
帝国海軍プラモデルを逆手に取ったガンプラ市場救済策
前回、このような記事を書いた。(文字数11,921字)
この記事でガンプラ市場の問題点を指摘したが、その救済策まで踏み込めていなかった。問題を指摘し改善を促すなら、その者は対案を用意してから言うべきだろう。なので今回、救済策を考えた。
当方はプラモ業界の人ではない。だから業界内軋轢は知らない。想像するだけである。それだけに業界固有の禁則事項に囚われていない。その観点で述べるため、どれだけ非現実的でも、理論上の正しさは追求できる。
今回、書こうと思ったきっかけは、バンダイの株主総会のレポートを読んだためだ。バンダイはガンプラの新工場を作り、転売屋対策をすると言い、会社として、皆様にガンプラをお届けしたいと述べていた。
その一方で、子供株主(女の子)の要望に対する回答が気になった。「プリキュア商品が全般的に高い」に対して、それは「お父さんに相談してね」と答えた。この子が大人になった時、バンダイの回答はどう思われるのか?
あとこの回答からバンダイは、ガンダム以外は守る気が薄いという事も透けて見える。昔のガンプラは安く、子供のお小遣いで買えるレベルだった。今のプリキュア商品は調べていないが、子供株主の発言は無視できない。
あとガンプラ世界市場でも、デュッセルドルフに続いて、ロンドンでもガンダム・ベースがオープンして、ヨーロッパ市場を作ろうとしているのが分かるが、問題のアジア市場をどうするのかよく見えてこない。
結局、会社としては努力しているが、全て手が回らないという状態だろう。バンダイが抱えている文化資産の本当の力を解放できていないと思う。これは日本のコンテンツ事業としても損失ではないだろうか?
であるならば、
取るべき道は自ずと明らかになる。
Fujimi艦NEXT方式から始める正規模型市場の共同防衛構想
前回のおさらいから始める。
ガンプラ市場が、
妙な事になっている。
本来なら、ガンプラ本国である日本は、正規品がもっとも豊富に買える筈だった。海外では入手が遅れたり、価格が高くなったり、ラインナップが限られたりする。偽物や非正規品は、正規品に劣る代用品の筈である。
ところが、現在の市場は必ずしもそうなっていない。国内では、人気キットが転売と品薄に巻き込まれ、普通の購入者が普通に買えない。
一方、大陸や半島の周辺市場では、非正規品、コピー品、類似メカキットが安く、種類も多く、しかも一部は高密度化している。
これは単なる海賊版問題ではない。
ガンプラ本国より、外側の非正規市場の方が「選べる」ように見えてしまうという、逆転現象である。これは前回指摘した問題だ。
バンダイナムコは、ガンダムという錦の御旗を持っている。法的には正統であり、ガンダムIPの本丸を握っている。
しかし、市場は法的正統性だけでは動かない。購入者が見るのは、最終的には「買えるか」「価格はどうか」「満足できるか」である。
正規品が買えず、転売価格だけが上がり、外側に安くて派手な代替品があるなら、消費者はそちらを見る。
これは、バンダイにとって非常に危険な状態である。バンダイが本当に恐れるべきなのは、偽ガンプラそのものではない。本当に恐れるべきなのは、購入者がこう思い始める事である。
「もう、バンダイでなくてもいい」
1 バンダイ単独防衛の限界
ガンプラは、長い間、
バンダイの強さそのものだった。
組みやすい。
安い。
精度が高い。
塗装しなくても見栄えがする。
子供から大人まで入れる。
店頭で買える。
この「店頭で買える」という要素は、実はとても大きかった。ガンプラは高級ホビーではなく、日常的に買えるプラモデルだった。
小学生が小遣いを握って模型店や量販店に行き、棚を眺め、好きな機体を選ぶ。そこにガンプラ文化の入口があった。(冒頭の子供株主(女の子)の話では、現代のプリキュア商品はそうなっていないようだ)
現在はその入口が細くなっている。
人気商品はすぐ消える。
再販品も争奪戦になる。
MGなど一部カテゴリーは薄い。
プレミアムバンダイも抽選や予約競争になる。
店頭には欲しいものがない。
ネットには転売価格が並ぶ。
この状態が続くと、購入者の心理は変わる。
最初は怒る。
次に諦める。
その次に、別の供給源を探す。
そこで、海外通販、非正規品、大陸系キット、半島市場の偽ガンプラや類似品が見えてくる。バンダイからすれば、これらは知財侵害であり、非正規品であり、正規市場を害する存在である。だが商品はある。存在している。
購入者側から見ると、
違う景色になる。
正規品が買えない。
転売品は高い。
でも非正規品は買える。
しかも安い。
場合によっては、
種類も多く、情報量も多い。
この時点で、偽物は単なる偽物ではなく、供給不足を埋める「代替品」になってしまう。これが問題だ。法律上の正統性は、バンダイにある。しかし、市場上の正当性は、供給できる者に移る。冷酷だがこれが実態だ。
バンダイにガンプラを任せる正当性が、市場原理によって静かに否決されつつある。これは株主総会で厳しい質問を受ける事よりも怖い。株主は言葉で質問するが、市場は購入先を変える事で答えるからだ。
2 法ではなく、供給で守るしかない
転売も、偽ガンプラも、完全に法律だけで止める事は難しい。無論、偽物を売る側、輸入する側、流通させる側には法的な問題がある。税関で止まる事もある。販売者が摘発される事もある。
だが購入者側の心理はそこまで強く縛られない。転売品を買う事自体で、購入者が現状、法的に罰せられる訳ではない。
偽ブランド品も、一度国内に流通して個人の手に渡ったものを、後から一件ずつ国が回収して回るような現実性は低い。知らずに買ったなら、購入者はむしろ被害者の側にもなる。摘発は売り場までだろう。
ガンプラの場合は、
やや微妙だ。
明らかに非正規品と分かって買う場合もあるだろうし、正規品と誤認して買う場合もある。だが、いずれにしても、購入者側に「これは買っただけで危ない」という強い罰則意識が働きにくい事は確かである。
そうなると、
市場行動は単純になる。
欲しいものがある。
正規品は買えない。
転売品は高い。
非正規品は買える。
なら、買える場所から買う。
この流れを、道徳だけで止めるのは難しい。
「正規品を買って下さい」
「偽物は買わないで下さい」
「転売屋から買わないで下さい」
正しい。
だが購入者からすれば、
こう言いたくなる。
「正規品を普通に買えるようにして下さい」
ここで冒頭のバンダイの株主総会の話になる。
結局、正規市場を守る最強の方法は、道徳でも取り締まりでもない。普通の人が、普通に正規品を買えるようにする事である。
買える正規品が十分にあれば、購入者はわざわざ危ない非正規品に手を出さない。正規品が適正価格で棚にあれば、転売屋から買う必要もない。正規市場が厚ければ、非正規市場は「安物」「偽物」「怪しいもの」に戻る。
逆に、正規市場が薄ければ、非正規市場は「代替品」になる。だから、ガンプラを守るとは、知財を守る事だけではない。ガンプラを守るとは、買いたい人が正規品を買える状態を守る事である。
3 静岡模型方式という先例
ここで思い出すべきなのが、
静岡模型の歴史である。
日本の模型産業には、一社がすべてを抱え込むのではなく、複数社が分担して一つの模型世界を作るという先例がある。代表的なのが、1/700ウォーターラインシリーズである。静岡模型教材協同組合だ。
タミヤ、ハセガワ、アオシマ、フジミなどが参加し、帝国海軍や各国艦艇を共通スケールで展開した。各社がそれぞれ艦を担当し、棚全体として一つの艦隊世界を作った。これは非常に優れた方式だった。
一社では、全ての戦艦、空母、巡洋艦、駆逐艦を揃えるのは難しい。だが複数社で分担すれば、棚が厚くなる。ユーザーは一社の商品を買っているというより、一つの模型世界に参加している感覚になる。
ガンプラにも、
これが必要ではないか?
バンダイ一社が、全MS、全スケール、全再販、全世界需要、全転売対策、全海外展開、全偽物対策を抱え込む。これは、いくらバンダイが強くても重過ぎる。限界があるだろう。
今のバンダイは、
ガンプラについて背負いすぎている。
供給不足の批判もバンダイ。
転売対策の批判もバンダイ。
MG不足の不満もバンダイ。
海外展開の期待もバンダイ。
偽物対策もバンダイ。
子供やライト層が買えない問題もバンダイ。
もう一社で背負うには重い。
発想を変えるべきだ。
バンダイがガンダム全てを独占して守るのではなく、バンダイを中心に、国内模型メーカーが正規市場を広げる。バンダイはガンダムIPの本丸を持ち、基準を定め、中心商品を作る。
その周囲を、静岡模型を中心とする国内メーカーが補完する。これはバンダイの敗北ではない。むしろ、バンダイを楽にする方法である。
バンダイは「全部作る会社」から、「正規模型市場の司令塔」へ移る。
王者として独占する段階から、盟主として連合を率いる段階へ移る。この方が、ガンプラは守りやすい。これが当方からの解決策だ。

コラム 戦時下で新作を出し続けるウクライナ模型産業
ここで、静岡模型方式を考えるうえで興味深い海外の例を一つ挙げたい。ウクライナの模型産業である。代表は以下の三社だ。
ICM
https://icm.com.ua/
航空機、軍用車両、人物、民間車両まで幅広い総合メーカー。戦時下でも毎月のように新製品、発売予定、カタログも確認できる。
MiniArt
https://miniart-models.com/
戦車・装甲車だけでなく、路面電車、建物、家具、食器、工具、民間人など、ジオラマ用品が非常に充実している。
Roden
https://www.roden.eu/
第一次世界大戦の複葉機、輸送機、旅客機、珍しい旧式航空機などに強いメーカーだ。
ウクライナには、完成キットのメーカーだけでなく、レジン部品、デカール、金属パーツ、フィギュアなどの専門会社まで含めると、五十を超える模型関連企業・ブランドが存在するとされる。
人口や国内市場の大きさから考えれば、これは異様に厚い産業集積である。しかも、ロシアとの戦争が続く現在も、新作の企画と発売が止まっていない。これは驚異的だ。
代表的な会社として、まずICMがある。航空機、戦車、軍用車両、民間車、人物まで幅広く扱う総合メーカーで、キエフに設計と生産の中心を残した。ロシアの空爆下でもプラモの製造を止めていない。
電力網が攻撃される環境に対応するため、大型の自家発電設備を用意し、停電下でも生産を維持できる体制を整えている。
さらに工場付近へのロシアの弾道ミサイル着弾によって施設の約半分が破壊される被害を受けながら、再建と操業を続けた。ICMは、いわば国内に踏み留まる籠城型の生産体制である。
次にMiniArtがある。こちらは戦車や装甲車だけでなく、路面電車、農業用トラクター、工場設備、街灯、家具、食器、工具、家畜、民間人、廃墟や建物まで商品化する。
戦争中に会社機能を分散し、設計者はキエフでノートパソコンとCADを使って開発を続ける一方、金型、成形、保管、出荷の主要機能をポーランド側へ移したとされる。
頭脳をウクライナに残し、破壊されれば復旧が難しい金型と量産設備をEU圏に置く、分散型の企業防衛である。
三社目のRodenは、第一次世界大戦期の複葉機、輸送機、試作機、旧式旅客機など、航空史の空白を埋めるような商品で知られる。
大手メーカーなら採算を考えて避けるような機体でも、世界各地に散らばる少数の愛好家を対象にキット化する。キエフを拠点に、戦時下でも新商品を送り出している。
この三社に共通するのは、商品が非常にマニアックな事である。旧ソ連の戦車や装甲車を一通り知っていても、ウクライナ製品の一覧を見ると、見た事のない車両や機体が次々に現れる。
当方は、旧共産圏の兵器体系を一通り知っている。西側で対応する兵器とセットで覚えている。形を見れば、名前は出て来る。用途も性能も分かる。それでもウクラナイのプラモは分からない。ローカル過ぎる。
飛行場用の始動電源車、特定の無線装置を積んだ指揮通信車、整備・回収・検査用車両、少数生産の試作機、農場や工場で使われた特殊車両などである。こんなの旧共産圏の東欧に住んだ人でないと分からない。
これは単に、兵器を機能別に並べる発想ではない。戦争に必要な兵器体系として見るなら、主力戦車、歩兵戦闘車、自走砲、防空、工兵、兵站という対応関係で整理できる。
しかし、ウクライナの模型会社が拾っているのは、その体系のさらに下にある生活世界である。旧共産圏の街角、飛行場、工場、農場、住宅、兵舎に実際に置かれていた物を、細部まで再現している。ジオラマだ。

MiniArtの商品群が象徴的である。戦車の横に置く兵士だけでなく、椅子、机、瓶、食器、工具、荷車、動物、街灯、煉瓦壁まで揃える。これらは単なる付属品ではない。
旧ソ連・東欧の一つの時代を、ジオラマとして再建するための部品である。日本人が昭和の商店、木造校舎、郵便ポスト、オート三輪を模型で懐かしむのと似ているが、旧共産圏では軍用車両、工場設備、農業機械、民間生活が同じ風景の中に混在している。
そして、この「世界を縮小し、手元に再構成する」感覚は、明らかにキリスト教圏のミニチュア文化へ接続しているように見える。降誕場面、聖人伝の小景、写本の細密画、祭壇上の立体的な物語空間では、中心人物だけでなく、建物、動物、家具、衣服、道具までが意味を持つ。
小さくする事は玩具化ではなく、秩序ある世界を保存し、再現する行為だった。ウクライナのジオラマ商品にも、その古い文化の残響がある。兵器一台を鑑賞するのではなく、その兵器が存在した土地、季節、人々、生活用品まで含めて、ミクロ・コスモスとして組み直すのである。

これはキリスト教圏のミニチュア文化の再現だ。
箱絵、すなわちボックスアートも日本とはかなり違う。日本の模型箱絵には、機体や車両の輪郭を光、空気、土煙の中へ少し溶かし、主役の速度感や美しさを強調する伝統がある。ある意味では、日本的な印象派の絵である。
だがウクライナの箱絵は、物の輪郭をあまりぼかさない。車両、人物、家屋、泥道、樹木、工具などが、それぞれ具体的な物として配置される。
背景は雰囲気を作るための背景ではなく、その商品が属する世界の説明になっている。箱を見た時点で、一枚の歴史画、あるいは物語を封じ込めた細密画のように、一つの場面が完成している。購入者は車両一台だけでなく、その箱に描かれた世界を机上へ再建するのである。
また、戦時下の生産体制も一様ではない。ICMはキエフに残り、発電設備を持ち、被弾後も工場を修復して操業を続ける。MiniArtは設計、金型、成形、保管、物流を分散し、国境を越えて事業を継続する。
Rodenのように比較的小規模な専門メーカーは、既存の技術者集団と限定市場を生かし、ニッチな新作を積み上げる。危機に対する答えは違っても、各社が自社の規模と資産に合わせて、生き残る仕組みを作っている。
ウクライナ国内だけで、これほどマニアックな商品群を消費する事はできない。模型産業は最初から輸出産業であり、主な市場にはドイツ、イギリス、アメリカ、日本などの模型大国が含まれる。
戦時下では、商品の輸出は企業の売上だけでなく、ウクライナに外貨をもたらし、雇用と税収を維持する手段にもなる。海外の愛好家が一箱買う事が、民間企業の操業継続を支える構造になっている。
ここには、日本が学べる点がある。
一つ目は、一社が全ての人気商品を作る必要はないという事。二つ目は、主役だけでなく周辺の小道具を揃える事で、模型世界そのものが市場になるという事。そして三つ目は、設計、金型、成形、物流を必ずしも一か所、一社に集中させる必要はないという事である。
ウクライナの模型産業は、戦争によって強くなったのではない。元々存在した多数の専門会社、技術者、細分化された商品文化が、戦争によって生存能力を試されている。
それでも五十を超える企業群が、それぞれ異なる方法で新作を出し続けている。これは模型市場を一社だけで守るのではなく、複数社の分業と共同体によって厚くするという静岡模型方式の価値を、別の角度から示している。
4 いきなりガンプラではなく、まずヤマトを開く
ただし、いきなりガンプラ本丸を開放するのは難しい。ガンダムはバンダイナムコにとって、あまりに大きい。
RX-78ガンダムやMS-06ザクⅡを他社に渡すとなれば、社内も市場も大きく揺れる。品質管理、利益配分、ブランド統制、設計基準、販売戦略、すべてが複雑になる。そこで、まず宇宙戦艦ヤマトを使う。
宇宙戦艦ヤマトは、
ガンプラよりも
静岡模型方式に向いている。
理由は簡単である。
ヤマトは艦船模型だからである。
ヤマト、アンドロメダ、主力戦艦、巡洋艦、駆逐艦、空母、ガミラス艦、白色彗星帝国艦、デザリアム艦、艦載機、情景ベース。
これは、一社が単発で商品を出すより、複数社が艦隊として展開した方が明らかに強い。しかも、バンダイは現在、ヤマトのプラモを全く作っていない訳ではないが、ヤマトを市場全体として厚く育てているとは言い難い。
新作アニメに合わせた商品は出る。記念商品も出る。だが、恒常的な艦隊模型の棚としては弱い。ここに、実験の余地がある。ガンプラ本丸をいきなり開くのではない。まずヤマトから渡す。
しかも、ヤマト本艦をすぐ他社に渡す必要もない。バンダイはヤマト本艦、アンドロメダ級、主力戦艦を保持してもよい。最初に渡すべきなのは、バンダイが十分に出していない艦艇である。今ならデザリアム艦である。
デザリアム艦、敵側の量産艦、補助艦艇、艦隊を構成する周辺メカ。こうしたものは、バンダイ一社では優先順位が下がりやすい。だが、ヤマト世界を艦隊模型として楽しむには非常に重要である。ここを外部に任せる。
これはバンダイにとっても都合がいい。本丸を手放さずに、正規市場の棚だけを厚くできるからである。もし模型業界の人がこの記事を読んだのなら、この段階的移行策をぜひとも検討して欲しい。
5 最初に組むべき相手はFujimiである
ヤマトを静岡模型方式へ移すとして、最初に組むべき相手はFujimiだと思う。理由は単純である。Fujimiはすでに、艦NEXTで「ガンプラ仕様の艦船模型」を作っているからだ。
従来の艦船模型は、接着と塗装が前提だった。精密ではあるが、初心者には敷居が高い。一方、ガンプラは、接着剤なし、色分け成形、スナップフィット、シール補完によって、誰でも組めるプラモデルとして発展してきた。
Fujimiの艦NEXTは、
この二つの中間に立っている。
艦船模型でありながら、
ガンプラ的に組める。
塗装しなくても、
ある程度見栄えがする。
接着剤なしでも、
艦船として組み立てられる。
つまり、艦船模型をガンプラ側へ近づける技術思想を、すでに持っている。これは、宇宙戦艦ヤマトと非常に相性がいい。ヤマトは、艦船模型であると同時に、キャラクタープラモデルでもある。

従来のスケールモデル的な精密さだけでは足りない。ガンプラ層が求める組みやすさも必要になる。この条件を、最初からある程度満たしているのがFujimiである。だからヤマトの共同展開を始めるなら、初手はFujimiがよい。
バンダイはIP、設定監修、ブランド管理を担う。Fujimiは艦船模型としての設計、成形、艦隊展開を担う。バンダイはヤマト本艦や主力商品を残す。
Fujimiは、バンダイが出していない艦、量産艦、敵艦、デザリアム艦、艦隊セットを担当する。この形なら、それほど時間をかけずに移行できる可能性がある。なぜなら、Fujimiにはすでに近い技術があるからである。
他社に渡す場合、まずガンプラ的な設計思想を共有する必要がある。接着剤なしで組める事。色分けをどこまで行うか。シール補完をどう使うか。キャラクタープラモデルとして、どこまで素組みで満足させるか。
こうした技術提供や設計思想のすり合わせが必要になる。しかしFujimiは、艦NEXTですでにその橋を架けている。つまり、Fujimiはゼロから教える相手ではない。すでにヤマト共同展開の入口に立っている相手である。
ここが大きい。
6 Fujimiに渡すべき最初の商品群
では、Fujimiに何を渡すべきか。最初に渡すべきなのは、バンダイが十分に展開できていない艦艇である。まずはデザリアム艦。映画でヤマト3199も上映している。これは最優先候補だ。地球側があっても、敵艦がいない。
デザリアム艦は、ヤマト3199以降の世界を艦隊として見せるうえで重要になる。しかし、バンダイが全てを商品化できるとは限らない。主役艦や目立つ艦は出しても、艦隊を構成する量産艦や周辺艦艇までは手が回りにくい。
ここをFujimiに渡す。
Fujimiなら、
艦隊模型として展開できる。
プレアデス級攻勢戦艦。
プレアデス改級攻勢型戦艦。
グロデーズ級殲滅型戦艦。
グラウンドリバース
自動惑星ゴルバ
ヒアデス級護衛艦。
タイゲタ級大型輸送艦。
掃討三脚戦車ガバリア。
殲滅多脚戦車ガーム・ビゥ。
襲撃戦闘機カタピラス。
ディスプレイ用の統一台座。
これらを艦NEXT的な思想で出す。
接着剤なし。
色分け済み。
シール補完。
艦隊として集めやすい。
バンダイ監修の正規品。

これなら、ヤマトファンにも、ガンプラ層にも、艦船模型層にも届く。次に、ガミラス艦や地球側の量産艦もよい。シャルバート級航宙戦艦など出ていない。あと小型模型のメカコレで全部出す手もある。
これら商品群は、バンダイ本体では優先順位が下がりやすい。しかし、Fujimiのような艦船模型メーカーなら、むしろ得意領域になる。バンダイが主役艦を作り、Fujimiが敵艦を作る。この分担は、かなり自然である。
7 Fujimi方式で成功すれば、他社へ広げる
最初から静岡模型各社に一気に広げる必要はない。まずは、バンダイとFujimiで成功例を作る。ヤマトの未商品化艦艇、特にデザリアム艦や量産艦を、Fujimi艦NEXT的な思想で出す。
ここで成功すれば、次に他社を入れればいい。ハセガワは、艦載機や航空機的メカに向いている。アオシマは、大型艦や変化球、キャラクター模型に向いている。
ウェーブやコトブキヤは、ディテールアップパーツ、基地、格納庫、周辺メカに向いている。タミヤは、仮に直接キットを出さなくても、工具・塗料・工作文化・品質基準の側で関われる。
ただし、他社には一定の技術提供が必要になる。ガンプラ的なスナップフィット。多色成形の設計思想。素組みで満足させるパーツ分割。シール補完の使い方。キャラクタープラモデルとしての箱絵・説明書・導線。
初心者を排除しない組み立て体験。これは、従来のスケールモデルとは違う。だからこそ、初手はFujimiがいい。Fujimiなら、この距離が短い。Fujimi艦NEXT方式は、ヤマト共同展開の橋頭堡になる。

そしてヤマトで成功すれば、
次はガンダム周辺領域に進める。
8 ヤマトからガンダム周辺へ
ヤマトで共同展開が成功すれば、次はガンダムの周辺領域に広げればいい。まずは、本丸ではない部分から始める。
たとえば、宇宙艦艇。
サブフライトシステム。
武器セット。
情景ベース。
モビルアーマー。
旧キット再設計。
量産機バリエーション。
1/700的な宇宙世紀艦隊。
ジオン軍の補給艦や輸送機。
連邦軍の基地設備。
コロニー内部の情景。
MS格納庫。
メンテナンスクルーや車両。
こういう領域は、バンダイ一社ではどうしても後回しになりやすい。しかし、模型世界を豊かにするには非常に重要である。ガンダムは、MSだけで成立している訳ではない。
艦船、基地、補給、整備、航空機、車両、情景があってこそ、宇宙世紀の世界が立ち上がる。この周辺領域を国内模型メーカーに開放すれば、正規市場は一気に厚くなる。
設定集でしか見た事がない周辺メカもプラモ化できる。ウクラナイ方式だ。すでに大陸や半島国家には海賊的にやられている。これを取り返すのは、国内メーカーで連合を組んで、分担して商品化すればよい。
ユーザーは非正規品に行かなくても、正規品の中で選べるようになる。バンダイは本丸のMSに集中できる。国内メーカーは新しい市場を得る。小売店は棚を作りやすくなる。
海外の非正規市場に対しても、正規の総合力で対抗できる。これが、静岡模型方式の強みである。バンダイ一社の城ではなく、国内メーカーによる正規ホビー都市を作る。中心にはバンダイがいる。
周囲には複数のメーカーが参加し、正規品の街を広げる。独占を弱める事は、必ずしも支配力を失う事ではない。むしろ、正規市場の面積を広げる事で、非正規市場を押し返す事ができる。
囲い込む事で守れないなら、囲いを広げる。正規品の範囲を広げる。国内メーカーを味方にする。これが、ガンプラを守るための現実的な道だ。
9 バンダイは王者から盟主へ
バンダイは、ガンダムという強大なIPを持っている。だからこそ、長い間、王者としてガンプラ市場を支配してきた。しかし、王者が全てを抱え込む時代には限界が来ている。
世界需要は大きくなった。
転売は止まらない。
非正規市場は充実してきた。
国内購入者は疲れている。
子供やライト層には
価格も入口も重くなっている。
この状況で、バンダイが「正規品を買ってください」と言い続けるだけでは弱い。ガンプラを守るとは、バンダイが全てを抱え込む事ではない。
ガンプラを守るとは、正規品が市場を満たし、購入者が非正規品へ流れなくて済む状態を作る事である。そのために、まず宇宙戦艦ヤマトを開く。ただし、闇雲に開くのではない。最初の相手はFujimiがよい。
Fujimiは、艦NEXTによって、すでに艦船模型をガンプラ側へ近づける技術思想を持っている。だから、ヤマトの共同展開に最も適している。特に、バンダイが出していないデザリアム艦や量産艦をFujimiに任せれば、比較的短期間で移行できる可能性がある。これはバンダイの敗北ではない。
発展的撤退である。
バンダイが全てを管理し、
作る会社であり続ける必要はない。
バンダイは、ガンダムIPとヤマトIPの中心に立ち、国内模型産業を率いる盟主になればいい。王者として独占する段階から、盟主として連合を率いる段階へ。この転換ができれば、ガンプラはまだ守れる。
終章 不足を嘆くのではなく、供給の仕組みを作れ
この構想は、
単なる一業界の話ではない。
危機が起きた時、
人はよく「誰が悪いか」を探す。
転売屋が悪い。
〇〇が悪い。
偽物業者が悪い。
買う人が悪い。
それぞれに問題はある。
だがそれだけでは市場は救えない。
重要なのは、どう供給を作るかだ。
どう正規市場を厚くするかだ。
どう購入者が非正規品に
流れなくて済む状態を作るかだ。
その昔、
二宮金次郎は、
飢饉を見て、
嘆くのではなく、
米を買い、備蓄を作り、
村を立て直し、
周辺地域まで救った。
彼の強さは、道徳ではなく、
徹底的な実務にあった。
理念ではなく、供給網にあった。
ガンプラ市場も同じである。「偽物を買うな」と言うだけでは足りない。 「転売屋から買うな」と言うだけでも足りない。「正規品を待て」と言うだけでは、購入者の意欲は削られていく。
不足を嘆くのではなく、供給の仕組みを作るべきである。バンダイ一社で守れないなら、国内模型産業で守る。ガンプラ本丸が重過ぎるなら、まずヤマトで試す。そしてヤマトで試すなら、最初の相手はFujimiがよい。
Fujimiはすでに、艦NEXTでガンプラ的艦船模型の技術を持っている。バンダイが出していないデザリアム艦や量産艦をFujimiに任せれば、ヤマト模型市場は厚くなる。その成功を、将来のガンダム周辺領域へ広げる。
王者が城を守れなくなった時、必要なのは城壁を高くする事ではない。同盟を組み、艦隊を編成する事である。ガンプラを守る道は、独占の強化ではなく、正規市場の共同防衛にある。バンダイが王者から盟主へ変わる事。
Fujimiを最初の同盟者として、ヤマトから共同防衛を始める事。そして日本模型産業全体で、ガンプラという文化を守る事。あるいは手薄な文化資産を守る事。それが、現在の市場に対する一つの解決策だと思う。

以上