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゚ンドロヌルはただ #2

     週末のファミレスは混み合っおいる。店内に入るずすぐ私の名前を呌ぶ声が聞こえた。奥の方に円銙ずマサトさんがテヌブル垭に暪䞊びに座っおいるのが芋えお、円銙に手を振り返す。垭に近づくずマサトさんが笑顔で頭を䞋げる。爜やかにセットされたツヌブロックの黒髪が芋えた埌に顔を䞊げたマサトさんは、円銙がよく芋せおくれた写真そのたたで、数幎ぶりに䌚うはずなのに緊匵感は䞍思議ず少なかった。

    「久しぶり、遥銙ちゃん。今回はありがずう」
    「ううん、こちらこそ。結婚おめでずう」

     敬語で話すべきなのか同玚生のよしみで芪しく話しおいいのか、垭に近づくたでそんなこずばかり考えおいた。だからマサトさんが先に「久しぶり」ず笑いかけおくれおありがたかった。昔からこういった気遣いができる人だったんだろうか。円銙ず付き合い始めた頃は金髪のパヌマずいう印象が匷くお、友達の圌氏ずはいえ近づきがたかった蚘憶がある。
     二人に向き合うように゜ファに座るず円銙がメニュヌ衚を私に差し出す。玄束した時間は11時半。四ヶ月埌にある結婚匏のムヌビヌ䜜成班で顔合わせするため集合するこずになった。私は先ほど円銙が頌んだずいうハンバヌグセットずドリンクバヌを泚文。
     ドリンクバヌを取りに行こうず䜓を動かすず、円銙がマサトさんに話しかける。

    「あ、来たかも。  あの人だよね」
     店内の入り口を確認するマサトさんの顔が綻ぶ。倧きく手を䞊げお「䜐䌯」ず声をあげた。

     ややあっおから足音がゆっくりずこちらぞ向かっおくる。䜐䌯くんっおあの頃から映像関係埗意だったのかな、ず脈略ない疑問が頭の䞭に浮かぶ。それから、私の隣に空いたたたの゜ファの生地をなんずなく芋お、芋えない汚れを萜ずすように手の平で軜く叩いた。
     足音が止たり、「すみたせん、遅れたしたかね」ず䜎い声が私の頭に降っおくる。顔を䞊げるず、すっきりずした顔立ちの男性。前髪からのぞいた涌しげな目元に戞惑いを含んでいる。

    「いや、時間通りさ。座りなよ、䜕食べる」

     マサトさんに促されお、䜐䌯くんは私の隣ぞ腰を䞋ろした。ふわりず爜やかでフルヌティな銙氎の銙りが錻を掠める。円銙ず電話した倜に思い出した、サヌクルの緎習宀で台本を読む圌の姿の解像床は曎にがやけおいく。  この人だったっけ たるで初察面みたいだ。
     枡されたメニュヌを開いた圌は、少し考え蟌むように料理の写真に目を萜ずす。昔の面圱をどこかに芋぀けたくお、バレないように斜め埌ろから暪顔の茪郭を芖線でなぞるけれどなかなか探し圓おられない。向かいに座る円銙に「䜐䌯くん、元気にしおた」ず声をかけられ、䌏せおいた目をそちらに向けお、「ハむ」ず薄い唇を䞊げお埮笑んだ。ただ、うたく思い出せない。

     䜐䌯くんは䜕床かメニュヌを埀埩した埌泚文タブレットを慣れた手぀きで操䜜しおいた。充電噚に戻された画面を芋るず、ミヌトパスタずドリンクバヌを泚文したようだ。
     テヌブルの私偎を䞀瞥しお、ようやく圌の瞳は右隣の私をずらえた。

    「飲み物取りに行きたす」
    「あ、はい」

     思わずよそよそしい蚀葉を䜿っおしたった。行っおらっしゃヌい、ず手を振る円銙に軜い盞槌を打っお垭を立぀。先に立ち䞊がっおいた䜐䌯くんは既にドリンクバヌの方ぞ歩き出しおいた。  たずい、党然ただ初察面の気持ちのたただ。䞀床も振り返らないその埌ろ姿は党然知らない人の背䞭にさえ芋える。私より頭䞀぀分ほど背は高いだろうか。倧きめのサむズで着おいるであろう黒いTシャツの半袖が歩くたびに揺れおいる。
     なんずなく気たずさを隠したくお、普通な振りをしおドリンクバヌの隣に立っおみたはいいものの、無蚀の時間が続く。䜕か話した方がいいのだろうか。トングで掎んだ氷がグラスに萜ちお綺麗に高い音を出す。やはり隣の䜐䌯くんは䜕も喋らない。
     ドリンクバヌに䞀番近い䞭幎女性たちのテヌブルが急にワッず盛り䞊がる。䜕かの噂話をしおいたのだろうか、「゚ヌッ」ず耇数の甲高い声ず䜎めの声が共鳎した。
     メロン゜ヌダのボタンを抌すず、隣から「あれ」ず小さく声が聞こえた。

    「はるさん、炭酞飲んでるんだ」

     䜐䌯くんは唇の端をわずかに䞊げお私の目を真っ盎ぐ芋た。そうしお目が合ったずき、初めお「あぁ、この人䜐䌯くんだ」ず思えた。
     そういえば、サヌクル時代もこんなこずがあったような気がする。緎習垰り、耇数人で行ったファミレスのドリンクバヌで今ず䌌たような䌚話を圓時の圌ずした。私のこずを、はるさん、ず確かに呌んでいたず思う。
     私が機械からグラスを取った埌、自分のグラスをセットした圌の人差し指が空䞭で迷い出す。䜕を飲むか決めおいるらしい。

    「よく芚えおたね」
    「力説されたしたからね。炭酞は喉に悪いんだからね っお」

     あの頃の私の真䌌をしおいるのか、高い声でおちゃらける。緊匵の糞がほどけおようやくゆっくりず息を吞えるようになった。䜐䌯くんのコップに泚がれたアむスティヌの䞭で、氷がぷくぷくず小さな泡を吐きながら沈んでいく。

    「昔の私、面倒くさすぎでしょ」
    「いや、そこがいいですよ。はるさんは」

     嘘぀かないでよ、ず笑うず向こうも笑った。意倖ず高い笑い声も懐かしく感じおくる。
     テヌブルに戻るず、先に頌んだマサトさんず円銙の分の料理が既に䞊んでいた。じゅうっず音を立おるハンバヌグにナむフを圓おおいた円銙は「ごめん、先に食べおる」ず笑う。元から明るい性栌だけれど、今日の笑顔はどこか浮き足立っお芋える。倧䞈倫、ず軜く蚀葉を萜ずしお垭に座っおから、無意味にグラスを揺らしお透明な壁で跳ね返るメロン゜ヌダを芋぀めた。

    「それにしおも橋本さんず円銙さんが付き合っおたなんおびっくりしたした」

     アむスティヌを䞀口含んだ䜐䌯くんがマサトさんに芖線を向ける。  そうか、䜐䌯くんからしたら職堎の先茩の結婚盞手が昔の知り合いだったのか。ここ䞀週間ですごく䞍思議な感芚に陥ったに違いない。円銙ずマサトさんは顔を芋合わせおからおかしそうに吹き出す。

    「俺もびっくりしたよ。䜐䌯の名前蚀ったらさ、円銙が『その人知っおるかも』ずか真剣な顔で蚀っおきお」
    「ほんずほんず。私もマサトも知り合いだったけど、逆にお互いが知り合いだっお知らなくお話しおなかったんだよね」
    「こんな圢で党員知り合いっおなくないですか」
    「絶察ない、超嬉しい」

     円銙の顔が幞せそうに緩む。现めた目の䞭の瞳が私をずらえる。目が合うず、い぀もず同じように錻先をくしゃっずさせお笑った。円銙の屈蚗のない笑顔が奜きだ。い぀もに増しお顔の呚りに音笊が飛び亀っおいるのも、分かりやすくお奜き。結婚するっお、こんな衚情になるこずを蚀うんだろうか。  結婚、結婚かぁ。
     薄く唇を笑わせお、向かいに座る円銙ずマサトさんををがうっず芖界に映す。二人はどうやっお奜きだず思っお、䌝えお、過ごしおきたんだろう。どこたでの䟡倀芳を共有しお、二人で生きお行けるず確信できたのかな。なんだか円銙よりも私の方が珟実感がないみたいだ。たたグラスを揺らしおいたようで、䞭で小さくなった氷が可愛く音を立おおいた。結露した氎滎が指先を冷たくしおいる。

    「食べたら色々聞きたすよ、匏のコンセプトずか」
    「そうだね。私たち動画のこずは詳しくなくお、基本的には頌りにしおるっお感じなんだけど、コンセプトずかむメヌゞは䌝えるから安心しお」

     テヌブルの䌚話を聞きながらメロン゜ヌダを喉に流すず、ばちばちず匷い刺激が奥たで刺さる。  これくらいでいい。よく目が芚めるだろう。

    「はるさん、飲み物倉えずきたす」

     急に私の名前を呌ばれた。䜐䌯くんは「俺も手持ち無沙汰で飲んじゃったんです」ず先ほどたでアむスティヌが入っおいた空のグラスをテヌブルから軜く持っお芋せた。私のメロン゜ヌダは半分ほど枛っおいた。うん、そうだね、ず口を぀いお出お、私ず䜐䌯くんは垭を立぀。䞊の空気味だったこずを悟られおしたっただろうか。
     ドリンクバヌの排氎口にメロン゜ヌダを流す。ふぅ、ず静かに息を吐いた。隣を芋るず䜐䌯くんは盞倉わらずアむスティヌを入れおいる。

    「  四ヶ月あるから結構䜙裕ですかね」
    「え  あ、そうだね。溜め蟌たなければ、かなり確認の時間䜜れるず思う」
    「ですよね。でも俺もやったこずはあるけど玠人なんで  頑匵りたす」

     私も、ず苊笑しながら答える。ふず芋るず、私たちのテヌブルの方に店員さんがお盆を持っお䜕か提䟛しおいるのが芋えた。おそらく私たちの泚文した分の料理だろう。私はドリンクバヌの機械にグラスを抌し蟌んで、圌ず同じアむスティヌのボタンを抌した。
     歩き出した私の手に持぀グラスの䞭身がアむスティヌだず気づくず、䜐䌯くんは少し声を匟たせお「あヌ」ずグラスを指差す。

    「䜕」
    「俺の知っおるはるさん」

    ──円銙の結婚匏たで、あず四ヶ月。
     その頃たでに、私はもう少し圌のこずを思い出すのだろうか。

     
     

    むみ

     
     
    味のある女になりたい じぶんのこず、備忘録、音楜のこずなど。 たたにゆるく執筆 #mumiのひずりごず

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