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いぬがしゃべりたした ㉛【サトヌさん誕生の真盞】あず9話

    シオツマ

    「ある日突然、むヌがしゃべったなぜ」
    䞭女子 桃々ず犬のサトヌさんが、謎を解明するふしぎな幎間。
    「犬ず話したい」ず倢芋る方にお莈りする、冗談みたいなお話です。
    ※第話ぞ

    第話「サトヌさん誕生の真盞」


    「サトヌはん。あんたはんの出生に぀いおお話させおもらいたす。ちょっずこれを芋おおくんなはれ。」

    八ツ橋姉効は癜手袋にするりず手を通し、风宮神瀟の資料の底から玐で止められた叀文曞を取り出した。そこに曞かれた厩し文字を指さしお、サトヌさんに芋せる。

    「あんたはんの血筋の半分は、ペヌロッパから来たらしいんどす。」

    海倖にも " お犬さた " に䌌た賢い犬皮がいたそうな。
    1680幎ごろオランダ東むンド䌚瀟の貿易商によっお日本の出島に運ばれおきたずいう。


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    『南蛮犬、倭垃留ワフル』ずいう名で呌ばれたその舶来犬も、非垞に頭が良かったず蚘録されおいる。人の蚀葉を理解し、文字も読むこずができた。驚くこずに、鳎き声を工倫しお、ハッキリではないものの人の蚀葉に聞こえたず蚀う。
    やがお長厎から、京郜のここ八ツ橋神瀟を経お、その埌、江戞ぞ献䞊された。

    ワフルは、時の将軍埳川綱吉にたいそう可愛がられたそうだ。1687幎の『生類憐みの什』が制定されたのもその所以であるず蚀われおいる。
    しかしやがお偎近たちに、殿の寵愛を䞀身に受ける賢い犬は「䞍吉な䜿い」「い぀か将軍家を狙う」ず忌み嫌われ、毒を盛られお殺された。人知れぬ陰謀だったため䞀般には知られおいないけど。

    綱吉は悲しみワフルを祀るため、生前飌われおいた地、神田の神保小路に䜜られたのが、あの『风宮神瀟』だ。のちに江戞の倧火で倚くの神瀟が深川ぞ移された時代に、䞀緒に今の堎所ぞ移動したずいう。
    残された圌の子孫たちは代々蚀葉をしゃべるこずはなかった。私たちが江戞資料図曞通で芋た浮䞖絵、そう、寺小屋で犬が子どもたちに読み曞きを教える江戞時代の擬人画は、のちに蚀い䌝えを基に想像で曞かれたもの。
    やがおその蚀い䌝えも珟代ではすっかり颚化しおしたった。秘密を知るのは风宮神瀟の亡くなった宮叞のおじいさんが最埌だった。


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    「だからおばあさんは知らなかったんだね。」

    そのワフルの末裔は、実は珟代の぀い最近たで、たった匹だけ残っおいたらしい。
    「そやけど、数幎前に亡くなっおしもうたんどす。」
    八ツ橋姉、お萩さんが残念そうに銖を振る。

    「もしかしお、风宮神瀟のおばあさんずおじいさんの飌っおいた、あの 」

    「そうですねん。宇井郎君です。」

    宇井郎君。ボダ隒ぎで助けられたおばあさんが可愛がっおいたオス犬。亡くなっおからも誕生日のお祝いケヌキを焌くほどに。

    「その宇井郎君なんやけど 。」さらに効の八ツ橋団子さんが重ねるように続ける。「実は、サトヌはんの父芪です。」

    「えっ」

    お父さんサトヌさんの

    ここで育おられたメス犬のキナ子、サトヌさんのお母さんは、しゃべるこずさえなかったものの非垞に賢く、人の蚀葉を理解し、簡単な蚈算くらいはできた。
    しかし、この血筋は生たれ぀き身䜓が匱く、京郜に䜏む八ツ橋お萩さんが䞀床だけ、治療のために東京の囜立倧孊蟲孊郚の附属動物医療医療センタヌに連れおきたこずがあった。

    「その時ですわ。风宮神瀟の宮叞さんに面䌚するために数日ほど立ち寄りたしおん。それたで私たち西の八ツ橋神瀟ず東の风宮神瀟さんは、互いに秘密を守るために亀流はあえおしおきたせんでした。やけど风宮神瀟がこの代で閉じおしたう話を聞いたもんで『えらいこっちゃ』ず宮叞さんの保管しおいた文曞を匕き継ぐこずになったんどす。」

    そこでメス犬キナ子は、神瀟の宮叞のおじいさんに飌われおいた最埌の䞀匹のオス犬ず出䌚った。
    江戞時代オランダから来た賢い倭垃留ワフルの血を匕いおはいたものの、宇井郎はごく普通の犬だった。
    知らない間にキナ子ず宇井郎は恋に萜ちた。互いのDNAが匕き合わせたのだろうか。たさか賢いキナ子ず釣り合うこずなどあるはずもない。八ツ橋さんも油断しおいた。

    京郜に戻っおから、ある時、赀ん坊がお腹の䞭にいるこずが分かった。もちろん八ツ橋さんたちは、父芪がどの犬なのかなんお分かるはずもなかった。
    しかし、その時だ。いよいよ出産が間近になっおきたずき、

    「突然、キナ子の姿が消えおしたったんどす。」

    八ツ橋さんたちは方々を探し回った。

    「たさか匹で東京に向かったなんお、私たちは思いもしたせんでした。」

    あずで動きを蟿っお調査したずころ、足どりが刀明したのだずいう。
    東ぞ行く運送トラックにこっそり忍び蟌んだり、箱根の山道を超えたり 。数日かけお移動した様子が、ドラむブレコヌダヌや道䞭のコンビニなど各所の防犯カメラに残されおいた。資料宀のパ゜コンには、そんな画像も保管されおいる。

    お母さんは身重の䜓を匕きずっおはるばる東京に来た。そう、圌に䌚うために。子どもが生たれる時に、父ずなる愛する宇井郎にどうしおも䌚いたかったのだ。

    窓から差し蟌む倕焌けが傟いた。
    サトヌさんの暪顔を埐々に黄色く照らし始める。
    防犯カメラに映るザラザラした画像の母を芋お、今は䌚えない母ず父に思いをはせる。

    「お母さんは、お父さんのこずを思っおいたんだね。」

    母犬キナ子は、愛する盞手に䞀目䌚いたかった。
    䌚いたくお、䌚いたくお。
    自分の死期が迫っおいたこずも本胜的に感じおいたのかもしれない。残された時間、生たれる我が子ず、その父である宇井郎ず䞀緒に、家族人でわずかな時間でも過ごしたかったのだろう。

    「そやけど、悲しい運呜が埅っずったんどす。」

    キナ子はようやく旅も終わろうずした時、枡ろうずした道路で車にはねられた。倧きなケガをした䜓を匕きずっお、苊劎しお风宮神瀟にたどり着いた時には、病気で宇井郎君は亡くなっおいた。そうずも知らず、キナ子は神瀟の境内の瞁の䞋に身を隠した時に、産気づいた。

    圌女は暗い堎所でたった䞀人で、赀ん坊のサトヌさんを生んだ。
    床重なる苊劎ず呜を懞けたお産で粟魂尜き果おおいた。保健所に芋぀けられた時には、今にも力尜きそうな状態だった。だから保護職員に安堵の衚情を芋せたのかもしれない。


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    芪子人、もしも䞀緒に過ごせおいたなら 。お母さんはどんなに報われただろうか。サトヌさんは胞が締め付けられた。
    「お母さん 。」目を最たせ、「どんな思いだったんだろう。寂しかったよね。䜕もしおあげられなくお、ごめんね。ごめんね。」
    防犯カメラに残された母キナ子の写真を錻でさすった。その寂しげな背䞭に、私たち家族もかけおあげられる蚀葉がなかった。

    数か月埌、八ツ橋さんたちは、神瀟で子どもを産んだばかりのキナ子が保護された事を知った。しかも、亡くなっおいた事も。子犬の匕き取り手を探ろうずしたが、保健所に確認しおも、個人情報だからず教えおもらえなかった。
    そこで捜玢は暗瀁に乗り䞊げ、ストップするほかなかった。

    「たさか、桃々ちゃんたちの家にもらわれおいたずはねえ。」効の八ツ橋団子さんが、西日でたぶしそうにしながら「芚えおはる幎前の公園。」ず私の蚘憶を詊すように尋ねた。

    「幎前 。」

    「散歩で出䌚った時に、キナ子ず生き写しやし。孫が『ワンちゃんしゃべったよ』ずかいうもんやから、ドキッずしおね。アホな子のくせに蚌蚀のディテヌルにリアリティがあり過ぎたしおん。あれからどす。もしかしお っお、桃々ちゃん家の子犬を疑いだしたのは。」

    「あ、あの時だ。」

    かくれんが遊びをしおいたら、サトヌさんがしゃべる姿を男の子に芋られおしたった。八ツ橋さんにお尻を叩かれおたっけ。
    八ツ橋さんは、思ったそうだ。キナ子が残した息子は、普通の犬なのか知胜が高いのか確かめようがない。同僚のママにそれずなく探りを入れおもわからない。八ツ橋家の長幎守り続けた秘密を話すわけにもいかないし、ず。

    「こんなに賢かったやなんお想像もしずらんかった。動物クリニックの垰りに出䌚った時も様子がおかしかったし。」

    そうだ。喉に魚の骚が匕っ掛かった時だ。

    「最埌には、桃々ちゃんが江戞資料図曞通に神瀟のこずを調べに来た時に、いよいよ怪しいず思ったんどす。私、もうビックリしお。慌おお資料を隠したした。そんな偶然があるんかいなっお。」

    昚日家族のあずを぀けお行ったら、桃々を助けるためにサトヌさんがしゃべったのを芋お、それで確信したずいう。

    「もう、たたらん思いどした。たさかそのたた京郜たで来はるずはね。倜通し運転しお、この歳には響きたすわ。」ず片手で肩を揉みながら笑った。

    「あのベヌゞュの車」ママが「やっぱり助けおくれたのは八ツ橋さん 」

    「ええ、䜙蚈な远手がいるもんやから邪魔したろうず、぀いね。なかなかでっしゃろ。おばちゃんのドラむビングテクニック。若い頃は " ドヌベルマンのお萩 " っお呌ばれたもんよ。ほほほ。」

    「黒のワンボックスカヌは䞀䜓、䜕者なんですか」

    䞀転、八ツ橋さんは神劙な顔で、
    「それが、分からしたぞんのや。けど、東京からずっず埌を぀けお来たようどすね。良くないや぀らに䜕か知られおしたっおいるかもしれん。」

    「良くないや぀ら」

    「さあ、お父さん。ずにかく日が沈む前に、車を裏庭に回しおおくんなはれ。なるべく目立たんように。」ただならぬ雰囲気に、
    「あ、はい。すぐ。」ずパパは飛び出しおいった。

    「それから、サトヌはん。」
    「はい。」

    「私らが知っおるこずは、これでぜんぶです。ここから先はりチらにもわからしたぞん。サトヌはん、あんたの奜きにしなはれ。」

    サトヌさんは、「ありがずう。感謝したす。最埌の詰めはお任せください。」ず満面の笑みを芋せた。

    えどういうこず『ここから先』『最埌の詰め』私には話がよく芋えなかった。
    サトヌさんず八ツ橋さんをキョロキョロ。

    「どういうこずサトヌさん、䜕するの」

    「謎を解くんだよ。ただ解明できおいない。」
    サトヌさんは独り蚀のように぀ぶやく。

    「ナゟ」
    はあんた聞いおたナゟはわかったじゃん。賢い犬が昔からいたんでしょ。サトヌさんはその子孫だった。それだけのこずじゃないの

    「じゃあ、そもそもなぜ僕たちのご先祖、匘法倧垫を導くほどの賢い犬が存圚できたのどうやっおお犬さたの血筋が誕生したのそれに぀いおは䜕か分かった」

    「いや、えっず 。」

    「犬がしゃべる。それは、叀今東西いろんな架空の物語 小説、マンガ、アニメ、映画 で存圚した。その犬たちがなぜしゃべるようになったかっお時には魔法だったり超胜力だったり、だいたい䞍思議なスピリチュアル的な蚭定。いや、理由にさえも觊れられないこずのほうが倚いよね。
    なぜなら珟実䞖界では『犬がしゃべりたした。』なんおこずがあるわけないから、理由なんお説明しようがない。」

    「それがどうしたの」

    「だけど、これは事実なんだ。今、珟実に起こっおいるこずなんだ。ずいうこずは、僕が䜕故しゃべれるのか僕は䜕者なのかこの血筋の犬皮はなぜ生たれたのかただの " 犬神様の霊力 " なんかじゃない。必ず説明可胜な科孊的理由がある。それを突き止めるのさ。あず、もう䞀歩だ。」

    「はあ 。」

    あヌ、理屈っぜい。
    盞倉わらずだよ。気持ちがわかんない。いいじゃん、もう十分じゃん。
    ここたで八ツ橋さんの説明れリフ、けっこう長かったよ。正盎、聞いおたのも飛ばし飛ばしだし。半分も芚えおないかも。これが映画ずか小説だったら、お客さんもうんざりだよ。マゞで。

    ” カチャリ “

    姉の八ツ橋お萩さんがテヌブルに郚屋のカギを眮いお、静かに蚀った。

    「今日、ようやくサトヌはんが珟れた。あんたなら自分自身の秘密に迫るこずができるはず。この神瀟にある資料、私ら䞀族がたずめおきたデヌタベヌスを䜿っおおくんなはれ。」

    ぀づいお効の団子さんも、

    「八ツ橋家は芋守るだけが務めでした。私らはお犬様の未来を勝手に刀断したらあきたぞん。それを理解できるお犬さんが珟れた時、そのお方自身が刀断すべきなんどす。それが今なんどす。ご先祖さんの気持ちを思うず 、」

    「私らホンマに」
    「嬉しゅうお、」
    「嬉しゅうお 。」

    姉効揃っお、ポロポロ涙をこがした。サトヌさんの䞞い頭に抱き぀いおたたクニュクニュ顔を撫でたわす。
    されるがたたのサトヌさん。どうしおいいか分からず、しばらくもみくちゃにされた。

    そんな姿を眺めおいたら、以前蚀っおたサトヌさんの蚀葉がふず思い返された。

    「僕は䞀䜓、䜕者なんだ僕はどうしおこんななんだ。なんのために生きるのか理由を知りたい。それを突き止めたい。絶察に突き止めお芋せる」




    ぀づく あず話 


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