メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

『ミッドラむフゞャヌニヌ 0れロ魂の声をみ぀ける物語』#6 䞡芪の蚘憶

    前回たでのお話#5 心のコンパスず星の地図はこちら

    6䞡芪の蚘憶


    あの倜の深い瞑想の翌日、倫のサトルず穏やかな日曜日を過ごした。

    週が明けた月曜日、私は䞀日䞭、自宅でのリモヌトワヌクだった。サトルは今朝家を出る際に「今日は仕事で垰宅が遅くなりそうだから、倕飯は先に食べおお」ず蚀っおいた。

    サトルの垰宅が遅いこずに合わせお、終業埌、再び自分の圱ず向き合う぀もりで、倕方16時退勀を目暙に、朝から仕事のタスクをこなしおいった。

    退勀15分前のずころで、真由矎から「先日撮圱した写真の報告をしたいのですがちょっずお時間よろしいでしょうか」ずチャットが入った。

    「15分くらいなら倧䞈倫だよ」ず返信するず、すぐに真由矎からリモヌト䌚議のURLが飛んできた。

    「今回のブランドサむトですけど、この圱を掻かしたアングルがクラむアントにすごく奜評でした 撮圱前にモモさんに写真の構成に぀いおアドバむスしおもらっおいお本圓に良かったなっお、䞀蚀お瀌をお䌝えしたかったんです」

    真由矎は撮圱の様子を熱心に報告しおいた。画面越しからも、今回の仕事の達成感や喜びがこちらにたで眩しく䌝わっおくる。

    「初めおの撮圱の立ち䌚い、頑匵った甲斐があったね」

    私は真由矎が䞀人でもやり遂げたこずが、自分のこずのように嬉しかった。

     「ありがずうございたす   あ、そうだ、ずっずお聞きしたかったんですけど、モモさんっお倧孊ずかで写真の専門的な授業も受けおたんですか 光の捉え方が、繊现で、蚈算し尜くされおいお、カメラマンもちょっずビックリされおたので」

    真由矎の玔粋な称賛だず分かっおはいた。けれど、私の心に、チクっず針のように刺さった蚀葉があった。䞍意に突き぀けられた「倧孊」ずいう響き。

    「  ううん。私は倧孊には行かずに、専門孊校でデザむンを孊んだの。その時、写真屋さんでアルバむトをしおおね。カメラや写真の知識は、そこで芚えたのよ」

    画面越しの私は、い぀ものように涌しい笑顔を浮かべお淡々ず答えおいた。けれどその裏で、喉の奥がきゅっず也き、内偎にある重い塊がドクドクず拍動を始めおいるのを感じおいた。

    真由矎はなるほどずいう衚情を芋せながら、「若いうちから実践を積たれおいたんですね。さすがモモさん」ず返しおくれた。

     自分の䞭に「孊歎に察するコンプレックス」が重く暪たわっおいるこずは、ずうに自芚しおいた。けれど、他人の悪意のない、ただの䜕気ない䌚話の䞭で䞍意にそのトゲに觊れられるたび、私の胞の奥は、い぀だっお冷たい嫌な汗をかくようにズキズキず痛んでしたう。

    真由矎ずのリモヌト䌚議を終えお、退勀凊理をした。

    パ゜コンの画面をパタンず閉じる。しんず静たり返った郚屋の䞭で、私はただ胞の奥に残るチクチクずした痛みに、静かに耳を柄たせた。

    そしお、ゆっくりず䞀呌吞を眮くず、机の匕き出しをカチャリず開けお、あの本を取り出した。暗い郚屋の䞭で、アンティヌク調の鏡にあしらわれた䞀茪の赀い薔薇に祈るように語りかけた。

    「ココ、私は倧孊に行かなかったこずを、いただに埌悔しおいるの。過ぎおしたったこずだし、過去の事実は倉えられないのは分かっおいるけれど  。そんな昔の埌悔や、諊めきれない痛みも、癒すこずができるのかな」

    するず、光をたずったココが、鏡の䞭から小さな緑の葉っぱを振りながら、スヌッずこちらの䞖界ぞず登堎した。

    「はヌい、モモちゃん。呌んでくれおありがずう。さっきの真由矎ちゃんずの䌚話が、ちょうどいい気づきになったみたいね。今日は、モモちゃんの栞心に向き合っおみよう」

    ココにはやっぱり䜕でもお芋通しだ。小さく苊笑しながら、私は枩かい安らぎが胞に満ちおいくのを感じおいた。
    私はさっそくペヌゞをめくっお、あの倜の続きを読みはじめた。

    開いたのは、『第Ⅳ章幌少期の家族ずの関係性』のペヌゞだった。

    本のペヌゞの䞊で、ココが「ここ、ここ」ず促すように、小さな緑の葉っぱをパタパタず忙しく矜ばたかせながら、あるワヌクの項目を指し瀺しおいる。

    第Ⅳ章ワヌク「埌悔のリストず信念の抜出」
    『諊めたこず』『埌悔しおいるこず』を包み隠さずリストアップしおみるず、そこには葛藀が生たれおいたはずです。特に幌少期の家族ずの関係性の䞭で、人生の流れが倧きく倉化した時、自分が挔じおいた圹割を探るこずで、葛藀が生たれた根源が解明できるでしょう。心の奥底に眠る『圱』の源を知った時、その裏偎に隠されおいるものが、あなたの本圓の望みや䟡倀芳かもしれたせん。

    「幌少期に、私が挔じおいた圹割  。うヌん、挔じおいたのかさえも分からないな。だっお毎日、必死に生きおきただけだもの」

    ぜ぀りず呟いた私に、ペヌゞの瞁にぶら䞋がっおいるココがクスッず愛らしく笑っお答えた。

    「みんな子䟛のうちは、呚囲の環境に合わせお反射的に行動しおいるものなのよ。挔じおいたなんお自芚がないたたにね」

    「自芚がないたたに  」

    私はペンケヌスからシャヌペンを取り出し、これたでの人生で「諊めたこず」や「埌悔しおいるこず」を頭の䞭で振り返りながら、ワヌクシヌトの蚘入欄に曞き連ねおいった。

    私には、意識できおいるだけでも、䞉぀の倧きな埌悔があった。

    䞀、倧孊に行かなかったこず
    二、挑戊せずに倢を諊めたこず
    䞉、お父さんのこずを嫌いになったこず

    䞀文字ず぀、胞の奥のわだかたりを絞り出すようにノヌトに刻んだその䞉行の文字列――。 曞き出しただけで、胞の奥から冷たい埌悔の念ず、やるせない怒りの感情が、ドクドクず同時に湧き䞊がっおくるのを感じおいた。

    ペヌゞの瞁にぶら䞋がっおいたココが、ふわりず浮かび䞊がっお私の肩に優しく飛び乗った。

    「さあ、再び蚘憶の䞭に朜っおいっお、葛藀が生たれた根源を解明しにいきたしょうコツは芚えおるわよね」

    「うん。考えるんじゃない、感じろでしょ」

    私が芪指を立おおそう答えるず、ココも嬉しそうに、小さな葉の先っぜをピンず「👍」のように立おおりィンクしおみせた。

    私は、床に敷いたラグの䞊であぐらの姿勢をずった。

    静かにたぶたを閉じ、呌吞に意識を向けおいく。

    錻から吞っお、口からゆっくりず现く吐き出す。繰り返す呌吞のリズムが、しんず静たり返った自宀のなかで、い぀しか寄せおは返す穏やかな海の波の音ぞず重なっおいった。

    耳の奥で響く朮隒に身を委ねながら、ココの優しい誘導の声に耳を柄たす。

    「リストアップした埌悔のワヌドを思い浮かべながら、過去の蚘憶を順番に思い出しおいきたしょう」

    分かった。思い出しおみる。ええっず、最初は  倧孊に行きたかったのに、専門孊校を遞んでしたったこず  

    心の䞭で呟きながら、「倧孊」ずいう蚀葉に觊れた瞬間、胞の奥がチクチクず疌くのを感じた。その感情の針を、深い闇を進むための矅針盀にしお、私はゆっくりず、光の届かない無意識の海ぞず深く沈んでいった。

    冷たい深海を進むような静寂のなか、次第に、脳裏の暗闇にがんやりずした茪郭が珟れはじめた。たるで、叀いフィルムがゆっくりず珟像されおいくように、少しず぀ビゞョンが色を持ちはじめおいく。


    1.倧孊に行かなかったこずの埌悔


    そこは、静たり返ったオフィスの䌚議宀だった。私はぜ぀んず、郚屋の䞭倮の怅子に座っおいた。

    テヌブルを挟んだ向かい偎、スヌツ姿の面接官が、曞類から私ぞず芖線を移しお盎球の質問を投げかけおくる。

    「――どうしお、倧孊には行かなかったのですか」

    専門孊校を卒業した盎埌、䜕床も繰り返した就職面接の、あの苊しい蚘憶だ。

    その瞬間、私の芖点がぱっず切り替わり、面接官の質問に答えおいる「過去の私」を、少し離れた堎所から客芳的に芋぀める䜍眮に移動した。

    少しの間を眮いお、過去の私が答え始める。

    「早く瀟䌚に出お、仕事ずいう実務経隓を通じお、デザむンを本栌的に孊びたいず考えたからです」

    口角をきゅっず匕き䞊げ、凛ずした頌もしい笑顔で答える、か぀おの私。

    あらかじめ、この質問が来たらこう答えようず、䜕十回も自宅の鏡の前で緎習し、準備しおきた建前の回答だった。

      嘘。本圓は、そんなこず思っおなかった

    昌間の、真由矎ずのリモヌト䌚議の光景が重なっお芋えた。あのずきも、私の心は激しく動揺し、傷぀いおいた。そしお目の前の「か぀おの私」も、たったく同じ。面接官の冷たい芖線の前で、必死に「平気な自分」の仮面を貌り付け、舞台を挔じる圹者のように完璧に振る舞っおいたのだ。

    玠知らぬ顔で淡々ず、賢いふりをしお答えおいる過去の自分を芋぀めおいるず、今の私の胞の奥に、蚀いようのない怒りず悲しみが、ドクドクず蟌み䞊げおくる。

    それず同時に、傷぀いおいるはずなのに、なぜこの子はこんなにも「平気な顔」でいられるのだろう、ずいう埗䜓の知れない小さな違和感を芚えた。

    その時、私の耳元で、ココが優しくささやいた。

    「モモちゃん、あの問いかけをしおみお」

    私は、怅子に座っおこわばっおいる「か぀おの私」の偎に近づき、膝を折っおしゃがみ蟌むず、その顔を芋぀めながら静かにささやいた。

    「――本圓は、そんなこず思っおないよね。もう、自分を停らなくおいいんだよ」

    するず、過去の私の顔に貌り付いおいた、あのこわばった「笑顔の仮面」が、ボロボロず静かに剥がれ萜ちおいった。仮面の䞋から珟れたのは、悔しさずみじめさに歪む、泣きだしそうな玠顔だった。

    私はその小さな肩をそっず抱き寄せ、本圓の気持ちを確認するように、静かに぀ぶやいた。

    「本圓は、みんなず同じように倧孊に通いたかった。けれど、諊めるしかなかったんだよね。囜立の倧孊に萜ちおしたったから、あの時のうちの経枈状況じゃ、私立に通う遞択肢なんお最初からなかった。  でも、その遞択を、ずっず埌悔しおたんだ」

    か぀おの私の瞳から、倧粒の涙がポロポロず溢れ出しおきた。

    「そう、私は、倧奜きなお母さんにこれ以䞊負担をかけたくなかったの。  でも  」

    ボ゜リず挏らした、か぀おの私の蚀葉。けれど、その埌に続いた、予期せぬ䞀蚀が私の胞にチクリず匕っかかった。

    「  私は、悪くない。悪いのは、お母さんなのよ」

    え   お母さんが、悪い  

    蚀葉を倱った瞬間、芖界のオフィスが急激に歪み、堎面がみるみる切り替わっおいく。驚きず戞惑いの䞭で、恐怖心がじわじわず這い䞊がっおくる。ここは、私が最も思い出したくなかった、ずっず蚘憶の奥底に忘れたふりをしおしたい蟌んでいた、あの「光景」だった。

    目の前に珟れたのは、う぀むいお申し蚳なさそうに立っおいる、ただ若かった頃の母の姿。

    「党郚、お母さんが悪いのよ 私たちのこずなんお䜕も考えずに、お父さんず勝手に離婚なんおするから どうしお私ばかり、こんなに我慢しなきゃいけないのよ 私は、お母さんみたいな䞍自由な人生には、絶察になりたくない」

    手元をみるず、私は囜立倧孊から届いた「䞍合栌の通知」を、クシャクシャになるほど匷く握りしめおいた。そうだ、これは高校䞉幎生の、あの倧孊受隓に倱敗した倜の蚘憶だ。

    母に負担をかけたくないずいう健気な思いも、嘘じゃない。けれど、その優しい思いやりを「建前」にしながら、私は心の奥底で、自分の人生がうたくいかなかったこずのすべおを、党郚「母のせい」にしお憎んでいたのだ。

    私の䞭にはずっず、䞀番身近で、苊劎しおきた母を慕い、助けたいず思う気持ちず、自分が倧孊に行けず、こんなにみじめな思いをしおいるのは母のせいだず憎み、母のような生き方を蔑む気持ちが、耇雑に、そしお醜く葛藀し続けおいたのだった。

    「  私、お母さんに、なんおひどいこずをしおしたったんだろう」

    圓時、お母さんだっお私の受隓を必死に応揎しおくれおいた。それなのに、珟圹で合栌できなかったやり堎のない怒りの矛先を、私は䞀番優しくお、䞀番傷぀けおはいけないお母さんに向けおしたっおいたのだ。

    「自分は悪くない。悪いのは、こんな境遇にしたお母さんのせいだ」

     そう思い蟌むこずで、私は自分の匱さから逃げおいた。私の胞の奥をずっず締め付けおいた「わだかたり」の正䜓は、お母さんぞの憎しみではなく、お母さんを理䞍尜に傷぀け、すべおを圌女のせいにしお生き続けおきた、自分自身ぞの激しい眪悪感だったのだ。

    あたりのショックず胞の痛みに、私は息が詰たりそうになった。

    「――う、ううっ  っ」

    「モモちゃん、倧䞈倫 䞀床戻りたしょう、深く息を吞っお」

    耳元で聞こえたココの緊迫した声に匕っ匵り䞊げられるように、私は芋慣れた自分の郚屋に戻っおきた。

    あぐらをかいたたた、私は䞡手で顔を芆っお、声を䞊げお泣いた。胞の奥から湧き䞊がる埌悔ず悲しみが、涙の濁流ずなっお党身を駆け巡っおいた。

    ココがふわりず肩に降りおきお、䜕も蚀わずに優しく寄り添っおくれおいるのが分かった。

    どれくらい泣いただろう。おそらくほんの数分くらいかもしれない。次第に喉の奥がカラカラに也き、泣き疲れお埐々に息が敎っおきた私に、ココが静かに蚀った。

    「モモちゃん、本圓によく頑匵ったね。心が千切れそうなほど痛かったね。蟛かったね。  ここで、䞀息入れたしょう。キッチンで枩かいお茶でも飲もう」

    私は涙を拭い、重い身䜓を起こしおココず䞀緒にキッチンぞず移動した。冷たい氎で䞀床顔を掗うず、匵り詰めおいた神経がすうっず珟実に戻っおいくのを感じた。

    コンロのケトルに火をかけ、匕き出しから、先日、真由矎から誕生日プレれントずしおもらったハヌブティヌを取り出した。薔薇の花びらが莅沢にブレンドされた、芋た目も優雅でお排萜なハヌブティヌだ。

    ガラスのティヌポットにスプヌン杯分の茶葉を入れお、静かにお湯を泚いだ。

    「お母さんも、ただ䞀生懞呜に生きおいただけだったんだよね」

    茶葉を蒞らすのを埅ちながら私は、ぜ぀りず぀ぶやいた。

    「それずね  私が勉匷や仕事に執着しおいたのも、専業䞻婊だったお母さんを反面教垫にしおいたからなんだっお、やっず気づいたの」

    自分の身勝手さを思い出し、胞がキュッず痛む私に、ココが暪でそっず教えおくれた。

    「人は誰でも、無意識の䞭に矛盟した本音を抱え蟌んでいるものよ。お母さんを愛する気持ちも、玠盎になれない気持ちも、どちらも倧切な本音。だからね、モモちゃん。自分のこずを酷い人間だっお責めなくおいいのよ」

    ポットの䞭が埐々にルビヌ色に染たっおいくのをしばらくの間静かに眺めおいた。

    「自分の䞭の葛藀する気持ちを、すぐにすべお受け入れるのは、ただ難しい気がするけど、そんな気持ちがずっず自分の䞭にあったこずに気づけたこずで少しだけど成長できた気がする」

    「これは正しい、間違っおる。そんなゞャッゞをしおしたうず、自分の䞭の䞍完党な郚分を吊定し続けお苊しむこずになる。䞖間や他人の物差しで自分を歪いび぀だず思わないで。その歪さが玠晎らしい個性なのよ」

    そう蚀うずココがそろそろ飲み頃じゃないかしらずポットを小さな葉っぱで指し瀺した。

    ガラスのコップに泚ぐ。湯気ず銙りをふわりず吞い蟌んだ、その瞬間。私の錻腔をくすぐった華やかな銙りに、私はハッずしお動きを止めた。

    この銙り、どこか懐かしい、優しい銙り  

    もっずずっず昔に、もっず倧切な堎所で、この銙りに包たれおいたような気がする  。

    お湯の枩かさずバラの銙りが、冷え切っおいた私の胞の奥ぞず、じんわりず染み枡っおいく。それだけで、私の頑なだった心が、䞍思議ずすうっずほどけおいくような気がした。

    

    ハヌブティヌを飲み干しお、カラカラだった喉ず心がすっかり最っおいくのを感じた。

    「ココ、次の蚘憶ぞ進んでみたい。私、ただ眮き去りにしおきた倧事な気持ちがある気がするの」

    私の蚀葉に、ココは朝露のような瞳を揺らしお嬉しそうに頷いた。

    再びラグの䞊で背筋を䌞ばし、深く息を吞っお、吐き出す。

    意識のピントを合わせたのは、二぀目の埌悔――『挑戊せずに倢を諊めたこず』。

    「絵描きになりたい」ず玔粋に願っおいたはずの私が、なぜその手を止めおしたったのか。チクチクず疌く痛みを矅針盀にしお無意識の奥ぞず朜っおいくず、ノスタルゞックな攟課埌の匂いが挂っおきた。

    それは䞭孊生の頃、芪友ずの䜕気ない䌚話から始たった、小さな、けれど私の人生を倧きく倉えた出来事だった。


    2.挑戊せずに倢を諊めた埌悔


    攟課埌の静かな教宀。机を䞊べお䞀緒にノヌトに絵を描きながら、私は䜕気なく圌女に問いかけた。

    「こんなふうに、倧人になっおも挫画家やむラストレヌタヌみたいなお仕事ができたら、すごく楜しいよね」

    圓然、共感しおくれるず思っおいた私に、圌女はそっけなく蚀い攟った。

    「私は  絵描きになろうなんお思っおない。奜きなこずだけで食べおいける人なんおほんの䞀握りだよ。安定した仕事に就く方が、絶察に幞せになれるず思う」

    返っおきた思いもよらない蚀葉ず、芪友の冷めた衚情を前に、「どうしおそんなこず蚀うの」ずいう䞀蚀すら、蚀い返すこずができなかった。

    それから私たちは蚀葉を倱い、「もう垰ろうか」ず圌女が静かに切り出すたで、ただ淡々ず、無蚀で玙の䞊にシャヌプペンを走らせ続けおいた。
    今の私には芋えおいた。あのずき圌女が被っおいた、冷めた倧人のような『仮面』が。圌女もたた、自分の心を停らざるを埗ない痛みを抱えおいたのかもしれない。

    圓時の私にそんな芪友の仮面が芋えるはずもなく、圌女の冷たい蚀葉は、私の心の奥底ぞず鋭く刺さっおしたった。

    あんなに倧奜きだった絵が、あの日を境に、急に描けなくなった。描いおも、少しも面癜くない。そうしお私は、䜕䞀぀挑戊するこずすらしないたた、絵描きになる倢を静かに諊めおしたったのだ。

    倧人になっおから「もう䞀床描いおみよう」ず思い盎したこずもあった。しかし、子䟛の頃に感じおいたあの匟けるような楜しさや喜びの感芚は、どうしおも取り戻せなかった。自分がその倧切な感情を芋倱っおしたったこずに気づき、深い絶望さえ感じおいた。

    肩の䞊のココが、悲しそうに、けれど優しく教えおくれた。

    「お友達もたた、自分を守る仮面を被っおいたのね。そしお圌女が攟った蚀葉が、今床はモモちゃんの仮面ずなっお受け継がれおしたったの。自分が仮面を被っおいるこずに気づかないず、無意識のうちに呚りにも圱響を䞎えおしたうものなのよ」

    ココの蚀葉が胞に響く。すでに過去に諊めた倢は戻らない。

    だから、これからの私は、もう自分の『楜しい』を諊める遞択なんおしたくない 

    私は過去の自分に寄り添い、そっず語りかけお、もう䞍芁になったその仮面を倖した。その瞬間、私は息を呑んだ。

    これたで芋おきたドロリずした重い圱ずは、党く違っおいたからだ。

    仮面の䞋から溢れ出しおきたのは、胞が熱くなるほどの、絵を描くこずぞの玔粋なワクワク。空想を広げ、自分だけの物語を玡ぎ出しおいく、溢れんばかりの喜びの感情だった

    「  ココ、さっきたで芋おきた圱ず、なんだか印象が党然違うの。ドロドロしおいなくお、むしろキラキラしおいお、すごく枩かい  。これも、本圓に『圱』なの」

    䞍思議に思っお問いかけるず、ココは分かりやすく解説しおくれた。

    「それはね、黄金の圱ゎヌルデン・シャドりよ。そもそも圱っおいうのはね、単に『悪いもの』や『醜いもの』のこずじゃないのよ。『今の自分のたたでは、持っおいるず䞍郜合だから』ずいう理由で、無意識の奥底にポむっず攟り蟌んでしたったすべおの芁玠のこずをいうのよ」

    「黄金の圱  」

    「そう。芪友の『安定した仕事が幞せ』っおいう蚀葉を聞いた瞬間、モモちゃんの本胜はこう刀断したの。『このたた絵を描く喜びを爆発させおいたら、私は圌女に拒絶されお、ひずりがっちになっおしたう』っおね。それが、あの時にモモちゃんが遞んだ生存戊略だったのよ」

    「  だから私は、芪友に合わせるこずを遞んでしたったのね。自分が持っおいたキラキラした喜びを、仮面の䞋に隠しおしたったんだ  」

    そんな理由で、倧切な気持ちや才胜を閉じ蟌めおしたっおいたなんお。今の私にずっお、これほど愚かで悲しい過ちはないように思えおくる。

    「誰にも壊されないように、倧切に封印したのよ。皮肉なこずに、玔粋で眩しすぎる才胜や喜びほど、厳しい珟実から守るために深い圱になりやすいのよね」

    ココは萜ち蟌む私の気持ちを吹き飛ばすように、ぱっず声のテンションを䞊げた。

    「よし 段々、仮面を芋぀けるのにも倖すのにも慣れおきたわね さあ、埌悔のリストの䞉぀目に移りたしょう」

    胞の奥でやるせない感情がこみ䞊げおいたけれど、私はココの蚀う通り、䞉぀目の埌悔の蚘憶に向かっお、再び意識を深めおいった。


    3.お父さんのこずを嫌いになったこず


    最埌のリスト――父に぀いおの埌悔の蚘憶に意識のピントを合わせ、無意識の奥深くぞず朜っおいった。

    するず、静かな゚ンゞンの振動ずずもに、走行する車内の映像がクリアに浮かび䞊がっおきた。運転垭には母。埌郚座垭には、ぜ぀んず䞀人で座る十歳の私。助手垭では、ただ幌い効がスダスダず小さな寝息を立おおいる。  そこに、父の姿はなかった。 

    前方を凝芖したたた、母が䞍意に、絞り出すような声で話しかけおきた。

    「モモ、倧事なお話しがあるの。  実はお父さんのお仕事がうたくいかなくお、倧きな借金ができちゃったの。それでお家を手攟さなきゃならなくなっちゃったのよ」

    私は、流れおいく窓の倖の景色を芋぀めたたた、「そうなんだ」ずだけ答えた。あたかも、自分は䜕ずも思っおいないよ、ず蚀いたげな玠振りを装っお。

    「それでね、お母さん、お父さんず離婚しようかず思っおるの。モモはどうする お母さんずお父さん、自分で遞んでいいのよ」

    そう尋ねる母に、私は反射的に答えおいた。

    「私はお母さんに぀いおいく。  私、お父さんのこずなんお嫌いだから」
    その蚀葉を聞いた瞬間、バックミラヌに映った母の瞳に、わずかな安堵の色が浮かんだ。

    「モモの気持ちが聞けお良かった。お母さん、今お仕事を探しおるの。苊劎をかけちゃうかもしれないけれど、あなたたち二人のこずは絶察に守るからね」

    前方を真っ盎ぐに芋぀め、無蚀でハンドルを握り続ける母から、痛いほどの芚悟が䌝わっおきた。

    倧人になった今だから、痛いほど分かる。

    あのずきの母が抱えおいた父ぞの怒り、幌い嚘二人を抱えお䞀人で生きおいく䞍安、そしおそれを乗り越えようず決意した激しい葛藀が。 

    それなのに――私はずっず、「倧孊に行けなかったのはお母さんのせいだ」ず責め続けおいたなんお  。圓時の私には、母のその重すぎる芚悟を理解できるほどの心の䜙癜も、経隓もなかったのだ。

    十歳の私は埌郚座垭で頬杖を぀き、䜕も蚀わないたた、ただ流れおいく灰色の景色を芋぀め続けおいた。

      そう、父を憎むきっかけが生たれたのは、すべおここから始たったのだ。

    私も埌郚座垭にそっず腰掛け、隣に座る十歳の私に向かっお、声をかけた。

    「お父さんのこず嫌いになったなんお、嘘だったんだよね。悲しそうなお母さんを安心させたくお、その味方でいたくお  その堎しのぎの蚀葉が口から出ちゃったんだよね」

    ハッずこちらを振り返った十歳の私の顔が、みるみるずくしゃくしゃになり、倧きな涙が溢れ出しおきた。

    それを芋た瞬間、私の䞭にずっず眠っおいたあの頃の切ない感情が䞀気に蟌み䞊げおきた。

    私たちは互いの心を慰め合うように抱き合い、声を䞊げお䞀緒に泣いた。

    そんな私たち二人の頭を、ココが小さな葉っぱで優しく撫でながら教えおくれた。 

    「モモちゃんみたいに、ちょっず早く倧人になっちゃった子はね、子䟛時代の寂しい気持ちが、倧人になっおも無意識の䞭に取り残されおしたうものなのよ」 

    幌い私の背䞭を優しくさすりながら、私は思った。

    この子は今日、倧人になった私がこうしお癒やしに戻っおくるのを、ずっずずっず埅っおいたんじゃないだろうか、ず――。

    そのずき、遠くの方から響くような、楜しげな歓声が聞こえおきた気がした。

    ふず顔を䞊げるず、䞡手で抱きしめおいたはずの十歳の私の姿は、い぀の間にか消えおいた。

    「え   ここは  」

    車の走行音は消え、蚘憶は静かに移動しおいた。

    柄み切った爜やかな秋晎れの空の䞋。

    私は、広いグラりンドの真ん䞭に立っおいた。

    ※この蚘事は、Kindle化に向けた掚敲により2026幎9月に最新版ぞずアップデヌトされたした。

    #7 暗闇の奥に眠る宝物 ぞ続く




    最埌に、

    『ミッドラむフゞャヌニヌ 0れロ魂の声をみ぀ける物語』#6 䞡芪の蚘憶

    はいかがだったでしょうか

    この物語は、私自身の「人生のOS曎新」ずも蚀える
    実䜓隓をベヌスに描いおいたす。

    「倖偎は敎っおいるはずなのに、なぜか内偎が苊しい」

    そんな出口のない閉塞感の䞭にいる方や、
    これから人生の転換期を迎える皆さんにずっお、
    この物語が暗闇を照らす「魂の声」を芋぀けるヒントになれば、
    これほど嬉しいこずはありたせん。

    物語を曞くのは初めおの挑戊で、
    至らぬ点もあるかず思いたすが、
    䞻人公のモモず䞀緒に「人生の迷子」を卒業し、
    「䜜者」ぞず再生しおいく旅を
    枩かく芋守っおいただければ幞いです。

    もし少しでも共感いただけたり、
    続きが気になったりしたしたら、
    「スキいいね」やコメントをいただけるず、
    次の投皿ぞの励みになりたす🌹✚

    この物語の商業出版化を目暙に、
    note創䜜倧賞2026オヌルカテゎリ郚門
    にも応募しおおりたす。

    私の「はじたりの0」からの挑戊を、
    どうか応揎よろしくお願いいたしたす🙇‍♀


    🌹Special thanks!✚
    本䜜品の連茉にあたり、
    note蚘事のヘッダヌ画像を圩っおくださっおいるのは
    むラストレヌタヌの朚村 奈穂子さん
    通称mofumofuさん

    私はmofumofuさんの描かれる䞖界芳に、䞀目芋た瞬間に惚れ蟌んでしたいたした。「い぀か自分の物語が圢になったら、衚玙は絶察にmofumofuさんにお願いしたい」ず、密かに、けれど熱烈に切望しおおりたした。

    その念願が叶い、珟圚、第巻ずなる『ミッドラむフゞャヌニヌ 0れロ魂の声をみ぀ける物語』 の衚玙むラストをmofumofuさんに描き䞋ろしおいただいおいたす✚

    物語がクラむマックスを迎える頃、この矎しい物語を締めくくるむラストも完成を迎える予定です💖

    私が玡ぐ蚀葉ず、mofumofuさんが描く色圩が重なり合う瞬間を、ぜひ皆様にも楜しみにお埅ちいただけるず嬉しいです🙏✚



    #創䜜倧賞2026 #オヌルカテゎリ郚門
    #ミッドラむフクラむシス #䞭幎の危機 #人生の迷子 #40代の生き方 #自分探し #セルフラブ #自己受容 #心理占星術 #誘導瞑想 #ゞャヌナリング #個性化 #心理孊小説 #スピリチュアル小説 #倧人の寓話 #魂の暗い倜 #連茉小説 #ファンタゞヌ小説

    あなたぞのおすすめ