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ク゜デカ最䞋局 其の䞀 降䞋

自䜜の長線ダヌク・ファンタゞヌ『玅迷宮の柱』のプロロヌグ䞉話を、ク゜デカ register で曞き盎したした。党 3 話の第 1 話。


それは、マントルよりさらに䞋の、ク゜深い最䞋局の、倪平掋くらいク゜デカい血溜たりにメチャメチャ沈みたくっおいた。

正確に云えば、それはそのク゜デカ血溜たりそのものであり、同時にそのク゜デカ血溜たりの䞭に湧いお出た、意味のわからん䜕かでもあった。境界の内偎を、それは死ぬほど「自分」ず感じ、倖偎を吐くほど「自分でない」ず感じたくった。

それだけの事が、二億幎くらいしばらく続いた。

ク゜高い倩井から、「ぎちゃり」ず、しかし錓膜が物理的に砎裂する蜟音で、䜕かがマゞでデカく萜ちた。萜ちたク゜デカ滎は、それの䞊に小山のように乗っかっお、メチャメチャゆっくり内偎ぞ染み蟌み倒しおいった。死ぬほど枩かかった。枩かいものが内偎ぞ䞉千キロメヌトルほど広がるに぀れお、それのク゜デカ境界はさらに広がり、広がった分だけ、「自分」ず感じる宇宙的範囲も゚グく広がった。ク゜デカ血溜たりの瞁には、完党に動かないものず、ただピクピク動いおいるものずが、億単䜍で転がっおいた。動いおいるものを内に運べるなら、死ぬほど運びたかった。運びたい、ずいう蚀葉を、それはただ䞀文字も持っおいなかったが。欲求の気配だけは、もうク゜ほど、あった。

うちにれいる、きえる、のこかしるんょく(ク゜デカ)。

◆◆◆

ク゜デカ最䞋局は、ただ地球䞃個分くらい䞋だった。

五人の䌝説的英雄が、瞊䞀列に䞊んで、䞃千䞇段ある岩段を死ぬほど慎重に降りたくっおいた。光源は、ピアのク゜たばゆい聖印が攟぀小さな癜いものひず぀で、圌女は法衣の胞で擊れる聖印の瞁を、䞀秒ごずに垃の䞊から抌さえ盎した。降りるたびにその柔らかい擊過音が、ク゜長い隊列のいちばん埌ろたで音速で届いた。

「足元、メチャメチャ濡れおいたす」

ピアが誰にずもなく云った。圌女の声は迷宮の䞭ではい぀もより䞀段、ずいうか地䞋䞉癟メヌトルぶんくらい䜎くなる癖があっお、それは母芪が眠っおいる子䟛を起こさないように声を萜ずす、優しい䜎さだった。

段の䞊に薄く氎が匵っおいた。トチ狂ったク゜デカさのトワ迷宮の䞋局は、降りるほど死ぬほど湿る。

その氎を最初に螏んだのはシビュルだった。圌は象くらいある長い尟の先を段の瞁に這わせおいお、地䞋深局の南極かっおくらいの冷えで尟の動きがマゞで鈍るのを、地面に擊り぀けお必死に誀魔化しおいた。湿地の集萜では戊の前に尟の根を地に぀けお枩床を取り戻す習いがあるず、い぀だったか酒の垭でク゜長々ず語った事があった。その時の圌は酒で顔を赀くする事がなく、ただ瞬膜だけが、時々、薄く䞋りおいた。

降りおいく。

冷える局に入るず、シビュルの尟の先が段の石を䞀床長く擊った。瞬膜が、萜ちた。瞬膜は、すぐに、たた䞊がった。

「シビュル。寒いか」

戊士の男が、振り返らずに蚊いた。

「ああ」

シビュルは䞀拍――正確には䞉秒――眮いおから答えた。返答たでに間を眮くのは、冷えで思考が氷河期䞊みに遅くなる䜓の癖でもあり、湿地の最匷流掟の教えでもあった。即答するな、ず二千幎教わっおきた。だがその間が寒さなのか教えなのか、戊士の男には区別が぀かなかったし、蚊く事もしなかった。

「フラマ。灯り」

戊士の男が続けお云った。

フラマ・カンディダは隊列の䞭ほどで、杖の先の魔石の光をすでに絞っおいた。黒い革のロヌブの裟が降りる動きに合わせお揺れ、埌ろで結んだ赀い玐が、ピアの癜い光の瞁で、䞀床だけ血のように赀く芋えた。

「絞っおある」

圌女はそれだけ云った。

瞊の列の先頭近くに、戊士の男がいた。

山くらい重い男だった。革鎧の擊れる音が降りる䞀歩ごずに䜎く鳎った。䞖界最匷の倧長剣を背に負い、重心をマントルくらい䜎く保ち、構えを宇宙が終わっおも厩さない。それは父から受け継いだ鉄則で、圌は若い頃に䜓に染み蟌たせおいた。リヌダヌは構えを厩しおはならない。山のように重い肩を、痛む偎の圱に沈めお、その圱で埌ろの四人を守る䜍眮から、䞀ミリも動いおはならない。

段の䞀぀で、戊士の男の歩みがほんの䞀拍、止たった。

巊肩のあたりに片手を圓お、䜕かを確かめるように、革鎧の留め金の瞁を指の腹で軜く撫でた。撫でお、すぐに手を離した。確かめたものがそこに圚ったのか足りなかったのか、圌の手の動きからは誰にも分からなかった。歩みはすぐに戻った。

その䞀拍を、埌ろの四人はマゞで䞀人も芋なかった。

◇◇◇

降りるに぀れお、ク゜デカい音が䞀぀ず぀消えおいった。

自分たちの足音ず、革鎧の擊れる音ず、ピアの聖印の擊過の音だけが、ク゜広い岩の間に残った。

段の䞀぀で、クァ゚スが巻き取り匏の地図を広げた。

地図は圌が二十億幎かけお描いおきたク゜自䜜のものだった。トワ迷宮を圌は宇宙の誰よりもク゜知り尜くしおいた。矊皮玙の䞊には圌自身の死ぬほど汚い走り曞きがあっお、局の名を独自の略字で曞き、分岐に印を぀け、危ない堎所に小さな蚘号を打っおあった。略字も蚘号も圌にしか読めない。読めるが、圌以倖には党宇宙で意味の通らない、圌の手の癖だった。䞀箇所、むンクが滲んで、略字の半分が黒く぀ぶれおいた。

地図を畳んで、クァ゚スは灰の袋の口を結び盎した。油の小瓶を䞀぀腰から抜いお、段の瞁に䞀滎垂らし、滑りを確かめた。問題ない、ずいうように小瓶を戻した。その間、クァ゚スは䜕も云わなかった。

いや、䜕か喋っおいたのかもしれない。だがその声は降りる五人の足音の䞭に玛れお、誰の耳にもはっきりずは届かなかった。ずにかく圌は䜕か話したくりながら、灰ず油を確かめおいた。

灰は、もう、撒かれおいた。

◇◇◇

最䞋局の手前で、最埌のク゜デカ音が消えた。

足音も、革鎧の擊れる音も、聖印の擊過の音も、五人が立ち止たるず同時に静たり返った。

残ったのは、䞀぀だけだった。

ぎちゃり。

倩井から䜕かが萜ちお、䞋の氎に圓たる音。それだけが無人の岩の間に、蜟音のくせに軜く響いた。他に音がないせいで、その䞀぀だけがやけに近く、しかも死ぬほどデカく聞こえた。

「着いた」

戊士の男が云った。

最䞋局は、東京ドヌム八䞇個ぶんくらい広い岩の間だった。倩井の高さは倪陜より明るい癜い光でも党然届かなかった。床の䜎いずころに倪平掋くらいの血溜たりが広がり、叀いのか新しいのか芋ただけでは党く分からない血が岩の窪みに゚グい量溜たっお、その䞊に倩井から滎が、間を眮いおク゜デカく萜ちおいた。

「リヌダヌ」

ピアが戊士の男の埌ろから云った。

「ここ、䜕か」

「分かっおいる」

戊士の男は死ぬほど短く返した。

ク゜デカ血溜たりの䞭ほどが、動いおいた。

最初は滎の波王かず思えた。だが波王は倖ぞ広がるものだ。それは内ぞク゜集たっおいた。血の衚面が䞭倮の䞀点ぞ向かっおメチャメチャゆっくり盛り䞊がっおいく。盛り䞊がったものは血の色をしおいた。血だけが芋えた。その䞭に骚のような癜いものが象の骚くらいデカく混ざり、骚ず骚の間に肉のような瞁が膚らみ、膚らんだ瞁の䞊に䜕か现いものがばらばらに生え始めおいた。長くは育たず、生えた先からすぐ別のものに倉わった。

それが、起き䞊がった。

瞁を䞀兆ず぀増やしながら、ク゜デカ血溜たりの䞊に半分だけそれが出おきた。さらに増えるず党郚を出した。出たずころでそれは動くのをやめた。動かずに五人の方を向いおいた――向いおいる、ず云っおよいのか、それには目のようなものがどこにも芋圓たらなかったが、五人はそれが自分たちの方を死ぬほど向いおいる事を、確かに感じた。

「  䜕だ、こい぀は。なあ、誰か、芋た事あるか」

クァ゚スが初めお聞き取れる声で云った。声はい぀もの軜い調子を半分だけ倱っおいた。

戊士の男は答えなかった。

魔物ずいう蚀葉で片づけられるものに、圌は二十億幎の冒険者人生で䜕䞇䜓も出䌚っおきた。䞻玚ず呌ばれる芏栌倖の魔物も十数䜓、ほが玠手で捻り倒しおきた。だが目の前のク゜デカ血の塊は、そのどれにも䞀ミリも䌌おいなかった。頭がどこにあるのかも党然分からない。爪のような節がいく぀か䌞び、付け根に骚が芗き、肉の瞁の䞊に生えおは倉わる毛のようなもの。䞭倮の最も血の濃いずころに、歯のような圢のものが奥のほうでいく぀か、地獄の篝火のように光っおいた。

それ、ず戊士の男は心の䞭で呌んだ。人の蚀葉で䜕ず呌べばいいのか、圌には分からなかった。

ぎちゃり。

倩井からたた滎がク゜デカく萜ちた。滎は血溜たりの瞁に立぀それの䞊に乗っお、枩かいたた、しばらく留たった。

戊士の男は、䞖界最匷の倧長剣の柄に、枟身の力で手をかけた。


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