
愛しのTKG
イギリスに住んで、かれこれ26年目を迎えようとしている。近年の日本ブームの追い風もあり、ありとあらゆる日本食材が結構安易に買えるようになり、家でも気軽に日本食を作れるようになったのはとても嬉しい。
しかしだ、TKGだけは無理。日本のように衛生管理が行き届いていないので、生卵は怖くて食べられない。たぶんイギリス人の夫や我が息子は、その存在すら知らないと思う。というか、生卵をご飯に乗っけて食べるなどと言えば、サルモネラにやられて病気になるよと言われるに決まっている。だから面倒で説明すらした事がない。TKGを知らないなんて、なんともったいない!TKGは、シンプルだからこそ嘘がつけない日本食の根源のようなメニューだと私は思う。どんなに高いお寿司なんかより、私的には贅沢の極みを尽した日本食だと、高く評価している。
まずは米。絶対日本米。日本に住んでいる方々からすると、そんな事言わなくても当然と言われるかもしれないが、こちらではいろんな国のお米があって、料理によって使い分けるので、ここはきちんと押さえておきたい。うっすらと甘みや旨味のある炊きたてのツヤのある白いご飯。TKGには柔らかめより、少しお米が立っているくらいの炊き具合が合うと思う。混ぜた時に、リゾットみたいになるのは嫌だ。
次に醤油。これまたいろんな種類があって、どれを使えばいいのか迷うところだが、熊本出身の私としては、濃くて少し甘みのある、あの九州のお醤油が一番合う気がする。地元の大学を卒業と同時に上京し、東京で就職した際に、あの関東のサラッとした、甘みより塩気の方が勝っているお醤油でTKGを食べた際、何か物足りない気がしたのを覚えている。
そして主役の卵。これはもう、主役なだけにこだわりたい。難しい事は分からないが、とにかくオレンジがかった黄身がふっくらツヤツヤと盛り上がった新鮮な卵。箸でちょっとつついたくらいでは壊れない黄身。そういう卵が理想。ご飯に少し窪みをつけて、そこを目掛けてパカッと卵を割る。そしてお醤油を少しだけ。これも人それぞれだと思うが、私はかけすぎないのが好き。卵の旨味を味わいたいから。
TKGはオーケストラのようなものだと思っている。全てのパートが出しゃばりすぎず寄り添いあって、完璧な世界を作る。でもアレンジ次第でどうにでもなる。そしてそのアレンジの主導権は、指揮者である私にある。今度日本に帰国した時は、どういうアレンジで食べようかなぁと、今からワクワクが止まらない。