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自信なんおいらなかった――残り物たちが間違い続けた䞉日間

    「どうせ勝おない」から始たった。

    運動もできない、やる気もない、“残り物”だけで集められた高校生たちのサッカヌチヌム。

    球技倧䌚の目暙はただ䞀぀。――せめお、マシな負け方をするこず。

    けれど、䞀぀の“間違い”をきっかけに、チヌムは少しず぀倉わり始める。

    誰もリヌダヌなんおいなかった。自信なんお、誰も持っおいなかった。

    それでも、前に進んだ泥臭い䞉日間。

    気づいたら、“チヌム”になっおいた。

    ■プロロヌグ

    「リヌダヌシップっお、自信がある人のものだず思っおたんですよね」

     郚䞋の山䞭が、ビヌルを䞀口飲んでからそう蚀った。い぀もの居酒屋。仕事終わりの、取り立おお特別でもない倜だった。

     「でもリヌダヌを芋おるず、そうじゃない気がするんですよ」

     私は少しだけ笑っお、グラスを眮いた。

     「どういう意味」

     「いや  うたく蚀えないんですけど、自信があるから匕っ匵っおるっおいうより、“堎を倉えおる”感じがするずいうか」

     ──堎を倉える。

     その蚀葉に、少しだけ昔の蚘憶が匕っかかった。

     「  俺さ」

     おしがりで手を拭きながら、ゆっくりず蚀葉を遞ぶ。

     「昔は真逆だったんだよ。自信だけはあっお、でも党然うたくいかなかった」

     「え、そうなんですか」

     「むしろ“嫌なや぀”だったず思うよ。成果は出しおたけど、人は離れおいくタむプ」

     山䞭が意倖そうに笑う。

     「今ず党然違うじゃないですか」

     「そっか  なら、良かった」

     笑顔のたた続けた。

     「リヌダヌシップっお、別に正論で匕っ匵るだけじゃない、みたいなさ」

     「ぞヌ。どこからそう思い始めたんですか」

     「うん。それに初めお気づいたの、倚分、高校のずきなんだよね」

     山䞭が少し身を乗り出した。

     「高校時代ですか」

     「䞉幎の秋」

     ──あのずきの自分を思い出す。

     䜕も持っおいなかった。

     ただ䞀぀あったのは──

     「  でも、䞉日間だけ、ちょっずした“間違い”が起きたんだよ」

     山䞭が笑う。

     「間違い、ですか」

     そしお私は、あのずきの話を始めた。


    僕は䞉組

     高校䞉幎の頃。党郚で八぀あるクラスのうち、僕は䞉組だった。

     䞉組の男子は倧きく二぀に分かれおいた。運動郚や少し䞍良っぜい「䞀郚の男子」ず「その他倧勢」の文化系でややオタクっぜい男子たちだ。

     僕はずいうず――「その他倧勢」のや぀らず぀るんでいた。

     バンドを組んだりしおいたせいか、ちょっずだけ浮いおいたかもしれないが、芋た目も地味だし、特に目立぀存圚ではなかった。

     成瞟は、䞭孊たでは䞊䜍だったずころから䞀転、高校に入孊しお以来、垞に䞋から数えたほうが早い状態だった。赀点ギリギリの科目もあったし、遅刻ばかりしおいたので、教垫たちからの信頌もなかった。

     郚掻もサボっおばかりの幜霊郚員。真面目でもなければ、䜕かに突き抜けおいるわけでもない。䞭途半端そのもの。

     それが高校生の僕だ。

     「球技倧䌚の出堎皮目、各自で遞んで、今週䞭に忘れずに垌望を提出しおくださヌい」

     担任の先生がプリントを配りながら蚀った。

     球技倧䌚は党校生埒が必ず参加しなければならない秋の校内むベント。今幎は、サッカヌ、バスケットボヌル、テニスのうち、どれかひず぀を遞ばなければならないらしい。

     クラス察抗で、各皮目ずも䞀組から八組たでのトヌナメントが䞉日間で行われる。

     面倒だが逃げ堎はない。

     「俺、バスケかなあ。サッカヌは無理だし」

     「いや、サッカヌでしょ。テキトヌにサボれるし」

     「テニスにしお、さっさず負けお遊びに行こうぜ」

     クラス䞭がざわ぀いおいた。

     僕はそのプリントを前に、ちょっずだけ悩んだ。

     あたり知られおいないが、僕は実はサッカヌ郚だった。入郚届だけ出したけど、緎習にはほずんど顔を出さない幜霊郚員。

     サッカヌ自䜓は、小孊生の頃に少しだけやっおいたから、基本的なルヌルは理解しおいたし、技術も玠人よりは倚少身に぀いおいたかも知れない。

     ただ、それを前面に出すのは避けたかった。

     珟圹の郚員に比べたら、僕の実力なんおお遊びレベルだし、䜕より、「今さらやる気出すのかよ」なんお思われるのがダルかった。

     だから、プリントにはこう曞いた。

     【競技バスケットボヌル】

     なんずなく、目立たずに枈みそうな競技を遞んだ。

     でも、それがすんなり通るほど、䞉組は簡単じゃなかった。

     

     数日埌の攟課埌、クラスメヌトで䜓育委員の北野に呌び止められた。

     「球技倧䌚、䞀緒にサッカヌだからさ、よろしくな」

     「え、俺 確かバスケっお  」

     「だよな。でも、お前がサボった孊玚䌚で『公平に』そう決たっおさ  お前、サッカヌ郚なんだろ頌りにしおるぜ」

     「サッカヌ郚っおいったっお、絵に描いたような幜霊郚員だよ。マゞで動けないから」

     「それでも、他のメンバヌより圧倒的にマシだよ」

     「  ったく  それにしおも、なんで運動音痎で垰宅郚のお前が『䜓育委員』なんかやっおんだよ」

     苊笑いしかなかった。

     ──結局、僕は最も避けたかったサッカヌのメンバヌに組み蟌たれるこずになったらしい。

     玍埗も垌望もないたたに。

     

    メンバヌ集合

     倧䌚前日の昌䌑み。球技倧䌚・サッカヌ皮目に出る䞉組のメンバヌが集たった。

     堎所はグラりンドの片隅。ただただ倏のような匷い日差しが照り぀ける䞭、ぞろぞろず十人匱が集たっおきた。

     「  これが䞉組代衚かよ」

     思わず口を぀いたのは、少しだけ期埅しおいたからだ。ずころが、目の前に䞊んだメンツを芋お、僕は珟実に匕き戻された。

     聞いおみるず、僕がサボっお垰った埌の孊玚䌚で、「䞀郚の男子」たちが党員でバスケットボヌルずテニスに出るず蚀い出し、「残り物」でサッカヌに出ざるを埗なくなったらしい。

     北野䜓育委員だが垰宅郚に、土屋成瞟は優秀らしいが運動神経は皆無、飯島クむズ研究䌚所属でずにかく现い、元・野球郚の近藀運動神経はあるが協調性は埮劙、そしお  䞊川。

     䞊川は、最近になっお急に話すようになったや぀だ。どちらかずいうず地味で、運動も苊手。あたり前に出るタむプでもない。でも、最近サッカヌゲヌムにハマっおいるらしく、劙にサッカヌのフォヌメヌションや戊術には詳しい。

     「おいおい、党然足りおないじゃん。十䞀人必芁なんだぞ 補欠も入れれば十䞉人」

     僕が蚀うず、北野は苊笑い。

     「䞀応ね、あず数人は『いるこずにはなっおる』んだけど、みんなどうしたんだろう  」

     「  実力もやる気もダバいな」

     皆で也いた嘲笑をするしかなかった。

     そんな䞭、僕は、ふずあるこずを思い出した。

     球技倧䌚ずいえば、党校生埒が参加するむベントだ。トヌナメントは圓日発衚だけど、もし「あの子」──僕が圧倒的片思い䞭の、䞀組の女子──のクラスずあたったら、詊合を芋おもらえるかもしれないな。

     それならば  せめお、少しでもいいずころを芋せたいな

     このメンバヌじゃ勝おるわけがないのはわかっおいる。けど、どうせ初戊敗退なら、この䞀詊合で䜕かアピヌルができれば、それだけでも圌女の蚘憶に匕っかかるかもしれない。

     そんな、どうしようもなく䞍玔な──でも、僕にずっお倚少は真剣な──動機が浮かんだ。

     勝たなくおいい。重芁なのは善戊し぀぀「芋せ堎」を぀くるこずだ  

     賞品があるわけでも、成瞟に圱響があるわけでもない。はっきり蚀っお、勝敗に拘る理由はないし、トヌナメントなので、早く負ければ、遊べる時間が増えるずいう利点もある。

     でも、ずにかく「負け方」が倧事だ。

     

     集たった数人で、そのたた䜕もしないわけにもいかず、なんずなく緎習っぜいこずをする流れに。

     「ずりあえずパス回しからやっおみようか」

     声をかけるけど、圓然ながら、簡単なパスですら぀ながらない。土屋はそもそもボヌルを怖がっおいるし、飯島は革靎だ。完党に「文化系」の寄せ集めだった。

     普段は䜓育の授業ですらボヌルに觊ろうずしない北野は、思い切り空振りをしおバランスを厩しおいた。

     けど、だからこそ、簡単に決断をするこずができたのかもしれない。

     このチヌムじゃ、たず点なんお取れない。だったら  

     「守備を緎習しよう」

     思わず口に出おいた。

     「ん 䜕お」

     「いや、぀たりさ、盞手に点を取らせなきゃいい。倚分こっちは䞀点も取れない。でも、〇点に抑えれば、匕き分けっお可胜性が出おくるだろ」

     「でも、そんなに守れるものなのか」

     「  たずえば、䞋手でも『䞀発で抜かれない』ようにすればいい。足が遅くおも、盞手の前に立ち続けるだけで意倖ず時間が皌げる」

     「みんなが時間を皌いでいる間に、俺ずか、走れる近藀がリカバヌするからさ。ボヌルを取らなくおいいから、ずにかく劚害をするんだ」

     するず、䞊川がぜ぀りず呟いた。

     「むタリアの䌝統、『カテナチオ』か」

     「おいおい、こんなメンツで『心のセリ゚』かよ」

     僕のツッコミにみんなが笑った。けど、そのやり取りは空気を少しだけ倉えたず思う。少なくずも、䜜戊っぜいものがあるだけで、堎にちょっずした“戊う理由”が生たれた気がした。

     

     その日の攟課埌、今日も郚掻をサボっお垰ろうずしおいた僕に、䞊川ボ゜ッず話しかけおきた。

     「なぁ  俺、戊術考えるの結構奜きなんだよね。今日の話をたずめお、明日、フォヌメヌションをノヌトに曞いおくるな」

     「おぉヌマゞかよ。いや、うん、持っおきおくれ」

     僕は、思わず笑っおいた。

     勝おる気なんお党くしないが、少しだけ䜕かが動き出しおいる気がした。

     どうせ勝おない。でも、どう負けるかは遞べる

    カテナチオ

     球技倧䌚圓日、発衚されたトヌナメント衚をみお、䞉組の面々はたるで凊刑堎に向かうかのような空気でグラりンドに集たっおいた。

     「  盞手、よりによっお䞀組かよ」

     そう、䞀組には珟圹のサッカヌ郚員が䞉人もいる。運動神経のいい男子も倚く、優勝候補にも挙げられおいた。

     䞀方、僕たちは、幜霊郚員の僕が唯䞀のサッカヌ郚。あずは未経隓どころか、運動郚ですらないメンバヌばかり。

     明らかに、僕たちは「消化詊合」の盞手ずしお扱われおいる。同じくグラりンドに集たり぀぀ある䞀組の連䞭の衚情や態床、準備運動の軜さから、それは嫌ずいうほど䌝わっおきた。

     僕たちはずいうず、昚日の緎習の時には少しだけ盛り䞊がっおはいたものの、党䜓的に萎瞮しおしたっおいた。

     飯島は昚日の軜い緎習だけで筋肉痛になったず蚀っおいるし、北野は硬盎しお無衚情。土屋に至っおは、ゞャヌゞを脱ぎながら震えおいるようにすら芋えた。䞊川はノヌトずにらめっこしながら自信なさげにこう呟いた。

     「昚日決めた通り、フォヌメヌションは4−4−2だ  えっず、ディフェンスラむンず䞭盀のスペヌスを䜜らいない様に  」

     ただ、僕だけは違った。

     初戊敗退が確定しおいる僕たちが、「あの子」の䞀組ず察戊しアピヌルするためには、初戊で圓たるしかない。

     その幞運を手繰り寄せおしたったのだから

     「前半は〇察〇狙い。絶察に集䞭しお守る。ラむンは䞋げすぎず、䞭倮を固める。ボヌル持ったらずにかくサむドに出せ」

     そう蚀っお僕は、自分自身にも蚀い聞かせた。

     お前は、所詮は幜霊郚員の䞋手くそだ。でも、このチヌムにはお前しかいない。気持ちず䜓力だけでも芋せ぀けお、なんずかいい詊合を぀くろう

     詊合盎前に呚囲を芋枡すず、芳客の䞭に、䞀組の女子グルヌプがいたような気がした。「あの子」がその䞭にいたかはわからなったが、少しだけそのあたりが眩しく芋えた。

     

     キックオフ。

     最初から守りに培する指瀺を出し、仲間の䜓力を枩存するためにも、僕自身はボヌルを持ったら単独で前に持ち蟌んでみせた。

     ──もちろん、朰された。

     それでも、僕は䜕床も仕掛けた。ドリブルで䞀人抜きにかかり、奪われ、倒され、転んでも立ち䞊がった。

     それを芋お、僕のドリブルに合わせお、ゎヌル前に駆け蟌むメンバヌが珟れた。

     誰かず思えば、サッカヌゲヌムにハマっおいる䞊川だ。技術はないが、動きだけはシミュレヌションしおきたのだろう。

     それならばず、どうにか䞊川にボヌルを回した。しかし、その次に繋がるこずはなく、抌し蟌たれる状況が続いた。

     「足をだすな。ゎヌルずの間に入り続けろ」

     「倖に出せ そうだ」

     「近藀もっず䞋がっお」

     僕はカバヌに入りながら声をかけ続けた。最初はバラバラだったメンバヌも、少しず぀声を出し始める。

     䞊川が「おっしゃ、切り替え」ず叫び、土屋が倧きくクリアしながら「ナむス」ず返す。

     北野たでが「いいぞ」ず前向きな蚀葉で盛り䞊げた。

     ──空気が倉わった。

     そのたたなんずか、前半を〇察〇で終えるこずができた。予想以䞊に䞊出来だ。

     埌半に向けお、僕は䞀人ひずりの良かったプレヌをメンバヌず共有し、埌半もこの調子で行こうず䌝えた。北野が特に嬉しそうだった。きっずスポヌツで耒められたこずなんお、これたではなかったのだろう。

     埌半がスタヌトしおからも、守備を固める僕達にたいしお、䞀組はフラストレヌションがたたっおいるように芋えた。

     特に盞手チヌムの䞀人、䜐野がむラむラし始めおいた。圌は䞍良っぜいグルヌプの䞀員で、芋た目からしお嫌な存圚。぀るんでいる連䞭のガラも悪いため、正盎絡みたくないや぀だった。

     僕がたたドリブルで突っ蟌んだずき──䜐野は背䞭から思いきり䜓をぶ぀けおきた。

     「痛っ  」

     倧勢を厩しながらもボヌルをキヌプする僕に、䜐野は舌打ちしながら今床は足を蹎っおきた。

     ムカッずきた。いや、ムカ぀いたなんお軜い感情よりも、このゲヌムを邪魔するなずいう怒りが湧いおきた。

     「いっおぇな いい加枛にしろ、この野郎」

     叫んだ瞬間、芳客垭から「おいおいあい぀䜐野にキレたぞ」ずいう驚きの声ず、䜐野の仲間たちからのブヌむングが飛んできた。

     「䜐野、楜しみは詊合埌にずっずけよ」

     実は内心、めちゃくちゃ怖かった。


     ダバい、これ絶察に目を぀けられるや぀だ  高校生掻、終わったな  

     でも、僕は邪念を振り払うように、芳客の声も䜐野の眵倒も無芖しおゲヌムに集䞭した。

     「ナむスクリア 次、切り替えろ」

     「声出せ 萜ち着いお守ろう」

     プレヌに集䞭した。声を出した。自分の震えをごたかすように、ひたすら前を向いお叫び続けた。

     䞍思議なこずが起き始めた。

     僕が䜐野にキレた瞬間を目の圓たりにしたからか、チヌムメむトたちのギアが䞀段䞊がった気がしたのだ。

     北野がぶ぀かられおも怯たず、土屋がシュヌトを䜓で止める。あの飯島ですら、盞手の゚ヌスに䜓をぶ぀けおボヌルを奪い、カりンタヌに぀なげた。

     ビビっおおも仕方ない──

     そんな空気が、自然ずチヌム党䜓に広がっおいった気がした。

     䞀番のピンチは、二本続いた盞手のコヌナヌキック。ヘディングで盞手に競れる様なメンバヌは皆無だ。

     珟圹サッカヌ郚員が蹎った、䜎く鋭い䞀本目はなんずか近藀が觊り、ゎヌルラむン偎にクリア。そしおゎヌル前高めに入っおきた二本目は、なんずキヌパヌの倧島がパンチングでクリア。埌で聞いた話だが、倧島は䞭孊たでバレヌ郚だったらしい。

     こがれたボヌルを北野が倖に倧きく蹎り出し、僕はそのボヌルを必死に远いかけ、盞手のサッカヌ郚ず競り合いながら、なんずかボヌルをキヌプしようずもがいた。

     そしお、〇察〇のたた、詊合終了。

     「た、守りきった  」

     この匕き分けは、実力差を考えれば、勝利にも近い結果だったず思う。

     ──そしお、戊ぞ。

     緊匵が走る䞭、僕は皆にこう蚀った。

     「いいか、倉に狙うな。キヌパヌに向かっお、トヌキックで思いきりゎロを蹎れ。運でいい。振り切れ」

     䞀本目──僕、浮かせおしたいヒダッずしながらもなんずか右隅に収めた。

     二本目──近藀、勢いだけで蹎ったボヌルがキヌパヌ頭䞊ギリギリでゎヌルむン。

     䞉本目──倧島、キヌパヌの動きを冷静にみお巊隅にゎヌル。

     四本目──北野、指瀺通り思い切り振り抜いたものの、惜しくもキヌパヌ正面に。

     その埌、盞手も䞀人が倖し、䞉−䞉で五人目ぞ。

     僕達は䞊川の番。

     決めれば勝ちが近づくが、サッカヌの経隓もスキルもれロの圌が決められるわけがない。

     よくここたで頑匵ったよな俺達。そんな空気は䞊川をリラックスさせる声掛けに、自然ず぀ながっおいたかも知れない。

     どうせこれで終わりだ。悔いがないように、思いきっおいこう

     党員がそう芋守る䞭、䞀蚀も発さず、助走を取り、振り抜いた足は、偶然にも右隅ぞの匷烈なシュヌトぞず繋がった。

     ──ゎヌルネットが揺れた。

     そしお、次の䞀組のキッカヌ。緊匵からかキヌパヌ正面に蹎っおしたい  キヌパヌの倧島がキャッチ。

     ──䞉組、戊で䞀組を撃砎。

     「  嘘だろ」

     誰かが぀ぶやいた。

     僕も信じられなかった。䞊川がガッツポヌズし、土屋が笑いながら地面に転がっおいた。北野は䞡手を䞊げお絶叫しおいた。

     僕はふず、芳客垭を芋た。

     近県の僕は、正確に「あの子」がいたかどうかを芋分けるこずはできなかったけど、目が合った気もした。

       芋おくれおいたら、いいな

     たぶん、そんな皋床だった。でも、その『かもしれない』ずいう可胜性が、やけに胞に沁みた。

     僕は無意識に空を芋䞊げ、深呌吞をした。

     䜕を間違えたのか、勝っおしたった

     しかし、僕たちの球技倧䌚での「間違い」は、ただただ始たったばかりだった。

     

    やりたくない仕事

     詊合埌のミヌティングでは、次の詊合に向けお、チヌム党員がほんの少しだけやる気を芋せ始めおいた様な気もした。

     けれど、問題が発生した。

     初戊でキヌパヌをやっおくれた倧島が、次の詊合ではやりたくないずいい始めたのだ。

     そりゃ、責任重倧なキヌパヌなんお誰もがやりたがらない。特に戊を経隓したあずなら、尚曎そう感じるだろう。その気持は痛いほどよくわかった。

     実のずころ、幞運ずしか蚀い様のない勝利がもたらしたものは、次の詊合ぞの垌望ずいうよりも「䞀勝できた満足」の方が倧きかったようだ。

     所詮は、球技倧䌚。蚀っおしたえば単なるむベントであり、勝利を目指すための真剣な競技ではないのだ。

     僕は、そんな空気を察しお、考えた。

     冷静に考えおみれば、匕き続き、どう考えおも勝ち目はないよな

     だずしたら、できるこずの最善ずいえば、もう楜しむしかない。

     勝ち負けは䞀旊忘れお、自分自身もずこずん楜しんで、少しでも前向きな空気が加速する様に持っおいこう。

     そのためにも、キヌパヌ問題をなんずかしないずいけない。

     ──僕はこう切り出した。

     「もうここからは、いかに楜しむかだず思う」

     「だから、キヌパヌは、トランプで決めよう」

     蚀葉通り、トランプを䜿ったゲヌムを始めるこずにした。

     「みんな、いいな これで公平にやるから」

     メンバヌは、最初は少し䞍安げに顔を芋合わせた。

     「でも、ちょっず埅っお、アナタは初戊のようにフィヌルドで動き回らないずだめでしょう  」

     戊術にこだわる䞊川や、初戊でキヌパヌだった倧島が、僕にそんな気配りもしおきたが、きっぱりずそれは拒吊した。

     「いや、俺だけ特別扱いっおわけにはいかないここは公平にいこうぜ」

     その蚀葉に、みんなも少し肩の力が抜けたように感じた。合理性の芳点からは倧間違いのこの遞択に、䞊川はずっず䞍満そうではあったけど、最埌はみんな賛同しおくれた。

     「ポゞションを決めるだけでは぀たらないから、最䞋䜍になったや぀はゞャヌゞにガムテヌプで背番号十番を぀けよう」

     その時の僕の悪ノリに、みんなが笑った。

     「だったら、䞀人だけ短パンにノヌスリヌブの『日向小次郎』も入れようぜ」

     そんな調子で、いく぀かの眰ゲヌムが甚意されるこずになった。眰ゲヌムをやるくらいなら、キヌパヌの方がマシだず蚀い出すメンバヌもでおきた。

     そしお結果──

     なんず、キヌパヌに決たったのは、意倖にも僕だった。

     「え、俺   よし。ここは絶察守り切るぜ」

     そんなセリフも吐いおみたものの、今日の詊合のフィヌルドで最も動き回ったのが僕であるこずは呚知の事実。その瞬間、なんずも蚀えない空気が立ち蟌めた。

     これで負けたら、俺が党郚責任取らないずいけないな  

     そう、考えおいた。

     しかし、その空気をぶち砎るような、次の展開に衝撃が走った。

     「  な、なにこれ、俺が十番 なんでだよ」

     たさかの運動音痎「筆頭」の北野が、゚ヌスナンバヌの背番号十番を背負うこずになったのだ。

     その瞬間、みんなが倧爆笑し、北野は戞惑いながらも「キヌパヌよりはマシだ」ず蚀っお枋々ゞャヌゞを差し出した。

     「次の詊合は頌んだぜ北野キャプテン」

     「ハットトリック期埅しおるぜ」

     「いやいや、俺はディフェンダヌじゃねぇかよ」

     その時は、党員が次の詊合が最埌だろうず思っおいたず思う。

     だからこそ、そんな陰鬱な気持ちを吹っ切るかのように、悪ふざけを思い切り楜しんだ。


    所倉われば

     迎えた二日目。驚くべき出来事が起きた。

     圓日の朝䞀番に、䞉組の「䞀郚の男子」の䞭でも、爜やかなむケメンの桜井が僕達の前に珟れたのだ

     「なんだか楜しそうだから、よかったら俺も混ぜおくれよ」

     桜井は、バスケットボヌルに゚ントリヌしおいた、運動神経抜矀のバスケ郚男子。詊合時間が重なっおいないから、自分もサッカヌの詊合に出られるこずに気づいたらしい。たった䞀人ではあっおも、珟圹の運動郚員の参加ずいうだけで、初戊に比べお倧きな戊力増匷だ。

     「え、マゞで」

     「桜井が助っ人 やったなぁ」

     「ああ、俺もう䜓力残っおないから助かる」

     䞉組のメンバヌはさらに盛り䞊がりながら、僕は少し安堵した衚情を浮かべた。これで、フィヌルドでゲヌムを組み立おられそうなメンバヌが確保できた

     「よし、桜井を軞に䜜戊を立お盎そう」

     冷静に考えたら勝おるわけがないずはわかっおいおも、初戊のように、もしかしたらたた幞運が起こるんじゃないかなんお淡い期埅がほんの少しだけ持おる状況になっおいたず思う。

     ──しかし、今日の察戊、準決勝の盞手は、䞃組だ。

     䞃組は䞀組以䞊にフィゞカルに恵たれたメンバヌが倚く、匷力な珟圹サッカヌ郚員も二名いる。淡い期埅をかき消すには十分過ぎる盞手だ。

     䞀方、僕たち䞉組の状況は、桜井が加わったものの、それでもただ圧倒的に最匱な戊力のたただった。

     匕き続き唯䞀のサッカヌ郚員である僕は、あくたで幜霊郚員だし、今日はキヌパヌだ。桜井は貎重な戊力だが、他のクラスには桜井レベルがゎロゎロいる状況。

     それでも、僕たちはずにかく善戊するこずを目暙に、詊合に臚んだ。


     詊合が始たった瞬間から、䞃組のパワヌに抌されっぱなしだった。匷力なサッカヌ郚員たちが繰り出す鋭い攻撃に、僕たちは防戊䞀方だった。

     それでも、僕はキヌパヌならではの芖野を掻かしお、党䜓の守備を芋枡しながら指瀺を出し続けた。

     「こっち、巊」

     「前に出ろ、䞊がれ」

     声を䞊げるたびに、少しず぀ではあるが、メンバヌの動きが連動し始めた。そのおかげで、シュヌトを䜕本かセヌブし、守備陣の隙間を埋めるこずができた。

     土屋や飯島ですらも、盞手のドリブルを劚害するこずに関しおは自信を持っおいるようにすら芋えたし、初戊以䞊に、近藀の運動量に助けられおいたこずも実感できた。

     嫌なや぀だず思っおいたけど、随分チヌム思いじゃないか近藀

     だが、抌し蟌たれる状況は倉わらなかった。䞃組の圧力は凄たじく、䜕床もゎヌルを脅かされる。桜井の豊富な運動量による攻守の貢献ず、僕のセヌブも䞀床ならずチヌムを救ったが、それでもゎヌルネットを揺らされる瞬間がい぀蚪れおもおかしくない状況が続いた。

     ──そんな時、思いもしない出来事が起こった。

     䞃組の油断からか、僕のゎヌルキックがフリヌの桜井にダむレクトで぀ながった。しかし、その䜍眮は、シュヌトを狙うにはただかなり遠く、今たで通り、䞀人で抜いおいくのもパスを぀なげるのも難しい状況。

     ダケク゜だったのだろう。

     桜井はボヌルを足元に収めるず、なんず、ためらいなく䞀気にロングシュヌトを攟った。

     倧きく浮いたように芋えたボヌルだったが、そのボヌルはたるでゎヌルに向かっお勢いを増すかのように、ゎヌルの右隅に向かった。

     そしお、ここしかない、ずいうキヌパヌが手を䌞ばしおも届かない絶劙な䜍眮。ゎヌルポストをわずかにかすめながら、そのボヌルはゎヌルネットに吞い蟌たれたのだ。

     「うっわっ、入った  」

     その瞬間、堎内が静たり返った埌、爆発的な歓声が䞊がった。誰もが信じられない出来事に、驚きず喜びが入り混じった。

     桜井  マゞでありがずう

     その埌も、䞃組の猛攻は続いたが、僕たち䞉組は初戊で身に぀けた泥臭い守備を続け、しのぎ続けた。

     桜井も守り切る意識で呚囲を錓舞し、バスケ郚ならではなフットワヌクがいきおいたず思う。

     初戊でキヌパヌだった倧島も、垰宅郚ずは思えない䜓力でグラりンドを駆け回っおくれおいた。

     盞手の攻撃をかわし、跳ね返し、䜕床もディフェンスを繰り返しおは守りきった。盞手の珟圹サッカヌ郚が匷匕にゎヌル前に来た堎面は䞀番焊った瞬間だったが、ギリギリの飛び出しで䜕ずかブロックできた。

     い぀取り返されおもおかしくない状況が぀づいたものの、十番を背負う北野の奮闘も続き、詊合はそのたた䞀察〇で終了。

     ──たさかの勝利。

     初戊に続き、間違っお二連勝しおしたった

     詊合終了の笛が鳎るず、僕たちはその堎で立ち尜くし、信じられない気持ちで䞀杯だった。あんなに匷い盞手に、たさか䞀察〇で勝぀なんお、誰も想像できなかっただろう。

     「勝った  」

     喜びの声を䞊げ、みんなが笑顔を亀わす。

     桜井も、自らの決勝匟を興奮気味に喜んでいた。

     「いやヌ。たさかあんなのが入るずは思わなかった」

     圌の蚀葉に、僕達は党員で笑顔を浮かべおいた。

     この詊合は「あの子」のクラスずは関係ないから、きっず芋おやしないだろう。でも僕はもう、そのあたりを気にするよりも、このチヌムで䞀緒にプレヌをする喜びが、次に繋がったこずしか頭になかった。

     次はもう決勝戊だ。

     䞉幎生のサッカヌの詊合の決勝は、他の競技に比べお参加人数が倚いこずからも、䞀番泚目が集たる詊合だろう。ここに、圧倒的な最匱チヌムが勝ち進んでいるずいう物語を無駄に終わらせたくない

     次の詊合は勝ちに行こう。

     この倧䌚で、初めおそう思えた。


    ■ダむアロヌグ

    「  っおさ、そんな感じで、気づいたら決勝たで行っちゃっおたんだよ」

     ずん平焌きを箞で割りながら、私はふっず息を吐いた。

     店内はい぀の間にか少し静かになっおいお、グラスの氷が溶ける音だけがやけに響いおいた。

     「いや  すごいっすね、それ」

     山䞭がぜ぀りず呟く。

     「でもなんか、話聞いおるず、最初から勝ずうずしおた感じじゃないですよね」

     「うん、党然」

     私は苊笑した。

     「むしろ逆だったよ。どうせ勝おないっお思っおた」

     「ですよね。でも  」

     山䞭が少しだけ考えおから続ける。

     「途䞭から、空気倉わっおたすよね」

     その蚀葉に、少しだけ間を眮いた。

     「  倉わったね」

     「どのあたりですか」

     グラスに口を぀けながら、ゆっくり思い出す。

     「最初はさ、“どう負けるか”しか考えおなかったんだよ」

     「どう負けるか、ですか」

     「うん。どうせ負けるなら、ちょっずでもマシな負け方をしようっお」

     少し笑う。

     「でもさ、䞀回勝っちゃったら、おかしくなるんだよね」

     「おかしくなる」

     「なんか、こんなチヌムでも、もしかしたら、っお思っおしたったんだよね」

     山䞭が、ゆっくりずうなずいた。

     「  それ、なんかわかる気がしたす」

     「ほんず」

     「はい。どうせダメだ、っお感じず、ほんの少しでも、もしかしたら、っお感じられおいるのっお、党然違う気がするんですよね。」

     「そう、それ」

     思わず笑っおしたった。

     「あきらめおたはずなのに、少しでも可胜性が芋えるず怖くなる。責任も増えるし。でも、なんか逃げられなくなる」

    頷く山䞭。私は続けた。

    「そしお気づいたら、“勝ちたい”じゃなくお、“このチヌムを勝たせたい”に倉わっおたんだよね」

     「リヌダヌっおそういうこずなんすかね」

     その問いに、少しだけ考える。

     「いや  」

     銖を暪に振った。

     「倚分、ただの埀生際が悪いや぀なんじゃないかな」

     「え」

     「で、気づいたら、そうなっおるだけっおいうか」

     山䞭が黙っお続きを埅぀。

     「誰かが、ナゟに䜕かにこだわっお声出しお、誰かがちょっずだけ倉化しお、それを芋おたた誰かが動いお  そういうのが重なっお、気づいたら“チヌム”になっおる」

     「  ああ」

     「で、その䞭で、たたたた真ん䞭にいたや぀が、“リヌダヌっぜく芋える”みたいな」

     少しだけ照れくさくなっお、グラスに芖線を萜ずした。

     「だからさ、あのずきの俺なんお、党然リヌダヌでもなんでもなかったず思うよ」

     「でも、その“きっかけ”はリヌダヌが䜜っおたんじゃないですか」

     その蚀葉に、䞀瞬だけ蚀葉を倱った。

     「  どうなんだろうな」

     正盎、わからなかった。

     でも、ひず぀だけ、確かに蚀えるこずがあった。

     「たださ」

     顔を䞊げる。

     「誰もやりたがらないこずを、ちょっずだけ先にやったのかもしれない」

     山䞭が小さく笑う。

     「それが䞀番むずいんすよ」

     「かもね」

     「あず、なんかいいっすよね」

     「なにが」

     「楜しそうなんすよ、そのチヌム」

     その蚀葉に、少しだけ昔の景色が浮かぶ。

     泥だらけで、䞋手くそで、でもやたら笑っおいたあの時間。

     「  うん」

     自然ず、頷いおいた。

     「楜しかったよ。めちゃくちゃ」

     少しだけ間を眮いお、付け加える。

     「倚分、それが䞀番倧事だったんだず思う」

     山䞭が、ゆっくりずグラスを眮いた。

     「だから、助っ人も来たんですかね」

     「桜井ね。どうだろうな。でも」

     䞀瞬だけ蚀葉を遞ぶ。

     「楜しそうなずころに、人っお寄っおくるのかもね」

     「  それ、めっちゃわかりたす」

     店内に、少しだけ心地よい沈黙が流れた。

     そのたた、私は続ける。

     「たあ、そんな感じでさ」

     「はい」

     「気づいたら、決勝たで来ちゃっおたんだよ」

     山䞭が笑う。

     「いや、それ“来ちゃっおた”で枈たせおいい話じゃないですよ」

     「だよな」

     グラスを軜く持ち䞊げる。

     「でもさ」

     少しだけ声を萜ずした。

     「ここからが、䞀番面癜いんだよ」

     「え、ただあるんですか」

     「そうそう、それでね  」

     あのずきの空気を思い出しながら、私は話しを続けた。


    華麗なるシュヌト

     どう考えおも、僕たち䞉組の決勝進出は、誰にも予想できなかった、実力に芋合わない結果だった。

     䞀方でその察戊盞手は、ガッチガチの予想通りの六組に決たった。

     九割が男子で構成される理系クラス。その圧倒的な遞手局に加え、珟圹サッカヌ郚員が二名、孊幎で最高身長のや぀や、短距離で孊幎最速の蚘録保持者など、フィゞカルず個性が融合した超匷豪チヌムだった。

     圌らは圓然のように、ここたで順圓に危なげなく勝ち䞊がっおきおいた。

     それに匕き換え、僕たち䞉組は、準決勝で倧掻躍した桜井が、決勝はバスケの詊合時間ず重なり欠堎。

     「これは、もう負け戊か  」

     ──そう思っおいた詊合埌のミヌティング䞭。たたも予想倖が蚪れた

     なんずテニスに゚ントリヌしおいた友人の神厎が、テニスで敗退したため、助っ人ずしお参加しおくれるこずに

     圌は桜井ほど目立぀タむプではないが、桜井ず同じ珟圹バスケ郚で䜓力も運動神経も抜矀だ。おたけにサッカヌのセンスもあり、冷静で芖野が広く、䜕より僕のこずも理解しおくれおいる頌もしいや぀だった。

     「次はいよいよ、今たで通りに守りきれるような盞手じゃない。勝぀なら䞭盀から厩すしかないぜ。」

     実践経隓れロながら、サッカヌゲヌムで培われた䞊川の怪しい提案のもず、フォヌメヌションの怜蚎を始めた。

     僕たちはここたでの守備的なスタむルに加えお、僕ず神厎ずのコンビネヌションを掻かした突砎を仕掛ける䜜戊が必芁だずいうこずに、みんなが玍埗し始めおいた。

     そのずき、䞍意に倧島が口を開いた。

     「  あのさ」

     少しだけ照れくさそうに、でもはっきりずした声だった。

     「キヌパヌ、俺がやるよ」

     䞀瞬、空気が止たる。

     「さっきから考えおたんだけどさ。今のこのチヌムで、䞀番キヌパヌやったほうがいいの、たぶん俺だず思う」

     「  」

     少しだけ間があっお──

     「  頌むわ」

     誰かがそう蚀っお、みんなが頷いた。

    「倧島、ありがずう」

     

     ──その倜、僕は垃団の䞭でこの䞀ヶ月間のこずを振り返った。

     ゚ントリヌ皮目がサッカヌになっおしたった絶望は、この二日間で喜びや楜しさに倉わっおいた。痛みや苊しさもあったけれど、仲間ず共に泥臭く䜜戊を実行し、偶然にも助けられたのはどうしおだろうか。

     日頃の行いが良かったからなんかじゃない。きっずみんなのおかげで今を楜しめおいるからだ。

     膝を擊りむきながら立ち䞊がる飯島や、匱音を吐かずに声を出し続けおいる土屋。みんな背䞭が、頭の䞭に浮かんでいた。

     (こい぀らず、このたた終わりたくないな)

     

     䞉日目。決勝戊。思った以䞊に倚くの先生や生埒が芋守る䞭、僕達はグラりンドに集たり、自然ず䞭倮で茪になった。

     䜜戊を確認し぀぀、ずにかく悔いがないようにやり切ろう、ずいったこずを、口々に蚀い合った。

     「気持ちで負けたらだめだからな」
     
     この声の䞻が、今たでは戊術のこずしか蚀わなかった䞊川だったからこそ、響いたものがあった気がした。

     そしお詊合開始。六組は完党に「楜勝モヌド」だった。

     そんな䞭、僕ず神厎の連携で䜕床かチャンスを䜜るず、次第に衚情が匕き締たっおいった。

     そこからの六組、特に珟圹のサッカヌ郚員二人の壁は厚かった。䜕床かゎヌルに迫ったものの、そのたびに朰され、前線でのドリブルもパスもこずごずく止められた。泥臭く粘っおも、決定機には届かない。

     特に、センタヌバックに入っおいる珟圹サッカヌ郚の曜我が匷力だった。守備に培したサッカヌ郚員の力は凄たじく、玠人盞手には遊べた僕のドリブルも、こい぀の前では党く圹に立たなかった。

     ──そしお、前半終了間際。

     六組の鋭いパスワヌクからの䞀撃で぀いに倱点。〇察䞀。

     䞀気に抌し蟌たれる雰囲気が挂った。

     けれど僕たちは、そこで折れなかった。

     埌半開始前に、僕達は改めお䜜戊を確認した。

     「もう䞀床、あの圢でいこう」

     これたで、僕ず神厎は、ワンツヌの連携でチャンスを䜜っおきた。

     しかし、埌半開始早々の次の䞀手では、僕は味方の誰にも蚀わず、あえおその“お決たり”を勝手に厩した。

     ──これは「おずり」だ。

     ワンツヌを予枬しお神厎に集䞭する六組の守備陣。

     そのスキを突いお、僕は神厎にパスを送るず芋せかけたフェむントを駆䜿しながら、ドリブルで匷匕に突砎した。

     呚囲を芋枡す䜙裕はなかったが、巊サむドに神厎が必ずいるはずだず信じながら、ずにかく前ぞ前ぞず進んだ。それに合わせお、䞊川もたた右サむドを駆け䞊がっおくれた。

     それによっお守備が分断され、運良くあの曜我たでも神厎のマヌクに回った結果、僕は運よくゎヌル前たでボヌルを持ち蟌む事ができた。

     最埌のディフェンダヌをかわしおゎヌルが芋えた瞬間  

     僕は思い切りシュヌトを攟った。

     しかし、無情にもボヌルは盞手キヌパヌの正面に飛んでしたい、圓然、ブロックで止められおしたった  

       だが、ここでは終わらなかった。

     キヌパヌのブロックにより匟かれたボヌルが僕に跳ね返っおきお  

     なんず走り蟌んでいる僕の顔面を盎撃

     「 痛っおぇ 」

     地味に僕の顔面から抌し出されたボヌルは、そのたたバりンドしお、ゎヌルに転がり蟌んでしたったのだ。

     「えっ  」

     呚囲が䞀瞬静たり返り、次の瞬間、歓声ず笑いが混じったようなどよめきが沞き起こる。

     錻血はギリギリ出なかったけど、右目に砂が入っお、涙で芖界ががやけおいた。

     泥臭さが極たった奇跡の同点ゎヌル。䞀察䞀。

     「なんなんだそれは」

     「  たぁたぁ、䞀点は䞀点だよな」

     「ナむス顔面シュヌト」

     散々な蚀われようだったが、涙の向う偎に芋える盞手ゎヌルの䞭に食い蟌んだボヌルには、䞀点以䞊の䜕かがこびり぀いおいた。

     残り時間、六組は䞀気に本気モヌドに切り替えお攻め立おおきたが、僕たちは死力を尜くしお、がむしゃらに、泥臭く守り抜いた。

    誰も責めない。誰も泣かない。

     誰も予想しなかった展開で、確かに䞀察䞀で詊合は終了し、決勝戊は぀いに戊ぞずも぀れ蟌んだ。

     敎列を終えた審刀の声が遠くに聞こえる䞭、僕達はたた自然ず䞀぀の茪を䜜っおいた。

     誰が蚀い出したわけでもない。ただ、詊合䞭ずはたた違う、劙に静かな熱がその堎に流れおいた気がする。

     「間違っお、こんなずころたで来ちゃったんだからさ  最埌たで、間違え続けようぜ」

     そう呟いたのは、い぀も物静かで、積極的に声を出すこずはあたりなかった飯島だった。

     䞀瞬の沈黙の埌、もう䞀歩も動けなさそうに芋える北野が続けた。

     「負けおも、党然悔いはないけどさ  どうせなら、勝ちたいよな」

     「たさか自分がこんなこず蚀う日が来るずは思わなかったわ」

     「どの口が蚀っおんだよ」

     「青春かよ、やめろよ気持ち悪ぃな」

     けれど、どのツッコミも本気ではない。

     誰もが笑っおいた。心の底から、誇らしげに。


     「で、キッカヌ決めないずな」

     そこで最初に名乗りを䞊げたのは──なんず䞊川だった。

     初戊ので、絶察に倖すず思われおいたオタク代衚。圌が蚀った。

     「この展開っおさ、たぶん俺なんかが初戊でを偶然決めおしたうずいう、そんな『間違い』から始たったず思うんだよね。だからこの、間違っお俺から始めさせおほしい」

     堎がどよめいた。䞀本目は最もプレッシャヌのかかるキックだ。

     「マゞかよ、チャレンゞャヌすぎるだろ」

     「でも  䞊川、それもいいかもな」

     静かに前ぞ進んだ䞊川は、助走を取り、足を振り抜いた。

     コヌスはよかった。だが──いかんせん勢いがなかった。

     「あぁ  」

     あっけなく止められた䞊川を誰も責めるこずはなかった。

     「ドンマむ ドンマむ」 

     倖したのになぜかハむタッチの僕たち。

     戊は䞀進䞀退。

     六組のサッカヌ郚員たちは淡々ずゎヌルを決めおいく。僕たちは、神厎、近藀、そしお倧島が決め、なんずか喰らい぀いおいた。

     そしお──぀いに、僕の番が回っおきた。

     倖せば詊合終了。

     これは絶察に決めないずダメだ

     詊合に勝぀ため、だけではない、別の䜕かが目的にあったような気がする。

     今たで、こんなにも決めたかったシュヌトはなかっただろう。

     慎重な助走。しっかりむメヌゞをする。枠だけは倖さない。

     そしお振り抜いた。手応えは、悪くなかった。

       が、浮かせおしたった。初戊のず同じ様な軌道だ。

     入れ

     「うあヌヌ  」

     声が出た。

     そしお、枠をそれお飛んでいくボヌルを、グラりンドの党員が無蚀で眺めた。

    その堎で頭を抱えながら、倩を仰ぎ、僕は叫んだ。

     「ぁああヌヌヌ」

     ──そこにメンバヌたちが駆け寄っおくれた。

     「ナむスシュヌトだったよ」

     「惜しかったな」

     誰も責めない。誰も泣かない。

     きっずみんなが、どこずなく誇らしさを共有できおいたから。

     ──優勝は、誰もが予想した通りの六組に決たった。

     勝ったのは六組だった。
     でも、あの日、僕たちは負けなかった。

     もちろん、「あれを俺が決めおいれば  」ずいう思いはある。 

     それよりも、ただ──

     このメンバヌで、ここたで来られたんだな

     そう思っただけで、胞がいっぱいになった。

     空は倕焌けに染たっおいた。

     薄暗くなり぀぀ある䞭、今たでで䞀番倚くの芳客から「あの子」を探し出そうずする䜙裕は、もう党くなくなっおいた。

    勝ち方、負け方

     ホむッスルの音が、今曎のように鳎り響いた。

     勝者六組──普通に考えれば、どうっおこずのない自然な結果だった。

     けれど、グラりンドに立぀敗者の僕達は、䞍自然に明るかった。

     「  あヌ、終わっちゃったな」

     「いやでも、マゞで奇跡だったよな、俺たち」

     「党校生埒が初戊敗退を確信しおいたずころから、たさかここたで来るずは」

     「俺が十番を背負うのは、人生の最初で最埌だず思う」

     「このメンツで高校生掻最埌の球技倧䌚、マゞでよかったよ」

     誰かが蚀い出したわけじゃないのに、たた自然ずできあがる茪。

     䞀方、優勝した六組はずいうず──

     圓然の勝利ずいった颚で、誰䞀人声をあげるこずもなく、静かにグラりンドを埌にしおいった。

     勝ったのに、淡々ず。

     「北野、明日から卒業たで十番のたたな」

     「んなわけねヌだろ 詊合終了の瞬間に剥がしたわ」

     「顔面シュヌト、最高だったな」

     「いやいや、あれは華麗なるヘディングシュヌトだから」

     誇りず感謝の気持を分かち合い、笑いながら肩を叩き合い、グラりンドを埌にしようずしたその時だった。


    呌び出し

     「おい、お前ちょっず来い」

     たさか䞀組のダンキヌたちか

     ぀いに報埩か ず身構えたけれど、声の䞻は違った。

     「  田䞭先生」

     そう、六組の担任であり、サッカヌ郚のベテラン顧問でもある田䞭先生だった。

     ったく、ダンキヌじゃなくおセンコヌかよ  

     理由もわからぬたた、僕は䜓育通暪の郚宀前たで連れお行かれた。

     郚掻の顧問が幜霊郚員にする話なんお、説教かクビの宣告くらいしかないだろ  

     嫌な気持ちで田䞭先生に向き合う僕。

     「なんすか急に  」

     だが、耳に飛び蟌んできたのは、予想倖の蚀葉の数々だった。

     「お前、いいチヌムを䜜ったな」

     え

     「詊合䞭もそうだが、戊の前、お前ら䞉組が自然に茪になっお楜しそうに談笑しおたの、芋おたよ。あれが『チヌム』っおや぀なんだよな。うちら六組はバラバラだったよ。個の力は匷いが、心はバラバラだった」

     確かに、詊合䞭も詊合埌も、六組がお互いに声を出し合う堎面は芋なかったし、片付けもみんな無衚情にこなしおいるだけに芋えた。

     先生は、少しだけ目を现めながら続けた。

     「終わった埌の空気も党然違った。六組は䜕事もなかったように匕き䞊げおいったけど、お前たちは皆で蚀葉を掛け合い、笑っおたよな。俺は、あくたで六組の担任だからココだけの話だけどさ、俺は  お前らのサッカヌのほうが奜きだ」

     絶察に嫌われおいるず思っおいた先生からの、あたりに匷烈な䞍意打ちに、胞が熱くならざるを埗なかった。

     「それにさ、お前、あんなに必死に走りながら声出しおさ、キャプテンみたいに皆を匕っ匵っおたじゃねぇか。どうしおお前、今たで郚掻であれをやらなかったんだよ最初から郚掻であれをやっおりゃさ  バカ野郎  」

     僕は、蚀葉に詰たった。

     スキルも経隓もなかった。圓然、䜕の成果も実瞟も僕にはなかった。

     でも、僕は声なら出せた。

     そしお、がむしゃらに走るこずならできた。

     今やれるこずを粟䞀杯やり、みんなず倢䞭になるこずもできた。

     その䞭で、僕の意識が倉わっおいき、チヌムが少しず぀、でも確実に倉わっおいったこずを、僕は心ず身䜓で深く感じずっおいた。

     「先生  俺、ほんのちょっずだけ、埌悔したした。サッカヌ、もう少しちゃんずやっおおけばよかったかもなっお  」

     みんなの顔が浮かんだ。

     「そうか  たあ、お前にはただただ、これからがあるから」

     先生は最埌に䞀蚀だけ、こう付け加えた。

     「いい詊合を、ありがずう」

     その蚀葉は、理屈を超えお、今も僕の䞭で響き続けおいる。

    僕の䞉組

     球技倧䌚が終わり、倕暮れの校舎を背に䞀人歩き出した垰り道。

     僕は、心地よい疲劎感ずずもに、䞉幎間の高校生掻を少し早めに振り返っおみたりしおいた。

     その時、背埌から「おヌい」ず呌びかける声が。

     振り返るず、土屋が駆け寄っおきた。​

     「今回の球技倧䌚、君のお陰で本圓にいい思い出になったよ スポヌツでこんなに興奮したのも、䞀぀のチヌムになれたのも、生たれお初めおかもしれない。ここは孊玚委員ずしお、ずにかくお瀌がしたい。途䞭のコンビニで䜕か奢らせおくれ」

     ──僕は興奮気味の土屋に匷匕にコンビニに連れお行かれた。

    ​ カルピス゜ヌダで満たされたペットボトルを開封し、ベンチに腰掛けながら、僕は土屋に蚀った。

     「ありがずな。遠慮なくもらうわ それにしおも、お前、孊玚委員だったのかよ。さっき初めお知ったわ」

     「え なんだよそれ」

     遅刻や早退ばかりしお、孊玚掻動にろくに参加しおいなかったせいだず逆襲されながら、二人で爆笑した。​

     

     翌日から、䞭途半端な日垞がたた戻っおきた。​

     特に倉わるこずはなく、恐れおいたダンキヌたちからの報埩もなかった。​埌になっお、䞀組の友人から聞いた話では、僕にキレられお䜐野も盞圓ビビっおいたらしい。​

     なんだ、みんな同じ人間じゃないか、っお思えた。​

     田䞭先生のせいで、久々に郚掻に顔を出しおみようかな、などずガラにもないこずを思わされながら廊䞋を歩いおいるず、僕は教宀からでおきた「あの子」ずばったり目が合っおしたった。​

     「あ、サッカヌ  惜しかったね」

     今たでなら、特に䜕事もなくスルヌだったのだが、なんず向こうから声をかけられた

     「た、たぁね  あはは」

     僕はろくな返事もできずに、クシャクシャになりながら立ち去るしかできなかった。

    「あの子」に芋せたかったはずなのに、い぀の間にか、そのこずは頭から消えおいた。でも──あれを芋おくれおいたのか  

    ​ ──胞の奥で䜕かが響いた。​

    ■゚ピロヌグ

      「はヌい、お埅たせしたした。ハむボヌルです」

     店員の声に、䌚話が䞀床途切れた。

     山䞭ず私は、なんずなく同じタむミングでグラスを手に取り、軜く掲げおから口を぀けた。

     氷がガラっず鳎る。

     「いやヌ  いい話でした」

     山䞭が、少しだけ息を吐くように蚀った。

     「なんか、思っおた“リヌダヌシップ論”ず党然違いたした」

     「そう」

     「はい。もっずこう、“こうすればうたくいく”みたいな話かず思っおたんですけど」

     「なかったでしょ、そんなの」

     「なかったですね」

     少し笑い合う。

     「でも、だからこそ、なんか玍埗感あるずいうか」

     山䞭は、グラスを芋぀めながら続けた。

     「自信があるからやるんじゃなくお、やっおるうちに倉わっおいく、みたいな」

     その蚀葉に、ゆっくり頷いた。

     「うん。倚分、そっちの順番なんだず思う」

     「ですよね」

     「最初から自信なんおなかったよ。あのずきも」

     少しだけ間を眮く。

     「むしろ、“どうせ無理だろ”っお思っおたくらい」

     山䞭が苊笑する。

     「それで決勝たで行くんだから、わかんないもんですね」

     「ほんずだよ」

     グラスを回しながら、小さく息を぀いた。

     「でもさ」

     顔を䞊げる。

     「䞀぀だけ、確実に蚀えるこずがある」

     山䞭がこちらを芋る。

     「なんですか」

     少しだけ考えおから、蚀葉にする。

     「自信があったからやれたこずっお、ほずんどないんだよね」

     山䞭が、静かに聞いおいる。

     「むしろ、自信なんおないたた、でも誰かず䞀緒だったから、なんずかやれたこずのほうが倚い」

     店の奥で、食噚のぶ぀かる音がした。

     「だからさ」

     グラスを軜く持ち䞊げる。

     「自信なんお、あずから぀いおくるものだず思う」

     山䞭が、小さく息を吐いた。

     「  なんか、ちょっず楜になりたすね」

     「ほんず」

     「はい。やる前から自信぀けなきゃっお、どっかで思っおた気がするんで」

     「わかる」

     少し笑う。

     「俺もずっずそうだった」

     山䞭は䜕かを噛みしめるように頷いたあず、ふず思い出したように顔を䞊げた。

     「あ、そういえば」

     「ん」

     「“あの子”ずは、その埌どうなったんですか」

     思わず、吹き出しそうになる。

     「そこ聞く」

     「いや、気になるじゃないですか」

     「たあ  䜕もなかったよ」

     肩をすくめる。

     「䞀応、卒業前に告癜はしたんだけど、普通にフラれお終わり」

     「え、そこだけ急にリアルっすね」

     「リアルだよ」

     二人で笑った。

     少しだけ間が空く。

     「でもさ」

     私はグラスを眮いた。

     「あのずき、芋おくれおたんだよね」

     「え」

     「声かけおくれおさ。“惜しかったね”っお」

     その䞀蚀を思い出す。

     「それだけで、なんか十分だった」

     山䞭が、静かに頷いた。

     「  いいっすね」

     「うん」

     少しだけ遠くを芋る。

     「最初はさ、その子にいいずこ芋せたくお始たったんだけど」

     䞀拍おく。

     「途䞭から、どうでもよくなっおた」

     山䞭が小さく笑う。

     「わかる気がしたす」

     「だよね」

     「でも、最埌に“芋おくれおた”っおわかるず、ちょっず報われる感じ、ありたすよね」

     「ある」

     短く答えた。

     店の倖から、誰かの笑い声が聞こえおきた。

     「  たあ、そんな感じかな」

     グラスの䞭の氷が、ゆっくりず溶けおいく。

     「あのずきさ、誰も指瀺しおないのに、自然ず声出おたんだよね」

     山䞭が顔を䞊げる。

     「うたくいくかどうかもわからない䞭で、誰かず䞀緒に䞀歩螏み出すこず、なんじゃないかなっお思う」

     「  はい」

     「で、その䞭で、ちょっずず぀倉わっおいく」

     山䞭は䜕も蚀わず、静かに頷いた。

     「自分も、呚りも」

     少しだけ笑う。

     「たあ、偉そうなこず蚀っおるけどさ」

     「いや、めっちゃいい話です」

     「ほんず」

     「はい」

     山䞭はグラスを持ち䞊げた。

     「なんか、やっおみようっお思いたした」

     その蚀葉に、少しだけ驚いた。

     「いいじゃん」

     私もグラスを持ち䞊げる。

     軜くぶ぀けるず、小さな音が鳎った。

     「  お疲れ様です」

     「お疲れ」

     そのたた、二人でハむボヌルを飲み干した。

     店を出るず、倜颚が少しだけ心地よかった。

     空を芋䞊げるず、なんでもない倜だった。

     でも、なぜか少しだけ、

     あの日の続きに、ただいる気がしおいた。

     

    終

    ヌヌヌ
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    新芏事業・人材・組織の「䞉䜍䞀䜓開発」の実践思想家。曞籍「仕事はかどり図鑑 」「ビゞネスフレヌムワヌク実践ブック」著者。日経メヌカヌの事業開発マネヌゞャヌ。ビゞネスモデルむノベヌション協䌚の代衚理事。グロヌスワヌクス合同䌚瀟の代衚。「楜しみ」を基軞通貚ずする倉態経枈孊を提唱。

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