
嫌いだった故郷。だけど、私を待っていた場所があった
心が落ち着かない夜に、よく一人で行った場所。
港が見れる高台。
見下ろすと、
暗い海の向こうに、やわらかな灯りが並んでいた。
昔は、地元が嫌いだった。
だけど、
今でも、あの港を思い出す。
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私が育ったのは、人口10万人ほどの街だった。
ものすごく田舎、というわけではない。
だからといって、なんでも揃っているわけでもない。
遊びに行くところといえば、いつも カラオケ。
テレビ東京も映らなかった。
今は、実家もそこにはない。
故郷へ行くことも、ほとんどなくなった。
昔は、地元が嫌いだった。
寒いし、天気は悪い。
どこか閉鎖的な感じもあった。
早くここから出たい。
そんなふうに思っていた。
だけど今でも、ときどき思い出す場所がある。
高台から見下ろす、夜の港。
よく、」一人で行った。
心が落ち着かないとき。
寂しいとき。
つらいとき。
なぜだか、そこへ行きたくなった。
いつも、誰もいない。
肌寒い風が吹く。
潮の香りを感じる。
その中で、ぼんやりと港を眺めていた。
暗い海の向こうには、
やわらかな港の灯りが浮かんでいた。
その場所は、励ましてくれるわけでもない。
ただ、
景色はいつも変わらずそこにあった。
心がぐちゃぐちゃな日も、
どうしたらいいのかわからない日も。
あの灯りを見ると、少しだけ落ち着いた。
何度もそこへ行った。
何度も一人で港を眺めていた。
少しだけ落ち着いて、また日常へ戻っていく。
今はもう、簡単には行くことはできない。
暮らしている場所も遠くなった。
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ふと、思った。
今の私にも、
あの場所のようなところがあるのだろうか。
何も話さなくていい。
元気にならなくてもいい。
ただ、変わらず迎えてくれる場所。
考えてみると、一つだけあった。
毎朝のように歩いている、
木々が立ち並ぶあの場所。
朝早く歩いていると、
木々の間から光が差し込んでくる。
風が吹けば、葉が揺れる。
鳥の声が聞こえる。
私が元気な日も、
落ち込んでいる日も、
何かに迷っている日も。
変わらず、そこに立っている。
ここには、潮の香りはない。
だけど、あたたかな日差しで迎え入れてくれる。
木々や風を近くに感じることができる。
ここにも、
私をほどいてくれるものがあった。
そう思うと、少しだけ心強くなる。
また、あの高台に立ちたい。
肌寒い風に吹かれながら、
やわらかな港の灯りを眺めたい。
そしてもう一度、
潮の香りを嗅ぎたい。
嫌いだったはずの故郷。
あの景色は、もう見ることはないのかもしれない。
それでもあの場所は、
今も私の中に残っている。
あなたには、
何も言わず、変わらず迎えてくれる場所がありますか。
私も写真を撮るとき、何気ない光や、風に揺れる草花に心を留めています。
写真を通して、そんなふうに心が少し休まる景色を届けられたらと思っています。
日常のなかで、ほんの少し立ち止まりたくなったときに。
よかったら、私のKindle写真集ものぞいてみてください。
