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あなたの資格は、盾?檻?~医療従事者が人生の主導権を取り戻すキャリアデザイン~ 【後編】


    自己理解の次にあるもの—過去ではなく、未来の問いへ 


    前編を読んでくださった方、ありがとうございます。

    前編では、私がどうやって「資格の檻」に気づいたか、そして15年のリハビリ現場で本当に学んでいたことをお伝えしました。

    ▼前編はこちら


    過去の経験を棚卸しして、
    自分の価値観・強み・働き方の軸を言語化する。

    これが自己理解の第一歩です。

    でも、ここからが本番です。

    自己理解は、過去を掘り下げることだけじゃないんです。


    過去の棚卸しは、一度やりきればOKです。
    そしてその先にあるのは、
    「今の自分はどうか」「これからどう生きたいか」という、未来への問いです。

    自己理解という土台ができると、不思議なことが起きます。


    SNSで「脱病院!」「フリーランス最高」「副業で月〇万円」という言葉を見ても、以前ほど焦らなくなるんです。

    「転職しなきゃ」「独立しなきゃ」という外からの声より先に、
    「で、私はどうしたいんだっけ」という自分の声が聞こえてくるようになっていきます。

    これが、土台を持った人の変化です。


    心理学では「メタ認知」と呼ぶそうです。

    自分を少し上から眺めて、
    「今の私はどんな状態?」
    「何を大切にしようとしている?」って、観察できるようになる感じです。

     
    自己理解をやりきると、このメタ認知が自然とできるようになっていくんですね。

    「今の職場、なんとなく続けているのか、選んで続けているのか」
    「この働き方、本当に私が望んでいるものか」
    「次のフェーズで、私は何を大切にしたいか」

    こういう問いを、自分に向けられるようになっていきます。

    後編では、この土台の上に立って、
    どうやって「自分で選ぶキャリア」を作っていくかをお伝えします。

    転職しなくていいんです。独立しなくていいんです。
    現職に残ることも、副業を始めることも、全部【同じ選択肢のひとつ】です。

    大切なのはその形じゃなくて、
    「私が選んだ」という感覚を持てているかどうかです。
    では、一緒に考えていきましょう。

    どの道を選んでもいい—大切なのは「自分で選んだ」という感覚 


    あなたは今、転職や独立を考えていますか?
    それとも、今の職場に残ろうと思っていますか?

    どちらを選んでも、いいんです。
    でも、SNSを開くと、こんな言葉があふれていますよね。

    「病院を辞めてフリーランスになりました」
    「副業で月〇万円達成」
    「脱・組織で自由になれた」

    見るたびに、なんとなく焦りませんか?
    「私も何かしなきゃ」
    「このまま病院にいていいのかな」って。


    でも、ちょっと待ってほしいんです。
    「外に出ること」だけが、キャリアデザインじゃないんです。


    転職も、独立も、副業も、すばらしい選択肢です。

    でもそれは、あくまで「選択肢のひとつ」。

    「現職に残ること」も、同じように立派な選択肢のひとつなんです。

    大切なのは、どの道を選んだかじゃなくて「自分で選んだかどうか」です。

    「なんとなく今の職場に残っている」と
    「今の職場を選んで残っている」は、同じように見えてまったく別物です。

    なんとなく残っている人は、日々の仕事の中でどこかモヤモヤが続きます。

    「本当はもっと別のことをしたいのに」
    「ここにいていいのかな」という感覚がずっとついて回ります。
    主体性がないと、仕事がどこか受け身になっていってしまうんですね。

    一方、選んで残っている人は違います。

    同じ職場、同じ仕事内容でも、
    「今の自分にはここが必要だから選んでいる」という感覚があると、
    仕事への向き合い方が変わります。

    患者さんへの関わり方も、同僚との関係も、
    自分の成長の受け取り方も、全部変わってきます。

    私自身もそうでした。
    理学療法士として介護予防教室の仕事を続けているのは、
    「せっかく資格があるから」じゃなく「好きだから続けたい!」と思えるようになったからです。

    自己理解をする前は、
    「理学療法士の知識を活かさなきゃ」という義務感で向き合っていた部分がありました。


    でも自己理解をして、「私が好きなのは、人の変化を隣で見守ること」だと気づいてから変わりました。

    介護予防教室でお会いする方たちの小さな変化を見守ることが、純粋に好きだし幸せだったんですよね。

    同じ仕事なのに、見え方がこんなに変わるんだって自分でも驚きました。

    あなたは今の仕事を、「なんとなく」と「選んで」どちらで続けていますか? 

    どの道を選んでも、機能するのは「軸」です。

    現職に残る、転職する、副業を始める、パラレルに働く。
    形は何でもよくて、どれが正解ということもありません。

    自分の価値観・強み・働き方の軸、この3つが明確であれば、
    どの道を選んでも「私らしく」働くことができます。

    逆に言うと、軸がないまま転職しても、独立しても、何か始めても、また迷子になってしまいます。私がそうだったように。

    まず、「今の自分はどの道を選びたいのか」を自分に問いかけてみてください。
    その答えが何であっても、それがあなたの主体的な選択です。


    3つの原則を、自分のキャリアに使う

     
    前編でお伝えした3つの原則、覚えていますか?

    スモールステップ、伴走、安心できる環境の3つです。

    ここからはこの3つを、
    あなた自身のキャリアにどう使えるか、一緒に考えていきましょう。

    原則①: スモールステップ—完璧なプランより明日できる一歩 


    キャリアを変えたいと思ったとき、多くの人がまず「プラン」を作ろうとします。

    3年後にこうなる、5年後にはこうなる、というようにです。

    でも、プランが大きければ大きいほど、最初の一歩って重くなるんですよね…。

    「今の自分との差」が大きく見えてしまって、
    結局動けないまま時間が過ぎていきがちです。
    私自身、何度もこのパターンにはまってきました…(笑)

    ここで使える考え方は、「逆算思考」から「積み上げ思考」への切り替えです。

    逆算思考は「ゴールから今を見る」やり方。
    積み上げ思考は「今日できる一つから始める」やり方です。

    今週できる一歩を、次の3つの大きさで考えてみてください。


    ①情報を見るだけ:気になる求人を一つ見る、興味のある人のSNSを一つフォローする
    ②誰かに一言聞いてみる:「この仕事ってどうですか」と一文だけメッセージを送ってみる
    ③小さく動いてみる:説明会に申し込む、体験会に行ってみる

    大きさより、実際にやれるかどうかを基準に選んでみてください。
    ①だけでも全然OKです。何もしないよりずっと前に進めます。

    ハードルを下げれば下げるほど、行動できる確率が上がります。

    これはリハビリでも証明されていることで、最初のハードルが高すぎると、人はそもそも始められないんです。

    今週、あなたが選ぶのは①②③のどれですか?

    原則②: 伴走—「この人がいるから頑張れる」一人の存在を持つ 


    伴走は、人の話です。
    仕組みではなく、「この人がいるから頑張れる」という1対1の関係です。

    キャリアの悩みは、一人で考えていると堂々巡りしがちです。
    これは性格の問題ではなく、構造の問題です。

    一人で考えるとき、私たちは自分の頭の中にある情報だけで判断しようとします。

    その情報には必ず偏りがあって
    「これが正解かどうかわからない」という不安は、新しい視点なしにはなかなか解消されません。

    ここで大切なのは、「いつか誰かに相談しよう」と漠然と思うのではなく、具体的に一人を思い浮かべることです。


    次の3つのうち、あなたにとっての伴走者になりそうな人は誰ですか?

    ①専門家:キャリアコンサルタント、カウンセラーなど、利害関係のない第三者
    ②同じ立場の人:同業者、同じ悩みを持つコミュニティの人
    ③身近な信頼できる人:家族、同僚、友人

    どのタイプが合うかは人によって違います。
    専門家のほうが話しやすい人もいれば、同じ立場だからこそ安心できる人もいますしね。

    大切なのは、「悩んだら、この人に話す」という相手を、悩む前から一人決めておくことです。
    悩みが大きくなってから探すのは、実はかなり大変です。

    私も、「この方と話してみたい!」と思った方に、勢いで長文メールを送るくらいには必死でした(笑)

    そんな行動力は誰にでも必要なわけではないですが、
    それくらい「誰かに話す」ことは大事だということです。 

    今、あなたにとっての伴走者は誰ですか?
    まだいなければ、それを見つけることが今週の一歩になりますよ。

    原則③:安心できる環境——「言える仕組み」が、変化の起点になる 


    安心できる環境とは「人」の話ではなく、
    誰がいるかに関係なく「言っても大丈夫だ」と思える場や仕組みの話です。

    たとえば、今の職場にこんな仕組みはありますか?

    「育児中だから時短にしたい」
    「介護で急な休みが必要になるかもしれない」
    「治療のため通院日を確保したい」

    こういうことを、特定の優しい上司にだけ言えるのではなく、
    誰が上司であっても言える制度や文化があるかどうか。


    これは、個人の努力だけでは作れません。
    一人で「環境を変えよう」と頑張っても、限界がありますよね。


    ただ、今すぐできることが一つあります。
    それは、「言いたいのに言えていないこと」を、まず自分の中で言葉にしてみることです。

    ぜひ、紙に書き出してみてください。

    「今の職場や働き方について、本当は言いたいのに言えていないことは何か」

    書き出してみると、
    「言えないと思っていたけど、実は言ってみてもいいかもしれない」と気づけたり、

    逆に「これは今の環境では構造的に難しい」とはっきりわかることもあります。

    どちらに気づいても、それは前進です。

    そして、もし今の環境が「構造的に難しい」とわかったなら、
    それは個人の弱さではなく仕組みの問題です。

    転職や環境を変えるという選択も、
    決して逃げではなく、主体的な判断になります。

    ここまで書き出せただけで、十分な一歩です。

    すぐに何かを変えなくても大丈夫です。
    まずは「言葉にできた自分」を認めてあげてくださいね。

    計画通りにいかない—それが、キャリアの前提だった

     
    ここまで、3つの原則をお伝えしてきました。

    でも、実際にやってみると気づくことがあります。

    せっかく立てた小さな目標も、思った通りには進まないことが多いことに…。

    「これでいい」と思っていた選択が、数年後には違っていることもありますよね。


    私自身、キャリアコーチングのお仕事を一つしていたのですが、先方の事業の都合である日突然なくなったことがあります。「自然消滅ってあるんだ...!」って驚きました(笑)
    計画していたことが、こんなにあっさりなくなることもあるんだ、と。


    でも、これって私だけの話じゃないと思うんです。

    頑張って立てた計画が、自分とは関係のない理由で崩れてしまうこと、あなたにも経験がありませんか? 

    キャリア理論の研究者クランボルツは
    「キャリアの8割は、予期せぬ出来事によって形成される」と言っています。

    転職活動がうまくいかなかったから出会った仕事。

    たまたま参加した勉強会で知り合った人。

    会社の方針が変わって、思いがけず任された役割。

    予想外のタイミングでの異動。


    こういう「計画していなかったこと」が、実はキャリアの多くを作っている、という考え方です。


    だとしたら、プランをきっちり立てることに、そんなに力を入れなくてもいいのかもしれません。

    むしろ大切なのは、予期せぬ出来事が起きたときに、それをどう受け止めるかです。


    ここで差が出るのが、自己理解という土台の有無です。

    土台がない状態で予期せぬ出来事に遭遇すると、ただ振り回されて終わってしまいます。
    「なんでこんなことになったんだろう…」と、外側の出来事に意味を見いだせないまま流されてしまいがちに。

    でも土台がある状態だと、同じ出来事に対して
    「これは私にとってどんな意味があるんだろう」と問いかけることができます。


    私自身その仕事がなくなったとき、すぐに次を探せました。

    「私は伴走する仕事がしたい」という軸があったから、
    「じゃあ次はどこで伴走できるかな」と、わりと前向きに動けたんです。 


    予期せぬ出来事を、ただの偶然ではなく、
    自分のキャリアの材料として受け止められるようになる。

    それが、自己理解という土台があることの強さだと思っています。


    計画通りにいかないことは、失敗じゃありません。
    むしろ、それが前提です。


    あなたのこれまでの選択も、振り返ってみると
    「予期せぬ出来事」に動かされてきた部分があるんじゃないでしょうか。

    それは失敗じゃなく、あなたのキャリアの材料だったんです。
     
    大切なのは、その都度「これは私にとって、どんな意味があるんだろう」と、自分に問い続けること。

    それが、人生の主導権を手放さない、ということだと思います。 

    キャリアデザイン設計図—「いつ・何をやるか」を今日決める 


    前編では、過去を棚卸しして「自分はどんな人か」を発見するワークをやりました。

    後編のワークは、前編で見つけたものを使って、
    「これからどう動くか」を決めるワークです。

    紙とペンを用意して、一緒にやってみましょう!

    ワーク①:3つの原則で、行動を1つずつ決める


    前編・後編でお伝えした3つの原則。
    それぞれについて、「いつ・何をやるか」を一つだけ決めてください。
    考えるのではなく、決めることがゴールです。


    スモールステップ
    今週中にやること:__________
    (期限:今週の◯曜日まで)


    äź´čľ°
    話す相手・話す場所:__________
    (いつ連絡する・申し込む:____)


    安心できる環境
    「言いたいのに言えていないこと」を、最初に誰に・どんな形で伝えてみるか:__________
    (まずは紙に書くだけでもOK/伝える期限:____)


    ポイントは、「やったほうがいいこと」ではなく「実際にやる、いつやる」まで決めることです。期限を決められると、あとはやるだけの状態にできますよ。

    ワーク②:1年後との接続を確認する


    小さな一歩を決めたら、今度は少しだけ先を見てみましょう。
    今決めた行動が、1年後にどうつながるかを確認します。 

    • 1年後、どんな形で誰かに関わっていたいですか?

    • 今決めた3つの行動は、その1年後とつながっていますか?つながっていなければ、行動を見直してみてください。

    • もしこの計画が思った通りに進まなかったとしても、変わらず大切にしたいことは何ですか?


    最後の問いは、クランボルツの考え方を踏まえたものです。
    計画は変わるかもしれませんが、根っこにある「大切にしたいこと」は簡単には変わりません。

    それを確認しておくことが、予期せぬ出来事への備えになります。

    書き出してみて、いかがでしたか?
    大切なのは、今すぐ全部を解決することではなく、
    決めた一歩を、まず一つ実行してみることです。

    それが、「自分で選ぶ」というキャリアの始まりになります。

    あなたの一歩が、社会を変える

     
    前編・後編を通して、お付き合いいただきありがとうございました。

    過去を棚卸しして、自分を知る。
    3つの原則を使って、未来への小さな一歩を決める。

    ここまで読んでくださったあなたは、
    もう「自分で選ぶ」ための土台を持っています。


    育児、介護、治療。何かを抱えながら働いている人は、医療介護の現場に限らず、たくさんいます。

    その一人ひとりが「なんとなく続ける」から「選んで働く」に変わっていく。それは、その人個人の人生が変わるだけじゃありません。

    隣で働く誰かの空気も、少しずつ変えていきます。

    でも、個人の主体性だけでは変えられないこともあります。

    だからこそ私は、組織の側からも両立支援に関わっていきたいと思っています。それが今の私の、次の一歩です。

    あなたはどうでしょうか。
    今の職場で、今の働き方で「自分で選んでいる」と感じられていますか?

    答えがすぐに出なくても大丈夫です。
    「なんとなくかもしれない」と気づいた、それだけで十分な一歩です。

    キャリアデザインに、永遠の正解はありません。

    でも、どの局面でも、自分で選ぶことはできます。

    資格は、あなたを守る盾です。
    先が見えない時代に、あなたの選択肢を広げてくれる盾です。

    あなたを閉じ込める檻ではありません。 

    あなたが、あなたの人生の主導権を持っていいんです。

    その一歩を、今日から一緒に始めていきましょう。



     
     
    理学療法士&キャリアコンサルタント ライターもしています。 小1の壁で立ち止まり、働き方を再設計しパラレルワーカーへ 働き方に悩む方の、一歩目をサポートします。 役割・キャリア・私らしさを再設計して持続可能な自分になろう! 小中学生姉妹ママ(アレルギーっ子)・札幌在住

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