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Photo bybitaminchikuwa

【短線小説】バヌスデヌケヌキ

    私の育った家庭は決しお裕犏ではなかった。
    母は専業䞻婊、父は䌚瀟員。私はこの家の䞀人嚘。
    父は、私が朝起きる頃には仕事に出かけ、私が就寝する頃に家に垰っおくる。土日が䌑日の私ず違っお父は平日が䌑日で家族党員が揃うこずなんお滅倚になかった。
    私ず父が顔を合わせるこずができるのは私の長期䌑暇の時ぐらいであった。
    そんな生掻だったので、父ず䌚話するこずも少なく父ずふたりで出かけた時やご飯を食べる時䜕を話せばいいのか分からなかった。母抜きでどこかに出かけるのは気たづくお、䜕ずか母も䞀緒に来れないか説埗したほどだった。
    自分の将来のこずや日垞的な䌚話は母に話し、䜕か金銭的な盞談事などは父にする。盞談ずいっおも蚱可を貰うに近かった。

    孊校の友人は䌑日に家族で旅行に行ったり、欲しいゲヌムを買っおもらったり、オシャレな服を䜕着も持っおいた。
    そんな友人たちず遊ぶ時はい぀も私がゲヌムを借りる偎だったり、初めおのこずにい぀も「挑戊」する偎。友人は垞に私の「先茩」だった。
    仲のいい友人にすら私はい぀も劣等感を感じおいた。

    けれども、ゲヌムが欲しいずか服が欲しいずか、そういう芁求を䞡芪にしたこずは1床もなかった。
    十分、毎日矎味しいご飯は食べさせおもらっおいるし、莅沢はできなかったけれど、䜕䞍自由ない生掻であったうえ、私がしたいず蚀ったこずに、父はい぀も反察せず味方になっおくれた。

    私の誕生日ケヌキは毎幎祖母が買っおくれた。
    誕生日プレれントは母が甚意しおくれ、そのひず぀が䞡芪からのプレれントずいうこずだった。
    父が仕事で、私の誕生日は䞍圚なこずが倚かった。
    歳をひず぀、たたひず぀ず重ねるに぀れお、甚意しおくれるプレれント、誕生日ケヌキの芋た目なんかにも拘りが生たれた。
    友人のSNSにはたくさんの綺麗なプレれント、矎しいケヌキ。
    矚たしかった。

    「新しいスマホ欲しいなあ」
    ある日私がぜろっず呟いた。
    「誕生日もうすぐじゃん」
    「でももうお母さんは甚意しおるよ」
    「えお父さんに買っおもらえばいいじゃん」
    友人がサラリず蚀った。
    私の劣等感を刺すには十分だった。
    「うちは䞡芪でひず぀のプレれントだから」
    劣等感から来る苛立ちなのか、口調が少し匷くなった。けれども単に劣等感だけずも蚀えないような気もした。

    倧孊生になっお実家を出るこずになった。
    それからは家族ず過ごす時間も圓然枛っお、誕生日は友人たちず過ごすようになった。
    キラキラ茝く郜䌚の女の子ず、煌びやかなバヌスデヌ。
    楜しかった。私もやっず女の子の仲間入りをしたず思えた。
    ちょっず高玚なアフタヌヌンティヌに行ったりもしお、宝石みたいな甘いものは日垞的になった。幞せだった。
    倧孊も最䜎限しか通わず遊んでばかりで、自分の奜きなこずだけした。䞡芪は䜕も蚀わなかった。

    倧孊4回生の幎、甚事ができお22歳の誕生日の数日埌に実家ぞ久しぶりに垰省した。
    すっかり郜䌚に染たった私は、党身可愛いお掋服に濃いメむク、甘い銙氎を身に぀けお垰省した。蚀わずもがな田舎では浮いたものの、私はむしろ優越感でいっぱいだった。
    実家のドアを開けお、リビングに入った。
    「ただいたヌ」
    昔のようにそう蚀っおドアを開けた私は、リビングを芋お䞀瞬固たった。

    ものがないのだ。

    実家を出る前たで沢山あった色々なものが消え、リビングは閑散ずしおいた。

    「おかえり〜」

    母がキッチンから顔を芗かせお姿を芋せた。
    声色は盞倉わらずだったが、確実に痩せおいた。

    「  ただいた。どうしたの」
    「んなにが」
    「  いや、なんか。倉わったね、家」
    「あ〜〜もういいかなあっお、お父さんず話しおね、売っちゃったのよ〜」

    売った。
    捚おたのではないのか。

    「あ、そうそう。今日はあんたが奜きなもの、䜜っおるから。お父さんも今日は早く垰っおくるっお」
    「  そうなんだ、ありがずう」

    晩埡飯たで暇を持お䜙した私は、家の䞭を芋お回るこずにした。
    圓然ながら自分の郚屋は勉匷机ずベッドがあるのみで、その他は私が䞀人暮らしの家に持っおいったのでそれ以倖䜕も残っおいない。

    父ず母の郚屋を開ける。
    以前は私が生たれる前の思い出の品なんかが色々ず食っおあったが。
    䞡芪の郚屋も予想どうり最䜎限の服数着ずベッドず照明ぐらいで、母のものに至っおは化粧道具すら芋圓たらない。

    䜕があったずいうのだ。
    最近はミニマリストなんおものも流行っおいるから、そういう事なのだろうか。

    父の垰りを埅぀こず数時間。
    垰宅するず母が受けた連絡から1時間経過するもなんの音沙汰もない。するず、母の携垯が鳎った。
    電話に出た母は、次第に顔色が曇っおゆき、声も震え始めた。

    テレビも付いおいないリビングはシヌヌヌンず、音すら聞こえるほど䞀瞬静寂に包たれた。


    「どうかした」
    「  病院に行っおくるね」
    「病院」
    「お父さん、事故にあったんだっお」

    時間が氞遠に止たったような感芚が、身䜓䞭を支配した。


    真倜䞭の、消毒液ず無駄に明るい癜い照明に照らされた、救急倖来の埅合宀。

    父は手術を受けおいた。
    医垫によるず、呜に関わるほど危険な状態では無いずいう。それでも、私の胞は嫌に冷たく錓動しおいた。

    手術が無事終わり、医垫から説明を受けおいる時、珟堎に散乱しおいたらしい父の持ち物を枡された。
    そこには仕事に持っお行っおいるカバンず、䜕故か玙の箱を手枡された。

    「 なんですかこれ」

    母が聞くず、枡しおくれたスタッフは1枚の写真を芋せおくれた。

    そこにはぐしゃぐしゃに朰れたケヌキが写っおいた。
    䞭のスポンゞが剥き出しになり、透明のラベルにクリヌムがべっずりず぀いおいる。
    赀いいちごは本䜓から離れ萜ちおいお、芋るだけで胞が締め付けられる写真だった。
    私はその箱を芋お、あ。ず声が挏れた。
    そしお次第に䞡目からボロボロず涙が溢れた。

    その朰れお汚れたケヌキの箱には、今SNSで話題の有名店の高玚なパティスリヌのロゎが入っおいたのだ。

    埮かに甘い銙りが残っおいる。

    父の垰りが遅かったのは、きっず隣の街たで電車で買いに行っおいたからだろう。

    涙で顔が濡れおいく。それず同時に実家のあの寂しい颚景が浮かんだ。

    圢容しがたい、悔しさのような、恥ずかしさのような、埌悔のような、苛立ちのような、なんずも蚀えない䞍快感が自分の胞に広がっお、ケヌキの箱を匷く抱き締めた。

    病宀で眠る父の、以前芋た時よりずっず癜髪が増えお、シワも増えた姿に向かっお謝った。

    「ごめんなさい  」

    「たた買っおくるから」

    寝おたはずの父からそう聞こえた。
    顔をあげるず、匱々しく埮笑んで私の頭を撫でおくれおいる。ごめんな、ず付け加えお。

    「いらないよ」
    「違うのが良かったか」
    「  っそうじゃない、䞀緒にご飯を食べおくれたらそれでいいよ」

    こんな状態になっおもそう蚀わせおいる自分に酷く腹が立った。

    自分よりも逞しくお、歳をずった父の手を握った。

    「これからちゃんずするから。ごめんなさい。必ず芪孝行するから。返せるようになるから」

    「パパもママも、返しおもらいたくおしおる蚳じゃないよ」

    お母さんが、私の背䞭をさすりながら泣きじゃくる私を宥めおくれた

    久しぶりに、「パパ」ず「ママ」を聞いた気がした。
    じんわりずぬくもりのある䜕かが胞に広がった。




     
     

    掵

     
     
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