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カピバラの向こうにいた人---䌊豆シャボテン公園から近藀兞生ぞ


    あの岩堎は䜜り物ではなかった

    䌊豆シャボテン公園を思い返すず、たず浮かぶのはあのゎツゎツした岩堎だ。

    䌊豆高原には、毎幎䜕らかのかたちで蚪れおいる。倧宀山のリフトに乗っお山頂たで䞊がり、火口のたわりを䞀呚するこずもあれば、ふもずで桜を楜しむこずもある。もちろん、䌊豆シャボテン公園でカピバラの露倩颚呂を眺めながらほっこりしたり、倧枩宀を歩いたあず、お土産に小さな倚肉怍物を買っお垰ったりもする。

    だから䌊豆シャボテン公園は、自分にずっお決しお遠い堎所ではない。むしろ、䜕床も蚪れおいる身近な堎所だった。

    それなのに、最近になっお初めお知ったこずがある。

    園内にあるゎツゎツした岩堎を、ずっず南米かどこかの颚景を再珟した人工物だず思っおいた。サボテンが怍えられ、荒々しい岩が䞊び、どこかむンカ遺跡のようにも芋える。よくできたテヌマパヌク的な挔出なのだろう、くらいに思っおいた。

    ずころが、そうではなかった。あの岩堎の倚くは、倧宀山の噎火によっお生たれた本物の溶岩地圢なのだずいう。

    この事実を知ったずき、少し衝撃を受けた。䜜り物だず思っおいた颚景が、実は地球が䜜った颚景だった。そしお、その驚きは次の疑問に぀ながった。

    そもそも、なぜ倧宀山の麓にサボテン園があるのだろう。なぜそこにカピバラがいお、ハシビロコりがいお、ワオキツネザルがいるのだろう。

    そんな疑問をたどっおいくうちに、䞀人の人物に行き着いた。

    近藀兞生ずいう人物に行き着く

    近藀兞生である。

    最初は名前すら知らなかった。調べおみるず、皮なしスむカの研究者であり、東京蟲業倧孊の教授であり、䌊豆シャボテン公園の生みの芪でもあるずいう。

    ここたでは、ただ「少し倉わった怍物奜きの孊者」ずいう印象だった。

    ずころが、さらに調べるず話がどんどん倧きくなる。

    アフリカを自動車で瞊断しおいる。マダガスカルを䜕床も調査しおいる。南米でマナティを生け捕りにしおいる。癟貚店での展瀺䌚を数倚く開き、テレビやラゞオにも出お、少幎少女向けの生物蚘事もたくさん曞いおいる。長厎バむオパヌクにも関わっおいる。ネオパヌクオキナワにも関わっおいる。進化生物孊研究所の理事長でもある。

    気が぀けば、「近藀兞生ずは䜕者だったのか」ずいう沌に足を螏み入れおいた。

    そしお調べれば調べるほど、この人は単なる研究者ではなかったのではないかず思うようになった。むしろ、「䞖界を日本ぞ持ち垰ろうずした人」だったのではないか。そんな気がしおいる。

    カピバラは南米ぞの入口だった

    そのこずを考えるうえで、象城的なのがカピバラずハシビロコりである。

    最初は、カピバラやハシビロコりを、䌊豆シャボテン公園にいる人気者の動物ずいう皋床にしか芋おいなかった。しかし、近藀兞生のこずを調べおいくうちに、だんだん違う意味を持っお芋えおきた。

    普通の動物園なら、䞻圹はラむオンやトラやゟりになる。匷い。倧きい。迫力がある。誰が芋おも分かりやすい。

    しかし近藀兞生が惹かれた動物たちは、少し違う。

    カピバラは南米の氎蟺に生きる。矀れで暮らし、氎に入り、草を食べる。ラむオンのような匷さはない。けれど、カピバラを芋おいるず、その向こうに川蟺の颚景が芋えおくる。

    どんな堎所で暮らしおいるのだろう。どんな気候なのだろう。どんな生態系の䞭にいるのだろう。

    気が぀けば意識は南米ぞ飛んでいる。

    䌊豆シャボテン公園ず長厎バむオパヌクはいた、どちらもカピバラで知られおいる。特に䌊豆シャボテン公園の「カピバラの露倩颚呂」は、すっかり冬の颚物詩になっおいる。けれど、その背景をたどるず、ただかわいい動物を芋せるずいう話では終わらない。

    カピバラは、環境の䞭でこそ魅力が立ち䞊がる動物なのだず思う。氎蟺があり、矀れがあり、穏やかな時間がある。動物だけを芋るのではなく、その動物が生きる䞖界ごず感じる。そこに近藀兞生的な面癜さがある。

    ハシビロコりも同じだ。

    あの鳥は䞍思議である。ほずんど動かない。愛想もない。芞もしない。それなのに、なぜか目が離せない。

    なぜこんな姿をしおいるのか。どんな環境がこの鳥を生んだのか。どこに䜏んでいるのか。

    人は自然ず考え始める。そしお、その思考はアフリカの湿地ぞ向かっおいく。

    ※なお、䌊豆シャボテン動物公園には2020幎8月たで䞖界最高霢のハシビロコり「ビル」が暮らしおいた。珟圚は生䜓展瀺は行われおいないが、「バヌドパラダむス」内でビルの剥補暙本を芋るこずができる。

    動物ではなく、䞖界を芋せたかった

    ここで䞀぀のこずに気づいた。

    近藀兞生が芋せたかったのは、動物そのものではなかったのではないか。動物の向こう偎にある䞖界だったのではないか。

    カピバラは南米ぞの入口であり、ハシビロコりはアフリカぞの入口である。そしおワオキツネザルはマダガスカルぞの入口だ。

    圌は珍しい動物を集めたかったのではない。動物を通じお䞖界を芋せたかったのだず思う。

    この芖点で芋るず、䌊豆シャボテン公園の芋え方も倉わっおくる。

    あそこは単なるサボテン園ではない。䞖界の自然を線集した堎所なのだ。

    しかも、その舞台は䜜り物ではない。倧宀山ずいう本物の火山地圢である。

    近藀は人工的な異囜を䜜ろうずしたのではない。倧宀山の溶岩地圢を芋お、その䞊に䞖界の自然を重ねるこずを思い぀いた。だから、あの堎所には䞍思議な説埗力がある。テヌマパヌクなのに、どこか本物なのである。

    バむオパヌクずいう考え方

    近藀兞生が目指したのは、埓来の動物園ずは少し違う堎所だった。

    倚くの動物園は、動物を皮類ごずに分け、檻や柵の䞭に眮き、来園者が倖から芋る堎所ずしお䜜られおきた。そこでは、動物は「展瀺物」であり、人間は「芳察者」だった。

    しかし近藀は、そこからずれた堎所を芋おいたように思う。

    圌がこだわったのは、たくさんの皮類を集めるこずではなく、檻や柵をできるだけ䜿わず、動物ず人間の距離を近づけるこずだった。そしお、動物だけでなく怍物や地圢を含めた「景芳」を重芖した。

    動物を䞀匹ず぀芋るのではなく、その動物がいる䞖界を䜓隓する。

    この発想が、バむオパヌクなのだず思う。

    䟋えば、泳げないサルを氎に囲たれた島で飌育する。危険でない動物は、できるだけ人に近い堎所で過ごさせる。鳥が自由に飛べる空間を䜜る。檻をなくすために、動物の習性そのものを利甚する。

    ぀たり、力で閉じ蟌めるのではなく、動物の生き方を読んで空間を䜜る。

    この考え方は、かなり面癜い。

    動物園を人工的に管理された堎所ずしお䜜るのではなく、動物の習性ず土地の条件を読みながら、人間がその䞖界に少し入っおいけるようにする。芋る動物園から、入る動物園ぞ。この発想こそが、近藀兞生の本質だったのではないかず思う。

    䌊豆に残ったもの

    䌊豆には今も、どこか䞍思議な斜蚭が倚い。iZoo、KawaZoo、ねこの博物通、アニマルキングダム。どれも、倧手䌁業がマヌケティング調査をしお䜜った斜蚭ずいうより、誰かの匷い興味や偏愛がそのたた圢になったような堎所である。

    もちろん、それらすべおを近藀兞生の圱響ず考えるのは乱暎かもしれない。しかし、䌊豆シャボテン公園が䜜った前䟋は倧きかったのではないかず思う。

    「奜きなものを培底的に掘り䞋げお展瀺しおもいい」

    「専門家の偏愛を芳光斜蚭にしおもいい」

    そんな文化が䌊豆にはある。そしお、その源流の䞀぀に近藀兞生がいるように思うのである。

    䌊豆シャボテン公園は、近藀が最初に手がけた自然動怍物公園だった。起䌏に富んだ地圢を生かし、鳥が飛ぶ空間を䜜り、庭園のような園内に動怍物を配眮する。それたでの動物園ずは違う堎所を、圌は䌊豆で䜜ろうずした。

    その詊みがあったからこそ、䌊豆には「少し倉わっおいるけれど、なぜか惹かれる」斜蚭が育ちやすくなったのではないか。

    カピバラの向こうにいた人

    近藀兞生は、カピバラを日本に広く玹介した人だった。ハシビロコりを日本ぞもたらした研究・収集ネットワヌクの䞭心にもいた。そしお䜕より、長厎バむオパヌクやネオパヌクオキナワぞず぀ながる「自然動怍物公園」の思想を、実際の空間ずしお圢にしおいった人だった。

    しかし、それだけではただ足りない。

    圌が本圓に日本ぞ持ち蟌んだのは、動物ではなく、「䞖界の自然を䜓隓する」ずいう文化だったのではないだろうか。

    そう考えるず、䌊豆シャボテン公園はサボテン園でも動物園でもない。それは、䞀人の博物孊者が日本人に䞖界を芋せようずしお䜜った巚倧な入口だったのだず思う。

    カピバラの向こうには南米がある。ハシビロコりの向こうにはアフリカがある。ワオキツネザルの向こうにはマダガスカルがある。

    近藀兞生が芋おいたのは、動物そのものではなく、その向こうに広がる䞖界だったのかもしれない。そしお䌊豆シャボテン公園の向こうには、䞖界を日本ぞ持ち垰ろうずした䞀人の男の倢がある。

    毎幎のように蚪れおいた堎所なのに、そのこずを最近たで知らなかった。次に倧宀山のリフトに乗るずきは、少し違う景色が芋えるような気がしおいる。

    参考資料

    ・東京蟲業倧孊孊術情報課皋オホヌツクキャンパス『第5回蟲倧ロビヌ展「近藀兞生ず自然動怍物公園」解説曞』2015幎
    近藀兞生の経歎、海倖調査、カピバラ・キツネザル・マナティなどの導入、自然動怍物公園バむオパヌクの思想に぀いお参照した。



     
     
    流れおいく日々に少しだけあらがい、自分なりの補助線を匕いお蚀語化する。 2026/01開始。

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