創作大賞2026応募作品『砂丘の竪琴』夢と無意識が語りかける物語④黄金期|夢日記|夢分析|ユング心理学|無意識|深層心理|HSP|トラウマ|イメージワーク|AIアート|前世|小説|ラノベ|プロトタイプ神話|物語|ファンタジー
※本投稿は
創作大賞2026応募作品
『砂丘の竪琴』
夢と無意識が語りかける物語③
の続きです。
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前回の投稿はこちら▼
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ぜひ併せてお読みください。
癒しの竪琴
それ以降、リオーは王宮のみならず、
様々なところに呼ばれ、
砂丘の竪琴の演奏を請われるようになった。
大型の竪琴を
遠くまで運搬するのはかなり大変だったが、
国宝のため、これまで通りに
専属の運び役や警護役がつけられ、
大臣の許可が下りれば
遠方での演奏も可能になった。
宮廷楽師たちは安全面を考慮して、
宮廷外に出すべきではないと強く主張した。
しかし竪琴の演奏に
癒しの効果があると思われたため、
遠方の有力者からの求めにも応じ、
大臣は積極的に外出使用を許可していた。
リオーの演奏は
国王や宮廷の威光の反映でもある。
国民の不平不満を抑える働きも
期待できるからだ。
だが宮廷楽師で代々、
竪琴を受け持ってきた男だけは
そのあとも大臣の翻意を求めた。
国宝の楽器を無暗に
人目にさらすべきでは無い。
遠隔地に運ぶ間に
盗賊に狙われる危険性がある。
伝統と格式をもってあつかう至宝で、
安易に使う楽器ではないのだと。
各地の有力者からの求めが増えた段階で、
大臣は最終決定であることを伝え、
男は引き下がるしかなかった。
運び役も警護役も
リオーが真摯に指導していたため、
運搬への不平不満も
出ることが無くなっていた。
それどころか竪琴の運搬が
国民の喜びや癒しになっていることで、
運び役や警護役にも
仕事への誇りが生まれ始めていた。
表向きにはリオーの竪琴の演奏を
阻むものはいなくなっていた。

リオーは砂丘の竪琴の演奏を始める前に、
柔らかくかき抱くように構え、
少し頬を寄せる。
そしてお決まりの所作のように、
竪琴をゆったりと撫でさする。
リオー自身も気づかぬ間に
自然とそうするのが当たり前になった。
それだけで竪琴の音が大幅に
良くなる気がしたからだった。
竪琴は
ー準備はいいよ。
ーあんたのタイミングで
いつでも弾き始めるがいい。
ーどんな曲でも最高の音にしてやるよ。
とでも言うように、
本体に刻まれた文字のような
不思議な文様が細かく瞬き始める。
リオーが小さく息を吸って、
弦をつま弾き始めると、
観客は一斉に息を飲んだ。
竪琴から湧く
輝くオーラがリオーを包み、
それに呼応するように曲が流れ、
観客たちの心身に染み渡っていくのが
分かるからだった。
ゆるやかに優しく響く曲の時もあれば、
激しく乱れるようにかき鳴らす時もある。
そのたびにリオーの全身は
神聖な白蛇のように静かに揺れた。
リオーは、時に演奏に入り込みすぎて、
一瞬、意識が
飛びそうになることが何度もあった。
すると竪琴から湧きあがるエナジーが
守るように・導くように
彼女を包みこんでいく。
それで、リオーは我に返ることができた。
息を整え・丹田を意識して、
下半身や足裏の大地を踏みしめる。
演奏の数をこなすごとに
このバランスのとり方やペース配分も
分かるようになっていった。
リオーの演奏を聴いた者はよく
こう言うのだった。
音楽の女神が本当におわした。
その演奏を聴けて生涯の幸運だった、と。
リオーはあらゆるところで、
熱狂的な歓迎を
受けるようになっていった。

竪琴の声
砂丘の竪琴は、
リオーに奏でられるのが好きだった。
これまでの宮廷楽師たちとは違う。
ただの楽器ではなく・国宝でもなく
人間と同じような存在
として扱われるからだ。
美しい女であることも大きかった。
竪琴を作った職人も男で、
歴代の宮廷楽師も男だけだったから、
女性に触れられ、演奏されるというのが
ほぼ初めての経験だった。
男と身体つきや筋肉が違うので、
演奏法や息遣いは違うけれど。
ー無骨な男に触れられて、
良い音が出るわけねぇ。
竪琴はその差が
自分でも初めて分かった。
それと同時に
彼女の天賦の才も一瞬で読み取った。
ーこいつは逸材だ。
ー俺と組んだら世界がひれ伏す。
絶対、そういう奏者になれる。
ー全ての存在が俺たちを求めるようになる。
竪琴にはその未来像が見え、
恍惚となった。
ー俺がその高みまで連れてってやるよ。
半ば確信めいて、
そう思っていた。
彼女の指が弦に触れると、
全身が震えるように竪琴は悦んだ。
女の息遣いや
身体の動きに合わせるように、
無理なく音が響いていく。
その一体感が竪琴自身をも
陶然とさせた。
まるで心臓の音も呼吸の速さも、
リオーと重なっていくように感じて、
竪琴は不思議だった。
人間とは違い、
肉体が無いのはよく分かっているからだ。
それでも、
自分の感覚に嘘は無いと信じられる。
だから竪琴も一気に
リオーを信頼するようになっていった。
それは人間で言うならば、愛、
としか言い表せない感情であることに
竪琴は気が付いていなかった。
その日、演奏会が終わると、
リオーは誰に言うでもなく、
竪琴を抱いたまま、こうつぶやいた。
ー今日はとりわけ、良い音が出るのね。
竪琴は言葉を交わせるわけでは無かったが、
自分の気持ちが伝わっていることが分かり、
またうれしくなった。
それだけで幸せだった。
眠りの淵に沈む
まぶたを開けるのも物憂い。
身体が重くていうことをきかない。
このまま眠りたい
という気持ちにあらがうように
どうしても伝えたいことがあった。
ぼんやりと目の前に見えるのは
いつもの天井だ。
少しだけ首を傾けると、
ベッドで横たわる私の隣にミルアがいた。
私をじっと見つめている。
「……ミルア」
「戻れたか?身体はどうだ?」
その問いに答える気力は無かった。
それでも、どうしても伝えたい。
「……ミルアはホントに
リオーさんが好きだったのね」
「ああ。本当に好きだった」
私はうなづいたつもりだったが、
ミルアに伝わったかどうか分からない。
全身が麻痺したように動かなかった。
「このまま、少し、眠らせて…」
かすかにそう言った後、すぐに
眠りの淵に引きずり込まれた。
「おやすみ。俺の話を聞いてくれてありがとう」
その言葉はもう
ミオラには届いていなかった。
(つづく)
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『砂丘の竪琴』は
専用のマガジンにまとめる予定です▼
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魔王ミルアについての記事は
専用のマガジンでまとめています▼
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