創作大賞2026応募作品『砂丘の竪琴』夢と無意識が語りかける物語⑤不穏の種|夢日記|夢分析|ユング心理学|無意識|深層心理|HSP|トラウマ|イメージワーク|AIアート|前世|小説|ラノベ|プロトタイプ神話|物語|ファンタジー
※本投稿は
創作大賞2026応募作品
『砂丘の竪琴』
夢と無意識が語りかける物語④黄金期
の続きです。
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前回の投稿はこちら▼
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ぜひ併せてお読みください。
竪琴のいわれ
男は代々、宮廷楽師の家系に生まれた。
大臣ほど身分が高いわけではないが、
自分の家にも技術にも誇りを持っていた。
もはや失伝しかけている
砂丘の竪琴のいわれも、
宮廷楽師の家系として最も古い
この男の家にだけは伝わっていた。
男は巻物や古文書がうず高く積まれた
北側の蔵で、1つの書物に目を通していた。
その目は黒々としたくまに縁どられていた。
男は、もう半月以上、
毎晩のように悪夢で目が覚めた。
音楽好きな王が市井の評判を聞き、
戯れに宮殿に呼び寄せた一介の竪琴奏者。
現れたと思ったら、女だったのだ。
王はその美しさや
優雅な立ち振る舞いに
まず目をとめた。
女の手持ちの竪琴を弾かせてみると、
下々の噂は本当だったと
男も納得せざるをえなかった。
気まぐれな王は、
国宝の砂丘の竪琴も弾かせてみよと
男に命じた。
自分は反対したのだ。
私たち、代々の宮廷楽師が
守り続けてきた伝統の楽器だ。
それを一介の奏者にすぎぬ女に
触れさせるべきではないと。
しかし王は譲らず、
大臣の命が下った。
宝物庫から砂丘の竪琴を取り出し
この場で女に弾かせてみよと。
それならば自分たちの目の前だから、
不敬には当たらないと言う。
そして竪琴は初めて
その場で真の姿を現したのだった。
数日後、女に
砂丘の竪琴を下賜することが決まった。
そんなことは前代未聞だった。

砂丘の伝説
砂丘の竪琴は、
王室に古くから伝わるものだった。
女が、宝物庫で見抜いた通り、
数百年ほど前に作られたものだという。
古くから癒しの力がある
という噂もあったが
男は信じていなかった。
古文書によると、
竪琴の本体に刻まれている文字は
音楽の神に捧げる太古の祈りの言葉とされ、
何と読むのか誰も知らなかった。
ただ意味だけは記録されており、
喜びと愛に満たされた時。
真実の音が響き、
新たな光が生まれる。
光を称えよ。我は命。
と古文書に記されていた。
男の顔が青ざめていく。
黒々とした目の下のくまが
さらに深くなって
幽鬼のような表情になっていた。
砂丘の竪琴は、
これまで何度も演奏してきた。
宮廷楽師としても
音楽を司る我が一族としても当然の責務だし、
国宝を奏でるのは
我々、宮廷楽師だけに許されたものだ。
巷の一介の楽師が
触れていいはずがない。
でも。
あの光は自分がこれまで
何度、触れても・奏でても
灯ったことは無かった。
そして女が初めて奏でた砂丘の竪琴は、
自分も含めたその場にいた
みなを恍惚とさせた。
酒に酔ったように
フラフラとしゃがみ込むもの。
涙を流していることにも気づかず、
ぼんやりと宙を見ているもの。
自分ですら
拝み・ひれ伏したくなるのを
寸前で抑えた。
あの音は魔性だ。
何故、それに気が付かない。
野放しにしていいはずがない。
これまで通り、
私たちが厳重に管理すべきなのだ。
そう大臣に奏上したところ、
即座に却下された。
女には自由に演奏する権利は与えたが、
楽器の管理や保管は引き続き
宮殿で行っているのだから
これまでと同じだと言うのだ。
下賜と言っても実質は
自由な使用権を認めるだけだと。
何よりも女の演奏は
王も非常に気に入っているし、
有力者たちからの演奏依頼も続いている。
それ以上、男は何も言えなくなった。
王の意向を翻す立場も言葉も
男には無かったからだった。

国宝を守るために
男は考えた。
あの女が演奏する限り、
砂丘の竪琴は秘めた力を開放するのだ。
これまでそんなことは
一度もなかったではないか。
全てが狂いだしたのは
あの女が現れてからだ。
だったら、女と竪琴を切り離すしかない。
悪いことに女は王と大臣のお気に入りだ。
これ以上、大臣に上申しても決定は覆らない。
だとしたら自分がやらねばならない。
国宝の竪琴を守るために。
それが王宮や
国をも守ることになる。
魔性の音にほだされて
正常な判断ができなくなった大臣
の決定に従っていては、
惑わされる人間が増えるだけだ。
そこまでの考えに至った時、
男は初めて笑った。
リオーが現れて以降、
数か月ぶりの笑顔だった。

呼吸を感じる
瞳を開くと、目の前には
ミルアの心配そうな顔があった。
「ミオラ?良かった。戻ってきたな」
ミルアがかすかにほほ笑む。
ベッドに横になったまま
ぼんやりとミルアの顔を見つめていると、
自分の全身がこわばっているのが分かった。
呼吸が浅い。息を元に戻さねば。
彼を呼びたいのに、初めは
のどが詰まったように
声が出なかった。
「ミルア……」
と小さく声をかけ、
酷く重い腕を差し伸べて、
彼の手に触れた。
ミルアがにっこりと笑って
しっかり握り返してくる。
彼の呼吸や鼓動を感じるように、
ゆっくりと息を吐き、吸う。
少しずつ身体の感覚が戻り
全身がゆるんできた。
ミルアの体温が
私の手のひらを通して
伝わってくるのがうれしかった。
(つづく)
あとがきにかえて
夢や夢の事後ワークを土台にした
物語を5回にわたって掲載してきました。
こちらは創作大賞2026にエントリー
するために書いているものです。
明日からはいったん物語の掲載をお休みして
通常投稿に戻る予定にしています。
⑥以降も引き続き掲載予定ですので、
続きを読みたい方、
興味を持って下さった方は
スキやコメントで
教えて下さるとうれしいです。
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『砂丘の竪琴』は
専用のマガジンにまとめる予定です▼
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興味のある方はマガジンを
フォローして下さると励みになります。
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魔王ミルアについての記事は
専用のマガジンでまとめています▼
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