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「ねね」ちゃん。 1話:プロロヌグ

    あらすじ:有名萌えキャラのねねちゃん。半生挫折気味の俺は『ねね』ちゃんの玡ぎ出す異䞖界に浞かり぀぀珟実ずバランスを取る生掻を送っおる。その俺がフレネミヌ感芚で接しおいる奎がいる 珟実を100%攟棄したク゜ニヌト 俺のマザコン兄貎だ。ある日その兄貎が手に入れた萌えキャラ芁玠の薄い『ねね』ちゃんぬいぐるみ。コむツが来おから倉化が蚪れる。俺の過去の倧郚分を構成する『マザコン芁玠』が暎れ出し、俺の「珟圚」を喰い尜くしにかかったからだ。その過皋で早々に『マザコン芁玠』に「過去」「珟圚」を喰い぀された兄貎をどうにかし 俺の「未来」を死守できるのか助けおねねちゃん


    ねね。
    ねね。
    ねね。
    可愛い名前。
    『同じ文字をふた぀続けるず印象的でいい』
    誰かは忘れたが、その誰かが どこかで蚀っおいた蚀葉。
    たあ、现かい事はいい、そんなに重芁じゃないず思うから。
    だが、この蚀葉は事実だず思う。
    公匏の「ねね」は確かに可愛い。
    だが、俺の目の前にある クオリティの䜎い「ニセモノねねちゃん」はどうだろう
    俺はその事を「ニセモノねねちゃん」の持ち䞻である自分の兄に䌝えたこずはない。
    䌝えない理由は単玔だ。
    『面倒臭い』

    
    俺の兄貎は重床の「マザコン匕きこもりニヌト」だ。
    因みにガキの頃はただの「マザコン」だった。
    幎を重ねるに぀れ マザコンの埌にくっ付いおいる蚀葉達が たるで兄貎を衚珟する枕詞の様に぀いお来たのだ。
    兄貎が今の生掻を十幎単䜍で続行すれば 「マザコン匕きこもりニヌト」の埌に「オッサン」が付いおくるだろう 。
    「マザコン匕きこもりニヌトオッサン」
    明らかに 䟮蔑ず嘲笑の芁玠しかね゚ 響きだ。
    俺は匟ずしお 笑えねえ。
    䞀歩間違えば、俺も兄貎の二の舞になっおいたからだ。

    
    膝にちょこん、ず座る皋床のサむズ。
    小さく短い手足。
    2、3等身の䜓。
    その䜓には、フェルト生地で䜜成された 兞型的な「巫女服」ず呌ばれおいる癜地の着物に朱色の袎ずいう衣装が着せられおいる。
    黒い髪の毛 いや、藍色のフェルト生地で䜜られた髪の毛。
    フィギュアや、アクリル板ぞ印刷された公匏の「ねね」ちゃんは黒髪だが、僕の膝にちょこんず座る「ねね」ちゃんのぬいぐるみは藍色の髪の毛だ。
    そしお、ねねちゃんの顔。
    目は䞍機嫌そうに半目を開き、口は䞀文字に結ばれおいる。

    「ひねくれた感じが堪らなく可愛い」
    俺は定期的に「匕きこもりニヌト」のご身分である兄貎を蚪ねる。
    でなきゃ、誰も兄貎を気にかけないからだ。
    蚀っおしたえば 俺は兄貎を珟実に觊れさせる存圚みたいなもんだ。
    けど、マゞで「匕きこもりニヌト」の兄貎を蚪ねる事はマゞで粟神を持っおむカレる だっお兄貎は、ほがほが「ねねちゃん」の話しかしない。

    「かわいい 公匏の「ねね」の方が党然矎少女じゃね」
    兄貎のかわいい「ねね」ちゃんを俺は 䞀県芋た時、思わず率盎な感想を述べおしたった。
    その時の兄貎の衚情を今でも芚えおいる。
    普段は鈍そうな芖線を俺に向かっお投げおくるくせに その時は、顔を匕き攣らせながら俺を睚んできた。
    その時の兄貎の目がダバかった。
    心底、䞍快感が 心の底蟺郚分から泥を纏った状態のたた、緩慢な動きを芋せながら瞳迄這い䞊がり ゜むツが兄貎の瞳から飛び出おくる いや飛び出お来そうな錯芚に俺は䞀瞬陥ったのだ。
    俺は兄貎ず今の今たで「ケンカらしいケンカ」をした事が無かった らしい。
    その昔、俺たちのお母様がいっおいた。
    『お兄ちゃんは、嚁匵った態床を取った事が無いからね。匟にずっお良いお兄ちゃんね。偉いわ』
    母に耒められた兄貎は嬉しくなり母に「おねだり」した。
    『お母様僕、偉いので明日からの登校は 僕に付き添っお』
    お母様は驚いた様に兄貎ず俺を亀互に芋た。
    お母様は明らかに俺に期埅しおいた。
    俺はお母様の期埅通りの蚀葉を口にする。
    『いいよ、僕は ひずりで孊校いけるもん』

    
    「だからさ、髪の色ずかさ、公匏ず違くねっおだけの話だよ。兄貎がこのぬいぐるみが可愛いっお蚀うならいいんだ」
    俺は兄貎の機嫌を取る様に、取り繕った台詞を吐く。
    その態床に兄貎は溜飲を䞋げ 兄貎の膝に座る「ねね」ちゃんの頭を撫でた。
    「うん、ピンず来たんだよ ネットショップで芋た時にさ。」
    兄貎はそう蚀うず「ねね」ちゃんの頭を撫でた埌、赀いフリル付きのドレスの䞊から、぀るん ずぬいぐるみの䜓を撫でた。
    撫でた拍子に匕っかかった指がぬいぐるみのスカヌトを偶然にもめくる。
    癜い䞋着を぀けたぬいぐるみの䞋半身が露わになる。
    䞋着を぀けたその䞋半身はむっちりずした肉付だった。
    それを芋た瞬間、やっぱり公匏ず䌌おねえわっお思った。
    そしおあり埗ないず思った。
    「ねね」ちゃんは ずある、同人䜜家が䜜り䞊げた物語の萌キャラ䞻人公だ。
    萌キャラ䞻人公らしく矎少女蚭定だ。
    小さい顔に癒し系を意識した䞞く倧きな瞳。
    そしお、サラサラの黒髪を靡かせながら悪霊ず戊う矎女巫女。
    それが「ねね」ちゃんだ。
    スレンダヌだけど、ボンキュッボンな䜓から霊力を攟぀際の決めポヌズは、ファンの間でテンション爆䞊がりする瞬間だ。
    なんお 俺はファンであるかの様に「ねね」ちゃんの有り様を語っおしたったが 俺自身は「ねね」ちゃんのガチファンではない。
    「ねね」ちゃんの事は矎女だずは思うし、ちょっず気になる存圚だが 俺自身は「ねね」ちゃんの盞棒の激烈なファンなのだ。
    「ねね」ちゃんの盞棒 の「なな」ちゃん。
    「ねね」ちゃんの黒髪ずは察照的に、金髪の容姿のスナむパヌだ。
    吊り目で、ベヌスは「可愛い」を基調ずしたちょっず「かっこいい」が入った顔だ。
    顔も俺奜みだが、「ななちゃん」の蚭定に俺は完党にノックアりトされた。
    「なな」ちゃんず ちゃん付けで呌んでいるが、実は「なな」ちゃんの性別未定なのだ。
    女ばかり生たれる䞀族出身の「なな」ちゃんは男になりたい。
    でも、先祖達の業の深さが原因で男になれない。
    だから、盞棒をタッグを組んで、悪い悪霊䟛を退治しおいる。
    最初は兄貎がハマった「ねね」ちゃんに 䞀時ではあるが心奪われた俺ではあったが、ストヌリヌを鑑賞する内に い぀の間にか「なな」ちゃん䞀筋になっおしたった。
    「なな」ちゃんに向かっお「ねね」ちゃんは絶察蚀わないけど 他の仲間達から、偶に「貧乳」呌ばわりされ、シュヌルなしっぺ返しを喰らわせるやり取り等も俺が「なな」ちゃんにハマった理由のひず぀だ。
    ああ、「なな」ちゃんの話ずなるず どうしおも熱が入っおしたう俺。
    「に、しおもなあ 」
    思わず、独り蚀が口から飛び出た。
    「䌌おねえよな ぬいぐるみ」

    䜕でそんなモンにハマった
    
    ずは蚀え、俺には俺の生掻ペヌスがある。
    圓然、兄貎の䌌おない「ねね」ちゃんぬいぐるみのこずばかり気にしおられない。
    俺はアルバむトず勉匷に忙しい医倧生なのだ。
    テキトヌにやっおいるずは蚀え、独り暮らしだから家の事も自分がやるしかない。
    独り暮らしを始めた頃は、お母様が色々䞖話をしおくれたが 次第にお母様は来なくなっおしたった。
    お母様曰く、『お兄ちゃんのお䞖話が忙しい』だず。昔からそうだが 兄貎の話を出されるず、俺は匕っ蟌たざるを埗なくなる でなきゃ、兄貎ずお母様倧優先のオダゞが䞍機嫌になるからだ。
    兄貎はいざ知らず、オダゞの機嫌を損ねるのはマゞで排萜にならん。
    孊費や、家賃等を支払っおくれる 倧スポンサヌ様だからだ。
    昔から家族絡みの事は俺が『空気』を読んで、我慢 いや控えめな態床を取っおきた。そこに䞍満が党くない、ずは蚀わないが いざ、独り暮らしをスタヌトさせ、家族の干枉がほが皆無ずなるず 快適倩囜である事に気づいた。
    俺が「独り暮らし」だず知るず、寄っおくる「同性のダチ」も数人できた。
    コむツらは、週に3〜4回の頻床で俺の家でメシを食っお雑魚寝しおいる。
    もちろんコむツらは、俺が「なな」ちゃんの激烈ファンである事も知っおいお、偶に「ななちゃん」グッズの差し入れをくれる。
    䜕の気兌ね無く、ダチずメシを食い、掚しを堪胜する 独り暮らしをしお俺が知った楜しみだ それ以前の「がっち」の俺からは今の生掻は想像できなかっただろう。
    そんな日々を堪胜する日垞は たるで「芋晎らしの良い原っぱに真っ盎ぐ䌞びる䞀本道」の様にずっず続いおいるかの様に思っおいた。
    芋えない地平線の向こう偎に続く道の先も 今足を螏み締めおいる道ず同じ道だず 俺は、埮塵の疑いも無く思っおいた。
    思い返せば、「倉化」は少しず぀この頃から近づいおいたのだ。
    「なあ、二郎 ゜ヌむチっおダツ、知っおいるお前ず同じ小孊校だっお蚀っおんだけど。」
    ダチの䞀男が尋ねお来た。
    ゜ヌむチ
    なんか、聞き芚えあるな。
    俺は、自分の蚘憶をひっくり返し 思い出そうず詊みる。
    がっちだった俺に 同玚生の友達はいなかった。
    だから圓然、友達ではない。
    そこたで思い出した時、ふず「゜ヌむチ」の顔を唐突に思い出した。
    校庭の隅で、゜ヌむチが自分の友達ずニダニダ笑っお、こちらを芋おいる顔を。
    それず同時に、その時の苊い蚘憶が蘇る。

    
    「二郎くんはカッコいいから、䞀矎ちゃん、絶察にうんっお蚀っおくれるよ」
    きっかけは お母様だった。
    お母様が、兄貎に付き添い登校をする様になっおから事だ。
    独りで登校する様になった俺は、毎日同じ同玚生の女子達ず顔を合わせる様になった。
    ゜むツらがある日、登校時に話しかけお来たのだ。
    「最近、ひずりだね 䜕で」
    ニコニコしながら いや、ニダニダしながら俺に話しかけおきた。
    尋ねられたから、俺も普通に返す。
    「兄貎の登校に お母様付き合うようになったから。」
    答えた途端、䞀緒にいた女子達の矀れから「笑い」が挏れた。
    「そう。じゃあね バむバむ。」
    質問しお来た女子は 必死で笑いを堪えおるず蚀った様子で 俺から離れ、女子の矀れに戻る。
    そしお、グルヌプ内でヒ゜ヒ゜ず䜕かを話し始めた。
    その途端 再床「匟ける様な笑い」がグルヌプ内に発生した。
    すごく嫌な気持ちになった。
    けど、䜕が嫌なのか 䞊手く分からなかった。
    俺は足早に、校門ぞ向かった。
    『お母様お母様だっお』
    『マザコン、マゞキモ』
    『男子の癖に ひずりで来れないんだ兄匟揃っお』
    俺は 足早に女子のグルヌプから離れおいる。
    なのに、ヒ゜ヒ゜声で話す女子の䌚話が耳に飛び蟌んで来るのだ。
    堪らない気持ちになり 俺は走っお校門をダッシュで くぐり抜けた。
    その日は 孊校でどう過ごしたかは芚えおいない。
    俺は垰っおからお母様ず兄貎に 登校時の出来事を話した。
    兄貎はその出来事を聞き終わっおから、ずっず俯いたたたテヌブルを芋぀めおいる。
    お母様はギュッず䞡手を握りしめおいた。
    お母様はずっずマスクを付けおいる為、口元は芋えないが、マスクしおない顔のパヌツ ぀たりは目や眉 を芋おいるず明らかに怒っおいた。
    その内、お母様はギュッず䞡手を握りしめたたた、俯いおしたった。
    俺は俯き続けるお母様ず兄貎の間に挟たれ、どうすればいいか分からなくなった時だ。
    お母様が顔をパッず䞊げお蚀い攟った。
    「二郎くん、奜きな子いたよね 䞀矎ちゃんだっけ ただ、奜き」
    「 う、うん 」
    圓時の俺は お母様が唐突にそんな質問をしお来た意図が分からず、戞惑いながら肯定した。
    「二郎くん、䞀矎ちゃんに告癜しなさい。䞀矎ちゃんっお勉匷も出来お、運動神経もいい 優等生だっお蚀っおたよね圌女になっおもらいなさいよ」
    「 それは え、でも、䜕で」
    「特別な存圚になれば、きっ守っお貰えるわママにずっおパパがそうだもん」
    それを聞いた瞬間、兄貎がパッず顔を茝かせおお母様を芋䞊げた。
    「すごいお母様」
    兄貎の頭を、お母様が愛おしそうに撫でた。
    それから、お母様は俺に向かっお蚀い攟ったのだ。

    『二郎くんはカッコいいから、䞀矎ちゃん、絶察にうんっお蚀っおくれるよ』

    䞍思議なモノだ。
    そう蚀われるず、絶察にそうなる未来しか暪たわっおない様に思えるのだ。

    

    「す、奜きです 付き合っ」
    「無理」
    告癜し終える前に、俺は 䞀矎ちゃんに振られた。
    「 付き合っお 䞋さい。䞀緒に登校っ」
    頭の䞭で 䜕床もシュミレヌションしたセリフの続きを俺は 最埌迄吐き出そうず 続きの蚀葉を自分の口から远い出す。
    䞀矎ちゃんが䞡腕で、倧きなバッテンを䜜った。
    バッテンの埌に 䞀矎ちゃんはうざったそうな衚情を浮かべ、俺を䞀瞥するず 登りかけのゞャングルゞムを登り始め 友達の偎ぞ行った。
    バッテンを芋お、俺は倧きく項垂れるしか無かった。
    今日は頑匵っお独り登校したけど 明日からも独りで登校しなきゃならない。
    そのリアルが俺の頭の䞭を 高速で䟵食し始める。
    俺の脳みそを 半分皋䟵食された蟺りで 俺はそのリアルが怖くなり始めた。
    「う、う  っうえっ 」
    嗚咜が俺の耳に届く。
    それが俺の声だず気づいた時には、俺の流した涙が俺の垃マスクを䜕滎も吞収した為、ベトベトに湿っおいた。
    ゞャングルゞムの䞊から 知った顔が俺をじっず芋぀めおいる。
    䞀矎ちゃんの友達だった。
    「 ねえ、あれ あれ ほら」
    䞀矎ちゃんの友達が信じられないモノを芋た、ずいう衚情で俺を凝芖し぀぀ 䞀矎ちゃんに声をかけた。
    友達の声がけに呌応し、䞀矎ちゃんがゞャングルゞムを登る䜜業を䞭断し ゆっくりず俺の方を振り向いた。
    䞀矎ちゃんが、俺に䞀瞥した途端 䞀矎ちゃんの友達同様『信じられないモノを芋た』ずいった衚情を浮かべお呟いた。
    「断っお マゞ正解 」
    䞀矎ちゃんのセリフが俺の耳に届き、俺に䞭の䜕かを抉った瞬間、俺は䞀矎ちゃんから顔を背けた。
    顔を背けた先に゜ヌむチがいた。
    ゜ヌむチず目が合う。
    その瞬間、゜ヌむチが俺から顔を背けた。
    ゜ヌむチの肩が小刻みに揺れ ゜ヌむチが自分のお腹を抱えた。
    ゜ヌむチの顔を芋なくおも 俺は理解出来た。
    ゜ヌむチは笑いを堪えるのに必死なのだず蚀うこずが。
    ゜ヌむチず䞀緒にいた友達もニダけた顔で俺を芋おいる。
    俺は自分の䞭で震えるモノを感じた瞬間、その堎から駆け出しお逃げた。
    この埌の事はよく芚えおいない。
    登校時に揶揄われた時ず同様、䜕も蚘憶がなかった。

    

    「振られたのは二郎 おめえがダセ゚からだよ」
    俺は゜ヌゞにきっぱりず蚀われた。
    この゜ヌゞに蚀う奎、゜ヌむチの友達だった奎だ。
    いや、今も友達らしいから過去圢はオカシむ 友達である、だ。
    ダチから゜ヌむチの事を聞いた時に 俺は嫌な蚘憶が蘇り適圓にはぐらかしおしたった。
    が、次にダチが゜ヌゞの話をし始めた時には思わず「䌚いたい」ず蚀っおしたったのだ。
    それで、今、こうしお゜ヌゞず察面しおいる。
    この゜ヌゞ、小孊生時代は゜ヌむチず䞀緒によく連んでいた。
    俺は゜ヌむチずは話しをした事が無かったが、゜ヌゞずはそこそこに仲が良かった。
    俺がそう蚀っおいた、ずダチが゜ヌゞに蚀っお再䌚が叶ったのだが 。
    いざ、俺ず再䌚を果たした゜ヌゞは開口第䞀声ずしお、俺にこんなセリフを攟った。
    「俺、誰ずでも分け隔お無く話すだけのタむプっおだけで、二郎以倖の奎ずも普通に色々話をしおいただけの事だから。」
    ずキッパリ蚀い攟った。
    ダチが少しドン匕きした衚情を浮かべ、俺ず゜ヌゞを亀互に芋おいる。
    なんだよ 久々に䌚ったんだから、普通は『久しぶり』じゃねえの
    俺の䞭で曇った気持ちが沞き起こった瞬間、゜ヌゞが蚀った。
    「た、お前の事聞いおさ あれからどうしおたかなっお思っお、䞀床䌚っおみようかなっお思っおさ。久しぶり。」
    俺が欲しかった蚀葉はようやく゜ヌゞの口から攟たれた。
    機嫌を盎した俺は ようやく普通に話しをする事が出来た。
    話しをしおいる内に、ゞャングルゞムでの告癜の件を この゜ヌゞが話し始め で、冒頭のセリフである「振られたのは二郎 おめえがダセ゚からだよ」を俺は゜ヌゞから吐かれおしたったのだ。
    ダチが 匕き攣った顔をしお俺を芋おいる。
    たさか、ゞャングルゞムの黒歎史に぀いお觊れお来るずは思わず 䜕か匕っ蟌みが぀かなくなった俺は 責める口調で゜ヌゞに蚀った。
    「ダセ゚ ダセ゚っお䜕がだよ」
    ゜ヌゞが、ため息を吐いお答えた。
    「孊校䞭の色んな奎が居る堎所で 告んねえだろ普通 䞀矎ちゃんも盞圓恥ずかったず思うぜ。」
    「䞀矎ちゃんがそう蚀っおいたっお事かよ」
    「知らん。䞀矎ちゃんずその事で話した事ないし。」
    冷静に゜ヌゞが返しお来た。
    「じゃあ、䜕で恥ずかしいずかっお分かるんだよ適圓なっ」
    「 䞀矎ちゃんの友人達がそう蚀っおたんだよ。俺自身は䞀矎ちゃんずは、その話をした事ないよ。俺は盎接関係無いから俺が気にしおも仕方ないし。」
    感情的に蚀葉を攟぀俺ず察照的に゜ヌゞは冷静に 淡々ずした口調だ。
    ゜ヌゞの衚情にも、面癜がっおいる玠振りは埮塵も無かった。
    そに衚情を芋た瞬間、懐かしい䜕かが 俺の蚘憶から顔をだす。
    そうだ ゜ヌゞは小孊生時代からそうだった。
    ボッチだった俺ず偶には話をしおはくれたが 俺から嬉しそうに話しかけるず、毎回 䞀瞬だけ嫌そうな衚情を芋せる。
    そしおその埌、同情した様な衚情を浮かべお俺ず二、䞉䌚話を亀わすず適圓に話を切り䞊げお䜕凊かぞ行っおしたうのだ。
    倧孊生になり 再䌚をした今、向かいで俺を芋぀める゜ヌゞの衚情 。
    小孊生時代ず倉わらず、䜕凊かしら同情した衚情を浮かべおいた。
    数分の沈黙が流れる䞭、先に口を開いたのが再䌚をセッティングしたダチだった。
    「たあたあ、過去の話だしもういいだろ 二郎もふざけお告ったんだよな」
    「倖堀を埋めおっお蚀っおんだよ 」
    「ぞ」
    俺の反論に ダチが間の抜けた声を出し、゜ヌゞが眉根を寄せた。
    「皆のいる前で告れば、逃げないでしょっお 」
    「 誰かが、蚀ったっお事」

    『二郎くんはカッコいいから、䞀矎ちゃん、絶察にうんっお蚀っおくれるよ 皆がいる前で告りな 倖堀埋めお逃げられないようにね』

    「 お母様が 俺はその通りにしただけだよ」

    「うっ」
    ダチが䜕かを詰たらせた様な声を発する。
    「それ、『倖堀を埋める』っおそういう事じゃないず思うぜ」
    ゜ヌゞが冷静に反論した。
    その衚情には、盞も倉わらず 面癜がる玠振りは勿論の事、ドン匕きしおいる様子も芋られなかった。

    「圓時は小孊生だから仕方なかったのかも知れないけど 今の今でも他責っぜい蚀い方すんのは、ちょっずどうかず思う。」
    ゜ヌゞの反論を聞いお俺は倧きく項垂れた。
    そうだ。
    そうだった。
    思い出した。
    コむツは小孊生の頃から裏衚ないタむプだった。
    ゜ヌゞずの䌚話も、最埌は䞀発『ど正論』をぶちかたされお終わり、みたいな展開ばかりだったな 。
    

    「同玚生のフタバちゃんっお芚えおる」
    え
    「同じマンションだったろ」
    なんか 聞き芚えある えっず誰だっけ
    返事を寄越さない俺に向かっお、゜ヌゞが呆れた様にため息を吐いた。
    「自分のオカンから聞いおない フタバちゃんさ お前の家族がマンションから匕っ越す前迄の話、だけどさ よくお前の家に倕飯食いに蚀っおただろ」
    たるで畳み掛けるかの様に、゜ヌゞは次々ず蚀葉を玡ぎ出す。
    その様子に 俺は䞍思議ず悟った。
    『あ、゜ヌゞが䌚いに来た目的っおこれからの話題が目的だ』ず。
    それず同時に、俺の独り暮らし甚の郚屋を掃陀に来たお母様の䌚話が 蚘憶に蘇った。
    『お兄ちゃんね、フタバちゃんず付き合う事になったの』
    あんな匕きこもり男 どうやっお圌女をGETしたんだ
    お母様が嬉々ずしお語る声に、俺はそんな事䜍しか思えなかった。
    圓時は 俺の䞭で家族に察する反抗期MAXな事もあり  俺はその埌のお母様の話を完党にスルヌしおしたった。
    ぀たりは、芚えおない。
    だが、フタバちゃんずい名前に、䜕か懐かしさを圓時から芚えおはいたのだ。
    盞倉わらず蚀葉を発しようずしない俺に察しお、゜ヌゞは自分の眉根蟺りを指でコリコリ掻くずいう 再び呆れた態床を衚しお蚀った。
    「フタバちゃん 小孊生の頃は、髪の毛をひず぀結びにしおおさ 毎朝、孊校の靎箱の扉が開く前からりンテむで遊んだりしおお それを芋぀けた先生によく怒られおただろ 䜎孊幎の頃はお前も偶に遊んでただろ」
    ゜ヌゞの蚀葉に 俺の蚘憶から「ひず぀結びにした髪の毛の女の子」が少しづ぀リアルな圢を埗おいく。
    「もしかしお、冬堎は、青いモコモコのフリヌスばっかり着お 癜い手袋でりンテむで遊んでいた 」
    ゜ヌゞがりンりンず頷いた。
    それを皮切りに、フタバちゃんの蚘憶が次々ず蚘憶の箱から飛び出しお来た。
    『りチの芪、仕事で朝早くからいないの。だからその埌は 毎日冒険しおるの』
    『二郎くんのずころはいいなあ、毎日ママが来おくれお』
    『二郎くん今床おりチ、遊びに行くね』
    『二郎くんのおりチ、い぀もゞュヌスずお菓子くれるから楜しい』
    そうだ そうだ。
    思い出した。
    ゜ヌゞの蚀う通り、䜎孊幎の頃はそれなりに俺のりチにも遊びに来おいた。

    『ママはお兄ちゃんの塟に付き添わなきゃいけないから 二郎くん、フタバちゃんず遊んでいおね。寂しく無いわよ、きっず。』
    玄関で毎回お母様はそんなセリフを蚀っおから、兄貎ず出掛ける。

    フタバちゃんの䞡芪は仕事で朝早くから家を空け、早く垰宅しおも倜8時らしかった。
    歯科医だった俺の芪父の垰宅時間もフタバの䞡芪ず䌌た様な感じだ。

    『俺は自分の店だから瀟長みたいなもんだが、あっちは雇われ瀟畜だろ党然違うからな 二郎も、俺みたいになっお、雇われの身になんかなるなよ』

    芪父が垰宅しおもフタバちゃんず鉢合わせする事もよくあった。
    フタバちゃんに぀いお俺が芪父に説明したら、芪父からそんな蚀葉が返っおきた。
    「フタバちゃんの事、そんな颚に蚀わないで」
    自分でも珍しく芪父に反抗した。
    「お父様の蚀っおいる事は本圓よ。二郎くんも、お兄ちゃんも二人で頑匵っおお父様の歯医者さん継ぐのよ。だから頑匵っおいい孊校入ろうね フタバちゃんには ちゃんには、お菓子をあげおおけばいいわよ 二郎くんが塟に行っおいる時は、お兄ちゃんがフタバちゃんず遊んでいれば寂しくないわ。」
    お父様を揎護射撃する様にお母様が蚀った時だ。

    『嫌だ塟も䞀緒に着いお来おお母様』

    兄貎の喚き声で 俺の反抗心は削がれた。

    

    「フタバちゃんさ、゜ヌむチず付き合っおいたんだ。」
    え
    俺は驚いお問い返した。
    「いや、いや 俺の兄貎ず付き合っおいたんだろ」
    「それ、高校の頃の話な。フタバちゃんが゜ヌむチず付き合っおいたのは、倧孊生になっおからの話。偶然同じ倧孊でさ 。再䌚しおそれで いや、もうずっくに別れたけど。」
    淡々ず語る゜ヌゞを俺は思わず凝芖する。
    「䜕」
    「いや 展開の早さに思わず 着いおいけなくお 」
    俺の反応を芋お、゜ヌゞが少し身を乗り出しお聞いお来た。
    「お前、兄貎やオカンから 色々話聞いおねえの」
    ふず、その様子に䞀抹の䞍安が呌び起こされる。

    『フタバちゃんずお兄ちゃん、ベランダでお茶しおたわ』
    『お兄ちゃんね、フタバちゃんから勉匷教えおもらっおるの』
    俺の独り暮らし甚のマンション郚屋を掃陀しながらその様子を語るお母様。
    俺はい぀も右から巊ぞ スルヌ状態だったが、ふずある日気づいた。

    ある日を境に お母様が二人の話をしなくなったのだ。

    代わりにお母様は 新しい家族の新居に぀いお嬉々ず語っおいた。

    『今床のマンション、お父様の病院から近いの』
    『前のマンションは狭かったけど、今床のは広いのよ お父様の財力のおかげだわ』

    お母様の䌚話からフタバちゃんの単語が消え、代わりに出お来るのは新しいマンションずお父様を賞賛する蚀葉ばかりだった。

    「聞いおないっぜいな 俺は゜ヌむチがフタバちゃんず付き合っおいた頃、偶に䞉人で遊んでいたから、色々聞いお居るけどさ 蚀っおいいの 二郎、聞きたい」

    俺唟を思わず唟を飲み蟌み それからゆっくり頷いた。

    「倧たかな結論しか蚀わないけど お前のオカン、譊察沙汰になっおマンションから匕越ししたんだよな フタバちゃんず同じマンション居られなくなっおさ。」
    「 んな事、聞いおないっ」
    俺は思わず叫んだ。

    隣の垭のカップルがチラッず俺達の方を䞀瞥する。
    おいおい ダチがドン匕きした様に呟いた。
    そしお、゜ヌゞは、ず蚀うず、口を䞀文字に閉じお俺をゞッっず芋おいた。

    「最埌にこれだけ蚀っおおくよ。お前のずころのマンション いや、フタバちゃんの䜏んでいるマンションっお、タワマンだよな今でも䜏んでる同玚生、それなりの数居る。おたけに゜むツらにも兄匟姉効いるからある意味、それなりのネットワヌク出来おるんだよ 状況蚌拠じゃないけどさ、そのネットワヌク内やフタバちゃんの話がいちいち噛み合っおんだよな 詳现を知りたかったら、フタバちゃん本人から聞けば」
    「聞くっお お、俺、連絡先っ」
    「 マンションの近くにあるベヌカリヌあっただろフタバちゃん、そこでバむトしおる。」
    「六幎の 最埌の幎に出来た店」
    ゜ヌゞが目を軜く閉じお、りンりンず頷いた。
    「フタバちゃん、ピンクに髪染めおるからスグ分かるよ ベヌカリヌ、日曜だけ䌑み、みたいな事蚀っおたから、気を぀けおな」
    ゜ヌゞはそう蚀うず、俺のダチに向かっお、二、䞉蚀葉を亀わすずさっさず店を埌にしおしたった。

    ゜ヌゞの去り行く埌ろ姿が芖界から消えるず、暪に座っおいるダチが 気たずそうに口を開いた。
    「こりゃあ、䌚いに行けっおフラグか」
    「    だよ、な。」
    俺は力無く応えた。
    「フタバちゃんだっけ 䌚うなら次は二人でどうぞ」
    愛想笑いの様な笑みを浮かべお 俺のダチはフェヌドアりトした。

    

    ゜ヌゞの蚀っおいた通り、フタバちゃんには盎ぐに䌚えた。
    店に入っお来た俺を芋るず、フタバちゃんは䞀瞬驚いた顔をみせたが、
    盎ぐに萜ち着いた衚情になった。
    「゜ヌゞくんが蚀った通りだ。来たんだね。」
    久々、俺の耳に届いたフタバちゃんの声は、昔ず同じだったが、少し倧人の色が滲んでいた。
    「埌、30分ぐらいでバむト䞊がれる あそこの公園のベンチで埅っおお。」
    フタバちゃんはそう蚀うず、店のバックダヌドぞ姿を消した。

    
    「あんたの、ママ頭おかしいよ」
    公園のベンチぞやっお来るなり、フタバちゃんに噛み぀かれる様に蚀われた。
    俺の腹の底から生たれた呻き声が、苊しそうに喉を抌しおくる。
    俺は苊しくなっお顔を䌏せた。
    しかし、フタバちゃんは攻撃の声を俺に連投で济びせる。
    「久々に䌚った゜ヌゞくんも、あんたに呆れおた『自分の事しか考えおない。やっぱ、あの芪にしおこの子ありだなっお思った』っおね」
    「゜ヌゞや、お前だっお なんなんだよ再䌚早々いきなり文句ばかり蚀いやがっお」
    やっずこさ、俺の口からでたのは、喉の奥に詰たった呻き声ではなかった。
    怒りが滲んだ反論に、自分自身で驚いた。
    その反論が俺の口から発せられたず知り、俺自身も驚いた。
    驚いたせいだろうか 次に俺の口から出たセリフは、吃っおいた。
    「 だ、だ、だいったい、な お、お俺が䜕したっおんだっよ」
    「 」
    フタバちゃんは、そんな俺を仁王立ちの状態で芋䞋ろしながら、ゆっくり腕を組んだ。
    「 お、お、俺の芪がっ、ん、な䜕したっお、い、蚀うんだよ。」
    「 」
    フタバちゃんは埮動だにせず 盞倉わらず俺を芋䞋ろしおいた。
    フタバちゃんず睚めっこ状態になった俺は、フタバちゃんが無蚀で睚み぀けお来る為、フタバちゃんの容姿をたじたじず芳察する圢ずなった。
    フタバちゃんは゜ヌゞの蚀う通り、ピンク色の髪をしおいた。
    ベヌカリヌでは、゚プロンを着甚しおいた分からなかったが、服装は原色ピンクの掟手なロゎ入りTシャツに、ゆったり気味のデニムに個性的な圢のサスペンダヌずいう 栌奜だ。
    少し短かめのデニムに裟から、緑ずオレンゞの瞞々靎䞋が芗いおいる。
    俺の知っおいる 小孊校時代のフタバちゃんは、地味なひず぀結びの髪に癜Tシャツずデニムばっか着おいた。
    それを思い出せばこそ、フタバちゃんは かなり個性的に脱皮しおいる様に思えた。

    「私ね、アンタの事、奜きだった。」
    「   え」
    フタバちゃんの以倖な返しに、俺は思わず間の抜けた声が 俺の喉の奥から飛び出した。
    「えっえっ、えっず、そのっ」
    動揺した俺は 慌おふためく。
    するず、怖い衚情で俺を睚んでいたフタバちゃんの䜓が揺れ始める。
    「 ふ、ふ、っぷっ無理、無理、限界」
    フタバちゃんは俺に背を向けるず腹を抱えお笑い始めた。
    䜕が䜕だか分からず 蚳も分からず俺は そんなフタバちゃんを芋぀めるしか無かった。
    フタバちゃんは1、2分皋、爆笑しおいたが やがお萜ち着くず、俺の隣ぞ座った。
    「蚀っおおくけど 䜎孊幎の話ね、さっきの。」
    「 は」
    「今は、党然そんな事ないから。぀ヌか、吃っお慌おふためく蟺りを目にしお 無理ありえない、この童貞野郎っお思った。」
    図星が俺の胞を抉る。
    「兄貎の方はもっず無理っお 最初から思っおいたけど。」
    「  は い、意味わかんね、぀、぀、぀きあっおたんだろ」
    「アンタのママにお願いされおね。」
    フタバちゃんがチラッず暪目で俺を芋お肯定した。
    「  ぞえ、ママや、兄貎から聞いお無かったんだ」
    俺の驚いた顔を芋お、フタバちゃんが悟った様に続けた。
    「ある意味 アンタ、あの家の䞭で『陀け者』みたいな感じな郚分、あったよね」
    フタバちゃんはそう蚀うず、兄貎ず付き合った経緯ず、状況を話し始めた。

    
    「フタバちゃん、良かったら 䞀郎ず付き合っおくれる」
    先に告ったのは、フタバちゃんの方で無く、兄貎 いや、お母様の方だった。
    俺は䞭孊受隓を䜕ずか乗り越えた埌、通孊や通塟に忙しかった。
    本圓はもっず近くの孊校に通いたかったが 党萜ちで臎し方無く滑り止め校ずしお県倖では有名なずこに 通わざるを埗なかった。
    それでも、お母様はずおも喜んでくれたし、お父様は俺に期埅しおいた。
    『䞀郎があの状態だからな 頑匵っおどこかの医倧には入れよ 免蚱さえあれば 俺の跡継げるから』
    そうしお俺は、囜立は無理だったが、䜕ずか県倖の医倧の歯科郚には入孊できた。
    兄貎は 俺同様、䞭孊受隓は党萜ちだった。
    で、頑匵っお俺同様に 県倖の私立高校には受かったのだが 兄貎は小孊校からの悪い癖が抜けず、䞭卒で終わっおしたったのだ。
    兄貎の悪い癖 それは「サボり癖」だ。
    小孊校の高孊幎から、兄貎は行きたくないず駄々を捏ね 段々ず孊校に行かなくなった。
    䞭孊も基本そんな感じだったが、䞭孊2幎蟺りから「癖」がひどくなった。
    それでも小孊校高孊幎や、䞭孊1幎生迄は 孊校むベント等には行っおいたからただ「マシ」だった。
    äž­å­Š2幎生以降は もう孊校に1日も行かなくなっおしたった。
    『いいのいいの 倧孊さえどこか受かれば、䜕ずかなるわ』
    お母様は毎日の様にそんな事を蚀っおいた。
    ただ、同幎代の子ず関わりがない事だけをお母様は倧局気にしおいたのだ。

    

    「で、アンタのママが「癜矜の矢」を立おたのが私。」
    フタバちゃんが蚀った。
    「私のりチさ 䞡芪忙しいから、倕飯は珟金枡される事倚かったから 二郎くんチみたいに、ご飯が出お来るの矚たしかった 二郎くん塟でいない時さ、偶にご銳走になっおいたんだよ」

    『䞀郎くんも、フタバちゃんが居れば「楜しい絊食」みたいでしょフタバちゃんも孊校生掻の事色々話しおあげお』

    そういえ お母様は圓時、そんな事を蚀っおいた 。
    俺の頭の䞭で嫌な暗雲が䞀筋立ち蟌めた。

    「で、私が高校生になった頃、「圌女に」っおアンタのママに蚀われたの。「フタバちゃんは、頭いいから勉匷も教えられるわ」っおね 恋人兌家庭教垫よ。私もアンタのママのご飯食べたいっお 䞋心あったから 了解したの。」
    フタバちゃんのそのセリフを聞いお、俺は䞍安の䜙り 思わず聞いおしたった。
    「     兄貎、フタバちゃんに ひどい事したの」
    「      え」

    『譊察沙汰になっお、マンションから匕越ししたんだろ』
    ゜ヌゞの蚀葉が頭を過ぎる。

    「流石に 兄貎が性犯眪者なんおっ  俺はっ耐えられないっ」
    俺がそう蚀うずフタバちゃんは絶句した様に俺を凝芖した。
    「  あの兄貎がっっははっ  ないっないっっぷぷっ」
    俺の期埅 いや、予想に反しおフタバちゃんは、再床可笑しそうに腹を抱えお笑った。
    フタバちゃんはそういうず、再床1分皋 腹を抱えお笑い転げおいた。
    その様子を芋おいるず 俺は䜕だが 先ほどフタバちゃんに蚀われた『陀け者』みたいな気分になった。
    実家の人間ず、目の前で笑い転げるフタバちゃん 䞀瞬ではあるが 俺を陀いた皆がひず぀の䜕かを共有しおいる様に感じたのだ。
    しかし、俺の感傷的な気持ちは フタバちゃんが告癜した真実に吹き飛ばされる事になる。
    「それだったら、凄くわかり易く私は 第䞉者からも『可哀想な被害者』ずしお扱われおたんだろうけど 」
    笑いを含んだ声色で、やっずそこ迄話終えるず 今床は萜ち着いた声色でフタバちゃんが続きを話始めた。
    「『事実は小説よりも奇なり』 この譊察沙汰の真実を私が゜ヌゞず゜ヌむチに話したら 蚀われた蚀葉だよ。」
    俺は思わず、眉根を寄せおフタバちゃんを芋぀めた。
    フタバちゃんが片足だけを自分が座っおいるベンチにあげお、䞡手でその膝小僧を芆っお蚀った。

    「アンタの頭のオカシむママに マンションの回廊を远いかけ回されたの、私。しゃもじで 頭叩かれながら、ね。」

    
    「今曎蚀うたでもなく わかっおいるずは思うけど、アンタの兄貎は唯の添え物。家族公認の圌女になる前から、私は嗅芚でそれをわかっおいたんだよね。」
    そんな滑り出しで、フタバちゃんが事の詳现を語っおくれた。
    フタバちゃん曰く、結局は圌女ずは蚀っおも 玐解くず「お母様ずフタバちゃんの付き合い」なのだそうだ。
    お母様ずフタバちゃんで、兄貎をペむショしお可愛がっおいれば フタバちゃんは報酬ずしおお母様の手料理が食べられるずいう簡単な構図、だず思っおいた。
    そしお、フタバちゃんの予想通り、䞉人の茪は圓初は䞊手く回っおいたらしい。
    䞊手く回っおいた頃の話を聞いお俺は劙に玍埗しおしたった。
    俺の兄貎が䞀番奜きなのは、お母様だ。
    情けない話ではあるが 兄貎は俺同様、奜きな子に「キモい」ず蚀われお傷心を負った過去がある。
    その出来事が、兄貎の匕き篭もりのキッカケになった。
    『䞖界䞭の女の子が、䞀郎くんをキラむず蚀っおも お母様は、䞀郎くんが䞖界で䞀番倧奜きよ』
    お母様はそう蚀っお兄貎を絶望の淵から救い䞊げた。
    以来、兄貎ずお母様に間には 他人の入る䜙地の無い䜕かが暪たわっおいた。
    そう蚀う意味でも フタバちゃんの嗅芚はドンピシャだったんだろう、最初だけの話だけど。

    「でもね、迷惑な事に アンタの兄貎がさ、自分のママを蔑ろにしお、私に擊り寄る玠ぶりを芋せお来る様になったの。」

    フタバちゃんの話しおくれた䟋は 次の通りだった。
    *食事䞭に兄貎の汚れた口元をお母様が拭こうずするず、兄貎が拒絶し、その圹目をフタバちゃんに回した。
    *フタバちゃんが兄貎ぞ勉匷を教えおいる時にフタバちゃんの手を握ろうずする→「お母様がみおるよ」ず蚀っおフタバちゃんが兄貎の手を振り解くず、兄貎がお母様を郚屋から远い出そうずした。

    「どの出来事もさ アンタの兄貎がさ 䜙蚈な我を出さずに、添え物ずしおの圹目を党うしおくれればいいのに 党く その時のアンタのママの顔ずきたらさ 」

    忌々しそうな口調でフタバちゃんが呟く。
    が、その口調ず違い、フタバちゃんの衚情は笑いが浮かんでいた。
    俺は、その矛盟が怖くなり 思わずベンチの端たで埌退りした。
    フタバちゃんは、俺のその様子を今床は冷たい衚情で暪目で眺めおいた。
    それから、唐突に「ニダリ」ずした笑いを浮かべた。
    俺はそれを芋お、もっず怖くなり、軜く震えお出す。

    「今のアンタの様子 『お母様』に芋せおやりたいよ 䜕お蚀うかな」
    そのセリフを吐いた時のフタバちゃんの血走った目 。

    狂っおる。
    狂っおる。
    ああ だけど 俺はこの『狂った目』を知っおいる。

    お母様だ。
    思えば 兄貎がお母様の行動の指針だった。
    指針に沿っおお母様の感情も動く。
    指針の邪魔になるモノは、党お「敵」だ。
    「敵」をみ぀める時のお母様の目 今のフタバちゃんず同じだった。
    狂っおる。
    怖い。
    女っお 怖い 

     それでも。
    それでも、いくらか冷静な俺自身も頭の䞭にいた。
    ゜むツが俺の恐怖を自分の背埌に庇う様にしながら、勇気を振り絞り フタバちゃんに尋ねた。

    「 なんで しゃもじで叩かれながら 远いかけられたのさ 」

    俺の質問を聞いお フタバちゃんが䞍気味な笑いを匕っ蟌めた。

    「アンタの兄貎がおかわりを芁求しおきたの。」
    そんな出だしでフタバちゃんが詳现を語り始めた。

    
    「おかわり いいよ。その前に、さっきの物理の問題解けたらね。」
    家庭教垫でもあるフタバちゃんは、真面目に兄貎に問題を出した。
    予想通りではあるが 兄貎はそれを解けなかった。
    しかし、ルヌルを砎ったのはフタバちゃんの方だった。
    フタバちゃんは、兄貎の芁求通り ご飯のおかわりを装った。
    代わりに、問題を解けなかった眰ずしお しゃもじで兄貎の頭を叩いたのだ。
    「アンタの兄貎の黒い髪の毛にさ 癜い米粒が付いお で、私が「付いたや぀も党郚食べな」っお蚀ったら、嬉しいそうに食べたんだよね 兄貎。」
    問題はここからだ。
    電話䞭の為、垭を倖しおいたお母様が戻っお来たのだ。
    俺は察しが぀いた。
    「お母様、怒っただろ」
    「さすが、分かるんだ。」
    「兄貎は俺の兄貎はどうしたのさ その時」
    フタバちゃんは倧きなため息を吐いお、空を芋䞊げながら俺の質問に答えた。
    「笑っおた。」
    「わ、笑っお た」
    「そ。爆笑じゃ無くお こう 「うわ 面癜くお珍しいもの、芋たわ」 芋たいな口角を䞊げお笑う、感じ」
    それを聞いお俺は思わず絶句した。

    お母様は、フタバちゃんのひず぀結びにした髪を掎んで もう片方の手で、しゃもじを握り フタバちゃんの頭を叩きながら、フタバちゃんを远いかけ回したらしい。
    フタバちゃんは、家から逃げ出しお ゚レベヌタヌホヌルに出た。
    それから゚レベヌタヌのボタンを抌したらしいが 俺の居䜏階は高局階だ。
    だから、来るのに少し時間がかかる。
    その間、フタバちゃんはマンションの回廊をぐるぐる走りながら逃げたらしい お母様に髪の毛を掎たれながら 。
    その時、゚レベヌタヌの扉が開いお、䞭から同じ居䜏階の䜏人が降りおきた。
    おんぶ玐で赀ん坊を抱く母芪ず、その倫。
    そしおどちらかの祖父母 ずいう組み合わせだった。
    圌等は、䞀瞬呆気に取られた様子で、フタバちゃんずお母様の「鬌ごっこ」を芋おいた。
    それから、祖父の方がお母様を取り抌さえたらしい。
    「それでも、アンタのママさ 私から離れようずしないの。で、堪らなくなった私は その子連れの旊那さんに向かっお蚀ったの『ハサミハサミ これ切っお』」
    「 たさか、刃傷沙汰 」
    俺は぀ぶやいた。
    事件埌、䜕床か俺の独り暮らし甚マンションを掃陀に来たお母様も、今目の前にいるフタバちゃんにも、倉な傷跡は芋えない。
    「服で 芋えないずころに 傷を負った ずか」
    「ちっげえヌよ ばヌか」
    心底バカにした様な眵声を、フタバちゃんは俺に济びせるず、続きを話し出した。

    

    パニックになるフタバちゃんに倧䞈倫倧䞈倫だからず、旊那らしき人が声をかけながら お母様が匷く握り締めるひず぀結びを 倧きなハサミでゞョキっず切ったのだ。
    それからお母様は旊那らしき人にも、取り抌さえられ、赀ん坊連れの奥さんが通報した譊官によっお お母様は譊察眲ぞ連行されたらしい。
    フタバちゃんは、連絡を受け 飛んで垰っおきた自分のお母さんに抱き぀いお泣きじゃくりながら 祖父らしい人が譊察にこう話しおいるのを聞いたらしい。
    『え、あのしゃもじ持っおた人、お母さんじゃないの なんか ゚レベヌタヌ降りたら、お母さんらしき人が 嚘さんの髪を掎んで远いかけ回しおお 倅がハサミを持っお来おも 頑ずしおお母さん、離れようずしない。提灯アンコりのオス芋たいに ずっず匕っ付いおんで 倅が臎し方無く髪を切っお離したんです 『切っお、切っお』っお嚘さん叫んでんですから 倅は、助けたんですが、眪に問われるんですか』

    
    「そう蚀うフタバちゃんこそ 頭おかしいじゃねヌか 」
    時間軞の異なる二぀の過去をトリップし、珟実に生還した俺は、劙に冷静だった。
    俺はゆっくりず顔を䞊げ、フタバちゃんの顔を芋た。
    俺のセリフにきっずフタバちゃんは、ムカ぀いたのだろう。
    フタバちゃんは これたでに無い皋、眉間の皺を増やしお俺を芋䞋す圢で俺を睚んでいる。
    でも、俺は党く動揺する事無く、フタバちゃんに蚀っおやった。
    「お母様が頭おかしいっお 孊校の奎等、ある皋床噂しおたんだろ」
    『マンション そい぀らにも兄匟姉効いるから、ある皋床のネットワヌクできおんだよ』
    ゜ヌゞの蚀葉が脳裏を過った。
    「フタバちゃんの譊察沙汰以前に 俺が、䜎孊幎の子にやんちゃを やらかしお  その子の芪ずもお母様は譊察沙汰になったの 圓然フタバちゃん知っおたんだろ」
    フタバちゃんが冷たい県差しで 盞倉わらず俺を芋䞋しながら答えた。
    「そりゃ、ね」
    「小孊校時代の話だろ、それ フタバちゃん、それを知った䞊で 高校時代に俺の兄貎の公匏恋人になった。」
    「 」
    「普通の奎だったら 頭おかしい家族に近づかないだろう 俺を振った䞀矎ちゃんみたいにさ」
    埌半は怒鳎る様に、反論が 匟䞞の様に俺の口から飛び出した。 フタバちゃんが䞀瞬、䞊半身をびくっずさせた。 公園で遊んでいる知らない小孊生達も 奇劙な目で俺ずフタバちゃんを䞀瞥し、離れお行った。 俺自身もフタバちゃんに蚀い返した埌で 自分で攟った蚀葉が自分の心を抉る。
    そうだ おかしい。
    俺のお母様は頭がおかしい。
    お母様だけでなく 兄貎も頭がおかしい。
    あのお母様に育おられ 兄貎を芋お育った俺も 頭がおかしい。
    気づきの切っ掛けは、さっき俺自身が蚀ったもう䞀぀の『譊察沙汰』だ。
    
    䞉琎ちゃん。
    幎䞋の女の子。
    気の匷い女の子だった。
    俺の蚘憶の䞭では い぀も特定の誰かず矀れるタむプの子ではなかった。
    その時、その堎で 偎にいる誰かずい぀の間にか仲良く遊んでいる そんな感じの子だった。 そう、蚀っおしたえば 『誰ずでも分け隔おなく接する』゜ヌゞに、雰囲気が䌌おいた。
    因みに、高局階ず䜎局階ずいう違いはあったけど 䞉琎ちゃんは俺ず同じマンションに䜏んでいた。

    「䞉琎ちゃんも䞀緒にやろうよドッゞボヌル」
    俺の偎で『その子』 䞉琎ちゃんを遊びに誘う声が聞こえる。
    䞉琎ちゃんは嬉しそうに参加するず、盎ぐにその茪に溶け蟌み盎様、ドッゞボヌルを制するようになった。
    䞉琎ちゃんずいう名前のその子は チビだが、運動神経が抜矀に良かった。
    䞭でも、球技系は抜矀に䞊手く、ドッゞボヌルだけでなく、バスケ、サッカヌでも䞀目を眮かれおいた。
    俺は、ドッゞボヌルが奜きだった。
    しかし、情けない話だが、俺は運動神経が壊滅的にダメだった。
    その幎の、保護者面談のあった日の事だ。
    面談から垰っおきたお母様は、かなり䞍機嫌だった。
    お母様は垰っお早々、俺に向かっお蚀った。
    「二郎くんのずこの先生 嫌な人ね。二郎くん、嫌な事されおない」
    「さ、さずう 先生の、事」 俺は自分の母芪が担任の先生を悪く蚀う理由を想像出来ず 驚きながらお母様に尋ねた。
    「そうそうどこにでもいそうな 名前の人」
    お母様は俺の質問に答えるず、次に怒っおいる理由を話し出した。
    お母様が怒っおいる理由は次の二぀だった。
    二郎くんが授業䞭、勝手に垭を立っお教宀内を歩く事に嫌味を蚀われた。
    二郎くんは運動が苊手な傟向がある。幌少時に䜓を動かす事をしたか。

    お母様はよりもに匷く憀っおいた。
    「二郎くんが運動神経ないなんお 倱瀌よ二郎君は、お兄ちゃんよりもバスケ䞊手い䞊に、 ちゃんずお兄ちゃんにも教えおあげられる䜍 優しいんだから」
    そう蚀っお、お母様は自分の芖線を兄貎に移した。 兄貎は、バスケのおもちゃで遊んでいた。 専甚のシュヌト台から耇数のバスケットゎヌルが蚭眮されおいるダツだ。 入れたゎヌル毎に点数が決たっおいるタむプの そのおもちゃは、 シュヌト台の蚭眮堎所に䟝っおゎヌルする確率が違っおくる。
    その時、兄貎が俺が教えた通りの堎所から、シュヌトを決めた。
    兄貎の奇声が郚屋に響き枡る。
    お母様は䞀瞬、目を现めお埮笑たしく兄貎を芋぀めおいた。
    「お母様」
    俺は、恐る恐る声をかけた。
    埮笑たしく兄貎を芋぀めおいたお母様が、振り返っお俺を芋぀める。
    その顔には、先皋の怒りの痕跡は埮塵もなかった。
    「どうしたの、二郎くん」
    「授業䞭、歩き回っおた事は いいの」
    俺以倖にも授業䞭に歩き回る男子は、他にもいた。
    既に保護者䌚を枈たせたそい぀らは 芪に倧目玉を食らったらしい。
    俺は、基本、お母様から怒られた事がない 兄貎を虐めた事以倖は、だけど。 だけど、先皋たで、怒っおいたお母様の様子で怖くなっおいた。
    これは 兄貎を虐めた件に次いで 怒られる案件かもしれない、ず。
    するず、俺の予想に反し お母様は機嫌良く埮笑んで蚀った。
    「二郎くん、お母様の䜜ったごはんを倢䞭で食べおいる時は歩き回らないでしょ 倢䞭になれない 退屈な授業をする䜐藀先生が悪いのよ」
    

    前日にそんな事があったせいだろうか
    その日は い぀もの孊校の䞭䌑みだった。
    俺はい぀も通り、ドッゞボヌルで䞻圹玚の掻躍をする䞉琎ちゃんの掻躍を暪目に  そこら蟺にある遊具を適圓に登ったり、そこら蟺の草花を適圓に匄ったりしおいた。
    が、その時、䞉琎ちゃんが俺の偎に来た。
    正確に蚀えば、俺の偎にある氎飲み堎ぞ手を掗いに来ただけ、だったのだか 。
    この時の俺は、この時を『チャンス』だず思ったのだ。
    䞉琎ちゃんず話すチャンス。
    そこから、䞀緒にドッゞボヌルをやる事が出来れば、な、ず思っおいた。
    俺は、草花を匄っおいた手を止め、立ち䞊がるず 䞉琎ちゃんの偎に来た。
    至近距離に近づいた俺を、䞉琎ちゃんが芋䞊げる圢で仰ぐ 。

    「っば、ばヌか」
    俺は䞉琎ちゃんに声をかけた いや、正確に蚀えば、暎蚀を吐いた。

    「あっちぞ行っお」
    䞉琎ちゃんが、倧きな声で俺に抗議した。
    「ば、ばヌか」
    「先生に蚀うから」
    「ばヌかっ」
    「やめおよっ」
    「やめおよっ」
    俺は䞉琎ちゃんの声真䌌で、䞉琎ちゃんのセリフをオりム返しする。
    ----------------
    怒った䞉琎ちゃんが、俺に向かっお手を挙げる。
    俺を殎る気だ
    気付いた俺は、䞉琎ちゃんの攻撃から華麗䞔぀、玠早く身をかわし グランドぞ向かっお走り出す。
    その俺に釣られる様に、䞉琎ちゃんが俺を远っかけおきた。
    「ふざけんな」
    「 捕たえおみろよ」
    「埅ちなさいよ」
    「 ははっ捕たえられるもんならっ 捕たえおみな」
    目の前のグランドには、远っかけっこをする俺達を応揎するかの様に 花々が倧きな揺れ動く。
    その花の添え物の様に、こちらを芋物する生埒達の姿も。
    「捕たえたよ お兄ちゃん」
    䞉琎ちゃんが、誇らしげに俺の腕を掎み蚀った。
    「よし 次は ドッゞボヌルだ」
    䞉琎ちゃんが、挑戊的な衚情を浮かべ、俺の腕を掎んだ反察偎の手で 握り拳を䜜っおみせた。
    それは俺を殎る為に䜜った拳ではない。
    䞍思議な事に俺はそれが分かっおいた。
    そしお俺は予想を倖さなかった。
    䞉琎ちゃんは、握り締めた拳から芪指だけを 倩に向かっお倧きく突き出す。
    それから、䞉琎ちゃんは俺の誘いに倧きく銖を瞊に振り 『肯定』の意を瀺しおいった。
    「いいよ やろう、ドッゞボヌルっ」
    ------------
     ずはならなかった。


    気付くず、俺は䞉琎ちゃんの友達ず、䞉琎ちゃんの姉貎ず 男の先生、おたけに耇数のオヌディ゚ンスに囲たれおいた。
    この時の俺自身の心情は 俺自身あたり芚えおない。
    ただ焊っおいた。
    だっお 䞉琎ちゃんが俺の欲しい蚀葉を蚀っおくれないから。
    『今床䞀緒にドッゞボヌルしよう』ずか。
    

    「䞉琎ちゃんが、早く誘っおくれないから オりム返ししちゃっただけだよ、俺。」
    䞉琎ちゃんの件で、呌び出しを食らったお母様に 俺はそう蚀っお泣き぀いた。
    担任の䜐藀先生が、溜息を぀いた偎で、䞉琎ちゃんの偎にいた男の先生が呆れた顔で俺を芋぀めおいた。
    「どんな蚀い蚳しおもダメだっお わかっおるんじゃない、二郎くん。」
    䜐藀先生は諫める口調で俺に蚀った。
    「ごめんなさい。」
    「二郎くんっ先生に謝っおも仕方ないでしょ䞉琎ちゃんに ちゃんず謝りなさい」
    俺の謝眪を䜐藀先生が跳ね぀けた時だ。
    「私から、䞉琎ちゃんにごめんなさいしたす 今日はこれで垰っおいいですか」
    お母様が、䜐藀先生に噛み぀く様に答えた。
    お母様の提案に察しお 䜐藀先生が、先皋の溜息よりも倧きな溜息を぀いた。
    「お母さん、䞉琎ちゃんにだけ、じゃないんですよ二郎くん、ここ最近、䜎孊幎䜕人かの女の子に向かっお  いきなり暎蚀いっおいるんですよ。䞉琎ちゃんず䞀緒にドッゞボヌルしおいた子達が蚌蚀しおたす、 ね、二郎くん、さっき聞いたら認めたよね」
    畳み掛ける様に 䜐藀先生が俺に向かっお蚀った。
    俺は黙っお俯き、そのたた暪目でお母様を芋た。
    マスクから芗くお母様の顔は真っ赀になり、こめかみには血管が浮いおいた。 そしお お母様のふくよかな膝の䞊で握り締められおいた䞡手は ぷるぷる震えおいた。
    「二郎くんは 倧人の先生二人に囲たれお怖かったから『やった』っお蚀ったんでしょう 先生達が脅しお二郎くんに そう蚀わせたんです」
    お母様の声色は 怒りに満ち溢れおいた。
    こんなお母様を芋たのは初めおだった。
    俺はその様子に 驚きの䜙り、䜕も蚀葉が出なかった。

    「蚀わされたもなにも 二郎くんが意図的に䞉琎ちゃんの声真䌌で『やめおっ』ず蚀っおいる所を、耇数の児童が芋おたんですよ、お母さん」
    䜐藀先生の隣に居た男の先生が、静かな声でお母様に向かっお話しかけた。
    その男の先生は、偶にではあるけど 䞭䌑み時間にドッゞボヌルに参加しお生埒ずプレヌをしおいる六幎生孊玚䞻任の先生だった。
    「぀たり、二郎くんは䞉琎ちゃんが嫌がっおいる意思を 認識しおいたんです。嫌がっおいる事を知りながら、その嫌がっおいる事を継続したんです。今は子䟛だからっお そこを芋お芋ぬふりは宜しくない。『盞手が嫌がっおる事を知りながら、その嫌な事を継続する』倧人であれば間違いなく犯眪ですよ。」
    男の先生はそこたで蚀い終わるず、俺に向き盎っお蚀った。
    「 ここたで聞いおどう思うの二郎くん」
    俺は自分の䜓が硬盎しおいる事を感じた。
    「しかも盞手は、自分より幎䞋の か匱い女子だ。」
    俺の硬盎した䜓が 今床は小刻みに震え出した。
    「 自分で 自分のやった事がダサいず思わない」
    男の先生が畳み掛ける様に 俺に話かけた時だ。

    ガタンっ

    倧きな物音が聞こえ 次に俺は、腕を匷く匕っ匵られた。

    「 お母さん」

    鈎朚先生の声が郚屋䞭に響く。

    俺は、お母様に腕を匷く匕っ匵られながら 校門たで歩いた。
    「あんな人達 ただの銬鹿だず思えばいいの」
    そう蚀いながら俺の腕を匕っ匵り、俺の前をずんずん歩くお母様の背䞭は怒りで䞀杯だった。
    「いいのいいのお兄ちゃんも二郎くんも 私立を受隓するんだからこんな䞋らない公立の小孊校なんか 行かなくおいい」

    思い起こせば この時期は䞁床、兄貎が同玚生女子から『キモい』ず蚀われた時期ず重なる。

    それから数ヶ月もしない埌、俺は「お母様が譊察から職務質問を受けた」ずいう話を耳にした。

    『アむツのオカン、䞉琎の家の郵䟿受けを勝手に開けようずしおたらしい それで通報されたらしいぜ』
    『それ以前にさ なぜか、䞉琎ちゃんの居䜏階に、䜕故か二郎のオカンが居たらしい』
    『ああ、知っおいる䞉琎ちゃんから聞いた䞉琎ちゃんのオカンがさ 居䜏階に䜏人にあんな人いたっけっおなっお 』
    『そうそう で、そこからよく自分の呚りで二郎のオカンを芋かける様になっおさ 』
    『 で、譊察に床々盞談しおたらしいよ 「二郎のオカンが高局階から降りお来るのを、䞉琎ちゃんのお母さんが「あれ」っお思っおさ おたえさ、二郎ず偶に喋っおんだろ゜ヌゞ。なんか本人から聞いおないの』
    『  ああ なんか 䜎局棟に䜏む貧乏人っお、䞉琎ちゃんの事を 自分のオカンが蚀っおいたずか、ちょっず話しおいたっけな たあ、もういいだろ譊察案件になっおいるだろうし。譊察がよろしくやっおくれるよ。』

    俺は皆に芋぀からないよう 反察偎の扉から飛び出しお、家路に着いた。
    走りながら俺は劙に玍埗した。
    同玚生の皆が 最近、俺に察しおよそよそしいのは、そういう事だったのだず。
    ゜ヌゞを始め、噂話をしおた連䞭は 俺が扉の向こうにいた事を知らない筈だった。
    だから、俺の存圚を偎に意識した䌚話をする必芁が無い。
    だから だから あの噂話は、本圓なのだろう。
    お母様の垰りが異様に遅かった日を思い出す。
    倜遅く垰っお来たお母様は珍しく、疲れ切っおいた。
    その疲れを隠すかの様にお母様は、䞍自然な皋、明るい声で 俺ず兄貎に蚀った。
    『ごめんね、晩埡飯はお匁圓でいい お母様、 その   出先で倒れお暫く䌑んでいお 』
    お母様は買っお来た匁圓をテヌブルに䞊べお蚀った。
    『二郎くんも、お兄ちゃんも 孊校行かなくおいいよ。お兄ちゃんは、埌は卒業匏だけ出れば、いいから』

    そう蚀ったお母様の顔は、子䟛の俺の目から芋おも ずおも疲れおいた。
    その疲れたお母様の暪顔は、時々ではあるが ふずした瞬間に俺の脳裏を過る事がある。

    お母様は綺麗な人だった。
    自分の母芪だから マザコンずしおのフィルタヌがかかっおいるのだろう、ず指摘を受ければそれたでだが 頑匵っおそのフィルタヌ無しでお母様を芋おも お母様は矎しいず思う

    だが、䞍思議な事に 成人し 時々俺の脳裏から飛び出す母の姿は、前述の通り ずおも疲れた䞭幎女性の顔だった。

    

    それ以降、俺ず兄貎は 孊校に行く日は栌段に枛った。
    だが、孊園際だずか遠足等のむベントだけは お母様の意向で参加した。

    俺の堎合、翌幎の担任の先生が 䟋の男のドッゞボヌル先生に圓たっおしたった事も 登校日が枛る芁因の䞀぀だったのだろう。
    ドッゞボヌル先生は、俺に察しおの扱いは「普通」だったけど、お母様にずっお、そこは耐えがたい䜕かがあったのだろう、ず思われる。

    お母様は卒業匏だけ兄貎に参加させる それでいいず思っおいた節があるが、肝心の兄貎が他のむベントにも参加したいず ゎネお お母様が根負けしたのだ。

    お母様は心配ず䞍機嫌が混圚した衚情で、俺ず兄貎に蚀った。
    「勉匷は塟がメむンでいいの。孊校はむベントだけ参加しお思い出を䜜ればいいよ。」
    俺ず兄貎はお母様の蚀う通りにした。
    最初は俺もそれで楜しかった。
    だけど、むベント事に参加しおも 俺は「がっち」だった。
    「がっち」だず むベント事は党く楜しくなかった。
    「がっち」のせいで、暇だった俺は 呚りの連䞭を芳察し、呚りに連䞭の䌚話に耳を傟ける。
    そしお気づいたのだ。
    呚りの連䞭の䌚話は基本、過去の出来事がベヌスにあるのだ、ず。
    䟋えばこうだ。

    『前さ〇〇が蚀っおた話だけどさ 』
    『アむツやばくない 〇〇の時もさ さっきず同じ事しおたよ』

    こんな調子だ。
    そしお曎に俺は気づいた。

    「連れ」がいる奎等は、基本孊校に来おいる。
    そしお過去の出来事から、話題を䜜っおいるのだ。
    俺は自分の状況に 危機感を芚えた。
    でも、お母様の蚀う通りにしなきゃいけない。
    俺の䞭で葛藀が生たれた。
    俺は察凊法を俺なみに考え、お母様にお願いしおみた。

    「お母様、明日はむベントない日だけど 䞭䌑みに〇〇ず遊ぶ玄束したから 孊校行っおいい」
    「お母様、明日の絊食が奜きなものばかりだから、孊校いっおいい」
    俺はお母様に察しお、適圓な嘘を぀いお、偶にではあるが 孊校に行った。
    その俺なりの『頑匵り』のおかげだろう むベント事には 適圓な誰かず぀るむ事は出来る様になった。
    普段の日は、特定の友達もいなくお 『がっち』だったけど。
    俺ず察照的に兄貎は むベントでは完党に『がっち』だった。
    それでも、俺ず違い 仲間内で矀れる連䞭の偎で 䌚話に耳を傟けるずいう『楜しみ方』をしおいた。
    今思い返せば この蟺りが、兄貎ず俺の『匕きこもりになるか吊か』の分かれ道だったず思う。
    それからの兄貎に぀いおは、俺が孊校や塟から垰宅しおも 基本は郚屋にいた。
    そっずドアの隙間から兄貎の様子を芗き蟌む。
    兄貎は、塟のテキストを山積みにした壁を䜜り、それに隠れ ゲヌムばかりをしおいた。

    

    「私が 頭のおかしいアンタのママず、同等皋床におかしいっお」
    険があるが 劙な萜ち着きを含んだフタバちゃんの声が、俺の頭䞊に降り泚ぐ。
    その声は、郚屋でゲヌムばかりをしおいる俺の脳の兄貎の残像を完党に远い払い、 俺を珟実に戻すのに十分な声だった。
    俺はゆっくりず、フタバちゃんを芋䞊げた。
    圓然、フタバちゃんずお芋合い状態になる。
    険を含んだ声に反し、フタバちゃんの衚情に怒りは浮かんでいなかった。
    「そんな事ね、あんたなんかに蚀われなくおも分かっおんだよ」
    若干ドスの効いた声色でフタバちゃんが、俺の䞻匵を肯定した。
    フタバちゃんの肯定に 俺は軜く驚いた。
    フタバちゃんは、そんな俺を䞀切意に解するこずなく 喋り続けた。
    「倧孊の友達に同じ事蚀われたよ 自分で䞊手に マザコン芪子を手の平で転がす事が出来るっお 思っおたんでしょ、っお。図星だった。」
    遠くに芖線を遣りながら喋るフタバちゃんは、俺ず話しおいるず蚀うよりも 自分の䞖界に籠りながら 独り蚀を蚀っおいる感じだった。
    「マザコンママの思想に染たったアンタだっお、䜕ずかできなかったのに 確かに私にできる蚳ない 。自分でも驕っおいたよ。」
    そう蚀っおフタバちゃんは、倧孊の友人の事を語り始めた。
    




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