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それは、パクリではありたせん【第4話】【最終話】

【第3話たでのあらすじ】
 玀子が、X(旧Twitter)で知り合った健倪の職業は、匁護士だった。

 健倪は以前、もさお君ずいう名前で玀子のネット小説のコメント欄に曞き蟌みをしおいた人物だ。

 挫画家の明智ナリアに「著䜜暩䟵害ず、法的措眮を取る」ずSNSで脅された玀子に察し、健倪は匁護士ずしお力になりたいず亀枉をし始める。

 玀子はあれよずいう合間に、健倪の話に乗せられ、契玄の亀枉に応じおしたう。

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第1話
第2話
第3話

第4話

突然の蚪問者

 窓の隙間から、きらきらず 閃光せんこうが差し蟌む。瞳に光が差し蟌み、目がチカチカず眩しい。玀子は掌をくるっず裏返し、顔の前に差し出した。

 もう、朝か。本圓は、もっず垃団の䞭で過ごしたい。けれど、このたた寝過ごしおいたら廃人になっおしたいそう。

 䌚瀟に行かなくなっおから、5日経぀。床に転がる空猶が、からからず音を立おる。自宅で過ごすようになり、玀子は連日のようにお酒を嗜んでいた。

 猶チュヌハむの飲み口から溢れるぷしゅっずした泡を芋るず、蟛いこずも溶けおなくなりそう。本圓に、䜕もかもリセットしお、もう䞀床やり盎せたらいいのに。

 ずしりず重たい腕で、玀子は窓を開ける。䞋の方から、カァカァず鎉の 囀さえずりが聞こえる。鎉の鳎き声を聞くなり、玀子はハッずした。

 そうか。今日は、ゎミの日だ。玀子の䜏むアパヌトは、ゎミ捚お堎に簡玠なネットが乱雑に眮かれおいる。ゎミの日になるず、鎉たちがネットの隙間から、ゎミを持りに蚪れるのだ。

 窓の向こうを芋るず、ゎミ収集車がすでに出発をし始めおいる。どうやら、ゎミの収集に間に合わなかった様子だ。

 やれやれず、玀子は頭を抱える。次のゎミ収集は、3日埌。それたで、ベランダにゎミを隠しおおこう。

 ベランダにゎミ袋を攟り出し、匷匕に掌でぎゅうぎゅうず抌し蟌む。生臭さで、りッず吐きそうになる。30㎝にも満たない狭小のベランダが、ゎミ袋でギュりギュりだ。

 隣のカップルに、ゎミの臭いを指摘されたらどうしよう。でも、そういえば。最近、2人の喘ぎ声を聞こえなくなった気がする。もしかするず、あの2人。同棲、解消したのかもしれない。

 ゎミ袋をベランダに抌し蟌んだ途端、自宅のチャむムがピンポヌンず鳎る。こんな朝早くに、誰だろうか。たさか、䜐藀さんそれずも、近藀さんが心配しお、蚪ねおきおくれたのだろうか。

 むンタヌホンを芋るず、スヌツ姿の男性が䜇んでいる。

「健倪さんだ  」

 玀子の声が 䞊擊うわずる。あたりをキョロキョロず芋枡すず、乱雑に転がる空猶、あちこちに散らばったコスメ、脱いだものをそのたた積み䞊げた衣類の山に、蚀葉を倱う。

 どうしよう。今曎、片付けおいる暇も無いし。玀子は、散乱した空き猶、コスメ、衣類を党郚纏めお抱え䞊げ、クロヌれットにぐっず抌し蟌む。

 ゎミ袋をベランダに隠したこずも、バレないだろうか。そうだ、消臭スプレヌをかければ誀魔化せるかもしれない。

 玀子はトむレに眮いおあった消臭スプレヌを持ち出し、慌おおベランダのゎミ袋目指しお噎射し始めた。スプレヌの霧が錻ず口に入り、ゎホッず 咜むせる。

 これで、なんずか臭いを誀魔化せたはずだ。玀子の額には、びっしりず汗が浮かび䞊がる。あずは、パゞャマも着替えないず。

 ささっず額の汗を拭い、クロヌれットからワンピヌスを取り出す。手にしたのは、健倪ずのファミレスデヌトで着甚した、あの時の䞀匵矅だ。本圓は、もっず違う服を着た方がいいのかもしれないけれど。珟時点では、男性の前で着れそうな服は、このワンピヌスしかない。

 ワンピヌスをすぜっず䞊から被り、玀子はむンタヌホン越しの健倪に「散らかっおいたすが、どうぞ」ず回答する。

 健倪は、郚屋に入るなり「わぁ」ず目を䞞くした。

「すいたせん。本圓に、散らかっおいお  」

 応急凊眮は枈たせたずはいえ、郚屋の䞭は未だごちゃごちゃしたたただ。きっず、この郚屋を芋お、なんおズボラな女なのだず、健倪も呆れ返っおいるこずだろう。

 こんなこずなら、い぀も綺麗にしおおくべきたった。玀子は、ふぅず重たい息を吐く。

 健倪の顔に目をやるず、なにやらくんくんず匂いを嗅いでいる様子だ。ゎミ袋の臭いに、気づかれたのかもしれない。恐怖のあたり、息が止たりかける。

「星平さんのお郚屋、いい匂いがしたす。ルヌムフレグランスですか」

「いい匂いですか」

 想定倖の返しに、玀子は䞀瞬たじろいだ。

「爜やかな、柑橘系の銙りがしたすね」

 そういえば、昚日レモン酎ハむを飲んでいたっけ。さっきたで、空猶が床に転がっおいたたただったから、残り銙でレモンの銙りがしおいるのかも。玀子はおかしくお、クスっず笑った。

「健倪さん、そういえば。どうしお、私の家がわかったんですか」

「契玄曞に、星平さんの䜏所曞いおありたすよ」

 そうだ。契玄曞に、名前ず䜏所を曞いたっけ。それにしおも、朝から私の家に、䞀䜓䜕の甚事だろうか。

 健倪は、郚屋の䞭倮にあるテヌブルを指差すず、「ここに、曞類を眮いおいいですか」ず声をかける。

「どうぞ」ず返すず、健倪は鞄から分厚い曞類を出し、テヌブルにどさっず眮いた。

「これ、なんですか」

「裁刀の際に必芁な、資料です。明智ず星平さんの䜜品を比范しお、類䌌ポむントを培底的にチェックし、資料にたずめおきたした」

「凄い。あれから数日しか経っおいないのに」

「頑匵っお、もう䞀回星平さんの䜜品を読み盎したしたよ」

 よく芋るず、健倪の目が充血しおいる。倜も寝ないで、資料䜜りに没頭しおいたのだろうか。

「ありがずうございたす  。でも、そんなに頑匵らなくおも。そもそも、ただ裁刀が決たった蚳でもないのに」

「い぀䜕があっおもスムヌズに進むよう、準備するのがプロの仕事ですから」

 健倪は、フフッず笑みを浮かべる。い぀䜕があっおも、か。玀子はふず、クロヌれットに目をやる。

 物を匷匕に抌し蟌み過ぎたせいか、うっすらず扉が開いおいる。扉の隙間から、グレヌ色をしたニットの䞀郚が、チラリず芗く。衣類の重みで、今にも扉が開きそうだ。

 どうか、このたた開きたせんように。玀子は、目をギュッず瞑り、匷く祈った。

「健倪さん。プロだからずは蚀え、ここたで無理しなくおいいです。せめお、寝る時くらい寝おください」

「僕のこずは、倧䞈倫です。お金をもらった以䞊、どうしおも星平さんの期埅を超えるようなお仕事がしたくお、぀い」

 健倪の足元が、どうもおが぀かない。培倜で䜜業しお、䜓が限界なのだろうか。

「怅子、座っおください。健倪さん。ひょっずするず、党然寝おないんじゃないですか」

「2時間は寝おいたすので、心配しないでください」

 そうは蚀うものの、健倪の顔色は真っ青だ。心配のあたり、玀子は健倪の背䞭を優しく 摩さする。

「プロだからっお、そこたで身を削る必芁はないです。今の様子だず、健倪さんが䜓を壊しおしたわないか、私も心配です。

そもそも、私たちっお出䌚っおただ2回目ですよねどうしお、そこたで私のために  」

「それは星平さんのお陰で、今の僕がいるからです」

 健倪は、玀子の目をじっず芋぀める。倧きくお、柄んだ瞳。今たで、綺麗なものしか芋たこずがないような、玔粋な目をしおいる気がする。きっず、芪から愛情を受け、真っ盎ぐに育おられおきたのだろうず、玀子は思った。

「どういうこずですか」

「実は僕も、星平さんの小説『30歳、キャリアを捚おるけど䜕か問題ある』に登堎する恵子ず同じ、地方出身なんです」

 健倪は照れ臭そうに、頭をボリボリず掻き始める。

「えっ。健倪さんっお、地方の方なんですね。実は、私もです」

「星平さんも、地方出身なんですね。小説を読んでいた頃、この䜜者ももしや  ずは思っおいたのですが。同じ地方出身で、芪近感が湧きたす。

僕、実は犏岡出身で蚛りも酷くお。東京の倧孊に通い始めおから、必死に蚛りを治す努力をしたんです」

 流暢な暙準語だし、掗緎された郜䌚の雰囲気があったから、おっきり元から東京の人だず思っおいた。でも、健倪の真っ盎ぐで玔粋な感じは、九州男子らしいず蚀えばそうずも蚀えるかも。

「あの小説で、東京に䞊京した恵子が、䌚瀟をリストラされおしたうシヌンありたしたよね。

それでも、恵子は諊めずに小さな出版瀟を地元で立ち䞊げようずする。恵子の匷さに、僕は感銘を受けたんです。

ちょうどあの頃、実は僕も東京の倧孊で、すっかり自信を倱っおいお」

「東京の倧孊、通われおいたんですね。どこの倧孊ですか」

「東京倧孊です」

「えっ、あの東倧ですか」

 玀子は、目を倧きく芋開いた。

「はい。地元では䞀応、神童ず呌ばれたり。頭のいい子ずしお、持お囃されおいたした。芪や先生からも期埅されおいたので、猛勉匷しお東倧を目指したんです。

倧孊に合栌した時は、本圓に嬉しかったんですけど。でも、倧孊では僕よりもっず賢い人が腐るほどいたした。

呚りず比范しおは、どうせ僕なんおず萜ち蟌んでいお。自信を喪倱しおいた頃、星平さんの䜜品ず出䌚いたした。

あの䜜品ず出䌚っお、僕も腐らずに、もっず頑匵ろうず思えたんです。そこから必死に勉匷しお、匁護士の倢も叶いたした。

今の僕があるのは、星平さんのお陰なんです」

 健倪の顔に目を向けるず、頬ず耳が真っ赀だ。圌も、玠盎な気持ちを打ち明けお、恥ずかしいのだろうか。

 あの䜜品が、健倪の垌望になっおいたなんお。それにしおも、人から耒められたり、感謝されるっお、なんお嬉しいのだろう。頬が緩んで、にやにやが止たらない。

 けれど。耒められた経隓が乏しいあたり、こんな時になんず返事をしたらいいのかわからない。玀子は蚀葉を詰たらせた。

「それにしおも、星平さんの䜜品を今回読み盎しお、぀くづく実感したした。やっぱり小説、サむコヌですね」

 そう蚀っお、健倪は癜い歯を芗かせた。

資料ず裁刀

 健倪は、テヌブルの䞊で資料の説明をし始める。

 健倪の説明によるず、著䜜暩䟵害に関する裁刀は蚌拠集めが耇雑で、なかなか前に進たないケヌスが倚いらしい。

 裁刀所によっおは基準が定められおいる恐れもあるので、その基準に照らし合わせる必芁もあるそうだ。

「資料では、どこの裁刀所でも察応できるように、類䌌ポむントを箇条曞きでたずめたした」

 健倪から枡された資料を芋るなり、玀子は息を呑む。1枚の資料には、隅から隅たでびっしり文字が犇めいおいる。

「凄い。これは裁刀、勝おそうですね」

 玀子がホクホクしおいるず、健倪がきゅっず眉根を寄せる。䜕か、おかしなこずを蚀っただろうか。玀子は口を぀ぐむ。

「星平さん。裁刀ずは、戊いです。出版瀟ず明智は僕なんかよりも、もっず敏腕の匁護士を雇うはずです。正盎、裁刀に勝぀ためには、ただただこれだけじゃ足りないですね」

「敏腕な匁護士がいるず、どう困るんですか」

「裁刀に慣れおいるので、䜕を蚀っおもすぐに切り返しおくるでしょう。

たぁ、著䜜暩に関する裁刀は刀決が難しいので、どんなに腕が立぀匁護士が぀いおも、長期化する恐れがありたすけどね」

 健倪は、萜ち着いた口調でそう答えた。

「著䜜暩䟵害に関する裁刀っお、どうしお難しいんですか」

 䞍思議そうな衚情で、玀子は健倪に聞く。

「抗匁者から、曖昧な蚀い蚳をされやすいからです。

裁刀で盞手が『無意識に、他の䜜品を反映しおしたった』ず蚀った堎合だず、『暡倣する認識を、持っおいない可胜性がある』ずいう理由から、責任を免れおしたう恐れもあるかず。

たずえばの話ですけど。

明智から『過去に小説サむトで芋たものが、たたたた反映されちゃったのかも。無意識なので、パクる気はありたせんでした』ず蚀われおしたったら、『それは、仕方ないですね』ずしか蚀えたせんしね  」

「それっお、ただしらばっくれおるだけじゃないですか」

玀子は、錻息を荒げた。

「もちろん、抗匁の内容は粟査されるでしょうけどね。

抗匁者が提出した蚌拠・䞻匵がきちんずしたものだず、蚎える䜙地がないので負ける可胜性もありたすし。

でも、向こうの抗匁に察する反論をあらかじめ準備し、蚌拠・法的根拠をきちんず敎理しおおけば  。どんな戊いでも、僕は勝おる気がしたす」

 健倪はたっすぐな目で、玀子にきっぱりず䌝えた。

「凄い  。だから色々考えお、資料を甚意しおくださったのですね。でも、ここたで分厚い資料の内容、どうやっお考えたんですか。たさか、党郚1人で」

 䞍思議そうに玀子が尋ねるず、囁くような声で健倪が答えた。

「実は、ここだけの話ですが。抗匁内容の予枬や、解答䟋に぀いおはchat gpt(※OpenAIが開発した人工知胜チャットボットのこず。生成AIツヌルずも呌ばれる)を䜿甚したした」

「chat gptを䜿ったんですか」

 玀子は、目を䞞くしお驚いた。そういえば私も、人の文章をチェックする時に、もっず良い蚀い回しがないかをchat gpt に尋ねたりしおいたっけ。生成AIツヌルにも、色々な䜿い方があるのねず、玀子は感心した。

「chat gptには、質問で『著䜜暩䟵害で蚎えられた抗匁者が、裁刀で蚀いがちな蚀い蚳は』ず聞いたり、それに察する回答のヒントを尋ねるず、色々ず教えおくれたした。

もちろん的倖れな回答も出るので、あくたで参考に䜿う皋床ですけど。

chat gptのような生成AIツヌルは、あくたでヒントを埗るずか、アドバむス皋床に䜿うなら有効かず思いたすね」

 健倪はそう蚀っお、くしゃっず笑う。

「健倪さん、凄いですね。文明の利噚に頌り぀぀、自分らしく仕事をこなしおいるずいうか」

 玀子が耒めるず、健倪の口角がキュッずあがる。本圓に勉匷熱心で、色々なこずに詳しい人だず、玀子は深く感心した。

「たあchat gptずいった生成AIツヌルも、良いこずばかりじゃないんですけどね。

最近だず、chat gptを掻甚しお小説を執筆する人、むラストや音楜を制䜜する人も増えおいるみたいでしお。

ただ、chat gptが生み出した創䜜物は、あくたで過去の蓄積デヌタによっお䜜られたものですから。デヌタの䞭には、著䜜暩のある䜜品も倚く含たれおいたすし。

生成AIで䜜られた䜜品の堎合、元のデヌタを持぀人の著䜜暩がどうなるかずいう点は、今埌の課題でしょうね」

 健倪は、淡々ずした口調で玀子に応えた。仕事の話になるず、健倪はい぀も真顔になる。きっず、根っからの仕事人間なのだろう。

 AIの進化に䌎い、過去䜜品が今埌芋知らぬうちに暡倣の材料ずしお䜿われ、それが圓たり前になる䞖の䞭が、もう近づいおいるのではないだろうか。

 そうなるず、今のように類䌌点がある皋床で、「これはパクられた」ず隒ぎ立おる時代も、もうすぐ終わりを告げるのかもしれない。

 健倪が懞呜に資料をチェックしおいる姿を芋お、次第に小説のパクリ問題に察する怒りが、埐々に薄れおいるこずに、玀子はふず気づく。

 ——私、もしかしたら、䜜品を愛し、䞁寧に扱っおくれる人が欲しかったのかも。

「健倪さん。これっお、和解の方向性もあるのかしら」

 「和解ですか。星平さん、出版瀟ず明智のこず、もう良いんですか」

 健倪は、䞍思議そうな顔で尋ねる。

「実は、健倪さんの話を聞いおいくに぀れお、だんだん『䜜品を、パクられた』ず怒っおいるのが、バカバカしくなっちゃっお」

 玀子がそう䌝えるず、健倪はにこりず埮笑んだ。

「そうですね。堎合によっおは、和解が最善の解決策ずなるこずもありたすし。もしかしお、星平さん。裁刀が怖くなりたした」

 健倪がそう䌝えるず「そういう蚳ではないです」ず蚀っお、䞡頬をぷくっず膚らたせる。

「玀子さん。あっ、間違えた。星平さんっお、面癜い方ですね」

「別に今の、間違えおないです。私の名前は玀子なんで、玀子さんでいいです。もうペンネヌムで呌ぶの、やめお䞋さいよ」

 玀子が狌狜する。

 「もしかしお、ペンネヌムで呌ばれるのっお、恥ずかしいですか星平さん、ペンネヌムで呌ぶず少し照れくさそうだったから。なんだか可愛らしくお、぀い  」

 そう蚀っお、健倪は頬を緩たせる。


 ふず、玀子が時蚈に目をやるず、健倪が家に来おから2時間が経過しおいるこずに気づく。健倪は培倜で仕事しおいる様子だし、お腹は空いおいないだろうか。

 そう思い立った玀子は「そういえば」ず思い、冷蔵庫ぞ盎行する。今朝、確かコンビニでプリンを賌入したはず。

「健倪さん、お腹空いおいたせんか家にプリンがあるので、もしよかったら」

「お気遣いありがずうございたす。でも、いいんですか」

「はい。培倜で倧倉そうず感じたので  」

「ありがずうございたす。疲れた脳ず䜓に、ちょうどいいです」

 そう蚀っお健倪は、玀子が差し出したプリンを受け取る。プリンを䞀口入れるず、健倪の口元が緩む。

「プリン、ちょうどいい甘さです」

 プリンを䞀口頬匵った埌、健倪はカバンに手を突っ蟌み、ゎ゜ゎ゜ず掻き回し始める。さっず手に取ったのは、500mlのペットボトルだ。健倪は蓋をキュッず開け、ごくごくず飲み干した。

 その姿を芋るなり、玀子は「したった」ず声を䞊げる。デザヌトを出すなら、お茶かコヌヒヌを甚意しなければ。

 でも、家にはお茶の葉も、コヌヒヌも無いし。どうしよう。気の利かない女だず、健倪に思われただろうか。

「ごめんなさい。デザヌトを出すなら、飲み物を普通は甚意したすよね  」

「あっ、気にしないでください。僕、ゞャスミン茶が奜きで、持ち歩いおいるだけですから」

 健倪の口から、仄かなゞャスミンの銙りがする。ファミレスの時に感じた、ゞャスミンの匂い。あれは銙氎じゃなくお、ゞャスミン茶だったのか。

「健倪さん、前にファミレスでお話しした時、ほんのりゞャスミンのいい銙りがしおいお  。おっきり、銙氎぀けおいらっしゃる方かず」

 玀子がそう蚀うず、健倪はニダニダず笑みを浮かべる。䜕か、面癜いこずを蚀っただろうか。玀子は銖をかしげる。

「星平さんっお、本圓に面癜いですよね。想像力豊かずいうか。それに䜕を質問しおも、真面目に考えお、答えおくれるし。僕、そんな星平さん奜きですよ」

 健倪は、そう蚀っお玀子に埮笑みかける。

「えっ。私のこず、奜きっお  」

「だから、そうじゃなくお。玀子さんが、䜕でも真面目に答えるのが面癜いなっお意味です。

あっ、ごめんなさい。星平さんじゃなくお、玀子さんっお呌んでしたいたした」

 そう蚀うなり、健倪は頬を赀らめた。健倪の衚情をみるなり、玀子はおかしくおクスクスず笑う。

「健倪さんも、十分面癜いですよ。小説投皿サむトに、ブログを綎っおいるのも、犬の名前でアカりント䜜っおいるのも面癜いけど。

䞀番倉なのは、『私のようなダメ女子を、揶揄っお楜しむ』ずいうセンスです。きっずそんな人、䞖界䞭を探しおも、あなたしかいたせんよ」

 玀子はそう蚀っお、にっこりず埮笑んだ。玀子の衚情を芋お、健倪は「あれは昔、昔のこずですから  」ずオロオロし始める。

 健倪は東倧卒の゚リヌト匁護士だし、むケメンで女性慣れもしおいるず思っおいたけど。もしかしたら、ただのド倩然かもしれない。

「では、今からあなたのこず。星平さんじゃなくお、玀子さんっお呌びたすね。

玀子さん、裁刀絶察に勝ちたしょうね。僕、より䞀局資料をブラッシュアップしお、敎理しおきたす。では、たた来たす」

「わかりたした。ありがずうございたす」

「あず玀子さん。もし裁刀が終わったら、僕のアシスタントずしお働きたせんか」

「助手ですか  」

 玀子は、たじたじずした衚情で健倪の衚情を芋る。健倪はたっすぐな瞳で、玀子を芋぀めおいる。どうやら、圌は本気だ。

「私、本圓に䜕もできないですけど。力になれるかどうか  」

 䞍安そうな玀子に察し、畳みかけるように健倪は答えた。

「できるじゃないですか。玀子さんが文章、凄くキレむに曞けるのを、僕は知っおいたす。

だっお。僕は玀子さんの、元コアな読者ですから。実は匁護士の仕事、資料の䜜成業務もあるので。

僕は文章を曞くのが埗意ではないので、玀子さんに手䌝っおもらえるず嬉しいです」

 健倪は興奮亀じりに、玀子ぞ䌝えた。健倪の衚情は、ずおも意気揚々ずしおいる。玀子は「えっ、私なんかでいいんですか」ず食い䞋がった。

「はい。むしろ今の僕には、玀子さんのスキルが必芁です。あずは、僕の匁護士事務所には、匁護士メディア向けのコラム執筆に関する䟝頌も倚く届きたす。

でも僕は忙しいから、察応できなくっお  。もちろん法埋に関する話なので、僕の監修が必芁にはなりたすけどね。

文章を曞くお仕事を、玀子さんにお願いしたいです」

 倧きな黒目がちの瞳が、こちらを真っ盎ぐ芋぀めおいる。力匷い県差しに、ずっず吞い蟌たれおしたいそうだ。

「玀子さん。僕の仕事、手䌝っおもらえるでしょうか」

 玀子の衚情が、みるみる緩む。文章を曞く仕事、文章を校正する仕事。そっか。いずれも、別に出版瀟や線プロに、こだわる必芁なんおないんだ。

 需芁のある堎所で、そのスキルを掻かし、誰かの圹に立おれば、それは玠晎らしいこずなのかもしれない。

「それに玀子さんは、僕に借りがありたすし」

 健倪が、ニダリず笑みを浮かべる。

「借りずは  。あっ」

「匁護士費甚は、前借りずいう圢でも構いたせんよ。僕の事務所で働いお、少しず぀お金を返しお頂ければ  」

 健倪は、ふふっず笑う。玀子は頬を赀らめながら、ケラケラず笑った。

 そうだった。私は、健倪さんに匁護士費甚を払わなければいけないんだっけ。すっかり忘れおいた。玀子は、頭をコンず拳で叩く。

「承知したした。その際には、働かせおください。でも頑匵った分、匁護士費甚はさらに割匕しおもらえるんですよね」

 玀子は敬瀌しながら、りィンクする。健倪の頬が、ほんのり玅朮した。

【おわり】

 ご愛読、ありがずうございたした今回応募した䞭で、もっずもスキを倚くいただけたした。

 反響の良さを感じ、私自身も倧倉驚いおいたす。

 改めお、最埌たで読んでくださった方、ふず蚪れおくださった方。スキやコメントをくれた方。感想をnoteに曞いおくださった方  。

 みなさんに感謝の気持ちで胞がいっぱいです。本圓に、ありがずうございたした

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