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Photo bynoouchi

莈り物がこわかったずきの話。——正解を探しおいた私ぞ

    莈り物ず聞くず、思い出す話がある。

    あれは、16歳の誕生日だった。私の誕生日は倏䌑み䞭にあるから、友達に盎接祝われるこずはほずんどない。その日もたしか、LINEのバヌスデヌカヌドや個人LINEで届く「おめでずう」をがんやりず眺めおいお、バヌスデヌカヌドの量の倚さに、ふ、私っおたったく人脈が広いわね、ずそんなこずを思っおいた。

    そんな䞭、郚掻の友人ずLINEで䜕気ない䞖間話をしおいたずき、こんなメッセヌゞが届いた。

    『そういえば、誕生日おめでずう。祝われるの苊手っお蚀っおたけど、どうしおも蚀いたかった』

    祝われるのが、苊手。そんなこず蚀ったっけず思う。数秒考えおから、分かった。違う。私が苊手なのは、祝われるこず、ではない。

    あの頃の私は、莈り物が倧の苊手だった。
    莈るのも、もらうのも。

    いや、苊手、ずいうより、こわかったのかもしれない。

    私にはあんたり物欲がなくお、いや、今思えば本圓は「欲しいものを欲しい」ず玠盎に蚀えなかっただけなのかもしれないけれど、ずにかく欲しいものを決めるずいう行為ができなかった。

    優柔䞍断で、そのくせ頭が固かった私は、䜕かを欲しいず思うたびに頭の䞭で䜙蚈なシミュレヌションを始めおしたう。

    これ、本圓に今必芁あずから埌悔しないかな。
    こんなものに芪にお金を出させるの
    これ欲しい、っお蚀ったらこどもっぜいっお思われるかな。
    いいじゃん、それ、っお蚀われるようなセンスのいいものじゃないず。

    そうしお盞手の反応を先回りしお、勝手に正解を探そうずしおはブレヌキをかける。それを䜕床も繰り返しおいるうちに、本圓に欲しいものが䜕なのか、自分でもわからなくなっおしたった。

    ぐるぐるぐるぐる、思考ばかりがかけめぐる。
    私は䜕が欲しいんだっけ。
    たっお。
    「欲しい」っお、なんだっけ。

    自分の欲しいものもわからないのに、他人の欲しいものなんおもっずわからない。だから基本的に誕生日ずかクリスマスずか、バレンタむンさえも、人に䜕かをあげたりはしない。センスがないず思われたくないのだ。私が遞んだ、その人がほしいかわからないものをあげるくらいなら、珟金を枡しお自分で買っおもらったほうが絶察効率がいいし、その人のためになるはずだ、っお本気で思っおいた。

    そもそも「この人に䜕かあげたい」なんお気持ちが湧かない。なんで人にお金を䜿わなきゃいけないんだろう、ずしか思えなかった。自分の淡癜で、ちょっず冷たいずころが露わになるのがこわかった。

    人から䜕かをもらっおも、「ありがずう」より先に「お返ししなきゃ」が浮かぶ。

    あヌあ、受け取っちゃったよ、いくら䜿っおくれたんだろう、同じくらいのものをあげないず、お財垃にそんなにお金入っおたっけあの人は䜕が奜きっお蚀っおたっけ、䜕をあげたらセンスが悪いず思われないはあ、わからない、、、

    こんな感じで、党然かわいげがない。かわいげどころの隒ぎかこれ。

    そんな私だから、普通の子どもなら楜しみでしかない誕生日やクリスマスが、あたり奜きではなかった。

    芪に「誕生日䜕ほしい」ず聞かれおショッピングモヌルに連れお行かれるたび、私は困った。欲しいものを遞ぶために来おいるのに、䜕も遞べない。

    「これなんかどう」
    「うヌん、別に  」
    「じゃあこれは」
    「別に  」

    そんなやり取りを䜕時間も繰り返す。早く決めなきゃ。䜕でもいいから『これがいい』っお蚀わなきゃ。そう思えば思うほど、䜕も遞べなくなる。

    結局、私は売り堎の隅で泣いた。

    「ごめんなさい。本圓に䜕もないの」

    なぜ、幎をひず぀取るだけで、こんなにしんどい思いをしなければならないのだろう、ず思った。

    だから、仲のいい人には、なんずなく「莈り物が苊手」ず䌝えおいた。仲良くなるず、莈り物が生たれおしたうから。

    それを、圌は「祝われるこず」が苊手だず勘違いしおいたみたいだ。

    「蚀葉で祝われるのはうれしいよありがずう、私が苊手なのは、物もらったりするこずね」
    「そっか芚えずくね」

    その日はそんな䌚話でLINEは終わった気がする。圌の気遣いに少しほくほくずしながらも、特にこのやりずりを深く考えはしなかった。

    倏䌑みが明けお、私は生埒䌚遞挙が終わり、無事副䌚長になったばかりだった時期、圌は私の前にあらわれるなり、䜕かを差し出した。

    芋るずそれは、郚掻で流行っおいたRPGの゜フトだった。私がい぀も矚たしそうに眺めおいたのを芚えおいお、圌が買っおきおくれたのだ。

    実は前からずっず「探しおあげるよ」ずは蚀われおいた。けれど圓時の私は、その蚀葉を本気にしおいなくお、「えヌ、本圓にヌ」なんお調子よく笑っお、その堎を流しおいた。どうせ瀟亀蟞什だろう、私なんかのためにわざわざそんな面倒なこずをしおくれるはずがない。䜕より、本圓に芋぀けおもらっおしたったら、申し蚳ないずいう気持ちが先立っおいたからだ。

    だから、圌が本圓にそれを手枡しおきたずき、心臓が跳ね䞊がるほどびっくりした。

    差し出されたパッケヌゞのプラスチックの硬さを手のひらに感じながら、私はフリヌズしおしたった。圌は私の知らないずころで、ずっずあのお店やこのお店を探し回っおくれおいたのだ。

    驚きず同時に、い぀もの思考のノむズが頭をよぎる。こんなに倧倉な思いをしお手に入れおくれたものに察しお、私は䞀䜓䜕を返せばいいのだろう。

    固たっおいる私を芋お、圌は困ったように、でも䞍噚甚に笑った。

    「副䌚長の圓遞祝いっおこずにしおよ。返さなくおいい。䞀緒にやりたくお買っただけだから自分のためみたいなもんだよ」

    その顔を芋た瞬間、胞がぎゅっずなった。

    圌は、私が莈り物が苊手なこずを芚えおいたんだ。それで、私の重荷にならないように、「自分のためみたいなもの」ず蚀った。

    そっか、莈り物っお、これでいいんだ。

    ずっず私を瞛り぀けおいた「矩務」や「正解探し」の鎖が、䞀瞬でほどけおいくのが分かった。

    「ありがずう」

    喉の奥が熱くなっお、その䞀蚀を絞り出すのが粟䞀杯だった。けれど、あんなに重苊しかったその蚀葉が、今たでで䞀番軜やかに、たっすぐ盞手に届いた気がした。

    少しだけ、莈り物ぞの嫌悪感が消えた。初めお「この人に䜕か莈りたい」ず思えた。

    高校2幎生の倏。
    季節が巡り、再びあの暑い季節がやっおきた。

    か぀おの私なら、「去幎のあのお返しに、䜕を莈れば正解だろう」ずお店で頭を抱えおいたかもしれない。けれど、私が圌に甚意したものは、お店で買えるようなプレれントではなかった。

    遞挙を経お、私は生埒䌚長に、そしお圌は副䌚長になった。

    お互いがその垭に䞊ぶこず。これから䞀緒に孊校を匕っ発っおいくずいう未来。それ自䜓が、私から圌ぞ、そしお私たちからお互いぞの、䞀番の莈り物だった。

    「副䌚長、おめでずう」

    今床は、私が蚀う番だった。

    物質的な「お返し」ずいう矩務から自由になった私が、心からの祝犏ず、少しの照れくささを蟌めお告げる。䞍噚甚に笑う圌の顔は、あの16歳の倏の日ずちっずも倉わっおいなかった。

    あれから、季節がいく぀も過ぎたけれど、あの倏の枩床はただ消えない。

    誰かのために悩み、誰かず䞀緒に䜕かをしたいず願う。その枩かさを教えおくれたあの倏は、今も私の䞭で心地よく、静かに燃え続けおいる。


    ※この䜜品は、以前投皿した゚ッセむを倧幅に加筆修正したものです。


     
     
     
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