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何か話があるんでしょ?|創作短編小説【前編】

あらすじ
男子校育ちで恋愛経験のないまま医師になった僕は、研修医2年目に、隣の席の後輩と出会う。美人看護師との華やかな出会いに浮かれる一方で、当直中のカップラーメンや居酒屋で何でも話せる後輩の存在が、少しずつ特別になっていく。不器用な告白、すれ違い、彼女に押し切られて始まった同棲、夢の国で言いそびれたプロポーズ。恋愛小説の主人公ではないと思っていた男が、彼女に背中を押されながら、夫となり父となっていくまでを描く、少し不格好な医師の恋愛小説。

本編

僕は恋愛小説の主人公ではない。

たぶん。

少なくとも、自分ではそう思っていた。

まず男子校だった。
この時点で、かなり不利だ。

恋愛小説はたいてい共学から始まる。桜並木とか、遅刻しそうな朝とか、曲がり角でぶつかるとか。

男子校にも曲がり角はある。
ただ、ぶつかってくるのはだいたい男だ。
しかも、やたら肩が強い。

恋は始まらない。
肩が痛いだけである。

中高6年間。
僕の青春には、女子がいなかった。

正確に言えば、駅やコンビニや通学路にはいた。
でも教室にはいない。

文化祭に来る女子はいたけれど、彼女たちは僕らを見に来たわけではなかった。
たいていはイケメンか、バンドか、男子校という謎の生き物を観察しに来ていた。

僕は、そのどれでもなかった。

バンドは組んでいない。
イケメンでもない。
観察対象としても、特に面白くない。

標本にするには平凡。
恋愛対象にするには挙動不審。

そんな男子だった。

昼休みは友達と購買に走り、放課後は部活かゲームかくだらない話。
女子と話した記憶はほとんどない。

小学生の頃までは、普通に女子とも話していた気がする。
給食当番とか、掃除当番とか、席替えとか。
人生には強制的に異性と会話する制度がいくつかある。

だが中学から男子校に入った瞬間、その制度は消えた。

結果、僕の中の「女子と話す能力」は、小学校卒業時点で保存された。

冷凍保存である。

しかも、解凍方法がわからない。

医学部に入って、初めて共学になった。

教室に女子がいる。
食堂にもいる。
実習班にもいる。

これはもう、異文化交流だった。

言葉は通じる。
日本語だから。

でも、何を話せばいいのかわからない。

「このプリント、回して」

「はい」

終わり。

「今日の講義、眠かったね」

「そうだね」

終わり。

僕の会話は短距離走だった。
しかも予選落ちだった。

男子校のノリで、男友達は多かった。
どうでもいい話なら、いくらでもできた。

昨日見た動画。
試験前の絶望。
コンビニの唐揚げ。
教授のクセ。
なぜか始まる腕相撲。

そういうことには困らなかった。

困ったのは恋愛だった。

恋愛。

文字にすると簡単なのに、実行しようとすると急に難易度が跳ね上がる。
医学部の試験より難しい。
少なくとも、過去問がない。

いや、あるにはある。
先輩の話とか、友達の武勇伝とか、ネットの記事とか。
でも、それらはだいたい再現性がない。

「自然に仲良くなってさ」

その自然がわからない。

自然とは何か。
自然発生説か。
恋愛はカビなのか。

合コンにも行った。

医学部男子というだけで、なぜか少し期待されることがある。
期待されても困る。
中身は男子校育ちの、恋愛未履修人間である。

「先生の卵なんですよね?」

「いや、まだ卵にもなってないです」

「じゃあ何?」

「……殻ですかね」

何を言っているんだ、僕は。

周りの男子も似たようなものだった。

医学知識を出して滑るやつ。
酒が飲めるアピールで潰れるやつ。
恋愛経験があるふりをして、明らかにないやつ。
やたら聞き役に回ろうとして、ただ黙っているだけのやつ。

つまり僕らは、全員、空回りしていた。

皿だけ回って、何も取れない回転寿司みたいだった。

合コン終わり、男だけでラーメンを食べる。

「今日、どうだった?」

「いや、まあ」

「いけそうだった?」

「誰が?」

「誰でも」

「誰でもって何だよ」

「いや、なんか」

だいたいこんな会話になる。

誰も何も得ていない。
ただ飲み代だけを失っている。

それでも何回か行った。

なぜなら、行かなければ何も始まらない気がしたからだ。
そして行っても何も始まらなかった。

世の中には、始まらない始まりというものがある。

結局、彼女はできなかった。

6年間。

できなかった。

まあ、そういうこともある。
あるのだ。
あったことにしておく。

そして僕は、研修医になった。

最初の半年は、恋愛どころではなかった。

本当に、どころではなかった。

毎日が災害だった。
というより、自分が災害だった。

右も左もわからない。
採血ひとつで手が震える。
カルテを書けば長い。
長いのに薄い。
指示を出せば不安。
看護師さんに聞かれれば、もっと不安。

病棟にいるだけで、心拍数が上がっていた。

白衣のポケットには、メモ帳、ペンライト、聴診器、マニュアル本。
まるで装備だけは整えた初心者だった。

でも、装備があっても中身が追いつかない。

「先生、この点滴、このままでいいですか」

看護師さんの声は普通だった。

でも、当時の僕にはこう聞こえた。

先生、この点滴、このままでいいですか。
もちろんダメですよね。
早く上の先生に聞いてきてくださいね。
私たちは全部わかっていますけど、あなたは何もわかっていませんよね。

被害妄想である。

でも研修医の心は弱い。
ゼリーくらい弱い。
しかも常温のやつだ。

「あ、確認します」

そう言って、指導医の外来の合間を狙う。

「先生、すみません」

「なに?」

「点滴なんですけど」

「ああ、それはこうでいいよ」

「ありがとうございます」

戻る。
看護師さんに伝える。

「それでいいんですね」

「はい」

その「はい」に、どれくらいの意味があったのかはわからない。
たぶん、何もなかった。

でも僕は勝手に傷ついていた。

人間不信というより、自分不信だった。

何をしても不安。
何を聞かれても怖い。

病棟は戦場だった。
ナースステーションは司令部だった。
僕は地図を読めない兵士だった。

救急外来も怖かった。

夜中に患者さんが来る。
熱。
腹痛。
胸痛。
意識障害。

どれも教科書には載っている。
だが、目の前に来ると別物になる。

「先生、次の患者さん入ります」

「はい」

返事だけはする。

返事をしてから、心の中で思う。

はいじゃない。
全然はいじゃない。
僕は今から何を診るんだ。

問診。
診察。
検査。
鑑別。
上級医に相談。

全部、頭ではわかっている。
でも、手順が身体に入っていない。

患者さんを診ながら、同時に自分も診ている気分だった。
汗は出ているか。
声は震えていないか。
質問は変じゃないか。
看護師さんに呆れられていないか。

呆れられていたかもしれない。
でも、当時の僕には確認する余裕もなかった。

夜勤明けの朝、病院の外に出ると、世界が妙に明るかった。

通勤する人たち。
登校する高校生。
犬の散歩をするおじいさん。

みんな普通に生きている。

僕だけが、別の時間を通ってきた気がした。

そのままコンビニに寄って、おにぎりを買う。
家に帰って、食べずに寝る。
昼過ぎに起きて、乾いた喉で水を飲む。

そんな日々だった。

恋愛?

無理である。

恋愛どころか、人間生活が危うかった。

それでも、1年は終わる。

終わらない夜はない。
いや、当直はたまに終わらない気がするけど、制度上は終わる。

2年目研修医になった。

生活は大きく変わらない。
忙しい。
眠い。
常に眠い。

けれど、少しだけ違った。

必死さが、少し減った。

仕事が、少し楽しくなった。

病棟の流れが見えるようになった。
救急外来で最初に何をするか、少しだけわかるようになった。
採血の手も震えなくなった。
看護師さんとも、雑談ができるようになった。

「先生、昨日当直でした?」

「はい」

「顔死んでますよ」

「診断ありがとうございます」

「治療は睡眠ですね」

「処方してください」

「無理です」

こういう会話ができるだけで、人間に戻った気がした。

病棟の廊下を歩いていても、1年前ほど肩に力が入らない。
ナースステーションに入る時に、少しだけ呼吸が浅くなる癖も減った。

少しだけ、周りが見えるようになった。

先輩たちは相変わらずすごかった。
上級医は相変わらず怖かった。
でも、去年の自分よりは前に進んでいる。

そう思えた。

そして、後輩ができた。

1年目研修医。
女の子だった。

机が隣だった。

派手ではない。
化粧も薄くて、髪もだいたいまとめていて、白衣のポケットには小さなメモ帳が入っていた。

顔立ちは整っていた。
可愛い。

可愛いが、そういう目で見ていたわけではない。

なかった。

はずだ。

「先輩、これ、どうしたらいいですか」

彼女はよく聞いてきた。

僕は先輩になった。

先輩。

いい響きである。

1年前、あれほど無力だった僕が、誰かに聞かれる立場になった。

人類は進歩する。
僕も進歩した。
たぶん。

「去年の俺に聞いてくれ」

「聞けないから聞いてるんです」

「それはそう」

「これ、抗菌薬どう考えます?」

「あー、これはね」

説明しながら、去年の自分を見ているようだと思った。

悩むところが似ている。
つまずくところが似ている。
不安になるタイミングが似ている。

大人しそうに見えるけれど、ガッツがあった。
泣き言は言う。
でも逃げない。
わからないことは聞く。
怒られても翌日来る。

普通に偉い。

「先輩って、最初からそんな感じだったんですか?」

「そんな感じって?」

「なんか、余裕ある感じ」

「ないよ」

「ありますよ」

「ない。あるように見せてるだけ」

「じゃあ詐欺ですね」

「言い方」

彼女は笑った。

僕も笑った。

その頃の僕は、まだ気づいていなかった。
こういう何でもない会話の方が、あとから残るということに。

彼女はよく質問した。

「先輩、この患者さん、上の先生にいつ相談したらいいですか」

「不安なら今」

「それ、答えになってます?」

「なってる。俺は不安ならすぐ聞く派」

「先輩でも不安になるんですか」

「なるよ」

「意外です」

「むしろ不安しかない」

「じゃあなんでそんな平気そうなんですか」

「顔の筋肉が鈍い」

「便利ですね」

「便利ではない」

そんな会話を、病棟の端や研修医室でよくした。

彼女は真面目だった。
でも真面目すぎて、自分で自分を追い詰めるところがあった。

「今日、怒られました」

「誰に?」

「看護師さんに」

「何て?」

「ちゃんと確認してくださいって」

「確認したの?」

「しました」

「じゃあいいじゃん」

「でも、確認の仕方が悪かったのかもしれません」

「あー」

僕はカップ麺のフタを押さえながら頷いた。

「あるね」

「ありますか」

「ある。確認したつもり。でも相手には伝わってない。地獄」

「地獄です」

「でも、それで明日から確認うまくなるから」

「そういうものですか」

「そういうものにするしかない」

彼女は少し黙ってから、笑った。

「先輩、たまにちゃんと先輩ですね」

「たまにか」

「たまにです」

「そこは常にでいいだろ」

「常には無理です」

「厳しい」

その距離感が楽だった。

指導しているようで、実は去年の自分を慰めているような気もした。

2年目の6月。

ある病棟の飲み会があった。

病院の飲み会は不思議な場所だ。

普段は怖い看護師さんが笑う。
普段は無口な先生が喋る。
普段は偉い先生が酔う。

そして普段は恋愛未履修の研修医が、変な期待をする。

僕である。

その飲み会で、僕はある看護師さんの隣になった。

7年目。
美人だった。

美人という言葉を使うのに、ためらいがないくらい美人だった。

話したことはあまりなかった。
病棟ではテキパキしていて、少し近寄りがたい人だと思っていた。

その人が、飲み会ではよく笑った。

「先生って、男子校だったんですか?」

「はい」

「じゃあ女の子苦手?」

「苦手というか、経験値が低いです」

「ゲームみたいに言うんですね」

「レベル1です」

「スライムにも負けそう」

「正直、負けます」

笑われた。

嬉しかった。

単純である。

男は単純だ。
特に恋愛経験のない男は、砂糖水に群がる蟻くらい単純だ。

「彼女いたことあるんですか?」

「ないです」

「え、ほんとに?」

「ほんとです」

「意外」

「よく言われます」

「モテそうなのに」

来た。

モテそうなのに。

実際にはモテていない人間にだけ投げられる、優しい呪文である。

でも、効く。

普通に効く。

飲み会は楽しかった。

病棟の話もした。
研修医の失敗談もした。
学生時代の話もした。

彼女は話を聞くのがうまかった。

こちらが少し話すと、少し笑う。
こちらが詰まると、助け舟を出す。
こちらが自虐すると、ちょうどいいくらいに拾う。

慣れている。

そう思った。

でもその時の僕には、その「慣れている」が何を意味するのかわかっていなかった。

二次会にも行った。

オシャレなバーだった。

病棟名も患者名も大声では出せないから、話題は自然と仕事以外になった。

趣味。
出身地。
学生時代。
恋愛経験。

「ほんとに何もないんですか?」

「何もないです」

「キスは?」

「ないです」

「えー」

「引かないでください」

「引いてないですよ。かわいいなと思って」

かわいい。

かわいい?

僕が?

医学部を出て、研修医2年目で、採血の成功率も上がり、当直で少しだけ頼られるようになったこの僕が、かわいい?

悪くない。

いや、かなりいい。

バーの照明は暗かった。
グラスの氷が、やけに綺麗だった。
彼女の香水なのか、シャンプーなのか、近づくと少し甘い匂いがした。

恋愛小説っぽい。

そう思った。

ようやく僕にも来たのかもしれない。
男子校に曲がり角はなかったけれど、病院の飲み会にはバーがあった。

帰る時間になった。

外は夜だった。
繁華街の明かりが、濡れた道路に反射していた。

彼女が少しふらついた。

「酔っ払っちゃった」

そう言って、僕の腕に寄りかかってきた。

千載一遇のチャンス。

たぶん。

いや、絶対。

何か言うべきだった。

送りますよ、とか。
もう一軒行きますか、とか。
大丈夫ですか、とか。

大丈夫ですかは言った気がする。

それだけ言った。

そして、何も起こらなかった。

何も起こせなかった。

僕はそのまま帰宅した。

家に帰り、靴を脱ぎ、部屋の電気をつけ、ベッドに座った瞬間、頭を抱えた。

「何してんだ俺」

人生には、逃した魚が大きいという言葉がある。

その夜、僕は魚を逃した。

しかも網を持っていなかった。

翌日。

研修医室。

隣の席の後輩に、その話をした。

彼女はカップラーメンのフタを押さえながら聞いていた。

「それ完全にチャンスじゃないですか」

「だよな」

「何で帰ったんですか」

「わからん」

「ヘタレですね」

「うるせー」

「いや、これはヘタレです」

「やめろ。正論は人を傷つける」

「じゃあ何て言えばいいんですか」

「惜しかったですね、とか」

「惜しかったですね、ヘタレでしたね」

「後半」

2人で笑った。

当直中のカップラーメンは、なぜかうまい。

うまいというより、染みる。

油と塩分と疲労が、体内で和解する。

「でも、その看護師さん、たぶん慣れてますよ」

後輩が言った。

「え?」

「なんか、そういう人って聞いたことあります」

「そういう人?」

「肉食系っていうか」

後から聞いた話、その看護師さんは院内でも有名な人だった。

チャラかった一つ上の先輩。
筋肉自慢の整形外科医。
病棟の誰か。

いろんな元カレが、いろんな部署にいるらしい。

なるほど。

二次会での周囲の少しニヤけた視線。

あれは応援ではなかった。
観戦だった。

僕は試合に出されていた。

そして不戦敗した。

ある意味、怪我はなかった。

「危なかったんですかね」

後輩が言う。

「危なかったのかな」

「でも、ちょっと残念そうですね」

「そりゃ残念だろ」

「正直ですね」

「正直だけが取り柄です」

「恋愛経験は?」

「ないです」

「取り柄、少な」

「うるさい」

彼女は笑いながらカップラーメンをすすった。

僕もすすった。

病院の夜は静かだった。

外では雨が降っていた。

研修医室の蛍光灯は少し暗くて、机の上にはコンビニの袋と医学書と、食べ終わったカップ麺の容器が置かれていた。

ロマンティックではない。

少しもロマンティックではない。

でも、なぜか、その空気は嫌いではなかった。

その頃から、彼女と2人で飲みに行くことが増えた。

遅くまでやっている居酒屋。
病院近くのラーメン屋。
コンビニで買ったアイスを研修医室で食べる夜。

最初は相談だった。

抗菌薬。
病棟対応。
怖い看護師さんとの距離感。
上級医への聞き方。

そのうち、話題は仕事だけではなくなった。

「先輩、彼女作らないんですか」

「作れるなら作ってる」

「努力は?」

「努力って何だよ」

「出会いに行くとか」

「病院にいる」

「それは職場です」

「病院内恋愛もあるだろ」

「この前チャンス逃した人が言います?」

「刺すな」

彼女はよく笑った。

よく笑うけれど、よく怒った。

「先輩、それはちゃんと寝た方がいいです」

「寝る時間ない」

「時間は作るものです」

「上司みたいなこと言うな」

「上司より優しいです」

「たしかに」

「否定してください」

肩肘張らずに話せる異性。

それは、僕にとって初めての存在だった。

美人看護師のような華やかさはない。
ドキドキするような誘い方もしない。
寄りかかってきたりもしない。

でも、隣にいると楽だった。

何でも話せた。

しょうもないことも、情けないことも、恥ずかしいことも。

僕は気づいていなかった。

恋愛は、もっと派手なものだと思っていた。

雷みたいに落ちるものだと。
運命のBGMが鳴るものだと。

実際は違った。

恋愛は、カップラーメンの湯気の中にもある。

深夜の研修医室にもある。

誰もいない廊下で交わす「お疲れ」にもある。

美人看護師との夜は、確かに眩しかった。

でも、眩しいものは目を細めないと見えない。

後輩との時間は、眩しくはなかった。

ただ、目を開けていられた。

ある日、居酒屋で飲んでいた。

たぶん、当直明けだった。

なぜ当直明けに飲むのか。

人間は愚かだからだ。

僕はビールを飲み、彼女は梅酒を飲んでいた。

「先輩って、ほんと恋愛下手ですよね」

「改めて言うな」

「でも、そこが面白いです」

「褒めてる?」

「微妙です」

「微妙か」

しばらく沈黙した。

沈黙が苦じゃなかった。

そこが、もう答えだったのかもしれない。

僕はグラスを置いた。

氷が小さく鳴った。

「俺さ」

「はい」

「たぶん」

「はい」

そこで一度、言葉が止まった。

彼女は急かさなかった。

ただ、少しだけ首を傾げて、僕を見ていた。


続き

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