
MOON TABLE|✳︎籠絡✳︎
【籠絡】
巧みな言葉や手段で相手を丸め込み、手なずけて自分の思い通りに操ること。
〈side SAKUTO〉
「みちるさん」
「ん…?」
「こっち、来て?」
躊躇なく、膝の上に向かい合って座った彼女の背中に手を回して、ゆっくり這わせる。
「ね、」
「ん…?」
「いま、なに考えてる?」
「んー、なんだろ…。さくとくんの手、安心する、とか?」
下から見上げてくる目と目が合って、んふふっと笑い合うと、空気がふわりとまるくなる。
完全に気が緩んでいるみちるさんは、花が綻ぶような笑みを浮かべた。
「そのまま、俺の手を感じてて」
そんな甘やかな雰囲気を引きずったまま、耳元にくちびるを寄せて、そっと愛のコマンドを送る。
一瞬だけ、呼吸が止まる。
でも。
「……うん」
ちゃんと、委ねてくる。
一度、そっと手を離して触れる寸前で止めると、困ったみたいな顔で見上げてきた。
「ん?」
「…さくと、くん」
「なぁに?」
わからないふりをしてやると、むずがるようにして俺の胸元に頬をすり、と擦りつけてくる。
—さわ、
背中を撫でる手を再開すると、安心したように深く息をついた。
「もう、わかってきてるでしょ」
「……なに?」
「俺にぜんぶ委ねると、楽だって」
「うん」
そのまま、ゆっくり触れる。
前よりも、深く。
急がず、ゆっくり、ゆっくり。
「……、ほんとに?」
「え?」
「ちゃんと、そう思ってる?」
彼女に触れる手とぴたりとくっついていた身体を、何事もなかったかのようにさらりと離す。
触れていた温度が離れて、空気がひんやりと俺たちを冷やしていく。
「なん、で…」
みちるさんの瞳がふるふると揺れて、指先が縋るように俺のシャツを握る。
「俺にどうしてほしいか、ちゃんと言ってみて」
「……さくとくんに、ぜんぶ、してほしい」
…堕ちた。
「っ、その顔、ずるいよ」
「…んっ!」
そっと掬うように、でも吐息ごと奪うようにくちづけた。
彼女の柔らかいくちびるを慈しむように喰みながら、手のひらで滑らかな素肌を撫でさする。
「そのままでいいよ」
「…ン」
首筋から鎖骨へ。
目をぎゅっと閉じて、肩をすくめる。
「そうなるようにしてるから」
「ゃ、ぁン」
背中から腰へ。
背中がしなやかに反って、腰がゆらりと揺らめく。
「なにも考えなくて大丈夫」
「ふ、ぁ…」
呼吸が重なっていく。
距離の感覚が曖昧になる。
「みちるさんはぜんぶ、ちゃんと覚えてる」
耳元で小さく囁く。
「いいこ、ですね」
びく、と小さく反応した。
最後に、ゆっくりと撫でる。
「ぜんぶ、俺が教えたんだよ」
…じっくり。俺の好みをね。
「ぜんぶ、おれの、」
—ちゅ、
言いかけたところで細い腕が首に回されて、くちびるがくっついた。
「ぜんぶ、さくとくんの」
「…よくできました」
頭の先から脚の先まで。
俺色に染まった、俺のかわいいみちるさん。