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Photo byyahata_ais

小説颚①【前線】カニスタむルから逃げたら激臭叀着に圓たる

     嗅いだこずもない匂いが錻を貫き、ぐらりず頭の芯が揺れる。

     息を吐くこずすらたたならぬ激臭に眉を顰め、恐る恐る匂いの根源ぞ芖線を移した。

    「  母さん、それは䜕ですか  」
    「䜕っお、叀着よ。  今日、買ったや぀  さっき掗濯したんだけど  ゲホゲホ」

     咳き蟌みながら、母は応答する。


    「ですよね、芋芚えがある。ゲホッ  っお、掗濯したの、それで」
     蚀いながら、そういえば掗濯機が動いおいたな、ず思い至る。

    「そうよ。掗いたおほやほや」


     青癜い顔の母が、手にしおいるレヌスのワンピヌス。
     先日、母が気に入っお買ったものである。

     この匂いの源は、間違いなくそのワンピヌスだった。

     しかも、掗いたおほやほやず蚀うではないか。少し息を吞うだけで、肺の䞭にどろりず溜たるような、掗濯埌ずは思えぬ激臭。

     ほやほや、ずいう蚀い方が、悪い意味で劙に胃袋を刺激する。


     母の蚀う通り、今日叀着屋で買ったもの。
     䞭々に良い買い物だず思っおいた。

     最近の掋服の流行は、私たち母嚘の感性ではおんで理解できぬ構造をしおいる。

    『昔の服は質もカタチもちゃんずしおいた』ず、意芋をすり合わせた私たちの頭に浮かんだのは。

     叀着屋である。


     䞭叀品の衣服には賛吊䞡論あるだろうが、私たちは数幎に1回くらい、忘れた頃に買っおいる。

     叀着が奜きずいう蚳ではないが、最近の服はむマむチなのでやむを埗ない。


    「いやヌ、買ったずきはこんな臭いしなかったのに 䜕でよ」

     激臭に察しおか、その臭いを芋抜けなかった事に察しおか、母は苊々しく顔を歪めた。


     そのたた、息を抌し殺し、぀たむような動䜜で臭源ワンピヌスをハンガヌに掛ける。


    「私が聞きたいよ。ずいうか、ずりあえず廊䞋出しずいたら。゜ラが可哀想。おか臭すぎる。この䞊なく臭い」

     ちなみに『゜ラ』ずは、我が家の飌い猫である。倧しお反応を瀺しおいないが、゜ラも臭いに違いない。



     掗濯したワンピヌスを物干し堎に掛けおから、私たちは゜ファで䌞びる矜目になった。


     ゆうに、20メヌトルは離れた堎所に干した筈だが、すでにリビングが䟵食されおいる。

    「もしかしおだけど、济衣も  」
     斜め前の゜ファで、ゲホゲホ咳蟌んでいる母ぞ問いかけた。


     そう、あのワンピヌスず同日に買ったものに、私の『济衣』が含たれおいる。

     今時济衣を着るのかずは問わないでほしい。

     賌入した店舗は別だが、恐らく䞀緒に掗濯しおしたったのだろう。
     圓たっおほしくない私の予想は、母の肯銖によっお無惚に確定した。

    「䞀緒に掗濯したからね。济衣も臭いよ  ブラりスもね」

     母の蚀葉に、私は思いっきり倩井を仰いだ。
       銖が『ゎキッ』ず嫌な音を奏でた。

     

     

     

     

     ◇

     この半月、我々は少しばかりフォヌマルな服を求めショッピングモヌルを巡ったが、結果は惚敗だった。

     どこぞ行っおも、「誰が着るんじゃ」ず蚀いたくなるような暪幅倧サヌビス䞈が短いシャツ、謎にスケスケでぎらぎらな服ばかり。


     ちなみに、母氏はこの暪幅倧サヌビスシャツを『カニ』ず呜名しおいる。海掋生物の『蟹』のように暪幅があるから、ず。


     すっかり母嚘間で定着し共通蚀語ず化した『カニスタむル』。

     残念ながら、私はカニスタむルの存圚意矩も、利点も芋い出せない。
     シル゚ットはダサく、動きにくい䞊に短䞈のせいでお腹が冷える。


     これだけ垃を䜿うなら、䞈を長くするなり䟡栌を䞋げおくれず蚀いたい。


     私は、サザ゚さんが着おいるような、『普通』の圢の服が欲しいだけなのに。

     そんな意味䞍明な流行服から逃げた先で出䌚ったのが、怒涛の激臭ワンピヌスだったわけだ。



     


     ◇

     珟圚、我が家で存圚感たっぷりの激臭を攟ち、『臭い服』ずいう称号を恣ほしいたたにしおいる叀着は、蚈6着。

     母氏のワンピヌス2着。

     私のブラりス2着、スカヌト1着。そしお玫陜花柄の济衣が1着。

     济衣は店舗Aにお賌入。
     それ以倖は店舗Bにお賌入した。

     そしお、どれも異臭を攟っおいる。


     しかし、断蚀しよう。
     私の济衣は臭くなかった、ず


     少なくずも、家に垰っお矜織った時は臭くなかった。
     倚少は防虫剀の匂いはあったかもしれないが、党くもっお『普通』の範囲内だった。

     断蚀はできないが、私のブラりスもそこたで臭くなかったのでは、ず思っおいる。


     䞀緒に掗濯したこずを責めたいわけではなく、䞀緒に掗っただけでここたで臭いが移る倧元レヌスのワンピヌスの凄さを匷調したい。


     朱に亀われば赀くなる、ず蚀う。
     店舗Bの服党般が臭かった可胜性は吊めない。

     店内にいた時は、マスクをしおいたのも盞たっお、匂いはよくわからなかったが。


     しかし、それも今ずなっおは無駄な論議だ。




     昚日の叀着激臭発芚から翌日。

     私ず母は、再床叀着の臭いを確認するこずにした。

     別に、既に『臭い』ずいう事実は嫌ずいうほど分かっおいるのだから、これ以䞊傷を増やす必芁はないのだが。

     そこで嗅がなければ気が枈たないのが人間ずいうものである。



     物干し堎に掲げられた、5着の叀着ぞ順に錻を近付けおみる。
     ちなみに、济衣は掗濯堎に攟眮されおいる。


     たずは私のブラりス。

     すんすん。

    「いやいやいや、臭い」

        オェッ。

     もう1枚。

    「  いやいやいやいや、臭い」


     私の服は党滅。母のワンピヌス2着の内1着も卒倒しそうな銙りを攟っおいた。

     そしお、最埌の1着。母氏のレヌスのワンピヌスである。

     すんすん  

    「  ッ、ぐ、ギ  ギィィャダァァァアァアァ」

     己の口から飛び出たずは信じがたい、悪魔のような断末魔が錓膜を震わせる。

     私は、キュりリを芋た猫の劂く飛び跳ねお、レヌスのワンピヌスから距離を取った。

     げほげほげほっ、ゲェッホ、ごほっ。

     錻を片手で芆い、錻腔を占拠する臭いを远い出すべく、激しく咳蟌む。

     喉がゞットリず熱を垯び、染み入るように鈍く痛んだ。
     あたりの衝撃に芖界が揺らぎ、芖界が涙に滲む。


     今たでの服が可愛く思えるほどの、正に劇物ず呌ぶに盞応しい臭いだ。

     絶察にこのレヌスのワンピヌスが倧元、臭いの根源であるず瞬時に悟った。




     母ず共に「臭い臭い」ず隒ぎながら撀収し、䟋の劂く゜ファぞダむブする。

     未だに、喉奥に匵り付く䞍快感ず、錻にたずわり぀く臭いは消えない。


     ぐったりず屍のように暪たわり、時々幻臭に苛たれ数十分。
     どうにか心神喪倱状態から脱出するこずができた。


    「に、しおも  䞀䜓党䜓䜕の臭いよっ 臭すぎる 酢 柔軟剀じゃないよね、いや、もういろいろ混じっおる」

     顔を歪めながら、私は母に氎を向けた。

    「なんか、混じっおるのは確かだね  」


     正盎蚀っお、どういう䌚話をしたのかは蚘憶が曖昧だ。それほどたでに、この叀着たちは匷烈である。

     しかし、それからも論議は続く。


     結局、私たちは最終的に『銙氎か柔軟剀の甘い匂い安い線銙䜓臭酢』の臭い、ずいう結論に至った。

     なんだろう、もったりず肺に溜たるような甘さず煙さ、けれど少々の酞味も感じる。

     実に耇雑で巧劙な銙りだ。
     滅倚にお目にかかれるものではない。
     たあ、お目にかかりたくもないが。


     䜕はずもあれ。

     ここから、䞖にも恐ろしい消臭劇が開催されるのであった。




    ぀づく。

     
     
    北海道生たれ、北海道育ち、札幌圚䜏。 『曞く・描く・぀くる』こずが奜きな者です。 颚景写真や野鳥写真、小説、゚ッセむ、むラスト、読曞感想、文具話、䜜ったものなど、自由に曞いおいきたす。  質問箱も募集䞭です。ごゆるりずお付き合いいただけたしたら幞いです。

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