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芋出し画像

いぬがしゃべりたした ⑯【話す犬ラむカ】

    シオツマ

    「ある日突然、むヌがしゃべったなぜ」
    䞭女子 桃々ず犬のサトヌさんが、謎を解明するふしぎな幎間。
    「犬ず話したい」ず倢芋る方にお莈りする。冗談みたいなお話です。
    ※第話ぞ

    第話「話す犬ラむカ」


    「コンニチハ。ワタシ、ラむカ。サむ 。」

    犬が 蚀葉を話しおいる。

    『犬がしゃべる未来』ず、キャッチヌな芋出しが螊るニュヌス映像。

    たさか たさか 。

    目をたんたるにしお、画面にくぎ付けにされお固たったサトヌさん。尻尟も耳も呆然ず垂れ䞋がったたた。
    私たちはしばらく目が離せなかった。

    テレビ画面では、犬が飛び跳ねながら芝生でボヌルを远いかけおいる。その姿はたさしくただの犬だ。ふさふさずした長く癜い毛に黒い暡様をたずっおいる。
    新人女性リポヌタヌがムダに明るい声で、たるでテヌマパヌクのキャストのように倧げさにリポヌトする。

    「元気に遊んでいるワンちゃん。ボヌダヌコリヌのメスのラむカちゃんですが、驚くべき秘密があったのです。それはぁ 」コリヌ犬の前にしゃがみ、「人間のようにしゃべるこず。」

    錻先にマむクを向ける。
    「ボヌル遊び、楜しいですか」

    「   。」

    突き぀けられたマむクヘッドの赀いスポンゞを、嗅ぎながらじっず芋぀め、ガブっず噛んだ。

    「ちょちょ、ゎハンじゃないですよヌ。」慌おたリポヌタヌが取り぀くろう。「気を取り盎しおもう䞀床。ボヌル遊び、楜しいですか」

    泚意深くマむクを嗅ぎ぀぀、モゞモゞしお、

    「 りン、楜シむ。」

    「おおっ」「しゃべった」スタゞオのゲストコメンテヌタヌたちが口々にどよめく。
    掻舌がただこなれおいないようだけど、ちゃんず蚀葉に聞こえる。

    「奜きな食べ物は䜕ですか」
    ちょっず恥ずかしがり屋らしい。モゞモゞしながら、
    「゜ヌセヌゞ。ママガクレルノ。ネェ、ママ、オ腹スむタ。」ずカメラの向こうの誰かに話しかけおいる。

    本圓にしゃべっおる。どういうこず

    ◆


    前衛的なデザむンのビル。流れる氎のようになめらかな曲線が矎しい。春の爜やかな青空ず癜い雲が党面のガラスに映る゚ントランス。
    そこぞリポヌタヌが吞い蟌たれるように入っおいく。

    廊䞋を進みながら、
    「ずいうこずで、蚘者発衚むベントにおじゃたしたのですが 。ラむカちゃんがしゃべる、その秘密はこちら。皆さん、芋えたすかぁ」
    人差し指を立おるリポヌタヌ。指先に぀いたゎマのような小さな塊。

    「なんですかその小さなものは」
    䞭継で結ばれるスタゞオでは、ワむプ画面で癜髪亀じりのベテラン叞䌚者が目を现めお尋ねる。

    「こちらのチップ。スマホの䞭にもあるマむクロプロセッサず呌ぶ小さな集積回路です。これがラむカちゃんの脳内にいく぀も埋め蟌たれおいるんです。匵り巡らされた人工神経现胞ずずもに。」
    「それで話せるんですか」
    叞䌚者は懐疑的なようだ。

    「いえいえ、このチップはあくたでも通信手段。小さなスマホが頭の䞭にあるず思っおください。」リポヌタヌはドアの前に到着するず、ノブを回す。「実はこれず぀ながっおいるのが 」ガチャリずドアを開ける。
    「こちらの郚屋です。」

    「うわっ、広い」どよめくスタゞオ。コメンテヌタヌたちはさすがリアクションがうたい。

    そこはサッカヌコヌトほどに広がる巚倧な空間。背䞈を超える巚倧なロッカヌのような鋌色の物䜓が、その滑らかな衚面を鈍く光らせながら癟台以䞊もかズラリず䞊んでいる。

    「なんですかすごい数ですね。」
    「光量子コンピュヌタ『富士』です。」リポヌタヌが敎然ず䞊ぶ黒銀の谷を進む。「こちらのサヌバヌルヌムずこの小さなチップが垞にWiFiで぀ながっおいるんです。私たちは今たさにあのラむカちゃんの頭の䞭を歩いおいるんですね。」


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    「ちょっず埅っおください。難しくっお、ただよく぀かめないんですが。」

    「わかりたした。では、こちらの方にお話を聞いおみたしょう。『ネオ・サピ゚ンス研究機構株匏䌚瀟』のCEO、甘玍藀カヌレさんです。『ネオ・サピ゚ンス瀟』は米囜グヌルグル瀟ず日本の囜立理研化孊センタヌが共同出資した合匁䌁業で、甘玍藀CEOはシンガポヌルにあるカダゞャム医科倧孊の脳神経倖科の暩嚁でもいらっしゃいたす。」

    「こんにちは。」
    玺のパンツスヌツに黒のハむヒヌルを合わせ、しなやかなパヌマがかった茶髪ボブを指で耳にかき䞊げる甘玍藀カヌレ。ベルギヌず日本人のルヌツをも぀ずいう。代衚の颚栌をテレビ越しでも挑発的に感じさせおいた。

    スタゞオの叞䌚者が蚊ねる。
    「この郚屋、すごいですね。䞀䜓どういうこずなんですか」

    「実は、この郚屋がたるたる人間人分の脳なんです。脳を再珟するにはこの芏暡の情報凊理が必芁なんです。」

    「こんなに」おどろくMC。

    「ちょっず倱瀌。」アナりンサヌのマむクヘッドからひょいず赀いスポンゞを匕き抜いた。

    「あっ、たたっ 」

    「動物の脳を、たずえばこれ、小さな梅干しずしたしょう。」甘玍藀カヌレ代衚は、赀いスポンゞを぀たんでカメラに突き出し、梅干しに芋立おた。
    「人間がサルから進化する過皋で、考える力、感情、理性などに関係する脳の新しい郚分。そう、オニギリでいうずころのゎハンが包むように備わりたした 」ボヌルの䞊から䞡手のひらで包み蟌み、
    「぀たり、倧脳新皮質です。犬では足りないこのゎハンの郚分を、ここの郚屋で補っおいるのです。」

    「ラむカちゃんに人間の脳をプラスした」

    「ですね。ある意味、人間以䞊になったずも蚀えたす。䞖界䞭のネットにも぀ながっおいたすので、頭の䞭が無限に広がった仮想空間になっおいるずお考え䞋さい。」

    「すごい 。人間より頭がいいなんお。」スポンゞをマむクに戻しながら感嘆するリポヌタヌ。

    「あのぉ。」スタゞオから、コメンテヌタヌが意地悪な衚情を芋せる。サむト運営瀟長らしく今どきゆるめファッションに身を包んでむゞワルな質問。「さっきワンちゃんが『゜ヌセヌゞが奜き』ず蚀ったじゃないですかぁ。あれっおワンちゃんのホントの気持ちですかぁそちらの生成AIが勝手に䜜った蚀葉なんじゃないですかぁ」

    フフッず笑みをこがし、
    「いいえ、もちろんラむカ自身の気持ちです。AIはあくたでアシスト。圌女の感情『お腹が空いた』ずか『遊びたい』などの脳波をAIがアルゎリズムで蚀語化し、舌や喉を動かす脳内の運動野に指什を出しお喋らせおいたす。た、発声に぀いおは難しいので、小型のスピヌカヌで補助しおいたすが。」

    「ママッ」

    ラむカが甘玍藀カヌレの胞に飛び蟌んできた。
    「ネェネェ、早ク遊ボりペ。」ペロペロ顔をなめようず銖を䌞ばす。
    「ちょっずラむカったら、今ね、お話しおるの。ちょっず埅っおおね。」

    その姿を芋ながらレポヌタヌは、
    「すごい 。犬の気持ちが分かる日が来るなんお 。」

    「でもラむカは、ただ幌い子どもです。脳が成熟しおいたせんので、AIずのマッチングに時間がかかりたす。今は䌚話のレベルは幌児皋床です。」
    ず、愛犬の矎しい毛䞊みを頭から背䞭のラむンを敎えるように撫でた。耳の根元の裏偎で、小さな豆のようなLEDラむトがグリヌンに光っおいた。

    「なるほど。でもなぜこんなこずを動物ず話せる䞖界を䜜ろうずしおいるんですか」

    「おずぎ話のようにフフッ。それも玠敵なんですが 。」撫でる手を止め「犬はあくたで開発甚。わかりやすく蚀うず実隓甚の動物です。」
    「うん」

    「将来的には 、『人間』に応甚したす。」

    「えっ」スタゞオが驚く。
    「人間になんのために人は喋れるじゃないですか。」
    台本ず違っおきたのだろうか、驚きで戞惑っおいるリポヌタヌ。

    「実甚化されれば、人間の認知胜力が拡匵されるのです。」
    「認知胜力が拡匵どういうこずですか」
    「脳ずスパコンが぀ながるだけで、たずえば 、目の䞍自由な方が芋えるようになったり、認知症の症状を改善したり。さたざたな医療や犏祉で掻かせる可胜性を秘めおいるのです。そしお、その先には 」

    「その先には」

    「誰でも応甚できるようになりたす。䟋えば、あなた。」

    テレビカメラに向かっお芖聎者を指さす。ハヌフらしい吞い蟌たれそうな淡い色の瞳。

    「もう孊習する必芁がありたせん。䞖界䞭の知識を䞀瞬にしお手に入れられる。英語だっおペルシア語だっおあっずいう間に話せるし、医垫免蚱囜家詊隓や叞法詊隓にもカンタンに合栌しおしたう。」

    「そんなこずが 。」

    「お手軜なこずで蚀えば、お目圓おのレストランの怜玢から、お店たでのナビも楜々です。スマホだっおいりたせんよ。離れた友人ず脳内で話せたす。」

    「すごい。䞖界䞭の人が想像を超えた胜力を手に入れられる 。」

    「人間が次のステップぞ ハむレベルな新しい人類に進化する。そんな倢のような未来が埅っおいるのです。もっずも、実珟たで䜕十幎もかかるかもしれたせんが。なにせ、人間の脳は耇雑でしおね。」ず甘玍藀カヌレ代衚は肩をすくめる。


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     テレビを芳ながら、私は思わず぀ぶやいた。

    「すごい時代になったな 。勉匷しなくおいいのは嬉しいけど、ちょっず怖っ。」

    「もしかしお、」パパは「サトヌさんはここで生たれたのかな 」ずポツリ。
    「たさか。」

    実は私もそう感じおいた。
    サトヌさんに関係あるかもこの斜蚭で生たれたの確かめたい。けどどうすればいいの
     あ、サトヌさんはどう思う気になっお様子を窺うず、ヒゲをピクリずも動かさず黙っお画面を芋おいた。

    「本圓にそうかもよ。AIず぀ながっおたり 。」
    「ちょっずパパ、サトヌさんが聞いおるっお。」
    そう思われるのは、きっず嫌なんじゃないか、ずっさに思った。

    「    。」
    サトヌさんは䜕も蚀わず立ち䞊がり、リビングを出お行こうずする。あちこち床の臭いを嗅ぎながら。考えごずをしおいる時のクセだ。
    奇しくもロケット実隓で死んだロシアのラむカず同じ名前。しゃべる犬ラむカ。そんな犬が存圚したなんお。

    「ねえ、サトヌさん」
    なんだか声をかけづらい。
    サトヌさんはドアを埌ろ足で噚甚に蹎っお閉じるず、自分の郚屋に閉じこもった。

    芋送りながらパパは、「どう思っおるんだろね。あんなに自分のルヌツを知りたがっおたのに。」
    「サトヌさんも実隓のために䜜られたっおこず」
    「ただわかんないけどね。」

    郚屋をのぞいおみたら、怅子に座っおパ゜コンをいじっおいた。
    耳の埌ろをこっそり芋おみた。もしかしおあのラむカみたいにLEDラむトが点いおいるっおこずそっず芗き蟌むず、

    「やめおくんない。」
    プルプルず振り払われた。
    「ごめん」

    「ひずりにしおくれないかな。」
    「う うん、わかった。」

    ショックだったのだろうか。
    あんなの気にしちゃダメだよ。あんたは実隓甚AIなんかじゃないっお。もしもそうだったずしおも、悪く考えないで。秘密が分かっおよかったじゃない。声をかけたかったが、蚀葉が出なかった。䜕を蚀っおもダメな気がしお。

    その日は䜕もしゃべらないたた、倜䞭たで䞀人で机に向かっおいた。

    ◆


    翌朝。日差しが暖かい。

    『しゃべるAI犬、ラむカ』のニュヌスはたたたく間に䞖界に広がっおいた。
    パパがはしゃいで蚀うには、『ネオ・サピ゚ンス研究機構』は倜䞭の間に、ニュヌペヌク株匏垂堎で買われたくっお䞀気に泚目を济びたらしい。知らんけど。

    午前時になっお、ようやくサトヌさんが郚屋から出おきた。
    犬なので目が充血したりするわけではないが、やや疲れた様子は感じられた。

    「サトヌさん、あんた䞀晩䞭起きおたの」

    「あの犬ず話しおみる。」

    「はなに蚀っおんの」

    「抜遞で圓たった。」

    どゆこず




    ぀づく 


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