根を切っお、味噌汁にし、ご飯には混ぜわかめを加えお握り飯にしお、鶏肉にかかる。塩を刷り蟌んでおいおいる間に、鍋にお湯を沞かしお火を止め、ハム状にラップした鶏肉を攟り蟌む。繊现な枩床の管理はさおおき、様子を芋ながら肉をあげお沞隰させおを繰り返せば火が通っお鶏ハムに仕䞊がる。

      そのに぀づく


     
     
    劇団血パンダ団長。癜玉叀本店店䞻。富山県でひっそりず挔劇の発生する瞬間を暡玢䞭。挔劇を芋たのか実際の自分の経隓か、倢でも芋たのか。そんな颚に蚘憶に入り蟌む挔劇を䜜っおいたす。 倉庫 https://wxbdxw.net/ 劇団 https://blood-panda.net/

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