400字ショートショート|秋の空|風まかせ文芸部
気象予報士の男は頭を抱えていた。秋になると天気が急変し、いくらデータを分析しても予報が外れてしまうのだ。近所の老人が言った。
「『女心と秋の空』と言うだろう。科学で測ろうとするのが無粋さ」
老人の言葉をヒントに男は思いつきで、近所で最も移り気な女性を密かに観察し、彼女の機嫌をそのまま翌日の天気予報として発表してみた。
驚いたことに、予報は百発百中だった。彼女が微笑めば快晴、愚痴をこぼせば冷たい雨。男は名予報士として称賛された。
秋も深まる頃、男は困惑していた。最近の彼女は終始浮かない顔で、空もまた連日どんよりと曇り続けていた。男は名声を守るため、彼女の心の内をより正確に探ろうと距離を詰め、執拗に後をつけ始めた。
空模様はますます荒れていった。
ある夜、彼女の部屋の窓に張り付いていた男は、手帳にペンを走らせた。
「彼女は何かに怯えている。明日は未曾有の大嵐になるだろう」
その直後、男は背後から声を掛けられた。二人の警察官だった。
パトカーに押し込まれる男を、彼女は窓から見下ろし、ふっと安堵の微笑みを浮かべた。
すると、あれほど立ち込めていた暗雲が嘘のように消え去り、皮肉なほど澄み切った満月の夜空が広がった。
男は手錠を鳴らしながら、翌朝を待つまでもなく大外れした予報を悔やんだ。
天気を知るために女心に土足で踏み入るなど、これ以上ないほど「無粋」な真似だったのだ。
(終)
こちらの企画に参加させていただきました。
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30分で書いて100スキ超えのショートショート作成術をまとめました。
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