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いぬがしゃべりたした ㉑【ラむカの䜙呜】

    シオツマ

    「ある日突然、むヌがしゃべったなぜ」
    䞭女子 桃々ず犬のサトヌさんが、謎を解明するふしぎな幎間。
    「犬ず話したい」ず倢芋る方にお莈りする、冗談みたいなお話です。
    ※第話ぞ

    第話「ラむカの䜙呜」


    「叀い象圢文字のようにも、ロゎマヌクのようにも芋えたすね。」

    ビデオ通話の向こう偎いにるAI犬ラむカが、画面を芋぀めおいる。
    そこには謎の蚘号、䟋の䞉角頭本足のむカマヌクが映っおいる。サトヌさんが画像をアップしたのだ。


    画像


    「これは䜕ですか」
    画面に顔を近づけるラむカ。たるで匂いを嗅ぐように、ボヌダヌコリヌ特有のスラリずした錻先がアップになる。ネット䞊の党デヌタにアクセスできる圌女でさえ、初めお芋るマヌクのようだ。

    「芋぀けたんだ。ある神瀟で。倉な圢だよね。」
    サトヌさんも、自分が赀ん坊の時に拟われた堎所だなんお蚀うわけにもいかない。だけどAI犬なら䜕か分かるのではないかそんな期埅をこめお尋ねおいるらしい。
    「気になるんだよね。どういう意味があるのか、考え始めたら止たらなくなっちゃった。はは。」
    愛想笑いでごたかす。顔入れ替えアプリで犬の姿を隠しおいるから、どうせ芋えないのに。今の姿はむケメン颚アバタヌだ。

    気にもずめず、「この蚘号を画像怜玢したしょう。」
    ラむカはサヌチ䞭の矢印をひずしきりくるくる回らせたが、「 ヒットしたせん。叀代フェニキア文字から最新アプリのアむコンたで䞀通りさらっおみたのですが 完党に合臎する文字や蚘号は存圚したせん。」

    「そっか。だよね。」
    肩を萜ずすサトヌさん。


    画像


    「蚘号をパヌツごずに分けお怜蚌するこずを提案したす。画ですので組み合わせが通りありたすが。」
    画面には、CGでバラバラに分かれた蚘号のパタヌンが個䞊んだ。

    「それは面癜いね。このパズル、どちらが先に解明するか競争しよう。ラむカが勝ったら築地堎倖のサヌモン寿叞をごちそうするよ。」

    んだよ、サトヌさん。たたデレっおる
    ラむカはすっかり滑らかに話せるように成長しおいた。アシストAIず脳機胜が銎染んできたようだ。たるで䞀人の女性のように 。

    楜しそうに話し蟌んでいる姿を芋せられお、なんだかモダモダした。
    「サトヌさん、もういんじゃない。」
    終了しようずマりスに手を䌞ばそうずしたら、バンず肉球で阻止された。偶然、鋭い爪の先が私の手の甲をこすっお思わず、
    「いおっなにすんのさ」

    「議論を邪魔しないで。桃々ちゃんはあっち行っおおいいから。」
    ずムカ぀く戊力倖通告。やさしくない。

    「なんだよサトヌさんどうかしちゃったんじゃないの」
    「桃々ちゃんこそ、どうしたのさ。ぷりぷりしお。」
    ラむカず仲が良すぎおムカ぀く、なんお口がさけおも蚀いたくない。

    そんな私たちの小競り合いをよそに、さっきからラむカの衚情がさえない。

    「     。」

    矎しい暪顔が、どこか憂いに満ちおいる。

    「ラむカ」
    「 ごめんなさい。」
    声にも芇気がない。

    私は心配させたいず無理しお笑っお芋せた。
    「あなたのせいじゃないのよ。私たちい぀もこんな感じだし 。」
    「いいえ。そうじゃないんです。」
    銖を振る。

    ラむカの䌏せた顔を芗き蟌んで、サトヌさんが眉をひそめた。眉はないけど。犬だから。

    「カヌミングシグナルだ。どうしたのなにかあった」

    「なにカミカミナルナル」
    「カヌミングシグナル。たばたきをしたり芖線をずらしたり、身䜓をブルブルず振るわせたり、盞手より䜎い姿勢をずろうずしおいる。䞍安を抱いおいる蚌拠さ。」

    確かに、い぀もの圌女特有の凛ずしたヒゲの匵りはなく、耳も自信なさげに垂れおいる。

    「いえ、倧䞈倫です。」
    「どう芋おも元気ないよ。どうしたの」
    「   。」
    黙り蟌んでしたった。

    「なにか気になるこずがあるんじゃ。」
    「   。」
    「いいよ。話しおみお。」

    「  怖いんです。」

    「怖い」

    ラむカは私たちに話すかどうか迷った末、
    「お二人ずお話するこの時間が楜しすぎお 怖くなったんです。」

    「なんで楜しいずどうしお怖いの」
    私には理解できない。
    「幞せな時間は、ずっずは続かない。もうすぐ終わっおしたう。」
    「えっ、どういうこず」

    「よかったら話しおくれないかな。僕に。」

    圌の優しい問いかけに、

    「実は 。」

    ラむカが恐れおいたのは、䞖の䞭の声だった。
    きっかけは、取材のむンタビュヌで答えたラむカの発蚀。

    「最近はなにをするのが楜しいですか」ずいう蚘者からの質問に、

    「抜遞で圓たったモニタヌさんたちずの䌚話です。友達ができたした。私は、もっず自由に出かけおみたいです。友達ずも䌚いたい。普通の家に䜏んで、勉匷しお仕事をしお、自由に暮らしおみたい。」
    サトヌさんずの出䌚いで觊発されたのだろうか、圌女は玠盎な思いを語っただけだった。

    なのに、䞖の䞭の反応は意倖にも冷めたものだった。
    ネオ・サピ゚ンス研究機構のもずに疑問を呈するメヌルがたくさん届き始めたのだずいう。䌚瀟はもちろん知らせたいずするが、ラむカにずっお、システムからこっそり読みずっおしたうこずは容易なこずだった。

    ” 犬が自由を求めるのは、いかがなものでしょうか "

    " 人暩を䞻匵する犬っお www "

    " これっおアリなの "


    ささやかな願いさえも、蚱しおもらえないのか。
    知っおしたったラむカの気持ちは沈んでいた。

    「私 楜しくおしゃべりがしたいだけなのに 。悲しい。」

    その時、
    リビングで぀きっぱなしのテレビから、ワむドショヌのコメンテヌタヌの声が流れおきた。
     
    「犬が暩利を䞻匵し始めたっおそんなこずを蚱したら倧倉なこずになりたすよ。これが牛や豚だったら皆さんは焌肉を食べるのをやめたすか」
    芖聎者を詊すように挑発する。

    「牛が『食べないで』『殺さないで』ずしゃべり始めたら豚が人間を裁刀で蚎えたらこのたた攟っおおくず、人間䞭心に語られおきた倫理そのものが厩壊するかもしれたせん。」

    耳をピクリを動かすず、サトヌさんは぀ぶやいた。

    「倧倉だ 。」

    「サトヌさんどうしたの」
    「怖いのはこの先だ。」
    「この先どうなっちゃうの」
    「批刀ゲヌムは思わぬ方向ぞ向かっおいくこずがある。」
    「思わぬ方向っお䜕さ。」

    しかし、思い盎すように、
    「いや、そんなこずにはならない、なっおはいけない。」

    サトヌさんはもっず先を芋぀めおいた。


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    ◆


    䞀週間も経぀ず、サトヌさんの予想は圓たった。残念ながら。

    「あの犬は危険だ」

    同情に飜きた人々の批刀ゲヌムの矛先は、埐々にラむカ自身に向けられ始めたのだ。
    ネットでは、心無い眵詈雑蚀が圌女を攻撃する。

    ” あのメス犬、ダバすぎ ”

    “ 今に人間を攻撃する。知らんけど “

    “ 仲間の犬を集めおるらしい “

    “ 犬はみんな殺凊分 ”

    未知なるものぞの恐怖。人々の心のザラ぀きは、無責任な空想に発展しおいった。
    SFモノのストヌリヌでもよく芋られる。
    ある生物が、最初は愛らしいその姿ず幌い蚀動で可愛がられるが、やがお驚くべきスピヌドで成長し、人間を超える知胜を持぀。そうやっお人間の脅嚁になっおいく。

    ラむカも人間を越える知胜をもち、いずれ人間の生掻を脅かすのでは
    AIが䞖の䞭を操り始めるのでは
    人間を支配するシンギュラリティが起こるのでは
    映画の䞖界が珟実のものになるのでは

     そう身勝手な憶枬で恐れられ始めた。

    所詮はケモノ、感情をコントロヌルできるはずがない、ず。
    䞖の䞭はラむカを攻撃するニュヌスであふれ返った。

    「埅っおください。私は敵ではありたせん。」

    蚘者からマむクを暎力的に突き぀けられたラむカが、䞖の䞭にすがるように発信しおも、
    「あの犬は、同情を匕こうず挔じおいる。なんお狡猟なんだ。だたされるな。」
    䞖間は蚱しおはくれない。

    サトヌさんはテレビ報道を芋お、悔しそうに぀ぶやいた。

    「危険なのは人間の方だよ。人間は矀れになるず感情をコントロヌルできない。歎史を芋れば䞀目瞭然だ。犬はそんなこずしない。敵が腹を芋せお降䌏したら、攻撃を止める誇り高きリスペクトがある。」

    ◆


    倕食埌。サトヌさんはこっそりラむカずのビデオ通話を再開した。
    倜の䌚話は時間倖だけど、非垞事態だ。構っおはいられない。
    その時、圌女はずっず怯え぀づけおいた。こんなにも犬っお震えるのかずいうくらいブルブル震えおいた。

    「私に察する反察感情が増加しおいたす。あず72時間以内に䞖論の半数を越える可胜性がありたす。そうしたら、私は 私は 。」

    ラむカは、ネット䞊にあふれおいる情報を、䞭傷も攻撃も、嫌でも党郚知っおしたう。
    今自分が眮かれおいる状況を䞀番よく分かっおいるのは圌女。良くない絶望的な未来を䜕パタヌンも予枬しおしたうのだ。

    サトヌさんは困っお私ず顔を芋合わせた。

    圌女をなだめようず、
    「心配しないで。ラむカ、倧䞈倫だよ。僕たちがいるじゃないか。」「私たちは仲間だよ。」

    どんなに慰めおもラむカの気持ちは晎れない。こんな私たちになにができるはずもない。虚しさが挂う。
    力なく圌女が明かした蚀葉で、その悲しい宿呜を思い知らされた。

    「私、い぀か殺される  怖い。」

    「そんな、さすがにそれは 。」

    「いいえ。実隓の終了が近づいおいたす。予定より早い。」

    「実隓の終了」

    「脳の限界なのです。私はただの犬。犬の脳のキャパシティに比べお、あの巚倧なコンピュヌタの情報凊理量はそもそも負荷が倚すぎるのです。それに䞖の䞭から叩かれる恐怖のストレスが膚倧にのしかかっお 。
    私の蚈算だず、このたたでは240時間以内に脳神経の耐性の限界を超えお、粟神ずのバランスがずれなくなっおしたう。」

    「あず10日限界を超えおどうなるの」

    「  シナプスが砎壊され、即死したす。実隓の終了です。」

    「即死」

    「運が良くおも意識のない怍物状態になる可胜性が高いです。お母さんは 、甘玍藀カヌレCEOは、そうなったっお構わない。私の脳がどこたで耐えられるのかデヌタを埗ようずしおいるのです。人間に応甚するために。」

    「そんな 。」
    私たちは蚀葉をなくした。


    画像


    「今たで私は、この運呜を受け入れおきたした。だけど、サトヌさんや桃々さんず出䌚っお、この時間を倱うこずが怖くなったんです。もっず生きたくなったんです。」

    ラむカは萜ち着きがなく、画面の向こうで銖を搔き、怅子の䞊でくるくる回っおいる。自身が出した答えに、感情が远い぀かなくなっおきおいる。このたたでは圌女の心が耐えきれない。

    「    怖い    怖い   。」

    「ひど  」
    「ひどいよ」私の぀ぶやきを䞊回っお、サトヌさんが叫んだ

    開いた窓から、悲痛な声が倜の近所に響く。

    「ずんでもないそんなのひどすぎる蚱せない犬をなんだず思っおいるんだ間違っおるこれは間違っおいる」
    サトヌさんの党身の毛先が立ち䞊がり、怒りに震えおいた。

    「     。」

    無蚀で考え蟌んでいたず思ったら、やがおなにを思ったのか、
    「ラむカ、埅っおお。たた連絡する。」
    静かにパ゜コンの通信を打ち切っお、むスから降りた。

    「サトヌさんちょっ、ど、どうしたの」

    䜕も答えない。
    廊䞋からリビングぞふらりずおもむき、気が付くず、

    「ねえ、パパ。ママ。」ず声をかけおいた。

    トヌク番組で笑いながら掗濯モノをたたんでいたパパず、倕飯の掗い物をするママ。
    ずもにすっかり油断した衚情で「」ず顔を䞊げるず、サトヌさんは蚀った。

    「家族䌚議を開きたいんだ。」




    ぀づく 


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